心沸き立つカーニヴァルの喧騒へ。ダーティ・ダズン・ブラス・バンドのニューオリンズ・ミュージックにノックアウトされる早春の宵

2015年3月5日 / 10:13

 「Are You Ready To Daaaaaaaaaaaaaaaaaance?????????????????????????」

 ガッシリした身体に巻きついたスーザフォンがどっしりとしたビートを刻み続ける。そのビートの上でさまざまな管楽器やドラムス、そしてギターがニューオリンズ独特のファンキーなシンコペイションを奏でる。何度かのメンバー・チェンジを経験しながらも自分たちの音楽の核は頑固なほど変えない。

 もはやニューオリンズを代表するブラス・バンドになったダーティ・ダズン・ブラス・バンド。結成は77年、レコード・デビューは84年だから、すでに30年以上も活動している“老舗”バンドとして、今もニューオリンズの音楽シーンのど真ん中で活躍している。彼らの顔の1つはマルディグラなどを筆頭に、ニューオリンズで行われる数々のカーニヴァルを彩り、街を練り歩くブラス・バンドとしての存在。

 そして、もう1つは、ニューオリンズがあるルイジアナ州を中心としたアメリカ南部の窮状を世界に伝える“レベル・ソング・バンド”としての顔がある。05年にルイジアナを襲ったハリケーン・カトリーナによって街のダウンタウンが水没してしまったあとも、当時の大統領ジョージ・ウォーカー・ブッシュは何の救済策も打ち出さず、街は荒廃してしまった。そんな状況を歌い、演奏した06年の作品“What’s Goin’ On”は、同名タイトルのマーヴィン・ゲイの曲を核にしながら、カトリーナの被害から1周年の日にリリース。ニューオリンズの窮状を全世界に力強く訴えた。彼らは決して陽気なだけのパーティ・バンドではないのだ。

 現在は、単なるブラス・バンドではなくドラムスやギターのメンバーが入ったりと、ブラス・バンドを核にしながらも変則的な編成で、ニューオリンズ特有のリズム=シンコペイションを活かしながら、より幅広いファンク・ミュージックを創作している。しかし、彼らの拠り所は常にニューオリンズであり、ブラス・バンド・スタイルの演奏なのだ。近年はジャム・バンドからも羨望の眼差しで見られるようになり、それぞれのメンバーが“他流試合”を行っていることもしばしば。伝統的なブラス・バンドの体裁を残しながらもファンクやソウル、そしてラップなどの音楽を取り込み、時代と共に進化しているのだ。

 さて、今宵のライヴは、会場全体がニューオリンズのお祭りのような空気に染め上げられて、カーニヴァルの喧騒がステージの上で再現された。途中からは日本人のアルトサックス、トロンボーン、スネアのゲストが加わって、「聖者が街にやってくる」を演奏するころには総勢10人の大所帯に。管楽器と打楽器の音が渦を巻く中、僕はカーニヴァルの真っ只中に放り込まれたような錯覚に陥り、心が沸き立って最高にエキサイトした。地元ニューオリンズでのライヴも含めて、何度も観てきたバンドだが、この本能に直接訴えかけてくるぶっといグルーヴは、どうしても抗し難い迫力と楽しさに満ちている。だから、頭ではわかっているのに、それでも身体が乗せられてしまうグルーヴの快楽を存分に楽しむのが、彼らの音楽を堪能する正しい姿勢なのだと、今回も強烈に実感した。さあ、椅子に座っていないで、全身でニューオリンズのグルーヴとホーンの音圧を感じよう。それが最高の楽しみ方。みんな、ストンプとハンド・クラッピングをお忘れなく!

 ラッキーなことに東京公演は5日にも、大阪公演は6日にある。さぁ、みんなでカーニヴァルに繰り出そう!

◎ダーティー・ダズン・ブラス・バンド公演情報
ビルボードライブ東京
2015年3月4日(水)~3月5日(木)
ビルボードライブ大阪
2015年3月6日(金)
More Info:http://billboard-live.com

Photo: Yuma Totsuka

Text:安斎明定(あんざい・あきさだ)編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。やっと春らしくなってきた最近、たまには『モエ・エ・シャンドン』などのシャンパンとフルーツで、午後のひとときをゆったりとくつろいでみては? 街路樹に咲く花を眺めながら。


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