<ライブレポート>SawanoHiroyuki[nZk]、プロジェクト始動10周年記念ライブに西川貴教/スキマスイッチ/岡崎体育/ReoNaら集結 全11組のゲストが彩ったメモリアル公演

2025年6月17日 / 12:00

 作曲家の澤野弘之によるボーカルプロジェクトSawanoHiroyuki[nZk]が、プロジェクト始動10周年を締めくくる単独公演【SawanoHiroyuki[nZk] 10th Anniversary LIVE “A=Z”】を神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールにて開催した。この日は[nZk]楽曲に参加したアーティストから計11組がゲストとして登場。澤野率いる5人編成バンドとともに、鮮やかなライブを展開した。

 オープニングSEに「[nZk]o1」が流れると、ステージ上に配備された4つのミラーボールが一斉に回り出す。会場一帯が光のきらめきで満ちるなか、バンドメンバーが定位置について生演奏にシフトすると、澤野がステージに登場。客席に向かって笑顔で手を振り、クラップを促した。そして彼がピアノの前に着くとSennaRinがステージに登場してラップを加え、ドラマチックなイントロダクションで観客を一気に[nZk]の世界へと引き込んだ。

 すると、本編のボーカリスト一番手としてLaco(EOW)が登場。果敢に観客を煽り、パワフルかつグルーヴィーな歌声で「NEXUS」を彩り、「Hands Up to the Sky」では豊かなファルセットを響かせた。この日初のMCで澤野は、生憎の雨模様に対して「ライブ日和でとてもいい天気!」と笑わせながら、「天気に左右されることなく皆さんと一緒に楽しみたい」と意気込みを語る。Lacoも「ここからさらに澤野さんの宇宙が大爆発していきますので、皆さんもエネルギーを(ステージに)飛ばしてきてくださいね」と観客に呼び掛け、「FAKEit」を躍動的に歌い上げた。

 続いて登場したのは、[nZk]始動時からボーカリストを務めているmizuki(UNIDOTS)。「aLIEz」「A/Z」と、[nZk]の1stシングル表題2曲を立て続けに披露した。吐息の成分で透明感を作り、可憐さの中に芯の強さを感じさせる声と、澤野楽曲の特徴のひとつとも言えるダンサブルなリズムワークが合わさり、心地よく響く。爽快感と雄大さを併せ持つ「&Z」では観客もクラップを打ち鳴らし、楽曲にさらなるパワーと明瞭な色彩を加えていた。

 2015年に行われた[nZk]ボーカリストオーディションで実力を見出され、2019年にはソロデビューも果たしたTielleがステージに現れると、彼女が初めてボーカルを担当した「Into the Sky」を披露する。英語詞の楽曲をバイリンガルならではの豊かなボーカルワークで色づけ、安定感と迫力を併せ持つ歌声を響かせたかと思いきや、ロックナンバー「gravityWall」では艶やかかつ力強いボーカルで会場を掌握。楽曲のポテンシャルを十二分に引き出した。

 2023年のアルバム『V』で[nZk]に初参加したXAIは、情感に満ちた生々しい歌声で「DARK ARIA 」のメロディをなぞり、観客の意識を引き付ける。クラシックテイストのアレンジはピアノの音色をさらに際立たせ、ボーカルとの相乗効果で美しさと儚さを増幅させた。2曲目には「X.U.」のカバーを届ける。XAIはアッパーな楽曲を凌駕するほどの熱い歌声で会場を煽り、表現の振れ幅で大いに観客の心を射抜いた。

 澤野のピアノ伴奏が始まると、オープニングを飾ったSennaRinがステージに現れ「s-AVE」を歌唱し、続けてTM NETWORK「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」のカバーを披露する。小室哲哉は澤野が高校時代に作曲を始めるきっかけにもなった人物であり、同曲はアニメ映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の主題歌でもある。澤野の音楽家としてのスタートと、ガンダムシリーズの楽曲を担当したというキャリアもリンクした選曲に、SennaRinの神秘的な歌唱が重なった。続く「B-Cuz」ではのびやかな音色と歌唱で会場をあたたかく包み込む。観客のシンガロングもピュアに響き、ライブの折り返し地点に相応しい晴れやかさだった。

 間髪入れずに登場したReoNaは、儚さとミステリアスな空気を兼ね備えたボーカルで、[nZk]との初タッグ曲「time」をエモーショナルに歌唱する。ReoNaが自身のデビュー前から澤野の楽曲を聴いていた旨を明かした後、2023年に澤野から楽曲提供を受けた「SACRA」を初めて澤野とともにパフォーマンスした。透明感のあるピアノの音色と少女性にあふれたボーカルが、桜の花びらがひらひらと舞う景色を想起させる。情景がありありと浮かぶのも澤野楽曲の魅力であることを噛み締める一幕だった。

 [nZk]と同じく2024年に始動10周年を迎えたリーガルリリーのたかはしほのかは、マイクスタンドで「LilaS」を歌う。切なさと強い意志がしたためられた清らかなバラードと、内なる感情をそのまま取り出したような無垢なボーカルが、観客を楽曲の世界の奥深くへといざなう。MCではたかはしが、間違えて偶然澤野とSennaRinのスタジオに入ってしまったことがあるというエピソードも明かし、会場の空気を和らげた。たかはしは最後に、「Avid」のカバーを披露。喜怒哀楽のすべてが滲んだたかはしのボーカルの真髄を味わえる、琴線に触れるアクトだった。

 ここからボーカリストは男性陣へ。NewspeakのReiが“ヒーロー”をテーマにしたミステリアスなダンスロック「INERTIA」をたくましい歌唱と佇まいで体現すると、観客もそれに突き動かされるかのように勇猛なクラップとシンガロングを送った。澤野はMCで、自身がリアレンジしたNewspeakの「White Lies (feat. Hiroyuki SAWANO)」のリリースに触れ、「(自分以外の)人が作った“いい曲”を演奏するのはめっちゃ楽しい」と無邪気に笑う。澤野のライブの魅力は、精巧に作り込まれた楽曲を手練れによる生演奏と生歌唱で聴けることだけでなく、彼のこのカラッとした飾らない語り口を味わえることも大きいだろう。その後Reiは「LEveL」をカバーし、ワイルドかつダイナミックな歌唱で楽曲を盛り上げた。

 バンドによるインタールードを挟み、「never gonna change」のアコギのイントロに乗ってスキマスイッチの両名がステージに現れる。澤野がスキマスイッチとライブで共演するのは2019年、同会場で開催された【澤野弘之 LIVE [nZk]006】以来6年ぶり。常田真太郎はキーボードを弾いて澤野とツイン鍵盤でパフォーマンスし、大橋卓弥も持ち前のハイトーンボイスをのびのびと響かせた。MCでも同世代ならではのテンポのいいトークで会場を沸かし、最後にASKAボーカル曲「地球という名の都」をカバーする。神聖でファンタジックな空気感と、両者のASKAへのリスペクトが美しく花開いた。

 ピアノのインタールードののち、「膏」のエッジの効いたギターのカッティングとともに岡崎体育が登場した。ユーモラスでキャッチーな自身のキャラクターを活かしながらも、曲の凛々しさやメッセージを風通しよく健やかに歌に乗せる。MCで岡崎が「澤野一座に入るのが夢だった」と語り、あらためて同曲に参加できた喜びをあらわにすると、どこか照れくさそうに澤野が話題を変えるという場面も微笑ましい。そして「COLORs」をカバーし、ポジティブかつ情緒のあるロマンチックなシンセポップで会場を満たした。

 トリを飾るのは西川貴教。2018年に澤野が西川へ楽曲提供をしたことをきっかけに、[nZk]のボーカリストとしても参加しており、縁の深い人物だ。西川は8つのミラーボールが回るなかステージに登場し、全身を振り絞るように「天叢雲剣-SKYBREAKER-」を絶唱する。楽曲に宿るパワーを最大限抽出するボーカルパフォーマンスに観客も息を呑んだ。続いての「Claymore」では、西川は観客を盛り上げるだけでなく、澤野を始めとしたバンドメンバーともアイコンタクトを積極的に取る。約30年もの間ソロシンガーとしてステージに立ち続けてきた王者とも言える佇まいで、瞬く間にパシフィコ横浜を圧倒した。

 この日西川は、【大阪・関西万博】の会場より全国ネットで生放送されていた音楽番組『音道楽EXPO』に収録映像で登場し、万博のキャラクター・ミャクミャクのカラーを模した「HOT LIMIT」の衣装もSNSで大きな話題となっていた。ちなみに同番組は、普段西川がレギュラーで司会を務めている深夜音楽番組『音道楽ROOT』のスペシャル版である。そんなプレミアムな放送に収録のみの参加となったのは、このライブへの出演が決定していたから。恐縮する澤野に「ずいぶん前に声を掛けていただいていたので」と西川が返すと、会場からは大きな歓声が沸いた。

 澤野と西川がお互いに対して歯に衣着せぬトークを軽快に繰り広げた後、澤野は「[nZk]が10周年を迎えられたのは皆さんのおかげです。皆さんに楽しんでいただけるように曲を作っていきたいと思っておりますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします」と告げ、西川を初めて[nZk]のボーカリストに招いた「NOISEofRAIN」を届けた。静と動を効果的に用いた楽曲と、それらに奥行きを作り出す気魄溢れる歌唱は、この日を締めくくるに相応しいスケールだった。

 この日参加したアーティスト全員がステージに集合して挨拶をすると、ひとりステージに残った澤野が「素晴らしいメンバーでライブをやれたことが本当にうれしいです。この先も10年、20年と……」と結ぼうとしていたところ、急遽BGMが「膏」に切り替わり、岡崎体育とサポートメンバーが再登場。同曲のMVで披露していたコミカルなダンスを澤野とサポートメンバーが踊り出す。岡崎がマイクを持って声をかけるものの全員が一心不乱にダンスに集中するため岡崎の存在をスルー、さらには西川や会場全員もダンスに興じて岡崎はひたすらにその状況にツッコミを入れ続ける……という、シュールでファニーな光景が広がった。MVよりも澤野のダンスの精度が上がっていたことに歴史の趣を噛み締めながら、まさかの大どんでん返しで[nZk]10周年の幕が閉じた。

 [nZk]の10周年イヤーは終了したが、今年9月には東京国際フォーラム ホールAにて作家活動20周年を祝した【澤野弘之 20th Anniversary Concert × Aniplex】が開催される。澤野がこれまでに手掛けてきた数々のアニプレックス作品の楽曲を、アニメの名シーンに乗せてオーケストラ+バンド編成で届けるというプレミアムな内容だ。これからも澤野はアーティストや映像作品など、様々なプロフェッショナルとタッグを組み、自らのアートセンスを発揮していくだろう。彼の音楽家としての歴史だけでなく、さらなる可能性を感じられるひとときだった。

Text:沖さやこ
Photo:西槇太一、Ryotaro Kawashima

◎公演情報
【SawanoHiroyuki[nZk] 10th Anniversary LIVE “A=Z”】
2025年5月31日(土) 神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホール


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