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2024年10月から2025年1月にかけて開催されたMakiの全国ツアー【Maki Tour 2024-’25「チャンタ」】。全12公演のうち3公演は親交のあるバンドとの共同企画として、セミファイナルの愛知公演とファイナルの東京公演はワンマンで行われた。ファイナルの会場であるSpotify O-EASTはチケットソールドアウトの超満員で、観客たちは3人の登場を今か今かと待ちわびる。
会場が暗転するとステージ背景全面に広がるLEDモニターにツアービジュアルを扱ったムービーが流れ、MONKEY MAJIKの「Around The World」をSEにメンバーがラフな佇まいでステージに現れる。3人が円陣を組み、佳大(Gt.)がおもむろに「RINNE」のイントロを鳴らすや否や、観客は大きな歓声を上げた。
山本響(Ba./Vo.)が歌い出すと同時に観客も歌声を重ね、観客に歌を委ねたあと山本は再びそのしゃがれ声で楽曲を導く。彼の「ロックスターが来た! もう怯えることなんて何もないぜ」という言葉を合図にまっち(Dr.)のドラムが轟き、たちまち会場は感傷的なメロディ、抒情的な歌詞、鋭くも瑞々しいメロコアサウンドが入り乱れるMakiの真骨頂へといざなわれた。
ダイナミックに「フタリ」へつなぐと、「春を連れてきました」と告げ「春と修羅」、「秋になりました」と告げ「秋、香る」とたたみ掛ける。堂々としていてどこか貫禄にも近い落ち着きを感じさせながらも一音一音がフレッシュにほとばしり、エネルギッシュでありながらもふとした瞬間に繊細さや甘酸っぱさが滲む。「最低な街、渋谷を最高に変えに来ました」と言い披露した「斜陽」では歌詞に“渋谷”を織り込み、そのまま「ユース」「風」と駆け抜けて再び「斜陽」に戻ると、山本は曲中で「東京に住んだっていいじゃんと思ったりする。でも地元を背負ってやってきた」と叫んだ。ロックバンドの迫力でもって曲と曲をスマートにつなぎ合わせ、ドラマチックな流れを生み出すだけでなく、この日ならではの物語を今この瞬間にこの手で作り出す。だからこそ彼らのライブは観客を衝動的に突き動かすだけでなく、没入感を作り出せるのだろう。
「虎」「fall」と演奏した後、山本は禁煙をしているがゆえに途轍もなく飲酒量が増えたと観客を笑わせる。「酒の力がないと言いたいことを言えないやつはダサいと思われがちですけど、言いたいことを言う努力もせずに、何かに頼ることもせずにずっと縮こまってるやつこそダサいと思う」「自分の楽しいと思うことを嗅ぎ分ける鼻だけは持っておいてください」と続けると、シニカルでどこか切なさのあるポップナンバー「Record Dogs」、観客が肩を組んで横に揺れる景色も微笑ましい「Lucky」とミドルテンポのロックナンバーを届ける。「kid」は3人の硬派なアプローチがスケールを増しながら溶け合い、内省的なムードを高める。歌詞の表現力が光る「Toy box」から光を彷彿とさせるギターリフが煌めく「Landmark」で夜が明けてゆくような高揚感を作り出すと、「エバーグリーン」ではフロアからも力強い歌声が響き、「文才の果て」はそれまで蓄えたエネルギーを放出するような爽快な音が青く眩しかった。
「文才の果て」の演奏後に水を被った山本はそのまま音を止め、佳大とまっちもその様子を見て一旦その手を止める。すると山本は朗らかな口調で「少し話しておこうか」と前置きし、メニエール病を患っていること、水を被ったのはそれが理由であることを明かした。心配させまいと終始明るい調子で「たまにちょっとクラクラするけど、超ヤバい病気というわけではないから」「お前らは友達だから知っておいてほしいし、この病気を抱えながら頑張ってる人もいるから広めていこうと思ったわ」と話し、「銀河鉄道」「ストレンジ」「五月雨」とさらに演奏を研ぎ澄ました。
「この街に超相応しい曲」と言い披露された「白」、友人への鎮魂歌のつもりで制作したという「1997」と届けると、山本が「曲順変えていい? 歌える人は歌ってください」とバンドの初期曲「愛」を披露する。あるときを境にライブで演奏することがなくなった廃盤CD収録曲で、セミファイナルの名古屋公演で披露されファンの間で大きな話題にもなった。観客も驚きと喜びを全身で表現し、ここからさらにステージもフロアも白熱する。「sea you letter」「平凡の愛し方」「シモツキ」と3人はただただまっすぐに音楽へ懸ける情熱をさらけ出し、観客も感情のままにMakiの鳴らす音に身を委ねる。そしてホームのライブハウスを歌った「from」の頼もしい演奏で本編のエンディングを彩った。
アンコールを求める声に呼び寄せられてステージに戻った3人は新作音源『Classic Disc』のリリースと、今年3月から全9箇所をゲストとともに回るリリースツアー【Maki Venue-exclusive CD「Classic Disc」Release Tour「All simples」】の開催を発表する。このツアーのチケット購入特典が『Classic Disc』となり、同作には既発のデジタルシングル4曲と未発表の新曲、さらにこの日披露された「愛(2025ver.)」の計6曲が収録される。ライブに足を運んだ人が音源を手にすることができるという試みについて3人は「喜ぶ人もいるだろうし、初めての人がライブハウスに来るきっかけになるかなと思った」と語り、「楽しみにしていてください」と期待を煽った。
山本が「マジ出し切って帰るので、俺に負けないように出し切ってください」と告げ、最後に3人は力の限りを尽くして「憧憬へ」と「こころ」を演奏し、観客とともに盛大にツアーのゴールテープを切った。彼らがステージを去り、終演後のBGMが鳴り響くも観客たちは歓声を止めず、一向にその場を離れようとしない。それだけMakiが観客の高揚が治まることのない熱演を行い、観客の全身に染みついて離れない音楽を作り上げたということだ。様々な経験を血肉に、ライブで音楽と感性を磨き続ける彼らの生き様を体現する、非常にすがすがしいツアーファイナルだった。
Text by 沖さやこ
Photo by Daiki Miura/Takeshi Yao
◎公演情報
【Maki Tour 2024-’25「チャンタ」】
2025年1月19日(日)
東京・渋谷Spotify O-EAST
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