<イベントレポート>Billboard JAPANとLUMINATEが主催する【NOW PLAYING JAPAN】第5弾のテーマは“海外展開におけるデータ活用法”

2026年2月26日 / 17:00

 Billboard JAPANとLUMINATEによる、ビジネスカンファレンス【NOW PLAYING JAPAN】の第5弾が2025年2月12日に東京・ビルボードライブ東京にて開催された。

 今回のイベントではLUMINATEの責任者が、【海外展開におけるデータ活用】をテーマに、グローバル市場で活躍するアーティストの戦略構築に、同社のデータがどのように貢献しているのかを解説した他、ゲストとして韓国におけるLUMINATEの販売権を有するKreators Network Inc.より、ジェイデン・イー・ソン氏が韓国市場におけるJ-POPの展開について解説。さらに、【SUMMER SONIC】などを手がけるクリエイティブマンプロダクション代表の清水直樹氏が、Billboard JAPANの礒﨑誠二とともに、データを活用した国内外でのブッキング戦略について対談も行われた。以下、同イベントの模様をお届けする。

プレゼンテーション1:エイドリアン・サローシ(LUMINATE)

 最初に登壇したのは、LUMINATEのインターナショナル部門 VP/GM を務めるエイドリアン・サローシ氏。同氏は、LUMINATEの年間レポートからのデータを用いて、2025年のグローバル音楽市場の動向について解説した。2025年に入り、世界でのオーディオストリーミング数は初めて5兆回を突破。その一方で世界でのオンデマンドの成長率が初めて10%を切るなど、成熟した市場は飽和状態になりつつあり、さらなる成長の鍵は高付加価値かつ未飽和の市場にあることが示唆された。ストリーミング数で見ると、100万回~5千万回再生の“中間層”がストリーミング市場の半数近くを占めており、市場のバックボーンとなっていることが説明された。また、米国では直近5年にリリースされた楽曲の比率が現象しており、過去カタログの存在感が強まっている点も強調された。

 サローシ氏は続いてプレミアムユーザーに焦点を当て、加入者の成長率が鈍化する中で、ARPU(1ユーザーあたりの平均売上)の最大化が新たなテーマであると説明。2025年に大手サービスの価格改定が市場に受け入れられたことは重要であるとした。プレミアムユーザーは総ユーザーの約46%でありながら収益の76%を生み出す「経済エンジン」と表現。中でも日本はプレミアムストリーム数で世界5位、前年比で10%超の増加を記録しており、アジアで最もダイナミックな成長市場と位置づけた。

 プレゼンテーションの後半では音楽の輸出力、そしてファンダムの傾向について言及された。日本はグローバルの輸出ランキングで11位へと上昇しており、その最大の輸出先は台湾、韓国、香港、インドネシア、タイとなっている。ただ、他国のアーティストと比較して、日本のアーティストがトップ50内に登場した海外市場はわずか5か国で、トップ10内は3か国と、遅れを取っていることも明らかにされた。この状況を改善する策の一つとして他国アーティストとの戦略的なコラボレーションや、アーティストだけでなくその周辺の文化や商品にも興味を示す所謂スーパーファンを対象国において増やすことも提案された。

 また、サローシ氏は最後に日本におけるリスナーの傾向についての解説も実施。世代別で見ると、ストリーミングの利用率、音楽への平均月間支出額、週間視聴時間のいずれにおいてZ世代が最も高く、日本における最大の成長機会層と位置づけた。また、日本の音楽リスナーの約1割を占めるスーパーファンは、平均の約2倍の金額を音楽に支出し、視聴時間も長く、ライブ参加や積極的なアーティスト支援行動を取る中核層となっていることを説明し、この層に対するターゲティングの重要性を改めて示した。

プレゼンテーション2:ジェイデン・イー・ソン(Kreators Network Inc.)

 Kreators Network Inc.のジェイデン・イー・ソン氏は、「韓国でのJ-POPの現況」をテーマに登壇。韓国におけるJ-POPのストリーミングはコロナ禍以降大きく変化していると話し、2021~2024年における韓国のストリーミングTop 200を分析すると、チャートにランクインした曲を持つJ-POPアーティストの比率は増加傾向にあり、“ロングテール型”の広く薄い市場構造が定着していると説明した。さらに、韓国は日本のストリーミングの約38%の規模ながら、プレミアム視聴の比率が86%と選択的消費傾向が強い市場であり、K-POPとJ-POPでは消費構造も大きく異なると言及。K-POPはアーティスト中心型で、特定の人気アーティストに集中して聴かれる一方、J-POPは楽曲中心型で上位圏でも複数のアーティストが分散的に消費されると語った。

 また、韓国におけるK-POPのチャートは、カムバックを軸に新曲のリリース時に急上昇するという短期的なインパクトが影響するが、J-POPは繰り返し再生を通じてチャートに長期間滞在し、蓄積と維持に基づく構造であると説明。さらに、J-POPのストリーミングはヒット1曲で終わるのではなく、代表曲の“発見”を起点にカタログへ拡張し、時間差で再浮上する流れが生まれているという。2025年のチャートでも最新曲の割合は16%にとどまり、過去曲が長期滞在する傾向が顕著であると紹介した。そして、韓国におけるJ-POPの成功の鍵は「リリース」ではなく「再発見」、ヒット戦略だけでなく、文脈づくりやアーティスト認知への転換が不可欠となると語った。

 最後に、「韓国市場は激しく小さい。そのため結果がはっきりと分かれる。韓国は単なるテスト市場ではなく、グローバルに進む前に実力を証明しなければならない市場」へと進化しているとし、J-POPのグローバル展開を目指す一歩として、韓国市場での戦略の重要性を示した。

プレゼンテーション3:清水直樹(株式会社クリエイティブマンプロダクション代表取締役)× 磯﨑誠二(Billboard JAPAN)

 本カンファレンスの最後は、【SUMMER SONIC】等を手掛ける株式会社クリエイティブマンプロダクション代表取締役の清水直樹氏と、ビルボードジャパンの礒﨑誠二の対談形式でのディスカッション。2025年に世界で聞かれた日本の音楽を調査したレポート「2025 Global Data Digest」を手がかりに、日本音楽のグローバル動向とライブビジネスの現在地が多角的に語られた。

 先のジェイデン氏のプレゼンで語られた、日本の音楽の支持を「アーティスト・セントリック」へ移行させていくためには、“ライブ”が大きなハブとなりうる。「2025 Global Data Digest」にて多角的に分析している、国/地域別やアーティスト単位で“J-POPが世界でどのようなシェアを占めているのか”をダイジェストで紹介しつつ、「日本で洋楽は聞かれなくなったのか?」や、特に2025年に急増した「日本アーティストの海外公演」について、クリエイティブマンプロダクションでも活用されている「CONNECT」のデータおよび、清水氏の長年のプロモーター経験による“肌感”の両面からの意見が展開された。

 また、海外ではPollstarが集計しているライブ(興行)におけるデータの重要性や、清水氏が約25年前に「フェスを自社で持っていないと、プロモーターとして弱いと感じた」からこその同社が打ち出している戦略に加え、アジア市場への視線にも言及。第1弾出演アーティスト発表が大きく話題となった【SUMMER SONIC 2026】の出演者ブッキングに「CONNECT」のデータをどう活用しているのか、というタイムリーな話題も飛び出した。

Text by Haruki Saito, Sakika Kumagai, Maiko Murata
Photos by かとうりこ


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