<ライブレポート>ano、武道館公演で打ち明けた“呪い”と満員のファンに伝えたメッセージ「全部、全部、大丈夫になるよ」

2025年9月9日 / 19:00

 アーティスト活動5周年を迎えたanoが、9月3日にキャリア初となる日本武道館公演【呪いをかけて、まぼろしをといて。】を開催した。

 今年6月にリリースした2ndアルバム『BONE BORN BOMB』を提げた東名阪Zepp TOURのファイナルからは2ヶ月ぶり。武道館は観客席を360度解放した円形のセンターステージが設置されており、開演までは八角形の巨大なLEDスクリーンがステージを覆っていた。

 開演時間となるとスクリーンに砂嵐が映し出され、場内が暗転。anoによる「とにかく生きてほしい」というメッセージが流れた後、「呪いをかけて、まぼろしをといて。」というタイトルが映し出されると、超満員の観客から拍手が上がった。そして、センタステージを囲むように四隅に配置されたバンドメンバーが演奏を始めると、炎が立ち上がる中でLEDスクリーンが上昇し、“骨”をモチーフにした巨大な翼を背負ったanoがステージに登場。さらに赤いチャイナドレスにジャージのパンツを合わせた8人のダンサーも加わり、「ちゅ、多様性。」「許婚っきゅん」という誰もが知ってるヒット曲で明るくポップにライブをスタートさせた。続く、「F Wonderful World」ではラップをしながらのスキップで花道を歩き、背中を見ることが多くなる観客との距離を縮めつつも、中指を立てデスヴォイスを繰り出し、そのままシームレスで「Bubble Me Face」に繋いだ。2曲をマッシュアップしたような構成となっており、フロアがスモークで包まれたかと思いきや、幻想的なシャボン玉が浮かぶというカオティックな展開の中で、anoは満員となった客席をぐるりと見回し、「会いに来てくれてありがとう!」とシャウト。観客は手を挙げながらジャンプを連発し、まるでフェス会場のような盛り上がりをみせた。

 「こんなにたくさんの人が集まってくれてありがたいです」と改めて感謝の言葉を伝えたanoは、「今日は一瞬で終わってしまうので、とにかく出し切って」とだけ話すと、黄色のジャージにサングラスをつけたダンサーと踊った「スマイルあげない」では「anoちゃーん」というコールが湧き上がり、「愛してる、なんてね。」ではミラーボールが回転するフロアでクルクルと周り、飛び跳ね、自由自在にパフォーマンス。そして、「涙くん、今日もおはようっ」のサビでは観客が一斉に手を挙げて左右に降りながら、「武道館!」と声をあげ、楽曲の後半では<らららららん らんらんららん>のシンガロングも発生。会場全体が多幸感に包まれる中で、anoは「バイビー」と言いながら手を振ってステージを後にした。

 ここまでの7曲は全てハンドマイクでのパフォーマンスだったが、部屋から草原、ホテルの廊下、廃墟の遊園地と様々な扉を開ける映像を挟み、場面は一変。水色の小さな灯りがいくつも浮かび上がる白いワンピースに着替えたanoはアコースティックギターを弾きながら裸足でステージに上がり、「SWEETSIDE SUICIDE」はアコギの弾き語りで歌詞を噛み締めるように熱唱。アニメ『タコピーの原罪』のオープニングテーマ「ハッピーラッキーチャッピー」では学校の机と椅子が置かれたステージで、小さな椅子に座って「なんで?」と繰り返す心の叫びを体現。<あなたの絶対になってあげるね/これが僕の使命だからっ!>というメッセージを送った「YOU&愛Heaven」や、観客に向かって<まだ何だってできるよ>と手を伸ばした「AIDA」を含め、1年間の中で、18歳以下の子どもの自殺がもっとも多い9月1日に近い日の公演だからこそのニュアンスで心に響くものがあった。

 バンドによるインタールードを経て、場内を照らす真っ赤なサーチライトをバッグにアコギをエレキギターに持ち替えたanoがシャウトを合図に、ライブは後半戦へと突入。「デリート」では「”あのちゃんは1人で武道館なんかに立てないよ”って言ってきたアーティストども! ザマーミロ、バ~カ!」と言い放ち、「一緒にムカついてもらってもいいですか?」」と呼びかけた「普変」ではアンチのコメントがプリントされた白いウィングハート型の紙飛行機が場内を舞う中で怒りや苛立ちをぶつけた。さらに、「誰が一番気持ち悪くて狂えるか、僕に見せてくれ!」と煽った「猫吐極楽音頭」ではデスヴォイスやスクリームを操りながら、ネズミのお面を被った着物姿のダンサーと踊り、「骨バキ☆ゆうぐれダイアリー」では骨太のバンドサウンドが打ち出される中で大きな炎が上がり、場内はまさに熱気と狂乱の渦に包まれていった。

 息を切らしながら武道館のセンターステージに倒れ込んだanoは「ここで寝るの、めっちゃ気持ちいい!」と笑顔で声を上げると、「久々の曲をやります」という言葉から、インディーズ時代にリリースした「絶対小悪魔コーデ」へ。ステージには、ロリータやガーリィーなど、4体のスタイリングが運び込まれ、間奏中にスクリーンが降り、生着替えを実施。やがて、スクリーンが再び上がると、そこには、ペーパードールの着せ替えを前後に背負ったanoが! パンキッシュでアヴァンギャルドでありながらもポップで、なおかつ、ユーモアがある彼女らしいセンスで観客を楽しませた。

 そして、SFチックな衣装のダンサーを従え、拡声器を使ってパフォーマンスした「ロりロっきゅんロぼ▽」(▽=白抜きハート)の後のMCでは、インダストリアルなサウンドをバックに「僕がずっとずっと守り続けてきたこの絶対聖域を今日は君と共にできて嬉しいです。これからも絶対聖域、守り続けるので。君と僕がいれば、そこは絶対聖域です」と語り、歌詞やタイトル、イラストが入ったビックTシャツ1枚に裸足という姿で「絶絶絶絶対聖域」をパワフルにエネルギッシュに歌い上げて本編を締め括った。

 鳴り止まない拍手と“あのちゅーる”というアンコールに応え、anoはチェックのパジャマ姿でセンターステージへ再登場し、日本武道館公演開催記念として制作された両A面シングルから「ミッドナイト全部大丈夫」を初披露。<まぼろしだって いつかはとけるはずだわ/呪いをかけておくれよ>というライブタイトルとリンクしたフレーズに耳を澄ませていると、一瞬だけ演奏が止まり、ピンスポットが当たったanoが<全部、全部、大丈夫になるよ>とつぶやいた。音源では歌詞カードには表記されてないが、<赦すよ>という言葉だったが、子守唄にように優しく歌かける<大丈夫 大丈夫 大丈夫さ>というフレーズも含めて、この日、武道館に集まった観客にはとにかく「大丈夫だよ」という言葉を伝えたかったのではないかと思う。

 最後のMCでは、この日の公演を振り返りながら「人がたくさんいて嬉しいですけど、大きさじゃないなって、やってて思いました。誰と一緒に同じ景色を見るかとか、どう生きてきたかとか、何を歌うかとか。そういう大切なことに改めてライブやってて感じることができました」と観客にゆっくり語りかけた。そして、「お前は笑うな」「お前は幸せになるな」「お前は普通じゃない」という他人の言葉による“呪い”にかかっていることを吐露。「ぼくは復讐をするためにこの仕事を始めて。誰かを笑顔にしようとか、誰かを救おうとか、誰かのヒーローや希望になろうとか、何にも思ってなくて。ずっとずっと自分にかけられた呪いを、自分の呪いのパワーで復讐するためだけのためにやってて」と正直な思いを語り、「そんな復讐劇にこんなにたくさんの人が僕を見つけてくれて、好きでいてくれて、音楽を聴いてくれて。気づいたら、ぼくもライブに来てくれる一人一人のことを考えることが多くなって。今、一緒に呪ってくれてるなと思えてます」と独特の表現で感謝を伝えた。

 さらに、心ない言葉を浴びせてくれる人々に対して、「今日、少しでも復讐が果たせたかなと思うと気持ちいいです。けど、僕が僕の敵を倒していくように、あなたを傷つけた相手を僕が呪ってやりたいなと思います。僕が呪うし、あなたはあなたの敵を自分で倒します。必ず倒せるので大丈夫です。自分の力で倒してください」とエールを送った。ここで、360度を詰め尽くした一人一人の“あなた”を見渡したanoは、「いつも敵ばっかりだなと思って生きてるんですよ。もっともっと見返したい、ザマーミロって言いたい。そう思うんだけど、どこかで挫けそうになるんですよ。でも、みんなが僕のストッパーになってくれていて。こいつらがいれば、もっともっと僕は強くなれるし、大好きな歌を武器に、ぶん回して蹴散らしていけるなと思います」と胸を張った。そして、「まだまぼろしが解けないうちは、一緒に同じ景色をまた見てくれたら嬉しいです。あなたたちが死にたいと思った時、消えたいと思った時、逃げたいと思った時、死ななかったからここにいます。死ぬことを諦めてくれたから、僕はここで君と一緒にいることができています」と語り、「僕は武道館でこれを言いたかったです。生きてくれて、ここまできてくれてほんとうにありがとう。よく頑張りました。これから絶対大丈夫です。ついてきてください」という言葉に、会場からはこの日一番の温かく大きな拍手が送られ、<僕だけの武器突き刺して/地獄でも生きてやるんだ>というラインが響き渡る「Past die Future」でanoの人生を賭けた復讐劇の武道館編は幕を閉じ、「また必ず生きて会いましょう」「また絶対聖域で会おう」と再会を誓ってステージを後にした。

Text by 永堀アツオ
Photo by 横山マサト

◎公演情報
【呪いをかけて、まぼろしをといて。】
2025年9月3日(水)東京・日本武道館

<セットリスト>
1:ちゅ、多様性。
2:許婚っきゅん
3:F Wonderful World
4:Bubble Me Face
5:スマイルあげない
6:愛してる、なんてね。
7:涙くん、今日もおはようっ
8:SWEETSIDE SUICIDE
9:ハッピーラッキーチャッピー
10:YOU&愛Heaven
11:AIDA
12:デリート
13:普変
14:猫吐極楽音頭
15:骨バキ☆ゆうぐれダイアリー
16:絶対小悪魔コーデ
17:ロりロっきゅんロぼ▽
18:絶絶絶絶対聖域

En1:ミッドナイト全部大丈夫
En2:Past die Future

【ano HALL TOUR 2026】
2026年3月07日(土)神奈川・厚木市文化会館
2026年3月14日(土)愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
2026年3月28日(土)宮城・東京エレクトロンホール宮城
2026年4月04日(土)香川・サンポートホール高松 大ホール
2026年4月19日(日)福岡・福岡市民ホール 大ホール
2026年5月09日(土)広島・JMSアステールプラザ 大ホール
2026年5月16日(土)新潟 ・新潟テルサ
2026年5月22日(金)北海道・札幌市教育文化会館 大ホール
2026年5月31日(日)大阪・グランキューブ大阪


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