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SUPER BEAVERが、7月22日および23日に【都会のラクダ SP ~ 真夏のフジQ、ラクダにっぽんいち ~】を山梨・富士急ハイランド コニファーフォレストにて開催した。
今回の開催地となった富士急ハイランド コニファーフォレストは、バンドにとって自身過去最大キャパシティの会場となる。両日ともにチケットは完売し、あわせて約4万人を動員。とはいえ、さながらフェスのメインステージをひとり占めしたような大きい会場においても、変わらず“あなた”への1対1の愛と情熱を届ける、どこまでもSUPER BEAVERらしいステージをみせてくれた。2日間開催された同公演のうち、本稿では2日目、23日公演の模様をレポートする。
本公演の特徴は、なんといっても「ラクダランド」と名付けられたアミューズメントエリアが設けられたことだ。ライブ会場定番の物販コーナーのみならず、多くのキッチンカーや、メンバープロデュースのブースが立ち並び、さながらフェスのような盛り上がりをみせていた。後にMCでも明かされるのだが、同地でライブを行うアーティストで、今回のような催しを行ったのはSUPER BEAVERが初めてだという。
開演直前の会場には、少し和らいだ日差しのなか、爽やかな風が心地よく吹きわたる。そして開演時間を少し過ぎると、まずはステージ上に柳沢亮太(Gt.)、上杉研太(Ba.)、藤原”35才”広明(Dr.)の3人が登場。それぞれ楽器を手に取ると円をつくるように向かい合い、拳を合わせてから、イントロダクションとしてセッションがスタート。その余韻のなか、渋谷龍太(Vo.)がステージに姿を見せると、「→」から、「やろうぜ富士急!」との掛け声で「361°」と続きライブが幕を開けた。彼らがレーベル[NOiD]で新たなスタートを切ったアルバム『361°』と同じ始まりであることに、ここまでのバンドの歩み、それを踏まえてのこの公演への気合いを感じてしまう。ラストサビでは4人が歌う姿が前方モニターに4分割で映し出され、その楽しそうな姿に、こちらもつられて笑顔になった。
そのまま、定番曲「青い春」では渋谷がセンターステージへマイクスタンドごと移動し、客席を隅々まで見渡しながら歌う。そして「俺たち絶対、あなたより今日を楽しみにしてきた自信があるんですけど、そんな俺たちよりも楽しみだったって人どれだけいますか!?」と投げかけ観客のボルテージを上げていくと、「予感」へ。サビでは大きくジャンプしながら大きなコール&レスポンスが巻き起こり、会場はすっかりあたたまりきった様子だ。
ここで、「改めまして俺たちがレペゼン・ジャパニーズ・ポップ・ミュージック・フロム・トーキョー・ジャパン、SUPER BEAVERですよろしくお願いします!」との恒例の自己紹介を挟むと、「今日という一日が、ゴールでもなければ、通過点でもないことは重々承知してます。しかしながら俺たちにとっては、あなたと、ようやく来ることができた到達点です。だからこそ……やっと俺たちここまで来たって思うんだ。この“俺たち”の中には、あなたも入ってますよ。俺たちようやく、ここまで来たぜ!」と視界いっぱいよりさらに広い会場を見渡し、渋谷が叫ぶ。そして「4人でやったって面白くないんだよ。あなたがいなきゃ意味ないの。というわけで、愛すべきあなたのお手を拝借!」と「美しい日」がスタート。Aメロのシンガロングも、2万人ならではの音量で響いていく。曲終盤には、渋谷が「「美しい日」って曲です。今日みたいな日のことを言うんだと思います」と語りかけ、その凛とした声にはっとさせられる。続く「らしさ」は、ときに不定形な“あなた”を肯定する一曲。曲間には「あなた自身にでかい拍手!」との呼びかけで大きな拍手が巻き起こり、“自分”を讃えあうあたたかい時間が流れた。
そして、藤原のビートから「もっと楽しくしていいですか!?」と渋谷が期待感を煽ると、柳沢と上杉がセンターステージへ移動し、軽快なロックンロール・ナンバー「irony」が流れ出す。しかし途中、柳沢のギターの音が急に鳴らなくなり、そのままギターソロが始まってしまうというハプニングが。しかし、すかさず柳沢はコールを煽り、観客も瞬時にそれに応える。そのまま、調子が復活するとスルッとギターソロを弾き始め、元の演奏に自然に繋げてみせたのは、さすが“現場至上主義”を名乗るライブバンドの実力というところだろう。
キラーチューン「名前を呼ぶよ」でまだまだ熱気を高めたあとは、一転「自慢になりたい」でしっとりと聴き入らせる。客席に向ける、渋谷と藤原の笑顔、柳沢と上杉の真剣な表情が印象的だった。そのまま渋谷がセンターステージへゆっくりと歩いてくると、スペシャルゲストとして井上薫(Key.)を迎え、ふたりだけで「人として」が歌い上げられる。繊細な表現をみせる渋谷の歌声が、井上のピアノの音色とともに、どこまでも伸びていくようだった。
メインステージを見ると、後方にはストリングス隊=美央ストリングスの姿が。渋谷と、はけていた3人もメインステージに戻ると、ドクン、という心音に合わせて、4人の姿が順にモニターへ大きく抜かれていく。緊張感が高まるなか、流れ出したのは「グラデーション」だ。先の「人として」で登場した井上も加わり、全て生音という贅沢な編成で繰り出されるサウンドが凄まじい。ラストサビの前では、渋谷はうずくまって頭を地面につけ、叫ぶような、感情を吐き出すような歌唱をみせる。歌詞で、そしてこの曲が主題歌となった映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』で描かれる人と人との間にあるやりきれない部分、それでもなお希望を持ちたいという思いをあぶり出したようなパフォーマンスに、心が揺さぶられた。
そして、映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』主題歌である「儚くない」では、その直前にとつとつと語られた「嬉しいなって思わせてくれるあなたと、会えてよかったなと思えるあなたと、さあ、あと何回一緒に音楽ができるかねえ」「ずっと、この先もずっとと言いたいところだがしかし、俺たちには終わりがきます。何も特別なことではなく、始まったら終わるという。それだけ。バンドも、人と人との関係も、命もそう。だとしたら、あなたの会えて嬉しいなと思う人、あなたの、一緒にいられてよかったなあと思う人といられる時間の尊さを、あなたはわかってるとは思うが、それでもなお感じてしまったから、音楽にして、あなたに届けたいと思う」という、この曲のテーマにもなっている思いが突き刺さってくる。曲終わりには、どこからともなくヒグラシのセンチメンタルな鳴き声が聴こえ、それすらも演出のようにマッチしていた。
ここで、「いつでもどんな時でも、いちばん特別なものを作ろうと思ってやってます。今日も変わらず、そういう日です。特別をあなたに届けたいなと思って、お送りさせていただいてます。今日もありがとう」と感謝を述べると、「おしゃべりしよう!」とメンバー4人全員でのMCへ。リーダー上杉は、「まだ終わってないですけど、マジでヤバい2日間です。今日に至っては(客席の)後ろに富士山の頭がちょっと見えてるよ!」「総合的に、何か人に伝えたり届けることを、4人と、チームと、仲間と、一丸になってやれた2日間で、またバンドが大きくなった気もするし、とっても強くなれたような気がします」と嬉しそうに語る。柳沢は「イェー!」とまずは観客に声を出させたあと、「今年で結成19年目に入りましたが、この2日間は我々にとって、過去最大規模での単独公演となりました。ありがとうございます!」「4人ですごく考えているバンドだと思いますし、4人の気持ちをすごく尊重してくれるチームでやらせてもらってるなと思いますけど、だからこそ尚更4人だけじゃできないなっていうのを、再度実感させてもらった2日間だなと思います」「さっきもちょっと機材のトラブルもあったけど(笑)、別にいいやなんていうのは実は全く思ってないし、しっかりちょっと悔しいなと思います。でも、そういう時に助けてくれるあなたがいるって実感できました! 本当にどうもありがとう」と感謝。そして“かわい子ちゃん”と紹介された藤原は「やったぜーコニファー!」と咆哮。なぜかひとりだけ強めのピンスポットが当たったことを3人からいじられつつ(本人も「なんでー!?」と絶叫していた)、地声を交え感謝を全身で表していた。
「フロム・ライブハウス、19年目の新人SUPER BEAVER、こっからライブハウスにしようと思ってますが、ついてこられる人どんだけいます?」との合図でステージ背後にバンドの“ビーバー”ロゴが映し出されると、ここから怒涛のアッパーチューンを繰り出していく。すっかり日が落ちて暗くなってきたのと対比するように、狭いライブハウスを思い起こさせるようなギラギラとした照明が眩しい「秘密」、ステージ縦いっぱいに噴き上がるスモークや花火と、圧巻の特効に歓声が上がった「嬉しい涙」「ひたむき」と続けると、後ろのモニターいっぱいに星空が広がっていき、始まったのは「東京流星群」。実際に満天の星空が広がる……には少し早い時間であったが、ステージにはきらきらと、真っ白ではっきりとした光が輝き、客席を照らす。その美しさに、落ちサビでの〈東京流星群〉とのコールも、いつもより力が入っているように感じられた。
「ほんとにすごいよ! あの……すごいです。ありがとうございます」と興奮を隠さず話し始める渋谷。観客もそれに大歓声で応え、指笛の音まで聞こえてくる。「バンド単体で成しえることなんて、実はそんなにないんだよね」「やっぱり……他所は知らんが、俺たちにとっては、これが“音楽”だって思う。あなたがいてからこそ成り立つそれが、俺たちにとっては、音楽です。俺たちがバンドマンでいられる理由も、あなたですよ。本当に、今日改めて思うね。心の底から。どうもありがとうございます」と告げると、すかさず柳沢、上杉、藤原も「ありがとう!」と大きい声で感謝を告げる。そして「この先の約束を、もっともっと先の約束を、あなたとしたいです。だからこそ、『また絶対来てください』なんて、あなたに頭下げるようなダサい真似はしない。俺はライブ見に行く時、人に会いにいく時、『どうか来てください、お願いします』って言われて出向いたことなんて一度もないから。俺は勝手に会いたくなったから、今日あなたに会いに来た」「だとしたら、あなたにもそうであってほしい。そのためなら、まだまだやるよ俺たち」「ドキドキしてくれよ。ワクワクしてくれよ。かっこよかったって思ってくれよ。そう思ってくれるなら何だってやる。その先で、自分が、あなたがドキドキするために、勝手に来てくれ。俺たちは、その用意ができてる。自分で決めて、自分で来たら、最高の時間を約束するよ。俺はそういう関係でいたい。俺は頭を下げないし、あなたにも下げられたくない。俺たちは仲間だからな! そんなふうに思ってるよ。だからこれからも、“俺たち”でやってやろうぜ! “俺たち”で見せてやろうぜ! これからも、よろしくお願いします。」と、もはや喧嘩腰にも聞こえるほどの熱のこもった口調で語りかけると、「あなたがいてこそSUPER BEAVER。19年目の新人SUPER BEAVERから、あなたに一曲。〈愛してる〉!」「過去最大の「アイラヴユー」!」と、そのまま「アイラヴユー」へなだれ込む。曲前に、「笑ってくれるなら、何だってやってやるよ!」そして曲間「あなた、めっちゃSUPER BEAVERに想われてますよ!」と、渋谷が力強く言い切った姿が今も忘れられない。そして、その“愛”に応えるように、割れんばかりの声量で〈愛してる〉と歌う観客。とてつもなく大きな“アイラヴユー”の応酬が、確かにそこにあった。
〈全てを伏線に 信じるからこそのロマンだ〉〈親愛なるあなたへ 心を込めて 頑張れ〉と、どんな状態の“あなた”にもまっすぐなエールを贈る応援歌「ロマン」のあとは、「バンドマンができることは……あなたしか歩めないその明日、目の前の道、自分しか歩けないから、気をつけて行ってこいって言いたいんだよ」「自信持って、胸張って行ってこいよ!」と改めて曲に込めた思いを口にし、本編最後の曲として「最前線」を繰り出す。いつの間にかすっかり暗くなった空に、ステージと、そこに立つ4人の姿がどこまでも輝いて見えた。
アンコールを待っていると、モニターには突然1日目公演のビハインドシーンが映し出され、その後、自身6年ぶりの日本武道館公演を3DAYS開催することが明らかになる。会場には大歓声が起き、興奮冷めやらないなか、4人が再びステージに登場。渋谷が「簡潔に。武道館3DAYS、よろしくお願いします」と告げると、再び大きな拍手が起こった。客席を優しく見つめ、「グッときました」とオーディエンスを讃えると、「これからもかっこよくいますんで、どうかよろしくお願いします」と一礼。そして「俺はあなたの人生の最前線で、また音楽したいです。今日はありがとうございました!」と、マイクを通さない地声、それでもしっかり会場全体に響く声で、力強く叫んでみせる。
「ありがとう」では、最初のシンバルの音からすでに4人の熱量の高さが伝わってくる。最後、〈「あなたに会えてよかった」なんて/どうでもいいほど 当たり前でさ/だけどね 言わなきゃね 死んじゃうから僕らは/ありがとね 愛してる/ありがとう〉と、一言ずつを噛み締めるようにゆっくり歌われたそのフレーズには、彼らからの深い感謝の気持ちが純度100%で込められているように感じた。そして最後は、「愛する」をとことん嬉しそうな顔で奏でる4人。そして「めっちゃ愛してるよ!」と、何度言っても言いきれない、といった様子で客席を見渡しながら伝え、ライブの幕を下ろした。
メンバー全員ステージからはけ、眩しかったステージのライトも落ちると、夜空には大きな打ち上げ花火が。その美しさに、感嘆の声があちこちから聞こえてくる。私はその花火を見上げながら、約2時間半の公演で終始届けられた4人からの“愛”を思い返し、しばらくぼうっと噛み締めていた。SUPER BEAVERは、一貫して“人”を心から愛してくれるバンドだ。そして、ひねくれも下心も小細工もなくその愛を伝えてくれて、そこに嫌味がない、稀有な存在だと思う。それは彼らの、決して順風満帆ではない19年の歩みがあってこそなのだろう。この日贈られた、過去最大の“アイラヴユー”のメッセージに包まれて、改めてそれに気づかされた。
Text by Maiko Murata
Photo by 青木カズロー、浜野カズシ
◎公演情報
【都会のラクダ SP ~ 真夏のフジQ、ラクダにっぽんいち ~】
2023年7月23日(日) 山梨・富士急ハイランド コニファーフォレスト
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