<ライブレポート>十明、変幻自在なパフォーマンスで無限の可能性を見せたワンマンライブ【革命のレシピ】

2025年3月12日 / 19:00

 シンガーソングライターの十明が2025年3月7日に東京・渋谷WWW Xにて【十明 ワンマンライブ2025「革命のレシピ」】を開催。満員のオーディエンスを前に、様々なジャンルを織り交ぜた楽曲で表現力豊かなステージングを見せて、“革命”の狼煙を上げた。

 映画『すずめの戸締まり』(2022年)のRADWIMPSによる主題歌「すずめ feat.十明」で注目を集め、音楽シーンへと躍り出た十明。2024年12月に発表された1stアルバム『変身のレシピ』では、全曲の作詞作曲のみならず一部楽曲のプロデュースも手掛けた。CDの歌詞には楽曲それぞれの“レシピ”で掲載されており、甘さも苦みも味わえるリアルな作品となった。この日、ギッシリと埋まった渋谷WWW Xのフロアには、海外から訪れたらしき観客の姿も多く、ボーダーレスな反響の大きさと十明への大きな期待が伺えた。

 開演時間を過ぎると、暗がりの中にバンドのメンバーと十明がステージに登場した。スッと息を吸い歌い出したのは「すずめ」。1つひとつの言葉を丁寧に置いていくように、透き通る歌声が広がって行く。スモークが漂うステージは少しずつ明るくなり十明の姿を仄かに照らし出し、歌い終わると大きな拍手が沸き起こった。続く「NEW ERA」では、ダンサブルなビートに乗せてハンドマイクで歌い踊り、張り詰めた空気感が一気に弾けていく。その流れを加速させたのが、アルバムの最後を飾る「革命」だ。自ら“宣戦布告の曲”と称した、ライブタイトルにもなっているこの曲を、フロアに対峙するように左手を掲げて歌う姿が凛々しくライトに照らされ、観客は熱狂的に応えて腕を突き上げた。「蜘蛛の糸」ではサウンドが一変、ウッドベース、アコースティックギター、ピアノ、ドラムによるジャジーなビートに乗せて、身振り手振りを交えて妖艶なパフォーマンス。〈ランキングはダダ下がりですか? 手を差し伸べてくれませんか? あなただけが救いです〉と歌う、現代社会と古から変わらぬ人間の業を感じさせるリリックが、レトロで軽やかなメロディが結びついているところに、ソングライターとしての閃きが感じられる。

 「こんにちは、十明です。今日は来てくれて本当にありがとうございます!こんなにたくさん来てくれるなんて感激です。このライブでは、「すずめ」から知ってくれた人、オリジナル曲を聴いてくれた人、ライブで出会ってくれた人、色んな方がいると思うんですけど、出会ってくれたときの感覚をもう一度味わってもらえるように、私ももう一度みなさんと出会い直せるライブにします。最後まで楽しんでいってね」

 そんなMCに続いて歌われたのは、「僕だけが愛」。自ら弾くアコースティックギターの3拍子に乗せた歌声と、寄り添うように加わっていく楽器の音が紡ぐ、ドラマティックな1曲となった。バンドメンバーがステージから下がり、「1人で歌おうと思います」と椅子に座り「るららのワルツ」を弾き語り。マイナー調で抒情的な旋律が子守唄のようにじんわりと心に染み入る。メンバーが戻り、エレキギターに持ち替えた十明が「今日はワンマンライブだから、特別に卒業ソングを作ってきたんですよ。これをここで先行披露してもいいですか!?」と呼び掛けると大歓声で迎えられ、未発表の新曲「ねぇねぇ先輩」が披露された。ギターをかき鳴らしながら、バンドと息ピッタリな演奏で力強く疾走感のあるポップスを歌い上げると、2番では早くもサビで一斉にフロアからステージに向けて腕が突き上がり、熱狂的に受け入れられた。「どうでしたか、新曲は!?今回はバンドのみなさんと作ったので、ここで披露できて良かったです」と笑顔を見せる十明に大きな拍手が送られた。

 ウッドベースが牽引する「Dancing on the Mirror」でしなやかにスウィングして、その洒落たムードを「Discord-disco」へと引き継ぐと、イントロにドッと歓声が沸いた。さらにエレクトロビートがスリリングな「蛹」へ。しばし4つ打ちのビートが鳴り響くと、ベースのリフへとリレーされて、ライブアレンジの「灰かぶり」が飛び出した。クラップしながら体を揺らすオーディエンスを前に、曲の世界に没入するように歌う十明。強烈なクラブサウンド、アウトロのギターソロがさらに興奮を煽る。続く「メイデン」ではバンドとの掛け合い的な曲の構成が刺激的。曲中にはバンドのメンバー紹介も盛り込まれて、エノマサフミ(Dr.)、福澤和也(Ba.)、柳原旭(Gt.)、神佐澄人(Key.)がソロプレイを回して大喝采となった。切実でこみ上げるサビメロが心に訴えかける「君のヒーロー」で、十明が「君のヒーローになりたい」と伸びやかに叫ぶと、ステージとフロアが一体となる盛り上がりとなった。

 アコースティックギターを抱えた十明は、「1年前ぐらいからやっと、聴いてくれる人がいることをちゃんと実感できるようになって。そこからやっと、みんなの顔をイメージして曲が作れるようになりました。だから今日は本当に出会ってくれてありがとうっていうことと、そこらへんにいる普通の自分を十明にしてくれているみんなに、ありがとうっていう気持ちです。みんなありがとう」と感謝を伝えると、「最後の曲は、私が誰かのことを思って初めて書いた曲です」と、「夜明けのあなたへ」へ。想いのこもった真摯なメッセージを優しく歌い上げてステージを降りた。

 「ただいま!」とステージに戻りアンコールに応えた十明が歌ったのは、デビューへのきっかけとなった曲「人魚姫」。椅子に座りアコースティックギターの伴奏に合わせた、呟くような歌声がしんとした会場の空気を震わせて、心地良い余韻を残した。エンディングでは、再びメンバー全員を呼び込んで紹介すると、記念撮影の後、手を繋いで生声で「ありがとうございました!」と一礼して、ライブは終了となった。スウィングジャズ、パワーポップ、エレクトロ、EDM、フォーキーで抒情的な弾き語りまで、様々なジャンルを横断したサウンドで変幻自在な表現を見せたこの日のパフォーマンス。ソングライターとしてもボーカリストとしても、未来への無限の可能性を感じさせるライブだった。

Text by 岡本貴之
Photo by Kana Tarumi

◎公演情報
【十明 ワンマンライブ2025「革命のレシピ」】
2025年3月7日(金)
東京・渋谷WWW X
<セットリスト>
1. すずめ
2. NEW ERA
3. 革命
4. 蜘蛛の糸
5. 僕だけが愛
6. るららのワルツ
7. ねぇねぇ先輩(未発表新曲)
8. Dancing on the Mirror
9. Discord-disco
10. 蛹
11. 灰かぶり
12. メイデン
13. 君のヒーロー
14. 夜明けのあなたへ
EN1. 人魚姫


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