OSHIKIKEIGO、“最前線へと躍り出る”初ワンマンライブ【BOARDING PASS】開催 未発表曲も披露

2025年12月2日 / 18:00

 2025年11月27日に大阪・心斎橋Music Club JANUS、11月29日に東京・代官山UNITにて、OSHIKIKEIGOによる初のワンマンライブ【OSHIKIKEIGO First Free One-man Live “BOARDING PASS”】が開催された。

 OSHIKIKEIGOとは、今年4月に『モナリザ』でデビューした新進気鋭のソロアーティスト。約1年半前にSNSへ投稿した楽曲のクオリティが瞬く間に注目を浴び、契約のオファーを持ちかけたメジャーレコード会社や事務所は15社を超えるほど「業界内で話題の存在」となった。4月のメジャーデビュー以降、テレビアニメ『フェルマーの料理』主題歌に抜擢されるなど、すでに目覚ましい活躍を見せている。10月15日には8曲入りのデジタル・ミニアルバム『BORADING PASS』を発表し、音楽制作におけるクリエイティビティの高さを改めて証明した。

 しかし、アーティストの真価とはライブで問われるものだ。OSHIKIKEIGOはこれまでステージ上で姿を見せたことはなく、【OSHIKIKEIGO First Free One-man Live “BOARDING PASS”】が初ライブとなる。そのライブを、OSHIKIKEIGOの実物を、一目観たいと期待が高まるファンの前で、OSHIKIKEIGOはどんなライブパフォーマンスを繰り広げるのか――本稿では、代官山UNIT公演をレポートする。

 白い衣装を纏ってファンの前に初めて姿を表したOSHIKIKEIGOは、デビュー曲「モナリザ」でライブを始めた。冒頭から、これが初ライブとは思えないパフォーマンス。堂々と自由にステージ上を動き回り、歌にアレンジも加え、ファンとアイコンタクトまで取る。当然、曲終わりには大歓声が湧き起こる。2曲目は、『フェルマーの料理』主題歌として多くの人に広まった「メイラード」。途中でニヤリと笑顔を見せ、佇まいから色気も醸し出し、最後の〈最終定理さえ飲み込んで〉は一瞬溜めて吐息交じりに歌う。とにかくグッと引き込まれてしまう要素の連続である。

 「初めまして、OSHIKIKEIGOです。楽しんでいってください。今日は来てくれて本当にありがとうございます」と挨拶すると、オーディエンスは満面の笑みと拍手を贈る。そのあとは、自分の学生時代のダサめのエピソードをさらけだして距離を縮める。そして「自分の拙い部分とか弱い部分こそ愛すべきポイントなんじゃないかなと思ってこの曲を作りました。拙さ、弱さ、ダサさを愛していきましょう」と、「ダサめのステップ」へとつなげる。レトロなエレクトロポップに乗って、OSHIKIKEIGO自身が自由に楽しそうに踊ったり、ちょっぴりダサめでぎこちないサイドステップも踏んでみたり。〈ダサめのステップ踏んで〉という繰り返される歌詞通りのメッセージがステージ前の人たちへと伝染し、カラフルな照明に染まったフロアには多幸感が生まれた。

 「ダサめのステップ」は、「家に帰って力を抜ける瞬間くらいはダサくてもいいからあなたらしくいてほしい」という思いが込められた楽曲であるが、次に続けたのは、家に帰ってプシュッと缶ビール(もしくはあなたの好きな缶ドリンク)を開けた音から始まる「Reverse」。演奏中はイシイトモキ(Gt)、KOBY SHY(Ba)、上原俊亮(Dr)、岸田勇気(Key)というバンドメンバーとともに曲の世界観に引き込むが、そのあと「楽しんでくれてるかな?」と確かめる初々しさも愛らしい。

 次に演奏されたのは、未発表曲「感度」だ。初期からSNSに曲の断片が投稿されていた曲であり、ここでフル尺が初披露された。OSHIKIKEIGOいわく「【BOARDING PASS】のどれかの曲のアンサーソング」として作ったもの。初めてラップを交えた曲であるが、サビではボカロっぽいボイスエフェクトも乗ってくる、そのアンバランスさが面白い。

 そのあとは、こいこいの役札を散りばめながら歌詞が綴られている「花札」で温かくて柔らかい風を吹かせ、イントロから自然とクラップが起こった「ユダ」で会場の温度を一段と上げる。曲が終わると「動くOSHIKIKEIGOを直接見ることができて嬉しい」といった言葉と黄色い歓声が、感情の昂ったファンたちから上がっていた。

 「次が最後です」というと「早いよー!」と名残惜しそうな声も飛び交う。初ワンマン本編を締め括るのは、「ミニアルバムを総括するような曲」だという「喩えて」。楽曲制作においてOSHIKIKEIGOは、人生の事象や人間の一面を表現する際に「モナリザ」「メイラード」など何かに“喩えて”きたが、この曲は“喩える”という行為を喩えた曲になっている。オレンジ色に照らされた姿は切なさに溢れ、右手でマイクを持って左腕を大きく広げる姿はオーディエンスをリードするような頼もしさを見せる。そして、その震えが交じる歌声は人間の苦しみを、囁くように歌う瞬間は哀愁を描く。

 OSHIKIKEIGOは、音楽をロジカルに分析し、緻密に楽曲を構築するタイプのアーティストだ。でもそれでいて、聴き手に“届けたい” “伝えたい”というエモーションが溢れ出ているアーティストであることも、ライブで体感することができた。自分の音楽を受け取ってくれた人と、互いの人生の一片に対するポジティブな感情や気付きを少しでも共有したいという、冷静さの中にも温かな愛と祈りがあった。

 アンコールでは、OSHIKIKEIGOが初めて自分が歌うために作った曲である「オッドアイ」をピアノ弾き語りで魅せた。スポットライトと全員の視線を背負う中で、一言一言丁寧に歌い届けた数分間は目が離せないほどの引力があり、間違いなくこの日のハイライトのひとつだった。歌い始める前には、ここまでで一番素の姿を見せながら、愛犬を亡くし大号泣したときの経験を語った。私たち人間は、別れや死別というものを悲しいことだと決めつけてしまうところがあるが、「喜びと悲しみは同等に愛さなきゃいけないんじゃないかと思う」というメッセージをこの曲に込めたという。そこからの「オッドアイ」は、OSHIKIKEIGOの歌の表現力が爆発した瞬間だった。

 最後は、来年2月にリリース予定だという新曲「インスタントナイト」を初披露。ミニマルな音数で引っ張り、サビでは音が壮大に広がる中で痛みや欲望を解放するような、エネルギーに満ちた楽曲。この曲から始まるであろう2026年も、ジャンルの壁を超えてオリジナリティで魅了する楽曲やライブパフォーマンス力を持って、大勢を巻き込んでいくのだろうと予感させた。フロア全体をゆっくり見渡しながら全員と握手するかのごとく手を伸ばし、「今日は本当にありがとうございました。OSHIKIKEIGOでした」という一言でステージを去っていった。

 アーティストの真価はライブでこそ問われる。私がライブを観る前の時期にとある記事に書いた「瞬く間にポップアーティスト最前線へと躍り出る予感がする」という思いは、OSHIKIKEIGOの初ワンマンライブを観て確信へと変わった。

Text by 矢島由佳子
Photos by 岸田哲平


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