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Saucy Dogのホールツアー【Saucy Dog HALL TOUR 2025 ONE FOR hALL, hALL FOR ONE one TOUR】の東京公演が、2025年7月15日・16日の2日間、東京ガーデンシアターで行われた。
4月の金沢からスタートし、この東京が10都市目。この東京公演が終われば、残すは8月の沖縄・那覇での2デイズを残すのみとなる。2021年、2023年のホールツアーに続き3度目となるこの会場でSaucy Dogの3人が見せたのは、これまで以上にオーディエンスと近い距離で、まるでライブハウスのようにホールでのライブを繰り広げる、進化した姿だった。
ステージに登場した石原慎也、秋澤和貴、せとゆいかの3人がドラムセットの近くに集まり気合いを入れると、「君ト餃子」からライブは始まった。「馬鹿みたい。」、そして「現在を生きるのだ。」と、手拍子やシンガロングで客席と一体となりながら進んでいく序盤。ステージの装飾も、照明演出も、これ以上ないほどシンプル。3人の鳴らす音と歌だけがまっすぐに飛び込んでくる。と、ステージの頭上から真っ白なセットが降りてくる。球体だったり階段みたいな形だったり、さまざまな形状のオブジェが並んでいる。それに合わせて照明も色鮮やかに変化。そうやって場面転換がされていくに従って、ライブもどんどん表情を変えていく。1本のライブがまるで物語のようにつながっていくのだ。
せとの叩き出すビートと「お手を拝借!」という石原の言葉にてどでかい手拍子が巻き起こった「優しさに溢れた世界で」を披露すると、ここで最初のインターバル。途端に客席からメンバーの名前を呼ぶ声が飛ぶ。それを聞いて「はっはっはっは!」と「魔王みたいな」笑い声を上げる石原。「すごい声だな、ありがとな」と声の主に語りかけると、客席からの声はますます大きくなった。
せとが「私たちは『私たちだけじゃなくて、みんなだけじゃなくて、一緒に楽しみたいな』とよく言ってるんやけど、そこにもう1個、今日ライブを観てくれたみんなが、今日の夜とか明日の朝とか、優しい気持ちで過ごせるような日になればいいなと思いながらここまで回ってきました」と今回のツアーに託したものを語る一方、早くもファイナルに思いを馳せてギターで「たった今見つけた」という「沖縄の音階」を爪弾いていた石原は「夏ですねえ」と語りかける。「みんな、夏休みはどこに行くんですか?」という言葉に客席にあちこちから「沖縄!」とか「四国!」とか地名を叫ぶ声が上がる。「塾!」「万博!」と重なる声にまるで友達と話をするようにリアクションする石原。その話にせとも加わって、めちゃくちゃフレンドリーなムードが生まれていった。
そんな会話から「僕にとっての夏休みはこんな感じだったなっていうのを歌にしました」と歌われるのは「なつやすみ」。さらに秋澤のベースラインから「曇りのち」へ。と、〈何もかもが上手く行かない〉と歌ったところで演奏が止む。「これ、マジでやる?」と石原。そして舞台袖に向かったかと思うと、けん玉をもって帰ってきた。「これやろうって言ったの俺じゃないからね!」と言いながら、突然のけん玉チャレンジタイムが始まる。「宇宙一周」に挑戦するのだが、なかなか「上手く行かない」。「がんばれ!」の声が飛ぶなか、今度は〈いずれ上手く行くはず〉のところで再挑戦。何度か失敗しながらも今度は見事成功させ、会場中からこの日いちばんの拍手が湧き起こった。何事もなせばなる、である。そんな一幕も挟んでライブは続く。「くせげ」を経て届けられた「シンデレラボーイ」ではイントロが鳴った瞬間から歓声が起き、美しいハイライトを描きだしたのだった。
ここで恒例のアコースティックコーナーへ。石原は「すごかったね」と先ほどのけん玉の成功を反芻している。このコーナーでは今回、全国各地でその土地のご当地CMソングを弾き語りで披露してきたのだが、「東京のご当地CMが見当たらない」ということでSaucy Dogの宣伝をすることに。「『クレヨンしんちゃん』の主題歌、決まりましたー!」という喜びの叫びとともに、8月1日に配信リリースされることが前日に発表されたばかりのその主題歌「スパイス」の一節が披露し「みんなの苦しいこととか辛いことも人生のスパイスになったらいいな」と曲に込めた思いを語ると、会場は割れんばかりの拍手喝采に包まれた。
ここで石原から「和貴、喋っていいよ」と振られた秋澤のターンに。会場のフロアごとにコール&レスポンスを行われていく。秋澤らしい朴訥としたトーンだが、オーディエンスは全力で応えていた。その後、せとが歌う「エピローグ」、そして石原が歌う「film」をアコースティックで演奏する3人。「エピローグ」では、せとが歌詞を飛ばすハプニングが起きたのだが、それに対する石原(「ちょっとイントロやり直したいと思ってたんだ!」)やオーディエンスのリアクションも含めて、とてもあたたかな雰囲気が心地よかった。
そしてここからライブは怒涛の後半戦へ。美しい映像をバックに披露された「この長い旅の中で」から、秋澤のベースが唸りを上げる「雷に打たれて」へ。レーザー光線が飛び、今回の真っ白なセットはこのためのものだったのか、と納得したプロジェクションマッピングを駆使した演出も大迫力でライブを盛り上げていく。「俺たちの歌が、あんたの救いになったらいいなと思ってる。だから今日は、あんたがSaucy Dogを聴いてくれているその間だけは、俺たちがあなたのヒーローになりたい!」――石原の叫び声が会場に轟き、「夢みるスーパーマン」へ。前のめりなビートと塊のようなバンドサウンドがまっすぐに投げ込まれ、オーディエンスのボルテージは最高潮へ。せとが地鳴りのようなドラムを叩き「ゴーストバスター」が繰り出される頃には、東京ガーデンシアターはライブハウスそのものの熱気に包まれていた。
終盤、「よくできました」を終えた石原は、「Saucy Dogはこうやって来てくれるあなたがいるからこそライブができている。観に来てくれる人がいなかったら、なんでやってるんだろうなってなっちゃう」と客席に語りかけ、3人だけでツアーを回っていた頃のこと振り返り始めた。秋澤も「辛かった」とその当時のことを思い起こす。「そういう時期を乗り越えたからみんなに何かを言えるわけじゃない。みんなはみんなで辛いことがあっただろうし、全部をわかってあげられるわけじゃないけど、その心のなかにSaucy Dogがちょっとでも長く残ってくれたらいいなって思うんだよね。あなたの心の容量を広げられるようなバンドでありたいと思ってるんだよね」。石原はそう思いを伝えると、本編最後の曲「おやすみ」を歌い始める。感情を溢れさせるような歌声と演奏はとても力強く、そして繊細だった。
その後アンコールでは「すっごい季節外れなんですけど」と言いつつSaucy Dog初のクリスマスソングとなった「コーンポタージュ」を披露。そして「最後はみんなで一緒に歌いましょう!」と始まった「Be Yourself」でライブはフィナーレを迎えた。まっすぐに思いを伝え、まっすぐに音楽を届け、会場中の心にあたたかな灯をともしてみせた3人は、充実の表情でステージから去っていったのだった。
Text:小川智宏
Photo:toya
◎公演情報
【Saucy Dog HALL TOUR 2025 ONE FOR hALL, hALL FOR ONE one TOUR】
2025年7月15日(火)16日(水)
東京・東京ガーデンシアター
<セットリスト>
01. 君ト餃子
02. 馬鹿みたい。
03. 現在を生きるのだ。
04. シーグラス
05. 優しさに溢れた世界で
06. なつやすみ
07. 曇りのち
08. くせげ
09. シンデレラボーイ
10. エピローグ
11. film
12. この長い旅の中で
13. 雷に打たれて
14. 夢みるスーパーマン
15. ゴーストバスター
16. poi
17. よくできました
18. おやすみ
EN1. コーンポタージュ
EN2. Be yourself
◎リリース情報
「スパイス」
2025/8/1 DIGITAL RELEASE
https://saucy-dog.lnk.to/spice
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