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グリフ・リース来日公演 SFAのフロントマンが見せたユーモアと稀有な知性

 スーパー・ファーリー・アニマルズのグリフ・リースが3月2日、東京・渋谷クアトロで来日公演を行った。

 2000年のアルバム『ムーング』の15周年を記念して、スーパー・ファーリー・アニマルズの再始動も噂される、絶好のタイミングとなった今回の来日公演。昨年リリースした4thソロ・アルバム『アメリカン・インテリア』を引っさげてのステージとなった。

 ライブは『アメリカン・インテリア』のテーマでもあったウェールズ人冒険家ジョン・エヴァンスの物語を数十枚のスライドと映像を使いながら、グリフの軽妙なトークを交えて説明する、一種の紙芝居のような形式で、その合間合間にグリフ本人の歌唱によってアルバムの収録曲が演奏されるというスタイル。YouTubeなどでも確認できる同作のツアーをそのまま踏襲したものだ。

 冒頭、グリフ本人も「拍手」「もっと!」と日本語で書かれたパネルを持ってステージに登場。傍らには彼の盟友でもあるイラストレーター、ピート・ファウラーが手がけたジョン・エヴァンスの人形(ロボット)も設置され、手作り感のあるショーであると同時に、ちょっとした学術発表会でもあるような、ユニークな舞台となった。

 『アメリカン・インテリア』の物語を知らない人のために簡単に説明すると、ジョン・エヴァンスは、18世紀当時、ウェールズ語を話すと噂されていたマンダン族というインディアンの部族に会って噂の真偽を確かめるために、ウェールズからアメリカに単身で渡った人物。『アメリカン・インテリア』は、グリフ自らが実際にアメリカに赴き、エヴァンスの足跡を追いながら実地での調査を重ね、エヴァンスの体験した物語に想像力を巡らせて作った作品で、音楽以外にもアプリや本、ドキュメンタリー映画に及ぶマルチメディア作品でもある。

 ライブでは、エヴァンスの足取りを説明しつつ、その進行に合わせてアルバムの収録曲が演奏される。(例えば、エヴァンスの渡米をそそのかした人物、ヨロ・モルガヌグのテーマソングである「Iolo」はアルバムでは後半に収録されていたが、ライブでは序盤で披露された)。演奏自体は、基本的にグリフのアコースティック・ギターの弾き語りだが、曲によってはレコード・プレイヤーと7インチ・レコードでドラムのビートだけ再生しつつ、それに合わせてギターを演奏するという創意あふれるプレイを披露。特に、イギリスの伝統的な唱歌をサンプリングした「Allweddellau Allweddol」では、細かくテンポの変わるレコードに合わせてグリフが演奏するスリリングなプレイが印象的だった。

 もちろん、グリフ本人の歌唱も素晴らしく、コミカルな側面も強いステージが、何よりもエモーショナルな物語を伝えるものなのだ、と思わせる説得力がその歌にはあった。紙芝居とグリフの語り、そして、その所々に挟まれるちょっとしたネタや観客とのやり取りも作用し、エヴァンスの冒険譚の大団円として「100 Unread Messages」が本編ラストに演奏される頃には、小演劇の舞台を見たときのような心地の良い達成感が会場を満たしていた。

 『アメリカン・インテリア』パートの後、一度ステージの裾にはけたグリフはアンコールに応える形で再びステージに登場すると、ここからは2ndソロ・アルバム『キャンディライオン』や3rdソロ・アルバム『ホテル・シャンプー』などの楽曲を披露。曲数的にも、アンコールというより第1部に続く第2部という感じで、軽妙ながら濃密な本編のアフターアワーのような演奏で観客を楽しませた。最後はグリフ自ら「THANK YOU」「APE SHIT」「THE END」などのパネルを掲げ、観客への感謝を示してステージを終えた。どこまでもユニークでユーモアと知性に溢れた、グリフ・リースというアーティストの稀有を改めて感じる素晴らしいステージだった。

取材・文:佐藤優太

撮影:古溪一道(コケイ カズミチ)

◎公演情報
2015年3月2日(月)東京・渋谷クラブクアトロ
info:http://www.smash-jpn.com

◎リリース情報
『アメリカン・インテリア』
HSU-10005 2,095円(tax out.)

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