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「RAINBOW」の最強のリフが鳴った瞬間何かが変わると思った。虹色のメロディ、突き抜けていくような興奮、一斉に上がる携帯のカメラ。画面越しに映るLINNA FIGG(Vo)の歌は、きっとこの瞬間にも誰かのタイムラインを揺らしているのだろう。初っ端から大きな風船が割れたようなテンションである。台湾を含む5都市を巡ってきたSATOHのLIVE TOUR “MILE”、そのツアーファイナルが東京・代官山UNITにて幕を閉じた。
いつも通りだったかもしれないし、いつも以上だったかもしれない。とにかくLINNA FIGGのプレイは衝動的で、ポジティブな輝きがあり、それでいて何かに急き立てられているような勢いがあった。「RAINBOW」で始まったライブは「TOKYO FOREVER」へと繋がり、フロアは早くも激しさを増していく。「みんなの120%の<TOKYO FOREVER>を聴かせてほしい」という言葉に応えるように、会場からは150%の歌が聴こえてくる。まるで演者とリスナーがひとつの回路で繋がっていくような瞬間、SATOHのライブの気持ちよさはこれだ。
3曲目は「21 century boys」。オルタナティブロックとハイパーポップを爽快に融合したようなこの曲で、会場からはうんと大きな歓声が上がる。Kyazm(Gt. / Manipulator)のテクニカルなギターは解放感をもたらし、LINNA FIGGのボーカルはそれに呼応するように一層波に乗っていく。そして「モナリザ」だ。この日二度目の最高のリフ……今年の1月にリリースされた新曲だが、サビでは合唱が起こるなど早くもアンセムへの一途を辿っているように思う。ということで、冒頭4曲目にしてこの高揚感である。もしSATOHを知らない人が突然この場所にワープしてきたら、今がクライマックスだと思ったかもしれない。が、このライブが加速していくのはここからだ。
光のスピードで突き抜けていくドラムと、ボーカル以上にメロディアスなギター。「急げ!!!」は突風のような勢いである。赤いライトもおあつらえ向きで、誰もが血が沸騰するような熱量を感じていたはずだ。彼らの楽曲でも一際アグレッシブなサウンドを聴かせる「OK」も上々である。叩きつけるように打ち鳴らされるドラミングと、地面を覆い尽くすようなベースが不穏な空気を連れてくる。サイレンのようなギターもイカれた雰囲気を醸し出しており、ハンドマイクで歌うLINNA FIGGがカッコいい。続く「Monkeys」を含め、燃えているところにさらにガソリンを投下するようなラインナップである。
「pink head」で景色が変わる。静かな立ち上がり、ループするようなベース、感傷を誘うようなしっとりとしたギターに、曲を終えた瞬間にこぼれ落ちるアンビエンス……抒情的なメロディを聴かせるナンバーで、これまでの火照った身体にすっと染み込んでいったように思う。
「you hate caffeine」も爽やかなニュアンスを感じさせる演奏だったが、この曲を終えた辺りでLINNA FIGGのギターにトラブル。弦が切れてしまったのだ。が、構わず続行。「弦が一個壊れちゃったけど、このまま突っ切る」とのことである。ということで最初に寿命を迎えたのは1本の弦だったが、もちろん勢いが衰えるはずもなく「Aftershow」へ。ダンスミュージックからの影響を含んだこの曲をスイッチにして、この日のライブは終盤へと雪崩れ込んでいく。
「Aftershow」で頭を空っぽにして踊った後、「ゆらせJP」で一層フロア全体が揺れることになる。軽快なタッチのドラムが鼓動を速くさせる中、Kyazmのギターは天にも昇るような飛翔感があり、この日の中でもダントツの爽快感を堪能した。改めてこの曲はSATOHのメロディセンスと無尽蔵なエネルギーが同居した、珠玉の1曲であることを再確認ーーという呑気な感想を抱くのも束の間、フロア中が飛び跳ねた「ライド」で再び記憶が飛んでいく(アウトロのKyazmのギターソロは素晴らしすぎ!)。会場中から歌が聴こえきた「Fuse」のシンガロングは感動的で、最後は「Big Man」で終演。オルタナティブロックからの影響を感じるギターと、どこか気怠そうな歌唱が印象的だが、次第に爆発が連鎖していくような終盤の激しいアレンジに魅せられた。
さて、この日の主役は最後にやってきた。アンコールこそがこのライブのハイライトである。SATOHのメンバーが登場するのを待ちながら、「Fuse」のサビを歌うオーディエンスたち。しばらく時間が経った頃に、暗闇の中でスクリーンに文字が打ち込まれていく。「今いる場所じゃないどこかへ行かなきゃって」「SATOHの新しいフェーズ 新しい世界を作りに行きます」「みんなと一緒に進みたい」というメッセージが記された後、3つの新曲をこの場で披露することをアナウンス。アンコールの1曲目はこのツアーのタイトルでもある共作曲「マイル」である。間違いなく次のリリースでの目玉だろう。アンコールで真っ白のシャツに着替えていたLINNA FIGGは、スポットライトを浴びると神々しいくらいだ。
続く「愛し合うとして」はしっとりとした音色のラブソング。Kyazmのギターは涙を誘うような繊細な響きがあり、語りかけるようなボーカルも次第に熱を帯びていく。<俺はこの時代の中であなたのために死にたい>というリリックが嫌でも胸に突き刺さってくるはずだ。そして「新しいアンセムにしたいから、みんなで歌いたい」という宣言と共に届けられたのが最後の新曲「worldend lovesong」である。ソリッドで狂おしいギターフレーズと、包容力と即効性のあるメロディはまさしくSATOHのシグネチャー。<ベイビー俺はここじゃないどこかで死にたい>という歌は早速フロアに浸透しており、間違いなくライブを経るごとに成長していく1曲だろう。
SATOHは9月3日にEPをリリースする。恐らくSATOHが作ろうとしているのは新しいシーン、新しいモッシュピット、新しい場所、魂を震わせるようなその瞬間である。【REDLINE】や【VIVA LA ROCK】といった大きなイベントへの出演も自信に繋がったはずだ。「ツアーでいろんな街を回ってきて、いろんなライブにも呼ばれて、人生で一番忙しかった。でも、この先の人生で一番暇なひと月だったと言えるように頑張る」(LINNA FIGG)というMCも頼もしい限りである。最後はダブルアンコールに応えて「TOKYO FOREVER」を再演。LINNA FIGGがお客さんをステージに上げ、飛び込ませると次々と他のオーディエンスがそれに続いていく。この波が大きくなるのを期待せずにはいられない。
Text by 黒田隆太朗
Photo by Taichi Kawatani
◎公演情報
【SATOH LIVE TOUR “MILE”】
2025年3月29日(土)愛知・栄R.A.D
2025年4月12日(土)宮城・仙台SHAFT
2025年4月20日(日)大阪・CIRCUS Osaka
2025年4月26日(土)台湾:台北 THE WALL
2025年5月6日(火祝)東京・代官山UNIT
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