<ライブレポート>LUNA SEA、“覚悟の夜”東京ドームで締めくくった35周年ツアーのグランド・ファイナル「光しか見えてないからね」

2025年4月1日 / 20:00

 2025年2月23日、東京ドーム。この日開催されるのは2024年5月から始まったLUNA SEA史上最大規模のツアーの最終公演となる【35th ANNIVERSARY TOUR ERA TO ERA -THE FINAL EPISODE- LUNATIC TOKYO 2025 -黒服限定GIG-】。メンバーがかねてから“覚悟の夜”と呼んできた本公演。タイトルからしてLUNA SEAのこれまで歩んできた歴史が詰め込まれている。前日にLUNA SEAが開催した盟友GLAYと約25年ぶりのツーマン【The Millennium Eve 2025】の余韻がまだ残る中、全国から大勢のSLAVE達(LUNA SEAファンの総称)が黒服を身に纏い、聖地に集結した。

 LUNA SEAにとって東京ドームは2000年の終幕、2007年の一夜限りの復活、そして2010年のREBOOTを迎えた思い出の地だ。また、今回の公演名に含まれている“LUNATIC TOKYO”は1995年に開催された初のドーム公演のタイトルでもある。そんな歴史を頭の中で振り返っていると、会場が暗転。ステージのスクリーンには2000年の【THE FINAL ACT】を含むバンドの歴史を振り返るVTRが流れ、メンバーが会場中央のサブステージからリフトで登場。そのまま花道からメインステージへと移動し、ファンの前で円陣を組む。バンドの気合がビシビシ伝わってくる。

 そして、この記念すべきステージは名曲「LOVELESS」で幕を開けた。数々の名演を彩ってきた『MOTHER』のオープニングナンバーが持つ壮大さは唯一無二。SUGIZOのトリプルネックギターを初め、INORAN(Gt.)、J(Ba)、真矢(Dr.)が生み出す濃密なアンサンブルはいつ聴いても身震いする。圧倒的な世界観の「LOVELESS」から、バンドは「G.」に突入しギアを上げていく。“これぞロック”と言いたくなる骨太で疾走感あふれるサウンドが血をたぎらせる。

 「2025年2月23日、東京ドーム。お前ら会いたかったぜ!【ERA TO ERA】のファイナルとして、俺たちは覚悟を持ってこの場所を選びました。今夜はたとえこの命が尽きようとも、お前たち一人一人の、全員の顔を覚えて帰るぞ!」とRYUICHI(Vo.)が1995年の【LUNATIC TOKYO】での名MCをオマージュすると、そこからバンドは「Dejavu」「DESIRE」と人気曲で畳み掛けていく。ドーム全体がシンガロングで一つになる様子は圧巻そのもの。さらに重厚かつ耽美な「JESUS」が続く。

 「【ERA TO ERA】というタイムリープの旅をともに続けてきたわけだけど、今日はファイナルにふさわしいライブにしたいと思ってます。俺達にしか作れないグランド・ファイナルを共に作りましょう!昨夜はGLAYと盛り上がったけど、今日はその天井をぶち抜いてみたいと思うからついてきてね。それでは、2000年代の扉を開けたこの曲を届けたいと思います」

 RYUICHIのMCからINORANの空間的なギター、そしてJのグルーヴィーなベースが印象的な「gravity」へ。幻想的で美しい音像に酔いしれると、ドラマチックな展開が魅力的な「RA-SE-N」でドームはさらにディープな世界へと引き込まれていく。RYUICHIの時に荒々しさも魅せる美しい歌唱が光る。【ERA TO ERA】のツアー中も含め、近年は正直に言うと本調子からは程遠い状態も少なくなかったRYUICHIだが、前日の【The Millennium Eve 2025】と本日は完全復活と言っていいくらい絶好調な歌声を披露。改めて彼のストイックさ、そして人間としてのパワフルさを痛感する。前半のクライマックスは、終幕前のラスト・アルバム『LUNACY』収録の「VIRGIN MARY」。SUGIZOがヴァイオリンで奏でたイントロ、RYUICHIののびやかな歌唱、東京ドームは瞬く間に荘厳な雰囲気に染め上げられる。まだ肌寒いこの季節に特に似合うこの大曲を終え、バンドは一旦ステージを去った。

 後半は、真矢のドラムソロ、そしてJのベースソロ(「Back Line Beast」)というおなじみの流れで始まった。真矢はサブステージからドラムセットと共に登場し、まさに“ドームの中心”から魂のドラムを響かせた。真矢がメインステージに移動したあと、Jが合流。コール・アンド・レスポンスを交えた熱いパフォーマンスは再び会場のボルテージを上げていく。そして、他のメンバーがステージに再登場すると、Jのソロの勢いにそのまま乗るようにバンド屈指のスピードチューン「IN FUTURE」でドームを揺らす。RYUICHIとJのツインヴォーカル・パート、そして爆発的に炸裂するSUGIZOのギターソロの流れがたまらなくカッコいい。

 「俺たちは意志…いや覚悟を持ってこのドームを最高の夜にするから。この覚悟の夜、ケジメの夜…いろんな言い方があると思うけど、俺たちは選択してキャッチして、その未来を選んでいこうとしている。そして今夜、集まってくれた全国の精鋭たちがこの先も共にLUNA SEAを作ってくれる。自分の中の理想をしっかり追い求め、これからも長い旅を共に」とRYUICHIが語った後、「I for You」を“最大限の感謝と愛”を込めた優しい音像で届ける。

 名バラードで会場を暖かく染め上げた後には、この日一番のサプライズが控えていた。「東京ドーム。親愛なるSLAVEたちへ、【ERA TO ERA】最後のピースを届けます」という紹介から、流れてきたのは「FAKE」(『MOTHER』収録曲)のイントロ。LUNA SEAの楽曲の中で唯一これまで一度もライブで演奏されたことの無いこの曲が始まった瞬間会場は歓喜の大歓声とどよめきが響き渡った。

 “幻の名曲”の歴史的初披露を終えると、バンドは余韻を残す間も無く怒涛のラストスパートへ。1stシングル「BELIEVE」では大合唱が巻き起こり、ステージ上ではRYUICHIにINORANが添うなど、“絆”でドームを一つに。そこに説明不要のキラーチューン「ROSIER」が続く。疾走するアンサンブル、Jのマイクスタンド投げ、SUGIZOのギターソロ、全ての要素が観る者の興奮を煽っていく。そして、感情が湧き出るような熱さを持った「HURT」では真っ赤な映像と照明、RYUICHIのパワフルな絶唱、楽器隊のヘヴィなグルーヴが観客を圧倒。このまま終わるかと思いきや、まるでその考えを見透かされたかのようにRYUICHIが「今夜はここで終わらない。今夜はこの旅を共に続けていこう」と呟く。「35周年ツアーのファイナルに相応しい、黒服限定GIGを象徴するこの曲を贈りたいと思います」という紹介からラストソング「NIGHTMARE」へ。バンド初期のLUNACY時代を代表する呪術的なあの曲がドームを漆黒に染め上げる。2010年にここ東京ドームで開催された【LUNACY 黒服限定GIG ~the Holy Night~】と同様に、メンバーが一人ずつステージを去っていき、最後はJのベースが淡々としたリズムを刻み、会場を闇に誘った。

 アンコールでメンバーが再登場すると、SLAVE達の想いが綴られた横断幕を掲げ、会場に温かい空気が広がる。RYUICHIが「次のナンバーはみんなにとって色んな思い出があると思います。でもこれからは俺たち5人とLUNA SEAを愛してくれるみんなの未来へつなげたい。この曲は“悲しみの曲”ではなく“再会の曲”です」と紹介したのは14thシングル「LOVE SONG」。2000年11月8日、本作の発売と同時に同年12月開催の東京ドーム公演を持ってバンドが“終幕”することが発表されたというインパクトは大きい。故にREBOOT後に披露される時も当時の悲しみを思い出してしまうSLAVEも少なくなかっただろう。ただ、その印象もこのパフォーマンスで塗り替わったのではないかと思う。楽器隊の繊細な演奏、RYUICHIの吐露するような歌唱がドーム中から響くシンガロングと共鳴し、タイトル通り会場を愛で満たした。

 メンバー紹介では、一人一人が感謝と本公演にいたるまでの想いを伝えた。Jは「最高だな、東京ドーム!35年間の全ての想いを刻みつけたいと思い、ツアーをやってきました。全国各地、ライブを観に来てくれたみんな、そして今日来られなかった奴らもたくさん居て。35年の間に俺たちに触れてくれたたくさんの仲間たち、そいつらの想いを全部連れてきたつもりです!みんなで今夜最高の夜にしましょう!」と力強く語った。INORANは「14年ぶり、10回目の東京ドーム。最初に演った時を思い出したりしてね。この5人で一生懸命バンドをやって、誰にも負けないような気合で東京ドームまで来ました。もっともっとここで演りたいです!本当にこんな俺をここに連れてきてくれてありがとう!これからもこの5人をよろしく!」と叫んだ。

 神妙な面持ちで話し始めたSUGIZOは「本音を言うと“これが最後のドームだ”と、“これがLUNA SEA最後の瞬間”だと思ってこの数か月を生きてきました。本当は“次にこの場所に立つ時は、俺たちの誰かがこの世から居なくなった時”とも思っていました」と明かした。「でも、新しい夢ができた。LUNA SEAは今日から新しい扉を開いて、これからさらに新しい未来を作っていきます。ここにいる全員と一緒に新しい未来を作って、5人が生きているうちに何回も俺たちの聖地、この東京ドームに帰ってきます」と宣言。「この数年、苦難の連続でした。ご承知のように、RYUICHIのコンディション、真矢も体を壊していたし、気が気じゃない。いつまで命を保てるかわからない。でも、命の最期の瞬間まで、LUNA SEAを先に進めたい。そのためには、みんなの存在が何よりも大切で何よりも俺たちは必要としています。LUNA SEAの新しい扉を、未来を一緒に作ってください。また必ずこの場所で会いましょう。みんな、最高に愛してます」と新たな決意をSLAVEに伝えた。

 真矢は「今、SUGIZOの話で泣いちゃってさ。40年前に知り合った時はわがままなロック野郎だったのに、こんないい話ができるなんて、本当に感動してます。感動してるから、あんまり面白いこと言えないかもしれないけど、SUGIZOが「新しい扉を開く」と言うんだったら、僕はヌードでもなんでもやります(笑)。LUNA SEAというバンドを35年の間みんなが支えてくれて。40年前の俺たちは昨日も今日もここに立つためにバンドを、音楽をやってきたんだと思います!毎回言っているみたいに、LUNA SEAのメンバーは君達だからね。そっちがステージ、俺たちは客席だよ。これからもずっとずっとずっとよろしくお願いします」とユーモアと愛を込めた言葉を届けた。

 「不死鳥、LUNA SEAの誇り」とSUGIZOから紹介されたRYUICHIは「初めての経験。初めて傷を負って、それでも信じてくれるみんながいるから、このホールツアーも立ち止まることなくラストまで行けました。メンバー5人が出会った町田プレイハウス。そこから先は、このメンバーといる時間や旅を続けること…覚悟を持ってチョイスしなきゃいけない瞬間が幾度もありました。もう歌えないかなとか、もうここに立つ資格がないんじゃないかとか、もう戻ることはないんじゃないかとか。いろんなことを考えた時期があります。だけど、41本のLUNA SEA史上最大規模のツアーでみんなからパワーをもらって、今日ここに立てたのかなと。覚悟をしてこれから先の未来を掴む。光しか見えてないからね」と赤裸々な心情を力強い決意と共に届けた。そして、大歓声の中「東京ドーム、愛してるよ!」とマイクを通さずに叫んだ。

 感動的なMCの余韻の中、INORANがあのリフを弾き出す。「TONIGHT」だ。メンバーが見せてくれた新たな希望を胸に会場は軽快なロックサウンドに揺れる。続く「WISH」では銀テープも舞い、光り輝く中でドーム中に多幸感を振りまき、再びバンドはステージを後に。

 ダブルアンコールでは、これまでの黒衣装から一転してメンバー全員が白の衣装を着て登場。先程RYUICHIが話していた“光”をすでに身に纏っているようだ。「先のことは考えずLUNA SEA史上最大のツアーをやってみて、思ったことがあってね。俺たちはこのバンドを止めちゃいけない。LUNA SEAは覚悟を持って…このバンドは止まりません。カッコいいこと、カッコ悪いこともあるかもしれないけど、いつでも俺たちらしいステージとか音楽が作れたら、きっとみんなはついてきてくれるんじゃないかな。41本、多分LUNA SEA史上最も動員が集まったツアーだったと思います。今日来てくれた東京ドームのみんなに、ここからは少し未来の話をしたいと思います。今年は5人で新曲を作ろうかな。みんながぶったまげるようなロックナンバー作るよ。今夜集まってくれたみんなに素晴らしい景色をたくさん見せてもらった。最後は、俺たち5人から魂を込めて次の曲を贈りたいと思います」とRYUICHIが話すと、「FOREVER & EVER」が始まった。LUNA SEAの“覚悟の夜”のオールラストを彩るのにこれ以上適した楽曲は無いと思ってしまうくらいのエモーショナルなパフォーマンスはきっとドームに居た全員の心を動かしただろう。演奏を終えると、5人は互いに抱き合い、そしてステージの隅々まで歩き、SLAVE達に感謝や想いを改めて伝えた。

 SUGIZOが語ったような“未来への不安”は恐らく多くのファンも少なからずこの1年の中で感じていたのではないだろうか。その中で迎えた2月23日、これほど圧倒的な完成度のステージを魅せるだけでなく、言葉で誠実にそして正直にこれまでの心情を明かした上で未来への曇りなき希望を見せてくれるLUNA SEAはまさしくレジェンドという言葉が似合うバンドだと改めて痛感した。終演後に流れたエンドロールでは【LUNATIC FEST. 2025】の11月開催が告知され、大きな歓声が響き渡った。2015年と2018年の過去2回はどちらも豪華な出演ラインナップが開催前から話題になったイベントが帰ってくる。すでに11月に向けて続報が待ちきれないのは筆者だけではないはずだ。

Text:Haruki Saito
Photos:田辺佳子/上溝恭香/加藤千絵/横山マサト/清水義史

◎公演情報
【35th ANNIVERSARY TOUR ERA TO ERA -THE FINAL EPISODE- LUNATIC TOKYO 2025 -黒服限定GIG-】
2025年2月23日(日)東京・東京ドーム

<セットリスト>
1. LOVELESS
2. G.
3. Dejavu
4. DESIRE
5. JESUS
6. gravity
7. RA-SE-N
8. VIRGIN MARY
-Drum & Bass Solo-
9. IN FUTURE
10. I for You
11. FAKE
12. BELIEVE
13. ROSIER
14. HURT
15. NIGHTMARE
<アンコール>
16. LOVE SONG
17. TONIGHT
18. WISH
<Wアンコール>
19. FOREVER & EVER


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