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2月に東京・有明アリーナから始まった【BUMP OF CHICKEN TOUR 2023 be there】は、各地のアリーナを巡った全国ツアー。約3か月間で計20公演が行われ、その千秋楽が5月28日、埼玉・さいたまスーパーアリーナにて開催された。
定刻を過ぎた頃、会場が暗転、すぐさま「アカシア」の始まりを告げるグロッケンの音色が鳴り出すと、客席からわっと歓声があがる。この日はメインステージとアリーナ中央に設置されたサブステージの二つが用意され、それぞれの舞台をメンバーが行き来しながらパフォーマンスを繰り広げていくのだが、冒頭の登場シーンはさながらランウェイのように伸びる花道をメンバーが一人ずつ歩いていく憎い演出だ。
会場を埋め尽くす大勢のオーディエンスは入場時に配られたPIXMOBを装着していて、メンバーはまるで満天の星空に浮かんでいるよう。その感動的な景色に包まれながら再会の祝福に相応しい「アカシア」を演奏するなか、藤原基央(Vo/Gt)は「声出していいんだぜ。だから聞かせてくれよ埼玉。君に会えた証拠をさ」と語りかける。今回のツアーはBUMP OF CHICKENにとって、ようやく迎えた“声出し解禁”のライブ。「アカシア」のコーラスや掛け合い部分にもオーディエンスの声が重なり、こうした熱量の応酬がその日限りの空間を作り出すライブという場の尊さ、愛おしさをあらためて確認した冒頭の一幕でもあった。
客席がイエローに色づくのを合図に披露されたのは「ダンデライオン」。歌声の掛け合いもバッチリ決まった「天体観測」では、PIXMOBならではの流動的な彩りの変化も美しく、特効テープも打ち出されるなど序盤から助走なし、瞬間沸騰に導くプロダクションだ。そして何より、そうした演出に対する感動や歓喜のリアクションとして、オーディエンスの声が聞こえることも含めて、本来あるべき彼らのライブを本当に久しぶりに体験できたことがとにかくメモラブルだったのだ。
一方で、「黙って聴くのが自分なりの鑑賞スタイル」「そういうお客さんもいるかもしれない。全然いいぜ。君の好きなように聴いてほしい」「俺たちが曲を作って、それを世の中に出して、君が受け止めてくれた。それをきっかけにして今日、ここに来てくれた。そんで俺たちはこうやって会えた。これが全部です」とそれぞれのライブの楽しみ方を尊重する藤原の配慮も素晴らしい。雲間に差す陽光のようにあたたかなサウンドを鳴らす「なないろ」のパフォーマンスを経て、増川弘明(Gt)の直情的なギタープレイが「透明飛行船」のハイライトを作り出す。
昨年公開された劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』主題歌として提供された「クロノスタシス」以降は、早くもアリーナに充満した興奮を優しくチルしていくようなセクションへ。「Small world」「魔法の料理 ~君から君へ~」といったミドルテンポの楽曲を繊細なアンサンブルで紡いでいく。こうした楽曲で際立つのが、孤独に寄り添う言葉を“一人ひとりに語りかける”ように歌う藤原の真骨頂ともいえるボーカルの説得力であり、サブステージで360度をファンに囲まれながら歌われた「プレゼント」は、それがBUMP OF CHICKENの原点の表現であることを思い出させる一曲でもあった。
そのままサブステージを藤原が所狭しと歩き回りながら歌った「新世界」では<ベイビーアイラブユーだぜ>の掛け合いで再びオーディエンスの合唱を取り戻し、ほぼシームレスになだれ込んだ「SOUVENIR」は升秀夫(Dr.)の軽快なドラム、その隙間でスキップするようにフレーズを差し込む直井由文(Ba)のベースも聴いていて楽しい。シンプルなアンサンブルで奏でる「Gravity」ではノスタルジックな侘び寂びが滲む。
今年放送されたNHK『BUMP OF CHICKEN 18祭(フェス)』のテーマソングとして書き下ろされた「窓の中から」はもちろんオーディエンスも大合唱。ツアー真っ最中の4月にリリースされたこの曲は途中からセットリストに加わったナンバーであり、つまりはツアーを通してオーディエンスと一緒に育ててきた作品でもある。そういう意味でも今回のツアーを最も象徴する一曲であり、演奏後の藤原も「この曲書いてよかった」と嬉しそうにしていた。
いよいよクライマックスに向かって疾走していく「月虹」から、バンドとオーディエンスがともに歌い、ともに作り出した「HAPPY」の大団円へ。それでも「まだまだ腹ペコだよ。全部ちょうだい。全部置いていくから」と藤原が語りかければ、ダメ押しのアンセム「ray」を経て、エンディングの「supernova」をパフォーマンス。もちろんファンはアンコールを求め、メンバーが去った後も「supernova」のコーラスパートがいつまでも歌われ続けるなか、メンバーが再びオンステージ。4thアルバム『ユグドラシル』から「embrace」、そして1stアルバム『FLAME VEIN』から「ガラスのブルース」の2曲を演奏し、今度こそ終わりかと思いきや、ステージに一人残った藤原がファンへの想いを語ったのち、「時間大丈夫ならもう一曲付き合ってもらえる?」と「宇宙飛行士への手紙」を弾き語り始める。増川、直井、升も再びステージに戻り、この日最後のアンサンブルを奏で、3時間弱にも及んだショーを締めくくった。
Photo:太田好治
◎公演情報
【BUMP OF CHICKEN TOUR 2023 be there】最終公演
2023年5月28日(日)
埼玉・さいたまスーパーアリーナ
<セットリスト>
01. アカシア
02. ダンデライオン
03. 天体観測
04. なないろ
05. 透明飛行船
06. クロノスタシス
07. Small world
08. 魔法の料理 ~君から君へ~
09. プレゼント
10. 新世界
11. SOUVENIR
12. Gravity
13. 窓の中から
14. 月虹
15. HAPPY
16. ray
17. supernova
En.
18. embrace
19. ガラスのブルース
20. 宇宙飛行士への手紙
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