<ライブレポート>MyGO!!!!!×Ave Mujica、“わかれ道の、その先”にあったもの――質実剛健なリアルバンドが目指す未来

2026年4月1日 / 20:00

 次世代ガールズバンドプロジェクト「BanG Dream!(バンドリ!)」より誕生したリアルバンド=MyGO!!!!!、Ave Mujica。彼女たちが3月1日、神奈川・Kアリーナ横浜にて【MyGO!!!!!×Ave Mujica ツーマンライブ「“moment / memory”」】を開催した。

 “マイムジ”の愛称で親しまれる令和の運命共同体。彼女たちの名前にKアリーナ横浜と続けば、思い出されるは2025年4月開催の【MyGO!!!!!×Ave Mujica 合同ライブ「わかれ道の、その先へ」】のことだろう。

 あれから約10カ月ーー前回は直前まで放送されていたTVアニメの物語に忠実に。タイトルにあった通り2組での“合同ライブ”として、物語や世界観を作り込んだステージに圧倒させられたわけだが、打って変わって今回は“ツーマンライブ”。燈(CV:羊宮妃那/Vo.)とオブリビオニス/豊川祥子(CV:高尾奏音/Key.)がともに紡ぐ幕間ナレーションは踏襲しつつも、あくまで“対バン”。歌と音楽だけの一本勝負で、純粋なパフォーマンス力を見せつける時間となった。

 先攻は、Ave Mujica。ステージに張られた幕の先で「Choir ‘S’ Choir」を演奏するメンバーたち。岡田夢以(ティモリス/八幡海鈴役/Ba.)に、米澤茜(アモーリス/祐天寺にゃむ役/Dr.)にと、スポットライトで順に大きな影が照らされると、文字通りに幕が開き、客席とじりりと目が合い始める。落ちサビではこんな場面も。高尾による澄んだキーボードが鳴っているかと思えば、気づけばその音色がグラデーションのごとく、佐々木李子(ドロリス/三角初華役/Gt.&Vo.)の歌声へとスイッチしていたのだ。まるで初華と祥子の想いが通じ合っているかのように。

 佐々木が小節の冒頭であえて声を細くし、途中から歌をライドさせているのはわかってはいた。が、気づいたときにはもう遅い。感情の橋渡しというか、こうした粋な所業をさらりとこなすのがAve Mujica。そのたび、我々はなにか特別な感情を突き動かされてしまう。

 さて、この日のパフォーマンスについて、先に概要を説明しておきたい。“演奏時間”は約50分。ひとことでまとめると、パフォーマンスにおける“自由度の高さ”を見せつけるものだった。後述する通り、キャラクターではなく、あくまでリアルバンド=キャストの色味が強くなることで、その点が大きく打ち出されていたとも言い換えられる。加えて、この1年間で蓄えた経験値、ならびに当時の新曲にも慣れが生まれてだろう。以前に増して音が重く、それでいてしなやかで洗練された雰囲気を帯びていることにも気づいた。

 現に、彼女たちの4曲目「Symbol IV : Earth」以降、メンバーがほぼ全編を笑顔で演奏していたことが、前述した“自由度の高さ”を象徴するひとつの出来事だったと思う。岡田、佐々木と順に高尾のもとを訪れる“オブリビオニス巡業”にはじまり、5曲目「Mas?uerade Rhapsody Re?uest」では、渡瀬結月(モーティス/若葉睦役/Gt.)とおでこをごつんとぶつける近さまで迫る瞬間も。

 続く「八芒星ダンス」では、佐々木が演奏前に“しばしの暗転”を利用してギターを下ろし、代わりにバレエのようにステージを飛び回り、途中には大胆に足を上げて大きくキックを放っていく。その際、ステージサイドにあったカメラにファンサを届けていたのだが、これもまたキャラクターではなく、リアルバンドとしての側面が色濃くなったがゆえ。既定路線を外れたことで生まれた、エンタメ精神の表れだ。

 というより、高尾が自身専用カメラにたびたび見せつけてくる表情管理を筆頭に、もはや動く“美”といえる米澤のドラムなどを含め、カメラ映えの観点でいえば、前回の合同ライブ時点で高いポテンシャルを感じていたところ。それがまさか、ここまでだったとは……。

 ところで、先ほど「しばしの暗転」と記していたのだが、実はここまでMCを挟むことなく、ほぼノンストップで演奏を続けてきたAve Mujica。曲同士をシームレスに繋がることがほとんどで、演奏が途切れたとしてもあくまで数秒。休憩なんて、存在しない世界線である。

 彼女たちの7曲目「Symbol II : Air」以降も、“ここが決めどころ”といわんばかりに、全員が真剣な面持ちで演奏に入り込んだ「DIVINE」、サビのエアー感を混ぜた高技術な歌声で、曲数を重ねるごとにボーカルの鋭さが増していることを感じさせた「‘S/’ The Way」。さらに、“さすがにもうそろそろ……”と思っていたところで、ダメ押しのようにぶつけてきた「KiLLKiSS」へ。ここでの「KiLLKiSS」は、危なすぎる。途中、高尾が膝立ちになり、ライトサイドのキーボードに頬杖をつきながらカメラ目線を送ってきたり、佐々木が歌っていて気持ちよさや手応えを感じてだろう、歌唱終盤、右頬の口角が上がるのを隠しきれない様子だったりと、両者ともステージングへの自信が滲み出ているように伺える。

 悪い意味ではなく“まだやるの?”といった時間は続き、気づけば「Symbol I : △」まで、全12曲を通してパフォーマンス。「八芒星ダンス」披露前の暗転を百歩譲ってインターバルと考えたとしても、7曲連続だ。考えなかった場合、12曲を休みなく駆け抜けたことに。なんたる気合いのパフォーマンスだろうか。

 Ave Mujicaのワンマンライブにて、こうした試みが何度も行なわれていることはたしかに事前把握していた。しかしながら、いざ現場で体験するとなると、心の準備が必要。筆者のみならず、客席からも“どこまで続くんだ?”という空気が漂っていたし、だからこそ演奏終了後の溢れんばかりの拍手は、単純な曲のよさやメンバーの頑張りを讃えての生温いものではなく、脱帽。あるいは圧巻の念を込めて鳴らされている類のものだと感じられた。

 冒頭に記したことを翻してしまい恐縮ながら、パフォーマンスの“自由度”の次元などでもないし、我々の想像もいまや通用しない。劇中キャラクターたちを凌駕して、リアルバンドとしてのAve Mujicaはいま、とんでもない位置にいる。

 対するは、後攻のMyGO!!!!!。演奏時間は先ほどと同様ながら、こちらはAve Mujicaと比較して、キャラクターらしさを残したパフォーマンスを提示するなかで、“羊宮/燈らしさ”が新たなフェーズに迫りつつあると伺い知ることができた。

 まず披露したのは、羊宮のポエトリーリーディングが、楽器隊の演奏とコーラスという2種類のビートの上を彷徨い、弄ばれるような感覚になる「回層浮」。こちらはモニターに投影されるお馴染みのリリック・ビデオ演出とともに届けられたのだが、ラストシーンで燈の顔を水でぼかし、あえて表情を見せないあたり、前述した“彷徨い”の感情を描くようでなんとも見事だ。

 続くは、MyGO!!!!!屈指の楽曲「無路矢」。聴きどころはもちろん、青木陽菜(楽奈役/Gt.)が鳴らすいなたいエレキと、高音のサイドボーカル。別に見せつけようとしているわけでないのに、無表情でそれらを両立する姿は、もはや職人の域。楽奈としての歌声には、田舎に漂う煙の匂いや、吹き荒ぶ冷たい風を連想させられるというかーーそもそもなぜ、ギターよりも高い音を歌で鳴らせる? いつ聴いても異質な曲であり、どうしても惹かれてしまう。人は「無路矢」に還ってくる。

 この後、メンバー挨拶が挟まれた際、いわば“休憩”があることにほっとしたも束の間。最終的にこれがこの日、最初で最後のMCに。以降は途中で燈ら、あるいは羊宮が生で披露したモノローグのインターバルはありながらも、それ以外はただひたすらに演奏に没頭する時間が続くこととなった。

 さておき、MyGO!!!!!のパフォーマンス、特にボーカル面で最も新鮮さを覚えたのが次の演目。彼女たちの3曲目「端程山」は、2000年代のJ-POPをアップデートしつつ、どこか懐かしいサウンドを、歌詞で描く広がる空に投影してみせた曲。従来あった“たどたどしさ”が程よく抜け、これまで以上にスムースな空気感を感じた歌声は、いわゆる“J-POP感”とも相性がよく、彼女の歌声にバッチリとハマっている感覚を覚えた。

 あくまで筆者の見立てに過ぎないが、MyGO!!!!!は結成以来、パフォーマンスにどこか“重たさ”を備えたバンドだったと思う。対して、この日のステージはさらりと聴きやすく。それでいて、聴き終えて残る後味のように、歌詞の意味が心にすっと積もっていくーーそんな変化も感じるようだった。

 その後も、青木がイントロの一音目を鳴らせばフロアが沸くダンスポップ「影色舞」、瑞々しい音の弾丸のなかで羊宮が心の叫びをぶつける「壱雫空」、この日のハイライトとして、全員が堂々たる姿を見せてくれた「歌いましょう鳴らしましょう」など、ラストスパートまで疾走感と衝動を忘れない。なかでも「歌いましょう鳴らしましょう」については、またしても青木をフィーチャーする形となるが、1コーラス目Bメロのタッピング中、唇で挟むのではなく、歯と歯の間でガッと音がするくらいにピックを噛む姿が、まさしくロックスターのそれだったと後世まで伝えていきたいと思っている。

 最後は「往欄印」でフロアに照明を灯し、爽やかに、鳴り止まないシンガロングを共有したところでパフォーマンスが終了。すると、しばしの沈黙の後、意外なタイミングで銀テープが発射されると、ステージ上のサービスモニターでいくつかの告知解禁が。最注目となったのが、「BanG Dream! It’s MyGO!!!!! / Ave Mujica」の続編となるTVアニメが、2027年1月より放送開始されるということ。そしてそのままーーライブは幕を閉じるのだった。

 “さらっとライブを終えた”と書くと言葉の綾が生まれてしまうが、Ave Mujicaなんて、本当に一秒も言葉を発することがないまま去ってしまったことになる。前回の合同ライブとはなんとも対照的で、MyGO!!!!!、Ave Mujicaともにキャラクターではなく、双方を純粋たるバンドと捉えていなければ、こんな所業は成しえない。なにより、こうしたライブハウスじみた一種の演出を、約2万人を収容するKアリーナ横浜でさらりとやってのけてしまうのが、褒め言葉として本当に憎い。

 おそらくは、キャスト全員が出揃う、いわば様式美に期待していたファンもいたことだろう。だがそれ以上に、あえて言葉を使うことなく、ここまでですべてが伝わるはずだという、彼女たちや制作陣の音楽に対する信頼、気概、あるいは本気度を察すところでもあったのではないだろうか。

 なによりこの前日には、同会場にてバンドリ!の10バンド、総勢50名が集結した【BanG Dream! 10th Anniversary LIVE「In the name of BanG Dream!」】が開催されていたわけであり、MyGO!!!!!とAve Mujicaは唯一、その翌日公演を託された存在。あの日の“わかれ道の、その先”になにがあったのか?ーーそこには、キャラクターを超越していく“質実剛健”なリアルバンドの姿と、彼女たちが目指す未来が確かにあった。

Text by 一条皓太

◎公演情報
【MyGO!!!!!×Ave Mujica ツーマンライブ「“moment / memory”」】
2026年3月1日(日)
神奈川・Kアリーナ横浜
<セットリスト>
オープニングアクト
millsage
M1 起死開戦
一家Dumb Rock!
M2 ホーミー・タイッ!!

Ave Mujica
M3 Choir ‘S’ Choir
M4 顔
M5 黒のバースデイ
M6 Symbol IV : Earth
M7 Mas?uerade Rhapsody Re?uest
M8 八芒星ダンス
M9 Symbol II : Air
M10 DIVINE
M11 ‘S/’ The Way
M12 KiLLKiSS
M13 Sophie
M14 Symbol I : △

MyGO!!!!!
M15 回層浮
M16 無路矢
M17 端程山
M18 掌心正銘
M19 迷星叫
M20 夜隠染
M21 孤壊牢
M22 影色舞
M23 壱雫空
M24 歌いましょう鳴らしましょう
M25 砂寸奏
M26 往欄印


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