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M.ウォード 00年代USインディ/オルタナティヴ・ロックの申し子の二つの顔

 女優ゾーイ―・デシャネルとのデュオ、シー&ヒムやブライト・アイズ、ジム・ジェームスとのモンスターズ・オブ・フォーク、ノラ・ジョーンズ、キャット・パワー、ジェニー・ルイスなどの作品で知られるシンガーソングライター、M.ウォードが来日し、フジロックで初パフォーマンスと31日に都内でソロ・アコースティック・ライブを行った。

 まずは、バンド・セットで迎えたフジロック最終日レッドマーキーでのステージ。サングラス&白いヨレヨレのTシャツ姿でステージに登場し、2009年にリリースされた『Hold Time』から「To Save Me」を甘く、そして鋭い独特のしゃがれ声で歌い上げ、軽快にスタート。完全に裏方に徹しているシー&ヒムのステージとはまったく別人のようにステージ上を落ち着きなく動き、ギター・ソロではステージ前方に出てきて客を煽る。シー&ヒムのライブにも参加しているMike Coykendallを初めとするバンドも曲によってギター、ベース、ヴァイオリンなど楽器をコロコロ変え、安定感抜群のバンド・サウンドと息の合ったコーラス・ワークが場内を満たす。

 「Poison Cup」などの往年の曲に始まり、中盤では今年リリースされた『A Wasteland Companion』から泥臭く荒涼としたガレージ・ロック調の「Me and My Shadow」やレトロ・ポップ感あふれる「Primitive Girl」などを披露。ノスタルジックなバディ・ホリーの「Rave On」、ダニエル・ジョンストンの「To Go Home」などアメリカン・ロック、フォーク・ミュージックへの彼の思い入れが伺えるナンバーも織り交ぜながら淡々と演奏していく。チャック・ベリー「Roll Over Beethoven」の力強い骨太なギター・イントロが始まると、会場の熱気は最高潮に。ラストの「Big Boat」では、キーボードを縦横無尽にかき鳴らし、最後には律儀に手を3度合わせステージを去って行った。

 その2日後に行われたのは、彼のルーツとも言えるソロ・アコースティック・ライブ。60人ほどのキャパシティの小さな会場には、人がぎゅうぎゅう詰め。本人曰く「あまりこういうライブはやらないんだ。」とのことだったので、観客の期待度も大きい。今か今かと登場を待ち望む中、黒いキャップに黒いシャツのシックな出で立ちで、客席をかき分けM.ウォードがステージへ上がった。そのまま、おもむろに演奏がスタート。弦に触れた瞬間に、暑さは一気に引き、不思議と清冽な空気が流れる。名曲「Chinese Translation」などを寡黙に演奏続けていく中、彼の口から初めて発せられた「ゲンキデスカ?」という言葉で会場は一気に和みムードに。彼自身もフジロックでのパフォーマンスと比べるとリラックスして見える。新作からの「Me and My Shadow」は、シンブルかつアグレッシヴにアレンジされ、ポップなリード・トラック「Primitive Girl」も繊細で深みのあるフォーク・ソングと化し、バンド・セットとはまったく異なる印象を受ける。終盤にさしかかり、「ラヴソングだよ。」と言いつつも「Sad Sad Song」や「Outta My Head」などの失恋ソングをしっとりと歌い上げ、ギターの巧さと演奏のダイナミズムも去ることながら、しっかりと歌詞に聞き入れる空間でソングライターとしての堅実な姿勢が確認できた。

 ヘッドライナーが3アーティストすべてUK出身という今年のフジロックで、ザ・シンズを含め、希少なUSインディ・アクトとして一際注目となったM.ウォードのステージ。ロック、カントリー、フォーク、アメリカーナ、ソウルを融合し、卓越したソングライティングとポップ・センスで年々進化を見せていく、00年代USインディ/オルタナティヴ・ロックの申し子の二つの顔を堪能できた2日間となった。

M. Ward LIVE at Fuji Rock Festival ’12
To Save Me
Four Hours in Washington
Poison Cup
I Get Ideas
Me and My Shadow
Primitive Girl
Requiem
Rollercoaster
Bean Vine Blues, No. 2 (John Fahey cover)
Rave On (Buddy Holly cover)
Chinese Translation
Never Had Nobody Like You
Vincent O’Brien
To Go Home (Daniel Johnston cover)
Roll Over Beethoven (Chuck Berry cover)
Big Boat

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