<わたしたちと音楽 Vol.61>鈴木涼美が語る、自分の愚かさも人の愚かさも、抱えて生きていく

2025年8月2日 / 12:00

 【ビルボード・ウィメン・イン・ミュージック】(WIM)の日本版実施に伴い展開されている、独自の観点から“音楽業界における女性”にフォーカスしたインタビュー連載『わたしたちと音楽』。Vol.61となる今回は、作家の鈴木涼美が登場した。

 学生時代にAV女優を経験し、日経新聞の記者を経て、現在は作家として活躍する彼女。“女性であることの旨み”を利用してきたほうだと話すと、「AV女優やホステスって基本的には女性の特権的な仕事ですし。そういう匂いをずっと持って新聞記者もやっていたし、大学院でも『AV女優の社会学』という論文を書いていたので、ある種、研究者としても女性に特権的な立ち位置から書いているところがありました。ずっと“女性であること”は意識していた気がします」と述べた。

 そして昨年、母親になったことで、ジェンダーの問題について考え直す良い契機になったと述べると、「女性であることの“傷の蓄積”に自覚的になるのと、今を楽しむことは相反せず同時進行であり得るんだけど、過度に楽しみばかりを強調すると女性の被害に着目したい人の声をかき消してしまうかもしれない。逆に傷や弱みを強調してばかりいると今女であることを楽しんでいる人たちの空気感を拾えない……書くときに、そこは常に揺れています。ただ、どちらも否定しないように、その間の線を縫うようにして書いている感じがすごくするんですよね」と話した。

 最後に子どもに伝えたいことを問われると、「“愚かさ”みたいなものを否定せずに、人間の愚かさを愛せるような子供になってくれたほうが、“生きていくのが辛い”“この世界を否定したくてしょうがない”という状態でいるよりは良いのかなと思います」と語ると、「“別に人は正しいようには作られていない”ということは教えていきたい。私の生き方を見ていて、彼女がそれを学んでくれるといいなと思います」と締めくくった。

 インタビュー全文は特集ページより確認できる。ビルボード・ジャパンのApple MusicとSpotify、YouTubeでは、このインタビューがポッドキャストとして配信中だ。また、【ビルボード・ジャパン・ウィメン・イン・ミュージック】の特設サイトでは、これまでのインタビューやプレイリストなどをまとめて見ることができる。

 2007年からアメリカで開催されている【ビルボード・ウィメン・イン・ミュージック】は、音楽業界に貢献した女性を表彰するアワードで、2023年版は3月に実施された。日本では、インタビューやライブ、トークイベントといった複数のコンテンツから成るプロジェクトとして2022年秋にローンチした。

Photo:Shinya Kato


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