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HYDEの自身最大規模のワールドツアー【HYDE [INSIDE] LIVE 2025 WORLD TOUR】が日本を皮切りに開幕した。
2012年、世界10か国14都市17公演を巡ったワールドツアーの一環として、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで日本人アーティストとして初の単独公演を成功させたロックバンド・L’Arc-en-Ciel。そのボーカリストであるHYDEは、バンドと並行してこれまでVAMPS、THE LAST ROCKSTARS、さらにはHYDEソロとして国内外で積極的にライブ活動を行ない、功績を積み重ねてきた。世界も注目する日本のロックレジェンド・HYDEが、各国からの熱烈なラブコールに応えて、日本、ラテンアメリカ、アジア、ヨーロッパのエリアを5か月に渡って廻り、16都市24公演を行なう自身最大規模のワールドツアー【HYDE [INSIDE] LIVE 2025 WORLD TOUR】を開催。ここでは本ツアーの日本公演の中から、6月25日にZepp Haneda(TOKYO)で行なったライブの模様をレポートする。
今回のツアーは、昨年HYDEが5年ぶりにリリースしたキャリア史上もっともヘビーなアルバム『HYDE [INSIDE]』を掲げて行なった【HYDE [INSIDE] LIVE 2024 WORLD TOUR】の続編という位置づけとなる。昨年11月、LA公演でツアーを終えたHYDEのじつに半年ぶりのソロ公演となった。
端麗なルックス、ボーカリストとして突出した才能はもちろん、HYDEのライブは、カオス状態になったライブ空間とともに、HYDEの美学を散りばめた芸術的なショーが味わえるのが大きな魅力だ。この日も、開演前からそのショーはスタート。ステージを覆う幕に表示されたデジタル時計が開演時間までのカウントアップを刻み、HYDEを象徴する悪魔の数字“666”(16:66=17:06)が浮かび上がったところからオーディエンスは非日常空間、HYDEのINSIDEへと誘われていく。
幕が開き、まず目に飛び込んできたのはサーカスの見世物小屋を彷彿させるセットとHYDEの文字を象った電飾。その中央には、蛇と十字架のモチーフとスカルが刻み込まれた巨大な演説台がそびえ立っている。舞台上にはすでに5人のバンドメンバーがスタンバイ。その全員がマスクマンで、目を赤く光らせ、不気味な雰囲気を醸し出している。このメンバーたちのインパクトあるルックスも、HYDEのアイデアから生まれたものだ。物々しい雰囲気が漂うなか、深くフードをかぶり、顔半分をマスクで覆ったHYDEが演説台の登頂から姿を現わすとフロアは絶叫。この日のライブは「LET IT OUT」でスタートした。重厚なバンドサウンドをバックに、頂から会場を見下ろしながら、HYDEは歌と指先の動きだけでオーディエンスを扇動していく。その演説台からステージに降り立ち、「AFTER LIGHT」、「I GOT 666」を勢いよく連発すると、フロアからは大声で歌い叫ぶ声が立ち上がり、辺り一面にヘドバンが広がる。観客たちは日頃の鬱憤をはらすかのように自分のINSIDEにあるものを声や肉体を使って解き放っていく。
「元気そうで嬉しいです。今夜もはっちゃけようぜ! まだまだ涼しい顔してるけど、グチャグチャにしてやるからな」
HYDEはそう宣言したあと、「DEFEAT」を歌い出す。妖艶な歌いだしから、顔の半分を覆っていたマスクを自ら剥ぎ取ると、HYDEのINSIDEにある凶暴で激しい野生がどんどん炸裂する。キャッチーなサビのメロディーで狂気をさらに倍増させたあと「SICK」では拡声器を片手に凶暴なアジテーターへと変貌。舞台の両サイドに置かれていた大樽の上に飛び乗って、観客を煽りに煽ってフロアをグチャグチャにしていく。後半には、大樽からスピーカーアンプによじ登り、そこから身を乗り出し、ダイブしそうな姿勢で拡声器を掲げ「もっとはっちゃけろ!」といわんばかりにサイレンを鳴らす。サイレン音でさらにテンションが高まっていくフロアに向けてHYDEは「TAKING THEM DOWN」を投下。観客を激しく扇動して、熱く燃えたぎるようなロックなライブ空間を作りながらも、HYDEが持っている拡声器のホーン部分にはツノがちょこんと生えているのが、なんともユニーク。このポップセンスは、サウンドは激しくてもどこかにキャッチーで美麗なメロディーが流れるHYDEの音楽に通じる部分でもある。そのHYDEが舞台中央のお立ち台に立ち、挑発するような視線でズボンを下にずらすと、腰骨まわりに入れたタトゥーが露わになる。クールな大人の色気で観客をたっぷり魅了したあとは、フラッグを肩に担ぎ、その旗をなびかせながら「ON MY OWN」を歌唱。HYDEならではの妖艶な歌い回しから始まり、歌は後半に向かってHYDE自身の内面を吐き出すように激情する。それに合わせてステージで白煙が吹き出していったころはなんともドラマチックだった。
この後、ライブはピアノのロマンチックな旋律に支配され、場内の熱狂はゆっくりと沈静化していく。しかし、徐々にノイズが混じり始め、不穏な空気が流れ出したところで、暗闇の中、始まったのはTVアニメ『鬼滅の刃』柱稽古編のED主題歌「永久 -トコシエ-」だった。闇を這いつくばるような低音ボイスで<天を焦がす炎~>と、HYDEがこの日初めて日本語詞メインの曲を歌唱しはじめると、オリエンタルなテイストとダークなメロディーが相まって、荘厳な儀式が始まるような緊張感が会場を襲う。徐々に激しさを増していくサウンドが最後、悟りを開いたように壮大な展開を見せたとき、お立ち台の下からライトを浴びて歌うHYDEは誰も近寄れないほど神々しいオーラを放ち、その尊さは圧倒的だった。TVアニメを通じてこの曲を知っている海外ファンが、この純日本産のヘビーロックを生で体感したとき、どんなリアクションをするのか。HYDE自身も血が騒ぐ選曲なのだろう。
HYDEのライブといえば、カバーの選曲も楽しみの1つ。これまでスリップノットやデュラン・デュラン、リンキン・パークなどのカバーを披露してきたHYDEはこの日、マイ・ケミカル・ロマンスの「Welcome To The Black Parade」を選曲。テンポを落としたところから、パンキッシュに駆け抜けるHYDE流のアレンジに、会場は大いに盛り上がった。
「みんな、今日が最後になってもいいぐらい燃え尽きたほうがいいんじゃない? ここで1つになろうぜ。“3,2,1”でジャンプするよ」
そう叫んだあと、観客をその場に座らせ、HYDEの号令とともに一斉にジャンプして「6or9」になだれ込むと“人生は喜劇、現実は悲劇”と歌うこの曲に合わせて観客たちはコール&レスポンスを入れ、タオルを頭上で振り回しながら一体感を高めていく。サークルモッシュで熱狂するフロアに向け、「MAD QUALIA」を投下すると、HYDEも狂ったようにヘドバンを始める。ステージ上では白煙が噴き上がり、巨大なスカイダンサー(吹き上げ人形)が踊る。バンドメンバーも舞台をあちこち練り歩きながら観客を煽っていくと、そこにはライブハウスとは思えないド派手なロックショー空間が誕生。その空間にさらに火を付けるように、曲中HYDEはフロアに降臨した。観客が伸ばした手を掴んで柵の上に立つと、HYDEを目がけてクラウドサーフがあちこちで多発。フロアで人々がぐしゃぐしゃになる中「DEVIL SIDE」へ突入すると、今度はオーディエンスが一糸乱れぬ動きで団結して身体を前後に揺らして、ものすごい一体感を作ってみせる。
メロディックなキラーチューンで楽しく一つになったフロアの空気を破壊するように、HYDEがニューメタル/モダンメタルコアの領域まで足を踏み入れた最強のヘビーチューン「SOCIAL VIRUS」を投下。「もっとカオスが見たい」と呪文を唱えるように叫んだあと、HYDEはマスクマンたちが鳴らす重低音に合わせて身体を折り曲げ、声を歪ませて激しいシャウトを繰り返す。ステージとフロアに文字通りカオスな空間が生まれた後は「MIDNIGHT CELEBRATION II」を連投。HYDEは何かにとりつかれたように狂ったようにステージ上で大暴れする。
最後は舞台に仰向けになって倒れ込む。緊急事態を知らせるように赤色灯がクルクル回りだすと、せつなく響くピアノが聞こえてきて、寝転んだままHYDEが泣き出しそうなほどか細い美しい声で歌い出したのは「LAST SONG」だった。この曲はHYDEが「ライブのラストにハードなロックバラードを歌いたい」ということで制作した1曲。ウィスパーボイスを使った静かな歌が徐々に狂気を宿し、オーディエンスの感情を揺さぶっていく。深紅の紙吹雪が天井から大量に舞い散るなか、映画のワンシーンのようにHYDEがステージにひざまずく。そこから、声の限り壮絶な絶唱を繰り返し、泣き叫ぶような声を何度かあげたあと、床に倒れこむ姿は胸の奥が抉られるほど壮絶で、息をするのを忘れるほど美しかった。HYDEの激しい凶暴さのINSIDEに潜む刹那的な美しさを、渾身のパフォーマンスで表現したこのクライマックスは、まさに圧巻のひと言。このライブのハイライトとなった。床に倒れたHYDEの身体の上に降り積もる紙吹雪を、オーディエンスが放心状態で見つめるなか、本編は静かに幕を閉じ、終了した。
再度幕が開いたステージでは、バンドメンバーが次々と華麗なソロ演奏を披露。その演奏が「PANDORA」につながると、HYDEがいきなり2階席の通路に現われ、観客は大興奮。歌いながら客席内を進み、手に持ったライフル型の水鉄砲で1階のフロア、2階席の観客を次々と狙い撃ち。そのライフルの先端にも小さなツノがついていた。2階から姿を消したと思ったら、次は1階のPA卓の前に突如出現して、1階フロアを驚かせる。ステージを離れ、観客の近くに現われるという粋なサプライズでファンを大いに楽しませたあと、HYDEはステージへと移動した。
「命削って歌ってます。僕もいい歳だから、好きなことだけをやりたい。好き勝手やってるから、ある意味ふるいにかけてると思ってます。やりたいことだけやってたら、嫌がる人もいると思うから。でも、それでいいと思って。それでも残ってくれるコアな人たちがいるから。今日のライブが誰かの胸に刺さってくれることを祈ってます。悔いの無いように残り3曲、ビシッときめよう。全集中で。魂の歌と、君たちの情熱で。セーブすんなよ!」
このツアーにかける気持ちをエモーショナルに伝えたあとは『鬼滅の刃』柱稽古編のOP主題歌「夢幻」、「GLAMOROUS SKY」を畳みかけ、ラストはパーティーチューン「SEX BLOOD ROCK N’ ROLL」でオーディエンスのボルテージをピークまで引き上げていく。そして「まずは日本回ってきます。首洗って待ってろよ!」というおなじみのセリフと投げキッスを残して、HYDEは舞台を後にした。幕が閉まると、そこにはTHE ENDの文字が映し出され、この日のショーは閉幕した。
これから日本中を飛び回り、国内の夏フェスに次々と出演するHYDEは、その勢いのまま世界中のファンに会いに行く。首を洗って、会える日を楽しみに待っていて欲しい。
Text by 東條祥恵
Photo by 石川浩章
◎公演情報
【HYDE [INSIDE] LIVE 2025 WORLD TOUR】
2025年6月21日(土)、22日(日)、24日(火)、25日(水)東京・Zepp Haneda(TOKYO)
2025年7月6日(日) Zepp Sapporo
2025年7月12日(土)、13日(日)福岡・Zepp Fukuoka
2025年7月16日(水)、17日(木)大阪・Zepp Osaka Bayside
2025年7月23日(水)、24日(木)愛知・Zepp Nagoya
2025年8月9日(土)、10日(日)神奈川・KT Zepp Yokohama *両日ともBEAUTY & THE BEAST
2025年8月23日(土)、24日(日)宮城・Sendai PIT
2025年8月29日(金)メキシコシティ (メキシコ)・Circo Volador
2025年9月5日(金)サンティアゴ (チリ)・Caupolican Theatre
2025年9月7日(日)ブエノスアイレス (アルゼンチン)・Palermo Groove
2025年9月14日(日)サンパウロ (ブラジル)・Carioca Club
2025年11月1日(土)ジャカルタ(インドネシア)・Tennis Indoor
2025年11月14日(金)パリ (フランス)・Bataclan
2025年11月18日(火)ケルン (ドイツ)・Essigfabrik
2025年11月20日(木)ユトレヒト (オランダ)・TivoliVredenburg
2025年11月23日(日)ストックホルム (スウェーデン)・Berns
◎イベント情報
【HYDEPARK 2025】
2025年6月28日(土)、29日(日)東京・Zepp Haneda(TOKYO)
2025年7月19日(土)、20日(日)大阪・Zepp Osaka Bayside
2025年7月26日(土)、27日(日)愛知・Zepp Nagoya
開園時間:
土曜日 13:00~21:00
VR映像 視聴開始時刻
13:10 / 13:50 / 14:30 / 15:10 / 15:50 / 16:30 / 17:10 / 17:50 / 18:30 / 19:10 / 19:50 / 20:30
日曜日 11:00~19:00
VR映像 視聴開始時刻
11:10 / 11:50 / 12:30 / 13:10 / 13:50 / 14:30 / 15:10 / 15:50 / 16:30 / 17:10 / 17:50 / 18:30
チケット:4,500円(税込 / 整理番号付 / ドリンク代別)
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