<ライブレポート>シリーズ3年目を迎えたスヌーピーのオーケストラコンサート 「世界に平和で温かなクリスマスが訪れますように」城田優の圧倒的な歌唱で魅了

2022年12月29日 / 12:00

 世界中で愛されている「PEANUTS」にまつわる名曲やクリスマスソングをフルオーケストラとジャズピアノトリオとの競演で贅沢に楽しめる音楽会【SNOOPY Premium Symphonic Christmas Concert 2022】が12月3日の愛知県芸術劇場大ホールを皮切りに、同月21日に、東京文化会館大ホール、24日に兵庫県芸術文化センターKOBELCO大ホールで開催された。フルオーケストラとピアノトリオら総勢80名の奏者が作り出した壮大な演奏に合わせ、ミュージカルなどで活躍する城田優がゲストボーカルとして、圧倒的な歌唱力で魅了した東京公演の様子をレポートする。

 同公演は、アメリカのマンガ家、チャールズ・モンロー・シュルツが考案した「PEANUTS」が2020年に生誕70年を迎えたことを記念し、【SNOOPY Premium Symphonic Christmas Concert】として初開催。今年3回目を迎えた。

 開演時刻の午後6時半。下手から、東京フィルハーモニー交響楽団、ピアニストで本公演の音楽監修を務める宮本貴奈が登場すると、待っていた観客が大きな拍手で出迎えた。上手からは、宮本とトリオを務めるドラムのデニス・フレーゼ、ウッドベースのパット・グリンも姿を見せた。制服姿の横浜少年少女合唱団の16人は、ステージ前方にスタンバイ。最後にマエストロの栗田博文が指揮台に上がると、奏者たちの視線がタクトに注がれた。

 ホリデー・シーズンの到来を喜ぶ「Christmas Time Is Here」で幕開けした音楽会。オーケストラの背後に設置されたスクリーンには、バイオリンやトランペットを演奏するウッドストックたちの様子が映し出されていく。映像は本公演のために制作された特別なもの。オーケストラとピアノトリオの演奏に合わせ、横浜少年少女合唱団が澄んだ歌声を響かせた。

 ジャズの名曲「Skating」では、耳をなびかせて氷の上を滑っていくスヌーピーや、片足で華麗なスケーティングを見せるルーシーの映像を公開。弾むドラムや、トランペットの音がわき立つ思いを表現していた。華やかな金管楽器の演奏で始まったのは、ドイツの作曲家・メンデルスゾーン作曲によるクリスマスキャロル「Hark! the Herald Angels Sing」。赤と緑の衣装をまとったピーナッツのメンバーが、スヌーピーの犬小屋の前に集まり、声を合わせる映像に、観客を癒すような合唱団の歌声が重なる。躍動感あふれる「My Little Drum」ではピアノトリオの演奏に合わせ、「♪トゥルル、ラッパッパ」と身体を揺らしながら歌う合唱団に誘われ、観客も肩を動かしリズムを取っていた。オーケストラとピアノトリオが掛け合う「Benjamin」では、軽やかなフルートの音が聴き手の胸を弾ませていた。

 第1部の中盤には、この日の主役・スヌーピーが登場。開催3年目にして初めて“親友”のチャーリー・ブラウンも来場した。トークコーナーでは、アメリカで18年間暮らしていたピアノの宮本が、ピーナッツへの愛情を吐露。宮本は「演奏した楽曲が収録されている『チャーリー・ブラウンのクリスマス』のサウンドトラックは、アメリカの家庭には1家に1枚ある定番のアルバム。私も大好きで、クリスマス・シーズンに欠かせないアルバム。毎日聴いていた大好きなアルバムのコンサートでピアノを弾くことができることがとてもうれしいです。私は(叶えたい目標を記す)“夢ノート”に、フルオーケストラと、ジャズトリオ、そして合唱団とコンサートがしたいと書いていました。その思いを、叶えることができてとてもうれしい」と笑顔を見せていた。

 ステージは、チャーリー・ブラウンが転校してきた赤毛の女の子に初めて恋をした思いを表現した「You Are In Love, Charlie Brown」から、宮本が指を鳴らして始まった「Charlie Brown Theme」へと続いていく。ドラムのフレーゼ、ベースのグリンと互いの出方を伺いながら、音で会話をする様子に、見詰めていたオーケストラのメンバーからも拍手が送られていた。

 スヌーピーが自分の犬小屋を豪華に飾り付けることをチャーリー・ブラウンが嘆く「My Own Dog, Gone Commercial!」は、惜しくもサウンドトラック盤には収録されていないが、アップテンポで華やかなスウィングジャズの秀逸なナンバー。貴重な生演奏の中には、ドラムのフレーズの見せ場もあり 会場は大いに盛り上がっていた。

 第1部のラストは、トリオが見事なグルーブを生み出した「Linus and Lucy」で締めくくり。背後の映像では、ウッドストックたちが結成したオーケストラでトランペットやバイオリンを楽しそうに奏でる様子が映し出された。躍動するPEANUTSのメンバーの映像と、舞台上で楽器を奏でる奏者の動きがリンクする。演奏を聴いてうれしそうにジャンプするチャーリー ・ブラウンのように、マエストロが飛び跳ねる場面もあった。

 20分間の休憩を挟み始まった第2部は、チャイコフスキーの歌劇『エフゲニー・オネーギン』より「ポロネーズ」 がオーケストラのみの演奏で披露された。トランペットが高らかに響き渡る華やかな曲中には、技巧を凝らしたバイオリンの独奏もあり、クラシックファンを酔わせていた。

 続く「The Christmas Song」では、3年連続でゲストボーカルを務める城田がステージの中央へ。黒いジャケットにワインレッドのリボンタイを結んだ城田が、オーケストラとトリオが織りなす音の世界に溶け込んでいく。舞台映えするスタイルで一気に視線をくぎ付けに。パワフルさと繊細さを織り交ぜた歌声は、唯一無二のもの。スッと右手を前に伸ばした最後は、「♪Merry Christmas To You」と寄り添うような歌声で会場を包み込んだ。

 MCでは同公演が「思いやり」と「多様性」をテーマにしていると司会から説明を受けた城田。思いやりについて聞かれた城田は「支えてくれるファンやお世話になっている人には感謝しかない。困難なことがあったとき(支えてくれる人の声が)乗り越える糧になっています。僕の名前は『優しい』と書いて『ゆう』と読みます。『優って優しいよね』と言ってもらえることもありますが、僕から優しさを取ったら何も残らない(笑)。僕が作った言葉で、自己中じゃなくて『多己中(たこちゅう)』というのがあって、これが僕の人生のモットーです」と思いを込めていた。

 3年連続で本公演に出演した城田。今年は2011年に発生した東日本大震災後に書き下ろした自作曲「Love & Peace」を宮本のピアノとオーケストラの演奏に合わせて熱唱した。オーケストラと城田の声が一体化した芸術的なパフォーマンスで、聴き手を圧倒した。

 同曲は震災後、当時小学生だった妹が恐怖から眠れなくなってしまった時期に、「何かできることがないか」と考え制作した作品。城田は「他人や自分を受け入れることができたら、難しいと言われている世界平和だって実現できるかも」と熱い思いを打ち明けた。

 「♪愛の力を信じたい」と祈りを込めた城田。続くジョン・レノンの「Happy Christmas (War Is Over)」では、カジュアルな装いに着替えた合唱団の子どもたちを招き入れ、「みんな楽しんで行きましょう」と声をかけた。横に並んだ女の子に「緊張してる?」とたずねると、「大丈夫です」と元気な返事に、「心強いね」とうれしそう。「2023年、平和な世界が訪れますように。願いを込めて。みなさんも心の中で歌って」という城田の言葉に、客席は手を振って応え、ひとつになっていた。

 「僕は歌の力を信じています。子どもたちの声は癒しの効果がある。(合唱団が)楽しんで歌ってくれることが、おじさんからしたら1番うれしこと」と愛おしそうに16人に視線を向けた城田。大役を務めた合唱団を見送ると、ローラ役を務めたミュージカル『キンキーブーツ』で歌った「Not My Father’s Son~息子じゃないの~」について語り始めた。

 「この曲には、自分をそして他人を受け入れるというメッセージが込められています。このメッセージのお陰で、『キンキーブーツ』という作品を無事に乗り越えることができました。僕自身もハーフであることなど、疎外感や劣等感を感じた時期がありました。でもそのままで良いんだよということを伝えたい」と語ると、過去を回想するように歌い始めた。

 人目を気にして弱々しくいた過去から抜け出し、自分の気持ちを偽らず生きることができる場所で、唯一無二の輝きを放ち始める。闇の中から希望を見いだし、立ち上がっていく。その力強さを、ひとつひとつの言葉に込めて歌い上げる。秘めた覚悟、決意など、さまざまな感情が込められた豊かな歌声に、大きな拍手が送られていた。

 圧巻のパフォーマンスの後には、再びスヌーピーとチャーリー・ブラウンが舞台にお目見え。城田に「すごい特技があるんだよね」と聞かれたスヌーピーは、エアーバイオリンで盛り上げると、“見えない”バイオリンを、チャーリー・ブラウンに預け、城田に「踊って」とお願い。「えっ。本当に初耳なんですけど」と目を丸くした城田だったが、「指揮をする!」と張り切るスヌーピーに「やってみよう!」とチャレンジすることに。

 宮本が演奏する「ジングル・ベル」に合わせて、スヌーピーは指揮、チャーリー・ブラウンはエアーバイオリンの演奏、城田は右に左にステップを踏んでみせた。曲の最後をしっかりと締め、満足そうなスヌーピー。和やかな空気で満ちた会場を見つめた城田は「フルオーケストラがいるコンサートで、こんなアットホームなのは激レアですよね。でもすごい楽しい」と感謝。客席にサンタ・クロースの衣装を着たスヌーピーのぬいぐるみを持った人を見つけると、「あ。すごい。いっぱいスヌーピーがいる!」と驚いていた。

 ハートがいっぱいの空間で、チャーリーとスヌーピーがハグしているほほえましい映像の中で、城田が歌唱した「Just Like Me」。本編最後の「Christmas Is Coming(Reprise)」ではバイオリン、チェロ、フルート、トロンボーンのソロ演奏がフィーチャーされ、まさにジャズピアノトリオとフルオーケストラとの熱い競演となった。

 アンコールでは、合唱団と城田が「Christmas Time Is Here(Reprise)」で声を合わせた。冬のしんとした空気を思わせる歌声は、会場を雪原に一変させた。歌い終えた城田は「本当に最高です。客席と舞台が一体になって、感動的な時間を過ごすことができました」と胸に手を当て、頭を下げた。続けて「世界に平和で温かなクリスマスが訪れますように」と、出演者全員で「メリークリスマス!&ハッピーニューイヤー!!」と声を挙げた。

 約2時間半のコンサートの最後は、オーケストラとトリオ、合唱団で構成された「We Wish You A Merry Christmas」で締めくくり。宮本、グリンらも合唱団と一緒に歌い幸せな時間を共有していた。

 高揚した会場に、チャーリー・ブラウンとスヌーピーと手を取り合って城田が登場。下手から宮本、チャーリー・ブラウン、城田、栗田、スヌーピー、グリン、フレーゼが横並びになると、客席にあいさつをした。スヌーピーと共に過ごした大切な時間を愛おしむように、拍手が届けられていた。

Text: 翡翠
Photo: 石阪大輔

© 2022 Peanuts Worldwide LLC

◎公演情報 ※全公演終演
SNOOPY Premium Symphonic Christmas Concert 2022
2022年12月3日(土) OPEN 16:00 / START 17:00 愛知県芸術劇場大ホール
2022年12月21日(水) OPEN 17:30 / START 18:30 東京文化会館大ホール
2022年12月24日(土) OPEN 16:00 / START 17:00 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール

ゲストボーカル:城田優
指揮:栗田博文
ピアノ・音楽監修:宮本貴奈
ドラムス:ジーン・ジャクソン(愛知)、デニス・フレーゼ(東京・兵庫)
ベース:パット・グリン
管弦楽/合唱団:
【愛知】セントラル愛知交響楽団/名古屋少年少女合唱団
【東京】東京フィルハーモニー交響楽団/横浜少年少女合唱団
【兵庫】大阪交響楽団/神戸少年少女合唱団

◎公演オリジナルグッズが、オンラインショップ【Shop.Merchan.jp(ショップ・マーチャンドットジェイピー)】にて販売中
https://merchan.jp/snoopy/sp_index.html


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