ドーチー、米ビルボード<ウーマン・オブ・ザ・イヤー>の驚異的な成功と【グラミー賞】受賞を導いた類稀なビジョンの軌跡

2025年3月26日 / 16:00

 2025年2月の【グラミー賞】授賞式の生中継が始まって1時間も経たないうちに、その夜の紛れもないピークの瞬間が訪れた。カリスマ性と巧みなリリックで米フロリダのラップ界を牽引するドーチーはこの夜3部門で受賞候補に挙がっていたが、<最優秀ラップ・アルバム>を受賞し、女性ソロ・ラッパーとしては2人目(全体としては3人目)の受賞者となった。「誰にも固定観念を植え付けさせてはなりません。ここにいるべきじゃないとか、肌の色が濃すぎる、頭が足りない、大げさすぎる、うるさすぎるなどと言わせないで」と、彼女は涙ながらに受賞スピーチで宣言し、そのスピーチは瞬く間に広まった。

 米ビルボードの<ウーマン・オブ・ザ・イヤー>受賞は、絶賛されたミックステープ『アリゲーター・バイツ・ネヴァー・ヒール』をきっかけに目覚ましい成功を収めた彼女にとって、まさに頂点に立つ瞬間であった。だがそれすら始まりに過ぎない。26歳のタンパ出身MCは、デビュー・アルバムをまだリリースしていないのだ。

 ドーチーは16歳の時に初めて楽曲をSoundCloudにアップロードし、その後数年の間に2作のミックステープをリリースした。2作目には彼女の最初のバイラル・ヒットとなった2020年の「Yucky Blucky Fruitcake」が収録されている。2021年にはアイザイア・ラシャドの「What U Sed」にゲスト出演し、2022年にはキャピトル・レコードとトップ・ドッグ・エンターテインメントとの共同契約を締結し、ラシャドのレーベルメイトとなった。

 2023年初頭にリリースされたコダック・ブラックをフィーチャーしたシングル「What It Is (Block Boy)」は、彼女が米ビルボードの【ウィメン・イン・ミュージック】で<ライジング・スター賞>に選ばれた頃とほぼ同時期のもので、当時米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100″で彼女の楽曲として最高の順位を記録したが、その後は苦難の時期が続いた。その後のシングルはヒットせず、ドーチーは後に自身のSNSで、「レーベルとの意見の相違や、挫けるような創作意欲の喪失と闘っていた」と綴っている。その緊張を和らげるため、彼女はダンス・ミュージックに取り組んだ。2024年3月、ドーチーはマイアミのMCであるJTとDJミス・ミラン(後者は現在、彼女のアーティスト世界に欠かせない存在となっている)と手を組み、「Alter Ego」をリリースした。これは2023年のポップ・ラップの曲を楽しめなかったファンにとっては口直しとなるような、快活なハウス・ラップのトラックで、2024年8月末にリリースされた『アリゲーター・バイツ・ネヴァー・ヒール』まで週替わりの新曲を出すという“スワンプ・セッションズ”の序曲となった。

 このミックステープにはスワンプ・セッションズの楽曲が多く収録されていたが、リリース当初は大ヒットには至らず、米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”では117位に初登場した。しかしドーチーにとって、それは自身の独特なビジョンと綿密に作り上げられた世界観 ーー 巧みに組み合わされたメドレーと故ボブ・フォッシーを彷彿とさせる強健な振り付けに支えられた、魅力的なライブやテレビでのパフォーマンス、堂々としたブラック・グラム、ボールルーム・カルチャー/西部劇/テレノベラ(メキシコや中南米の連続TVメロドラマ)に等しく敬意を表した独特なミュージック・ビデオ ーー を開花させるための出発点となった。

 その過程で、ドーチーは人生で最も辛い時期から抜け出し、2024年の終わりには避けられない存在となっていた。9月にはケイティ・ペリーのダンス・ポップ・シングル「I’m His, He’s Mine」に参加し、翌月にはタイラー・ザ・クリエイターの『クロマコピア』の卓越した楽曲「Balloon」で注目を集める一節を披露した。12月には、彼女の人気が急上昇するきっかけとなった2つの注目すべきパフォーマンスを行った。まず、自身の振り付けを披露した『ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア』での「Boiled Peanuts」と「Denial Is a River」のメドレー。そしてそのわずか2日後に披露された、緻密なストーリーテリングとまとまりのあるアレンジによりSNSで瞬く間に話題となったスリリングな米NPRの『タイニー・デスク・コンサート』でのセットだ。


 スターダムを駆け上るにつれ、ドーチーは色黒な黒人のクィアであることのあらゆる側面を讃えるという姿勢を最優先事項としてきた。彼女が初めて単独でHot 100にランクインした楽曲は「Denial Is a River」で、この曲で彼女はボーイフレンドが他の男性と浮気していたことをセラピストに打ち明けている。これは彼女が清々しいほど率直な(そしてレコードに厄介ごとを録音することを恐れない)アーティストであるかを示す一例だ。【グラミー賞】受賞後の1週間で『アリゲーター・バイツ・ネヴァー・ヒール』はBillboard 200で14位にまで上昇し、2月下旬には「Denial Is a River」がHot 100で21位に達した。また、【グラミー賞】の<最優秀ラップ・パフォーマンス>部門にノミネートされた「Nissan Altima」は73位にランクインした。

 トップ・ドッグ・エンターテインメントのテレンス・“パンチ”・ヘンダーソン・ジュニア社長は、「ドーチーはキャリアが浅いにもかかわらず、素晴らしいビジョンと集中力を持っています。彼女はヒップホップに強い関心があり、そのカルチャーに受け入れられていることからもそれがわかります。彼女の未来は大きく開かれています」と述べている。

 現在、『アリゲーター・バイツ・ネヴァー・ヒール』が新たなファンを獲得し続けている一方で、ドーチーはすでにその枠を超えてヒットを飛ばしている。BLACKPINKのスーパースター、ジェニーとのコラボ曲「ExtraL」は3月にHot 100に初登場し、最新リリース曲「Anxiety」も大きな影響を与えている。もともと2019年にYouTubeに直接公開された楽曲である「Anxiety」は、昨年米ニューヨークのドリル・ラッパー、スリーピー・ハロウにサンプリングされ、2月に『ベルエアのフレッシュ・プリンス』にインスパイアされたTikTokのトレンドとなった後、オーディエンスがドーチーによる新たなソロ・バージョンを熱望したことから彼女は3月初旬にその要望に素早く応えた。この楽曲は彼女の曲の中で最高位となるHot 100初登場13位を記録し、ドーチーは最近この曲を『アリゲーター・バイツ・ネヴァー・ヒール』に追加した。

 これと並行し、3月に彼女は【パリ・ファッション・ウィーク】に降り立った。その壮観なほど演劇的なルックの数々はイベントの紛れもない勝者となり、彼女がポップ・カルチャーの話題の中心であることをこれまで以上に強く印象づけた。

 また、ほぼ同時期にマイアミのフェスティバルで、ローリン・ヒルが彼女をステージに招き、「Doo Wop (That Thing)」でデュエットした後、ドーチーが自身の「Catfish」を披露するためにステージを譲った。“ヒーロー”と呼ぶ憧れの人と並んでラップと歌を披露したドーチーを、不安定な業界にあって特に明るい光としている生来の才能が存分に発揮された瞬間だった。【グラミー賞】で自ら述べたように、彼女は、ビジョンを追い求め、世界がいずれ自分についてくると信じることの利点を証明する真の“証し”であることを思い出させる。


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