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ホイットニー・スミスは、コロナ禍後のツアーコストをようやく把握できるようになってきたと感じていた矢先、急騰する燃料費がすべてを再び混乱に陥れた。
スミスは総合アーティスト・マネジメント会社Alternate Sideのツアー担当ディレクターだ。彼女は「コストの見通しがまた正確に立てられるようになってきたと感じ始めていたところでした。そこへ燃料費の高騰が来て、控えめに言って、多くのことが再び不確実な領域に投げ込まれました」と語る。
現地時間2月28日に米国とイスラエルがイランへの爆撃を開始し、イラン政府が世界の石油流通の約20%を担うホルムズ海峡を閉鎖して以降、米エネルギー情報局のデータによると、国際原油価格の指標となるブレント原油は1バレルあたり70ドル前後から100ドル超へと急騰した。その結果、ガソリンおよびツアーの輸送手段となるバスやトラックに不可欠なディーゼル燃料を含む燃料費は、米国内で約50%上昇した。こうした異例の価格上昇を受け、ツアー輸送会社は膨らむコストに対応すべく高額のサーチャージを課さざるを得ない状況となっており、コロナ禍後のコスト増でただでさえ苦境にあるアーティストの収益をさらに圧迫している。
「コロナ禍以降、輸送費をはじめとするツアーコスト全般が大幅に上がっています」と話すのは、220台のツアーバスと70台のトラックを擁するDreamliner Luxury CoachesのCEO、リッチ・トムソンだ。燃料費の急騰により、「すでにコスト削減と低コストでのツアー実施策を模索している人たちを、さらに追い詰めています」という。
12台のツアーバスと35台のトラックを保有するEgotripsのオーナー、ニック・ウェザーズによると、燃料費高騰以降、1マイルあたり25~35セントのサーチャージを上乗せしているという。「15台や20台のトラックを回るとなると、数千ドルにもなります」と彼は言う。一部のツアー公演にとって、こうした値上げは、わずかな利益が出るか、まったく利益が出ないかの分かれ目となる可能性がある。「最近ツアーバスの見積もりを依頼してきた人がいて、送り返したら、その人はただ愚痴をこぼすばかりで……“このバスを使ったら、ツアーで一銭も儲からないよ”なんて言っていましたよ」とウェザーズは付け加える。
すでにツアー中だったアーティスト、あるいは開戦前にツアーを確定させていたアーティストにとっては、こうしたコスト増が見込んでいた利益を直接削ることになる。
「バス会社との契約は数か月前から交渉しており、燃料費は平均価格に基づいて算定され、その価格を基に予算を組んでいます」とスミスは語る。しかしこれほどの急騰を事前に予測する手段はなく、「これだけ突然大きく跳ね上がれば、そのコストを丸ごと吸収するしかないです」と述べた。
フライ・デート(バンやバスではなく、公演ごとに飛行機で移動する形式)を組み込んでいたアーティストにとっては、航空運賃の急騰も痛手となっている。旅行サイトKayak.comが提供する週次データによると、紛争勃発以降、米国の国内線の航空券価格は13%、国際線は55%それぞれ上昇している。事態収拾の見通しが立たない中、早期購入で値上がりに備えるツアー・マネージャーも出始めている。「大学での1回限りライブがある場合、できる限り早めに航空券を押さえるのが得策です」と、TOLEDOやPost Sex Nachosなどのバンドを担当するChallenger Artists(Mammoth Liveのマネジメント部門)のマネージャー、ペイトン・マレクは語る。
燃料価格の高騰は、グッズの発送費から食事代に至るまで、ツアーのあらゆる面に影響を及ぼしている。この価格上昇によるあまり知られていない影響の一つに、貨物輸送のスケジュールが不安定になっていることが挙げられる。特に船舶は、燃料費を節約するために航行速度を落としているため、その影響が顕著だ。レディー・ガガやジャスティン・ビーバーといったアーティストと仕事をしてきた制作マネージャーのジェイソン・ダンターによると、こうした状況は、航空貨物に比べて安価だが輸送に時間がかかる海上貨物の信頼性をさらに低下させる結果となっている。「ビジネス・マネジメント担当者に“海路で行く”と言われることがあります。“それは可能だけど、もし船が出発して、進みが遅くなっている。予定にない寄港地が追加された。最初の公演には間に合わないと伝えた時、ちゃんと対応してくださいね”と返したら、彼らは“それは困るな”と言うんです」という。
Rock-It Cargoのライブ・ツアー担当エグゼクティブ・バイスプレジデント、ジャスティン・カーボンによると、イランとの戦争を受けて貨物船が中東を回避し、より長い航路を取るケースも増えており、「数日の遅延が生じている」という。ただし「適切な計画があれば、より長い距離も軽減できる」と付け加えた。
クラブ規模のアーティストからスタジアム級の超大物まで、すべてのツアーが燃料費高騰の影響を受けるものの、米ビルボードの取材に応じた関係者の多くは、中小規模のアーティストが最も大きな打撃を受けるとの見方で一致した。「クラブレベルで活動するアーティストたちは、総収入がそもそも少ないため、利益率も低く、その影響をより強く受けることになるでしょう。大規模なツアーも影響を受けますが、小規模なバンドにとっては、その影響がより切実なものになると思います」とPioneer Coachのゼネラル・マネージャー、ダグ・オリバーは語る。
スミスは、小規模よりも「中間層のアーティスト」の方がより心配だという。後者は運営コストが高く、ファンからより本格的なショーへの期待も背負っているためだ。「ライブ開催にかかるコストが低い分……まだ駆け出しのアーティストにとっては、すでに築き上げたものを維持しようとしているバンドや、さらなる高みを目指しているバンドとは少し事情が異なるかもしれません。なぜなら、そうしたバンドには固定費が多くかかり、多くの面でより大規模なライブを催さなければならないからです」という。
それでも、Friendly AnnouncerでCaroline Rose、Julia Jacklin、Cassandra Jenkinsらを担当するアーティスト・マネージャーのアリ・フォーリーゾスは、燃料費高騰が新人アーティストのツアー離れをさらに加速させることを懸念している。「今まさに台頭しつつある次世代のインディーバンドのことが心配です。彼らは長年にわたり、ツアーを通じてファン層を築くことに関してかなり意気消沈してきたように感じます。自分たちには手の届かないことだと感じているからです。こうした事態は、まさに火に油を注ぐようなものだと思います」と彼女は言う。
コロナ禍後のコスト増、そして今回の燃料費高騰に直面し、多くのツアーが黒字を出すための工夫を迫られている。米ビルボードの取材に応じた複数のアーティスト・マネージャーは、収益最大化のためにVIPチケットの導入を検討、実施しており、ミート&グリート、サウンドチェック・パーティー、限定グッズなどの特典を組み合わせている。フォーリーゾスはまた、高コストの全国ツアーを避け「地元近辺に集中する」アーティストが増えていると指摘する。
担当アーティストのCaroline Roseについては、夏のツアーで同一都市での複数日公演、さらには「同じ夜に同じ会場で2公演」という形式を採用し、移動コストを削減する戦略を取っていると明かした。複数の公演地では会場を自ら借り切り、チケット販売も自社管理とする。この場合、公演を完売させられれば通常の方法より「わずかに多い」収益が得られると見込んでいる。TicketmasterやAXSといったチケット会社への手数料が不要になる分、ファンへのチケット価格も実質的に引き下げられ、節約分がグッズ購入に回ることも期待している。「今は誰もが価格に敏感だが、それがLive Nationのような企業ではなく好きなアーティストへの支援につながると確信できれば、大切なお金を使おうという気になる人は多い」と彼女は言う。
プロダクション・コストの削減もマージン改善の手段の一つだ。トムソンによると、他にどこを削れるか検討しながらツアー確定を見合わせているクライアントが最近増えているという。「“どこを削れるか? すべての項目を見せてくれ”という会話がより厳しくなっている。燃料費の問題もあるが、戦争前から輸送コスト全般の上昇で同じ状況は続いていた」と彼は語る。
コスト上昇への対処としてより直接的な方法は、ファンへの転嫁だ。しかしすでに進行中のツアーではチケット値上げは現実的でない。「契約で価格が固定されており、コンサートチケットの値段を上げることはできない」とオリバーは言う。値上げが可能な場合でも、ファンが食事からガソリン代に至るまであらゆるものにより多くの費用を支払わなければならない経済状況下では、チケット代以外にもコンサート参加にかかる費用があることを考えれば、価格設定のバランスを取ることは難しい課題となり得る。
「ファンはチケット代だけでなく、駐車場代、飲み物代、開演前の食事、年齢層によってはベビーシッター代まで負担している」とマレクは指摘する。
グッズ価格の引き上げも選択肢の一つだが、スミスはチケット同様に慎重を要すると言う。「理論上はグッズの価格を引き上げることも可能ですが、生活費が高騰している状況下では、ファンは価格にかなり敏感になります。それがチケット売上やグッズ売上に悪影響を及ぼす可能性もあります。ですから、この点については細心の注意を払わなければなりません」と彼女は述べる。
現状では、ホルムズ海峡が明日開通したとしても燃料費は少なくとも年末まで高止まりが続くとみる専門家が多く、ツアー業界は最低でもあと数か月は高騰するコストと向き合うことになる。
フォーリーゾスはそれでも、一筋の光を見出している。「余裕がなくなればなくなるほど、アーティストとそのチームはよ り創造的にならざるを得なくなる。ここ数年でアーティストにとってますます厳しくなっているツアー市場に、新しい形が生まれるかもしれない。他の人たちも、既成概念にとらわれずに考えるよう刺激を受け……常識に疑問を持ち、“どうすれば少し違ったやり方ができるだろうか?”と考えるようになることを願っています。それは簡単なことではありません。実際、そういうことをするのは本当に、本当に難しいんです」と彼女は語る。
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