<フジロック’26出演>ターンスタイルが築く独自の世界――ボルティモアの地下室からI-70高架下まで

2026年4月20日 / 12:00

 ターンスタイルは、地元ボルティモアの地下室での活動から、収容人数1万3,000人規模の屋外会場を完売させ、自らステージを設計し、【コーチェラ・フェスティバル】で主要な出演枠を獲得するまでに成長した。それでも彼らは、ハードコアのルーツを形作るエトス、即興性、そして親密さを手放していない。

 インタビューでのリード・シンガー、ブレンダン・イェーツは穏やかで思慮深く語る。一方でライブは制御された爆発のようだ。色彩、動き、歓喜、混沌、そして優雅さが融合し、共同体的で深く感情的な体験を生み出す。イェーツにとって『ネヴァー・イナフ』時代における課題は、拡大ではなく、DIY精神を失わずに成長する方法を見つけることにある。

 「フェスや大規模なショーには簡単に飲み込まれてしまう」とイェーツは言う。「でも自分たちの目標は、たとえ1万3,000人が野外にいたとしても、親密さを感じられるものにすること。全員がつながり、全員がその一部である感覚――それこそがこのバンドの基盤なんだ」

 急速に成功を収めたアーティストの多くは、クラブからシアター、そしてアリーナへと進むのが一般的な道だ。しかしターンスタイルはそれを拒んだ。代わりに彼らはより困難な道である、独自の空間を生み出し、ハードコア・ショーの常識を書き換え、場所ごとにイベントを設計するという方法を選んだ。

 「成功したことでバンドが制約を受けるのは嫌でした」とバンド初期からマネージャーを務めるジェームズ・ヴィタロは語る。「ハードコアには1万人規模の会場という概念がそもそもありません。そんな場所は存在しない。だからこそ、存在しないものを自分たちで作る必要があったんです。エネルギーを保ちながら、来たい人全員を収容できる空間を」

 その過程でターンスタイルは、現代におけるツアーの新たな章を切り開いたのかもしれない。そこでは、コミュニティと身体性がプロダクションと同じくらい重要視され、最高のショーは従来の会場ではなく、砂利の空き地や公園、川辺、高架下といった場所で行われるのだ。

 昨年、バンドは結成15年で4作目となるスタジオ・アルバム『ネヴァー・イナフ』をひっさげたツアーを行った。その中でも特に印象的だったのがデンバー公演だ。アリーナでもアンフィシアターでもなく、I-70の高架下に組まれたポップアップ会場で開催された。“会場”は橋、砂利の敷地、仮設ステージ、わずかなバリケード、そして四方から集まる観客によって成り立っていた。

 「ニューヨークにはアンダー・ザ・K・ブリッジというコンセプトがあります」とワッサーマン・ミュージックのエージェント、フレッド・ザヘディニアは語る。「工業的で、生々しく、繋がりを感じられるような開放的なエネルギーがあるんです。デンバーのプロモーターはそれに似たものをゼロから作り上げました」

 この環境こそ、ターンスタイルにとって理想的だった。座席はなく、分断もなく、バンドと観客の間に階層も存在しない。

 「ほとんどの会場はターンスタイルのために作られていないんです」とザヘディニアは続ける。「秩序のために設計されていて、動きのためではない。だから私たちは考えました。このショーが必要とする呼吸ができるステージはどこに置けるのかと。その答えが競馬場になることもあれば、駐車場になることもあるし、高速道路の下ということもあります」

 ターンスタイルのファンたちはこの試みを受け入れた。

 「毎晩が新鮮だった」とイェーツは言う。「広いフィールドでのショーもあれば、公園もあったし、屋内もあった。伝統的な会場じゃないと分かって目覚めることで、むしろスピリットが保たれた」

<コミュニティを映し出すカメラ>

 ターンスタイルの特異な力の一つは、ファンの存在を称える点にある。ロサンゼルスのエクスポジション・パークで行われた1万4,000人規模の屋外公演では、カメラチームが細やかに会場を巡り、観客の表情、ハグ、子どもを抱く親、踊るカップル、肩を組む友人たちを映し出し、それがステージ上の巨大スクリーンに映された。

 「印象的だったショットがあります」とヴィタロは語る。「12歳くらいの女の子がターンスタイルのTシャツを着て夢中になっている姿で、その後カメラが彼女の父親が額にキスする場面にパンしたんです。あれこそがショーであり、このバンドそのものなんです」

 ネット上では、ターンスタイルのライブでのステージダイブやモッシュの混沌が強調されがちだが、実際にカメラが捉えるのはその逆だ。バンドのファンをつなぐ優しさ、帰属意識、そして開かれた感情がそこにはある。

 「後方にいる人やピットに入らない人も含めて、全員が一体感を感じることが大事なんだ」とイェーツは言う。「スクリーンに映るかもしれないし、ショーが自分から遠い場所ではなく、周りで起きていると感じられる」

 この時代を象徴する公演の一つが、バンドが長らく拠点を置くボルティモアで行われた『ネヴァー・イナフ』のリリース記念無料ライブだ。バンドは自らステージを組み上げ、夜遅くまで作業を続けた。

 「昔からの友人、コミュニティの人たちが集まってくれた」とイェーツは振り返る。「朝早くからみんなで作業して、まだ建設中の段階で人が集まり始めていた」

 この公演はホームレス支援団体Healthcare for the Homelessのための資金も集め、予想を上回る観客を動員した。

 「バンドとして最も特別な日の一つだった」とイェーツは語る。「自分たちの人生のあらゆる側面の人たちが集まった。無料で地元開催だったことで、ボルティモアから受け取ったものを返している感覚があった」

<ヘヴィ・ミュージックを大規模に再定義>

 この10年でターンスタイルは、ハードコアというジャンルの枠を超えた存在へと進化した。スネイル・メイルやJPEGMAFIAとのツアー、ブリンク182の前座、異色の会場でのヘッドライン公演など、多様な活動を行ってきた。マイアミのダンス/エレクトロニック中心のフェス【III Points】では、ライブ・アクトとしてで最大級の観客を集めた。

 「バンドとして存在する中で、ジャンルに縛られたことは一度もない」とヴィタロは言う。「哲学や倫理の面にはハードコアに根ざしているが、音楽的にも視覚的にも感情的にも、それをはるかに超えている。だからこそ、ある週にはメタル・フェスに出演し、次の週には【Flog Gnaw】のようなヒップホップ寄りのフェスにも出演できるんです」

 ターンスタイルが、【グラミー賞】で評価されている事実は、この点を裏付けている。『ネヴァー・イナフ』は2026年の【グラミー賞】で、<最優秀ロック・パフォーマンス>、<最優秀ロック・アルバム>を含む5部門にノミネートされ、オルタナティブ・ロックとメタルの両分野にもまたがる形で候補入りを果たした。これは、1枚のアルバムが5つのカテゴリーすべてにノミネートされた初のケースとなる。

 「自分たちにとってはシンプルなことです」とザヘディニアは語る。「ジャンルの境界にこだわるのは業界のほうであって、ファンは違います。ファンは自分の心を動かすものを求めているんです。ターンスタイルは人の感情を動かすんです」

<課題:セキュリティ、ステージダイブ、そして若い観客を守ること>

 ハードコア特有の激しいエネルギーを大規模な屋外空間に持ち込むことは、運営面で大きな課題を伴う。ターンスタイルは、その問題に日々向き合っている。

 各会場では、セキュリティ・チームに対して綿密なブリーフィングが行われる。重視されるのは、自己管理、相互のリスペクト、そしてトラブルをエスカレートさせない対応だ。目指しているのはショーの空気を守ることであり、統制して押さえ込むことではない。

 「このバンドは若い観客のために戦っている」とヴィタロは語る。「自分を表現できる場を守るために、セキュリティに不当に扱われないようにするために、そして彼らが求めて来た体験をきちんと味わえるようにするために戦っているんです」

 ステージダイブも、意外なことに今も完全にはなくなっていない。ただし、そのハードルは確実に上がっている。

 「ステージが大きくなるほど、ハードルも高くなる」とヴィタロは笑う。「でも、やれるなら止めるつもりはないです」

 ターンスタイルの戦略で特に印象的なのは、やらないことをはっきり決めている点だ。

 彼らはアリーナ公演やアンフィシアター公演を望まない。そして複数日にわたるレジデンシー公演も行わない――たとえそれが可能な規模に達していてもだ。

 「同じ会場で2日続けてやると、ただ仕事をこなしている感じになります」とヴィタロは言う。「そこに緊張感がない。ターンスタイルのショーは、この一夜しかないという感覚であるべきなんです」

 ザヘディニアも同意する。

 「一度完売させた会場で追加公演をするのは、どこか後戻りしているように感じられます。それにアリーナ公演は確かにやりやすいけど、座席や仕切りが前提で、人を分けるための構造になっています。それはこのバンドのやり方とは真逆です」

 その代わりに、彼らは唯一無二の場所での一夜限りの公演にこだわっている。8,000~15,000人規模のフィールド、空き地、公園、工業エリア、型破りな会場などを見つけ、あるいは自ら作り出し、自由に動き回れるスタンディング・エリアと、身体的な一体感を生み出している。

 「自分たちのやり方は、従来よりもずっと手間がかかります」とヴィタロは言う。「でもこのバンドは、作品にすべてを注ぎ込んでいるんです。それに見合う熱量を持ったチームであるべきです」

<【コーチェラ】という節目>

 ターンスタイルにとって次の大きな節目となるのが、2026年の【コーチェラ】での大規模なパフォーマンスだ。フェスの中でも上位に位置づけられる枠であり、かつて昼間の駐車場のようなステージで演奏していた彼らにとっては、大きな飛躍と言える。

 しかし、ターンスタイル自身はこれも独自の視点で捉えている。

 「今回のステージは理想的です」とヴィタロは言う。「広大なスタンディング・エリアがあって、ショーがしっかり“呼吸”できる空間になっています。フェスは昔から、我々の世界観を広げる場でもあります。どんな人が偶然観に来るか分からないので」

 ザヘディニアは、主催のゴールデンヴォイスとの長年の関係にも触れる。初期の小さな出演枠から今回の主要枠への抜擢まで、段階を踏んできた歴史がある。

 「(ゴールデンヴォイスの)パートナーたちはバンドの真のファンです」と彼は言う。「単なる出演オファーではなく、このバンドの魅力が最大限伝わる形を一緒に考えた結果なんです」

 イェーツは興奮しながらも、あくまで冷静だ。

 「すごいことだとは思う」と彼は言う。「でもやることは変わらない。ステージに立って、その瞬間に集中して、ちゃんと本物だと思えるものを作るだけなんだ」

 By: Dave Brooks  / 2025年12月15日 Billboard.com掲載

◎公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL ’26】
期間:2026年7月24日(金)、25日(土)、26日(日)
会場:新潟県 湯沢町 苗場スキー場
※ターンスタイルの出演は24日(金)となります。
INFO:FUJI ROCK FESTIVAL
https://www.fujirockfestival.com/


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