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コンポーザー・shinoとボーカル・萌からなる音楽ユニット・esoragotoの【esoragoto 1st One-Man Live “Apollo”】が、5月5日にSpotify O-nestで開催された。
何度すれ違っただろうか。噛み合わなかったパズルのピースが、ようやくはまり始める感覚があった。昨日と今日で暮らしが激変するほどの大きな幸せではない。むしろ、ごくささやかなもの。それゆえに、喜びは小さくも深く沁みて、幸せを噛みしめることができる。そういう至福のひとときが、今回のステージにはあった。
2025年11月にオンラインライブ【esoragoto 1st Online Live “月の裏側で会いましょう”】を通っているものの、観客と直接顔を合わせるライブは、この日が初めてとなる。「最後まで楽しんでいってください」と声を投げた萌から放たれたのは、ボーカルに萌を迎え新体制となったesoragotoの名刺ともいえる「ツキカゲ」だ。言いたいことはあるのに、言えない。そんなもどかしさを〈じゃあね〉という一言でシャットダウンしてしまう。その天邪鬼な背中をポップなサウンドと手拍子が押した。
初めてのライブとは到底思えない統一感のあるレスポンスがフロアを満たしていき、その熱に飲み込まれた「独りで生きる苦しみなんて」。ギター、ベース、ドラム、キーボード・マニピュレーターの生バンド編成で、ライブハウスだからこその粗削りな良さもまた光っている。
esoragotoの楽曲には、どうしようもない気持ちが歌われていることが多い。3分で恋に落ちてすぐに恋が終わる女性の徒労感を綴った「インスタント彼女」もそうだ。これらの曲を双方向のライブという場で浴びると、“どうにもならない感情たち”が、バンドサウンドや観客の声によって確かに支えられているのを、肌で感じ取ることができた。
恋の終わりをなぞった「月が綺麗な夜でした」は、別のシンガーがボーカルを務めていた2023年10月に発表されたesoragotoのデビュー曲だ。当初から彼らの世界はバラードを軸に展開されている。この日のセットリストにも、そのトーンがよく表れていた。バラードを歌い上げる萌の声に見え隠れする優しさが、曲の切なさに体温を添える。「Room」では、どこか報われない想いが、天井に向かって柔らかく昇華されていった。
どうしてみんなと同じように生きられない?と自問自答する「メグループ」も、1stフルアルバム『Apollo』に収録されたばかりの新曲にもかかわらず、観客の団結感といい、声の揃い方といい、本当に息がぴったりだ。想定外だったのは、空気を一新する曲として終盤に置かれるとばかり踏んでいた「銀河風」が、中盤で降ってきたこと。この永遠を刻んだ歌詞が、後にshinoの口から零れた言葉と結ばれることになるとは、この時はまだ想像もつかなかった。
高音域のボーカルが澄み渡る「ミア」、アウトロから波音がそのまま流れ込んだ「ライラ」と、前のボーカルが担当していた2曲のピアノバラードが続く。さらに、shinoがesoragotoとして活動を始める以前、2018年にボカロ曲として発表していた洒脱なダンス・チューン「匿名希望」まで披露。背景や時間軸の異なる楽曲たちを、今のesoragotoとして再構築していく萌には、ボーカリストとしてのしなやかさが試されているように思えた。合いの手がフロアに溢れた「SHAKE IT!!」から本編に終止符を打ったのは、コール&レスポンスの起きた「忘れてやる!」だった。
MCでshinoは、esoragotoにはすでに知られている二人のボーカル以前にも、もう一人ボーカルがいたことを明かした。そのメンバーはリリース直前で脱退。その後、新たなボーカルともスケジュール面で折り合いがつかず、今の萌へと繋がっていったという。紆余曲折の続いた活動の裏側を、率直な言葉で語る。
「本当は2024年にesoragotoを閉じようと思っていたんです。でも、最後に1曲だけ作っていた曲があったから、それをどうしても世に出したくて。萌さんに声をかけてリリースしたのが『ツキカゲ』でした」。
「ツキカゲ」は日本のみならず韓国のリスナーにも届き、成功経験としてこの日のライブへと繋がった。そこにshinoは、こう続けた。「何回も諦めかけた瞬間はあったんですけど、今日みんなの顔と、横で頑張っている萌さんを見ていたら、本当に続けてよかったなと思いました。esoragotoとしての夢が、一つ叶った瞬間です」。
今のesoragotoが歌うことに意味がある曲とshinoが前置きし、テクニカルなギターフレーズが飛び出した「ごめんねシンデレラ」からアンコール。<魔法じゃ得られない/宝物が欲しいんだ>という歌詞が、当日のライブの光景と重なる。何度も道を見失いかけた。それでも歩みだけは止めなかった。その小さな勇気の積み重ねが、この日の夢の宇宙空間へと辿り着いた。お立ち台に上がったshinoの万感の思いが迫った表情、それから、その隣に居る、どこか天然っぽさが覗きつつもマイクの前に立つとユニットの芯になる今のesoragotoに欠かせない萌。このハートウォームな相関関係に胸を打たれた。
ここで初めて、esoragotoが表現してきたどうしようもない感情たちは、これまでのesoragotoそのものだったのだと気づかされた。一方で、1stフルアルバム『Apollo』の新曲群の流れにある「アポロ」は、別の角度から新たな一歩を踏み出した“今”のesoragotoそのものだった。空中に散らばっていたかつてのesoragotoが、ラストにかけて軌道として結ばれていく。彼らの目線は言わずもがな、その先にあった。それが、この日のなによりの収穫だった。
Text by 小町碧音
Photo by 金子優次朗
◎公演情報
【esoragoto 1st One-Man Live “Apollo”】
2026年5月5日(日)
東京・Spotify O-nest
<セットリスト>
1. ツキカゲ
2. 独りで生きる苦しみなんて
3. インスタント彼女
4. 月が綺麗な夜でした
5. Room
6. メグループ
7. 銀河風
8. ミア
9. ライラ
10. 匿名希望
11. ペット
12. SHAKE IT!!
13. 忘れてやる!
EN.
14. ごめんねシンデレラ
15. アポロ
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