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2022年5月に結成25周年を迎えたMUCC。アルバム『新世界』の発表をはじめ、その作品のアウトテイクなどで構成した『新世界 別巻』のリリース、さらに過去の8作品を再現するシリーズ・ツアー【Timeless】の開催など、1年半以上に渡って怒涛の活動を繰り広げてきた。そんな25周年イヤーの締めくくりとして、2023年12月28日に東京国際フォーラム ホールAで【MUCC 25th Anniversary TOUR Grand Final Bring the End to「Timeless」&「WORLD」】を行なった。
数千人が集まったにも関わらず、やけに静かな会場。この1年半やMUCCへの想いを噛みしめながら、おごそかにその時を待つ夢烏(MUCCのファン)ばかりだ。18時6分、その時は来た。SEと共に夢烏たちのハンドクラップが巻き起こり、ステージを覆う紗幕に赤いライトでぼんやりと浮かぶステージセットや機材群。そして紗幕にレーザーライトで描き出されるバンドロゴ、さらにライブ・タイトル。そのたびに歓声があがり、最後に大歓声が会場を揺るがした。
直後、Allen(Dr)のキックが響き始め、紗幕にはステージの向こう側のメンバーのシルエットも。キックに合わせてセッションでも始めるようにフレーズを弾くミヤ(G)。YUKKE(B)や吉田トオル(Key)も音を重ね、徐々にバンドサウンドが厚みも増していく中、サイレンが鳴り響き、紗幕も振り上がり、ライトで真っ赤に染まったステージが目の前に広がった。ステージのひな壇の中央に現れた逹瑯(Vo)は、夢烏たちの大歓声を浴びながら、ゆっくりと階段を降り、存在感たっぷりに歌声を響かせていく。その歌声とグルーヴするバンドサウンドに酔いながら、覚醒の時を迎える夢烏たち。
こうして、同日リリースのアルバム『Timeless』の「サイレン」からスタートしたライブだが、2曲目からMUCCは牙を剥く。「フォーラム! 今日はカラダもノドもクビも、筋肉痛でいくぞ!!」
ミヤの煽り文句を合図に突入するのは「咆哮」。逹瑯のシャウトとスパークするバンドサウンドに、全身を快感で痙攣させながらMUCCとひとつになっていく夢烏たち。逹瑯の「カッコいいとこ見せてやっからよ、カッコいいとこ見せてちょうだい。イケる?」という言葉で、上半身を折りたたむヘドバンも巻き起こる。続く「99」でも、すさまじいエネルギーが渦巻き続けた。
しかし、ここから曲が続いていく中で気が付くことも。ある種の儀式めいた静粛さで開演の時を待っていた夢烏たちだったが、MUCCのメンバーにとっても今日は特別な日。結成以来、この25年間に生んできた我が子とも呼べる楽曲の数々を、メンバーも様々な想いを噛みしめながら、キャリアに裏打ちされた安定感あるプレイで、丁寧に鳴らしていく。それぞれの楽曲に改めて命を吹き込むMUCCがステージにいる。「ついにここまで来たね。大変でしたね。みんなも大変だったでしょ。お疲れ様でした。泣いても笑っても、25周年の【Timeless】というツアーが今日で終わりますんで。精一杯、思いっきり何も残さず楽しんで帰ってください」
ミヤの弾く摩訶不思議な旋律から入っていく「路地裏 僕と君へ」では、悲しみを背負った歌や曲をエモーショナルに響かせる。さらに続く「ガーベラ」ではMUCCらしいウェットな質感で夢烏たちの気持ちも濡らしていった。かと思えば、夢烏たちの振るMUCCのLED扇子の光が、色鮮やかに会場を彩りながらダンサブルに展開した「アンジャベル」。悲しさと寂しさを幾重にも折り重ねる「想 -so-」など、一瞬で引き込み、そして魅了していくMUCC。12人編成のストリングスも加わった「雨のオーケストラ」では、胸に手を当て、眼を閉じ、感情的に歌い上げる逹瑯に誰もが心を奪われた。
だが、その曲のエンディングで、ミヤがコードやフレーズをつま弾くにつれ、ライブの色合いは変化していく。悲しみをまとっていたフレーズが、しだいに呪術的なトーンも放ち始め、ステージの照明も怪しげなものに。すると、ひな壇の上にはいつの間にかセットされたパーカッションが。そこに現れた奏者はSakura(gibkiy gibkiy gibkiy、Rayflower、THE MADCAP LAUGHS、ZIGZO)だった。
コンガやシンバルなどを叩くSakura、陶酔するようにコードを鳴らすミヤ。二人の神秘的なセッションが繰り返され、そのムードを保ったまま始まったのは「25時の憂鬱」である。赤、緑、青のライトが生命力を持ったように点滅するステージで、表情を妖しく浮かび上がらせながら演奏するMUCC。精神に作用も及ぼすようなドラッギーな世界へと夢烏たちを引きずり込んでいった。さらに続く「志恩」では、Sakuraのパーカッションが融合することで土着的な響きも持ち、密教の世界まで口開いた感じだ。ステージから炎も吹き上がるが、シャーマンのごとく炎を自在に操る逹瑯でもある。ときおり見せる不適な笑みも恐ろしい。
「ツアーのグランドファイナル、もっとバン!とかピカピカ!!とか、派手なのを想像してた? 頭おかしくなりそうだよね。こういう感情、こういうテンションって、どんなバンドでもいいわけじゃないし。MUCCというバンドをやってなかったら、きっと死ぬまで味わうことなかったようなテンションとか場所に行くことができてるなと思います。凄いよ。来年からどんどん30周年に向けて、バチッと行こうと思いますんで。ここから思いっきり、心もカラダも分かりやすく楽しめるやつ行こうか!」
そんな言葉からライブは後半へ。心を躍らせる「G.G.」では、夢烏たちのハンドクラップと大きなコーラスも曲の重要な要素になり、ライブらしい熱気も一気に高まっていく。そして曲が「アゲハ」へ差し掛かったときだ。ミヤがイントロのテーマメロを弾き始める中、ステージに現れたのはKen(L’Arc~en~Ciel)だった。
「アゲハ」はKenがプロデュースしたMUCCの曲のひとつだが、MUCCが依頼して実現したのではなく、デモを聴いたKenが自らプロデュースを買って出たというのは有名な話だ。ステージでの共演は夢烏たちにとって、夢が現実になった瞬間だろう。テーマメロを弾くミヤに、ハモりながら交わるKen。衝撃と衝動の歓声が巻き起こりながら「アゲハ」へ突入した。激しく揺れる夢烏たちの姿を目にしながら、ミヤとKenは背中合わせでヘヴィリフを刻んだり、ギターソロではツインでハモりながら決めたりと、見どころも聴きどころもたっぷり。ソロを弾き終えたときには、ミヤの頭をクシャクシャとなでるKen。そんなコミュニケーションも微笑ましく、そして観ているだけで嬉しい。
「もう1曲、弾いていっていい?」とKenが言えば、メンバーも夢烏たちも大歓迎。そしてKenが弾くフレーズが、今は亡きゲイリー・ムーアも彷彿とさせる切ないフレーズの数々。ビブラートやチョーキングまで泣かせる。
そこからミヤのカッティングを合図に始まったのは「気化熱」。ところがリハとは拍数の違うところからKenが弾いたらしく、さあ、大変。みんな、戸惑って、演奏を中断という事態に。Kenは「俺が早かった?」と言えば、逹瑯も「Kenさん、弾かなきゃいい。…いや、好きなところで入ってください」と謙虚に言い放つ。このハプニングで和やかなムードに包まれる中、改めて「気化熱」へ。互いにアイコンタクトを交わしながら、まずミヤがソロを弾き、Kenがチョーキングも絡めたソロで流れを作る。笑顔で腕を上げて、夢烏たちを煽るKen。25周年のサプライズが続くライブに鼓動は早まるばかりだ。
「長い長い時間を掛けて、ここまで来たと思っています。それでもまだ途中。これからも長い長い時間を掛けて、共に旅をしようじゃねえか! 行けるところまで行こう!!」
MUCCで活動をスタートさせて25年以上、すでに四半世紀の付き合いを超えているメンバー。ここまでの長い道のりでは紆余曲折もあった。もがくことだって数知れず。それでも突き進もう。そうした意思を描き出した「耀 -yo-」をはじめ、前向きな思いや願いを自分たち自身にも向けた曲を次々に響かせるMUCC。共に声を出し、歌い、叫び、ポジティブなエネルギーでいっぱいの会場だ。
「全力で俺の列車に乗ってこいやー! いくぞ、出発進行!!」地獄の煽り番長=YUKKEによる振り切った煽りも連発され、歓声も笑いも歌声も渋滞状態になることもあったが、ステージ上も含めて、どこもかしこも笑顔だけが輝くライブとなった。
本編ラストをストリングスも加わった「リブラ」で感動的に締めくくったが、当然、アンコールは鳴りやまない。それに応えて再登場したMUCCは夢烏たちに感謝しながら、しかし、いつものようにアンコールでは話題に事欠かない井戸端会議も。さらに、変な顔やポーズでもこの照明ならカッコよく見えるかを競うという、妙な催しまで開催。そのポーズから始まった狂乱の「蘭鋳」、MUCCの原点にして始まりの曲「娼婦」と続き、このツアーで彼らが締めくくりの曲として常に響かせてきた「WORLD」が広がる。
コロナ禍の真っ只中に作ったこの曲は、音源のままでは未完の状態でもあった。ライブでみんなと一緒に歌ってこそ完成する曲だからだ。今回のツアー【Timeless】の初期は、ライブで声出しもできない世の中で、ずっと未完のままだった。それがツアー途中から声出しも解禁され、ようやく完成へと歩みを進めていく。今、国際フォーラムでは夢烏たちの大きな合唱が鳴り響き、その歌声を幸せそうに浴びるメンバー。そしてこの素晴らしい光景を未来へとつなげるため、さらに気持ちを込めて演奏し歌うMUCC。「ここにいる全員、そしてここに来れなかったヤツら、関わってくれた全てに愛を!」
全員でのコーラス・ハーモニーの中、グランドファイナルの最後にMUCCが用意していたのは「Timeless」。自然に溢れるものが零れ落ちないように、ときおり、表情を上向きにしてライブするメンバーの姿も胸を打つ。感謝の思いが詰まった音と歌が、いつまでも全員の心を震わせ続けた。
またライブの終了と同時に、2024年6月にニューシングルを発表することや、2024年6月9日=東京・渋谷Spotify O-EASTを皮切りに【MUCC 2024年TOUR】の開催などが、オフィシャルサイトで発表されている。
Text:長谷川幸信
Photos:冨田味我
◎公演情報
【MUCC 25th Anniversary TOUR Grand Final Bring the End to『Timeless』&『WORLD』】
2023年12月28日(木)東京・東京国際フォーラム ホールA
<セットリスト>
01. サイレン
02. 咆哮
03. 99
04. 謡声
05. ファズ
06. 最終列車
07. 路地裏 僕と君へ
08. ガーベラ
09. アンジャベル
10. 想 -so-
11. 雨のオーケストラ with Sakura
12. 25時の憂鬱 with Sakura
13. 志恩
14. G.G.
15. アゲハ with Ken
16. 気化熱 with Ken
17. 耀 -yo-
18. フライト
19. ニルヴァーナ
20. 名も無き夢
21. リブラ
<アンコール>
22. 蘭鋳
23. 娼婦
24. WORLD
25. Timeless
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