<イベントレポート>Billboard JAPANとLUMINATEが主催する【NOW PLAYING JAPAN】 第3弾では【MUSIC AWARDS JAPAN】に関するトークセッションも

2025年2月25日 / 18:00

 Billboard JAPANとLUMINATEによる、ビジネスカンファレンス【NOW PLAYING JAPAN】の第3弾が2025年2月6日に東京・ビルボードライブ東京にて開催された。

 今回のイベントではBillboard JAPANとLUMINATEの責任者が国内外の最新音楽消費動向のプレゼンテーションを行った他、2025年5月に開催される【MUSIC AWARDS JAPAN】より、野村達矢実行委員長と稲葉豊副委員長がゲストとして登壇し、日本の音楽市場に焦点を当てながら、国内アーティストが世界の舞台で活躍を目指すための取り組みを説明した。以下、同イベントの模様をお届けする。

プレゼンテーション1:スコット・ライアン(LUMINATE)

 最初に登壇した、LUMINATEのエグゼクティブ・ヴァイス・プレジデント スコット・ライアン氏はストリーミングの成長やジャンルの動向、オーディエンスの変化など、グローバルにおける2024年のトレンドについて、LUMINATEの2024年「Year-End Report」を用いて解説。2024年において、全世界のオンデマンド・オーディオ・ストリーミング再生回数は前年比で14%増加し、4.8兆回に達した。これは2022年時の2.7兆回から約75%の増加となる。このストリーミング数のうち30%が米国のものではあるが、米国外に目を向けると前年増加率は17.3%で、世界規模でストリーミング市場が成長していること述べた。また、焦点を日本に絞ると、プレミアム・無料ユーザーを合わせた総ストリーミング数は約13%、プレミアムユーザーのみのストリーミング数も10%以上伸びていることが説明された。

 さらに、ライアン氏はLUMINATEが開発した新たな指標「Luminate Export Power Score」を紹介。こちらは録音された音楽を世界規模で輸出する力を測る指標となっており、4種データで構成されている。この指標における1位は米国で、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドに音楽を多く輸出していることが明らかに。10位にはブラジルが入っており、ポルトガル、ボリビア、ペルーが上位輸出先に。日本は本指標では14位にランクインしている。また、ライアン氏はアーティストの出身国も注目点として挙げ、新たに見られる傾向として「英語圏の市場が他言語圏の輸入品にシェアを奪われている」ことを挙げ、非英語圏の市場では逆に英語圏からの輸入作よりも国産の作品がシェアを伸ばしていることを明かした(日本も後者に該当)。

 ライアン氏はまた、LUMINATEがデータ・エンリッチメント・サービスを通して、作詞作曲のデータにアクセスできるようになり、作詞家がどのように文化的交流や音楽活動に貢献しているかをより詳細に把握できるようになったと報告。具体的には、グローバルの上位1000曲のオンデマンドオーディオ楽曲を、かつてQuansicと呼ばれていたチームのデータ・エンリッチメント・サービスを活用して分析することで、トップソングライターを特定することが可能になった。2024年のトップソングライターはテイラー・スウィフトであり、次いでマックス・マーティン、ザ・ウィークエンドが続いた。

 地域やマーケット別でのトレンドを見ていくと、まず全体の傾向としてJ-Popの日本国外におけるストリーミング数は増加傾向にある。プレミアムユーザーの数も世界的に伸びており、2024年においてはアジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカが前年比で大きく成長を見せている。2021年以降で見るとラテンアメリカの成長率がトップではあるものの、2024年においてはアジアとヨーロッパの国々がそれを上回る結果となった。

 ライアン氏は締めくくりとして「日本、そして世界規模でのストリーミング数は2桁成長を続けており、そのペースは成熟した西洋の市場を上回っている」「国産の音楽シェアが日本を含む多くの非英語圏の国々で増えており、英語圏の国々では逆の傾向が観られる」「LUMINATEが2024年に買収したQuansicのデータ・エンリッチメント・サービスを通して、作曲者や音源に対する新たな視点を提供できるようになった」「戦略プランニングなどに活用できる、日本を含む世界的なトップ音楽市場のオーディエンス分析を近々発表する予定である」をキーポイントとして挙げた。

プレゼンテーション2:野村達矢氏(MUSIC AWARDS JAPAN 実行委員会 委員長)&稲葉豊氏(MUSIC AWARDS JAPAN 実行委員会 副委員長)

 続いては、5月に京都にて初開催される【MUSIC AWARDS JAPAN】実行委員会より、委員長の野村達矢氏と副委員長の稲葉豊氏を迎え、「今、日本でアワードをやる意味」をテーマにしたトークセッションがスタート。モデレーターは高嶋直子(ビルボードジャパン)が務めた。

 【MUSIC AWARDS JAPAN】は、5月21日および22日に京都にて授賞式+パフォーマンスがおこなわれるが、22日の模様はNHKにて地上波放送(一部BS放送もあり)されるほか、YouTubeでの全世界ディレイ配信も予定されている。この通り、同アワードがこれまでの日本の音楽賞と異なるのは“世界”への意識という点であるが、これには新型コロナウイルスをきっかけに、日本の音楽業界がCDなどのフィジカル主体からストリーミングへ急激にシフトし、“日本の音楽が世界に広がっていく”実感があったことが、アワード設立のきっかけにあるのが理由のひとつだという。日本の音楽がもっと世界に広がるためにはどうしたらいいか?というところから、「アメリカには『グラミー賞』があるが、このように、1年の音楽の総まとめがアワードという形で賞賛されている、というスタイルのものが日本にもあったらいいのにと思っていた。日本にもいろいろな賞はあるが、クリエイターも選定に参加していたり、透明性があったりするものではなかった。民主的に開かれ、考えながら関心をもって投票してもらえるような機会がほしかった(野村氏)」「音楽業界5団体が一丸となって運営しているアワードのため、言い換えれば“誰の利益でもない”もの。仮に利益が出た場合は音楽業界への還元を予定しており、ここに共感し、“パートナー”として協賛してくださる企業の方々が多い。世の中が音楽にいままで以上に興味をもってくれることで、いろいろなところに潤い、活気が行き届く(稲葉氏)」と、改めてアワードの意義を語った。

 また、【MUSIC AWARDS JAPAN】には主要6部門のほかにも、合計60以上の部門が用意される。候補となるアーティストのエントリーにはビルボードジャパンチャートを主に使用しており、すでに一般に明らかになっているデータを使用することで、まずは定量的な視点からリスナーの反応を公平に捉える。その後は5,000名以上の音楽業界のプロフェッショナルによる投票で受賞者が決定するが、その投票基準は「音楽的に創造性、芸術性が優れていると思うアーティスト」と、定性的な視点に切り替わる。ここには「チャート成績の上位からアーティストを5組ほどに絞っても、一般ファンの人気に関係なく、音楽関係者のみで“もっとも優れているアーティスト”と考えると、なかなか意見が割れると思う。音楽を語り合う時間をとってほしい(稲葉氏)」という狙いもあるとのこと。

 「(選出の)透明性を担保するほど、ブッキングが大変(野村氏)」との苦労も明かされながら、このアワード以外にも、年間を通した“日本音楽のデジタル展開、海外展開”へのサポートとして、世界各地でのショーケース・ライブを開催予定であることを発表。すでに3月には、【SXSW】内にてショーケース(次年以降も継続予定)の開催や、米ロサンゼルスのピーコック・シアターで、Ado、新しい学校のリーダーズ、YOASOBIが出演する【matsuri ’25: Japanese Music Experience LOS ANGELES】の実施が決定している。今後もアメリカに限らず、アジアや南米、ヨーロッパ等でも現地のJ-POPファンに、より近い距離で音楽を魅せる機会をつくっていくとのこと。また、ライブイベントやアーティストのサポートだけでなく、スタッフ側へのサポートとして、春先から音楽スタッフの教育プログラムも始動予定であることが明かされた。

プレゼンテーション3:礒﨑誠二(ビルボードジャパン)

 最後のプレゼンテーションを担当したビルボードジャパンの礒﨑誠二は、「グローバルデータの提供を始めて感じたこと」をテーマに、現在ビルボードジャパンが提供しているGlobal Japan Songs excl. Japanチャートや、チャートデータ解析サービスのチャートインサイト・グローバル、企業向けのLUMINATE“CONNECT”サービスやそのメリットについて説明。高額な価格設定に躊躇する企業もいると前置きしつつも、安価な周辺データは「予測」に留まり結果的に後手に回る危険性を指摘し、正確なデータを活用する利点を語った。また、前回のコンベンションでも話題に挙がった楽曲やアーティスト識別子を充実させる重要性も改めて説明。現在数百万以上のアーティストによる数千万の楽曲とその派生バージョンが、数十種の言語で数百以上のプラットフォームで聴かれており、この爆発的なコンテンツ増加により、海外での機会・金額損失が起きている懸念があるとした。メタデータを充実させることで収益を増やすことができると指摘した上で、格安の他サービスを導入すると、カバー率が低く複数社への依頼を余儀なくされてしまうため、結局割高になってしまうことから、より高いマッチング精度が可能なLUMINATEによるメタデータのアップデートの検討を呼びかけた。

 また、「【MUSIC AWARDS JAPAN】がもたらす影響」もトピックとして取り上げ、比較例として2024年末の『紅白歌合戦』で披露された複数楽曲の放送前後の他国におけるストリーミング数の推移グラフを提示。どの楽曲もストリーミング数が放送後大きく伸びており、【MUSIC AWARDS JAPAN】も『紅白』のような国際的にネームバリューのある番組と同様に、日本国内だけでなくグローバルにも影響を与える施策であると説明、引き続き惜しみない協力を続けること、その効果を注視していくことを表明した。

Text by Haruki Saito, Maiko Murata
Photos by かとうりこ


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