<ライブレポート>MyGO!!!!!×トゲナシトゲアリが鳴らす“不協和音”、劇中を生きるキャラクターたちの物語が混ざり合った対バンライブ

2025年1月24日 / 21:00

 【MyGO!!!!!×トゲナシトゲアリ「Avoid Note」】が1月12日、TOKYO DOME CITY HALLにて開催された。

 メディアミックスコンテンツ『BanG Dream!(バンドリ!)』より、2022年4月に誕生。2023年6月にはTVアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』も放送され、さらにその認知度を広げたMyGO!!!!!。対するは、2023年4月にプロジェクトが誕生し、2024年4月にTVアニメが放送された『ガールズバンドクライ』と連動するリアルバンド、トゲナシトゲアリ(以下:トゲトゲ)。俗な表現だが、“ガールズバンド大航海時代”と呼ばれて久しいなかで、両バンドともお互いにさまざまな共通点を持ちながら、いままさに階段を駆け上がる様は、もはや何段飛ばしの勢いなのか目が追いつかぬほどだ。

 そんな時代の寵児たちが相まみえた今回の初対バンライブ。誇張抜きで、ファンの妄想が現実化したような企画だが、こうした“妄想”が生まれた理由とは。ひとつに、アニメ作品と連動するガールズバンドである、という共通点以上に、劇中を生きるキャラクターたちの物語が、周囲との感覚の違いに苦しみ、もがきながら、そこに抗い、抜け出そうとする姿勢が通じているから、というのが大きな理由だろう。実際、本ライブのタイトルに掲げられた“Avoid Note”。その意味は、楽曲のなかで上手く馴染めず、その場に立っているだけでほかの音と戦ってしまうような“不協和音”だ。

 とはいえ、MyGO!!!!!の楽奈(Gt./CV:青木陽菜)に言わせてみれば、不協和音とは「おもしれー音」でもある。いわば“Avoid Note”の集まりである両バンドの対バンだからこそ「私たちにしか作れない一瞬がある」と信じ、その言葉が嘘偽りないと我々に断言させてくれるのだった。

MyGO!!!!!、代表曲の連打でフロアを熱狂 トゲトゲと歩む意志を込めた「音一会」

 先攻を務めたのは、MyGO!!!!!。後攻のトゲトゲと同じ約50分の持ち時間で、全9曲を演奏。お互いの存在をプレゼンテーションする対バンということもあり、この日のセットリストはトゲトゲファンを新たに魅了すべくか、代表曲をとにかく敷き詰めるものとなった。2024年にはバンド史上初のZeppツアーを開催した経験に裏打ちされてだろう。全体を通して、以前よりも楽器一音ごとの太さが大きく増していた気がする。

 1曲目に選んだのは、デビュー曲「迷星叫」。そこから、燈(Vo./CV:羊宮妃那)の一挙手一投足でフロアが笑えるくらいに沸騰する「歌いましょう鳴らしましょう」、楽奈がサイドボーカルとして、“想像していた上の上”の高音を冴え渡らせるブルージーなミドルロック「無路矢」など、人気曲を次々ドロップしていく。

 なかでも、イントロのギターがいなたすぎて癖になる、MyGO!!!!!のハイパー飛び道具「影色舞」では、フロアのボルテージが2段階ほどアップ。燈のウィスパー混じりな浮遊感あるボーカルと、立希(Dr./CV:林鼓子)による四つ打ちビートの上で、フロアのファンがダンスに、ジャンプに、クラップに。この日はトゲトゲファンもいてか、間奏でのいわゆる“跳びポイント”を逃したとて、2回目ではしっかりと押さえていく順応力の高さも伺えた。気づけば、そよ(Ba./CV:小日向美香)もお立ち台に足をかける前のめりな姿を見せてくれていたものの、最高曲すぎるゆえ、披露時間が一瞬で過ぎ去ってしまう。まるでダンスフロアのような刹那性を、爽やかなアウトロが代弁してくれるかのようだった。

 7曲目「潜在表明」では、メンバーが感じる生きづらさが、もはや歌詞を超越して燈のポエトリーディングに。ここでは、全員がステージ上で一度も顔を向き合わせることなく、目の前だけを見据えて、フロアにただ、じりりと目で訴えかける姿が印象的だった。バンドであると同時に、一人ひとりが孤独な“迷子”でもある。むしろ、それぞれが自分の足で立ち、目の前の現実から目を逸らさずにいようとする。そんな姿勢こそ、MyGO!!!!!らしいと思えるシーンだった。かすり傷だらけの歌声に曲中、少しだけ晴れ間が見えてくるようなサウンドが鳴らされるのが、唯一の救い。

 ラストは「音一会」。前述の通り、周囲に合わせて上手くやり過ごすこと。自分自身をごまかせないことが、トゲトゲとMyGO!!!!!に通ずるところだ。これからはファン、そして新たにリンクしたトゲトゲとも一緒に未来を作っていく。そんな意志が、この選曲には込められていたと思うし、同様のバイブスをステージに立つメンバーから受け取ることができた。余談だが、キャストがキャラクターに扮する普段通りのMCにて、燈と立希がふたりの間のLOVEと、気になる新曲の存在を匂わせたり、愛音(Gt. / CV:立石凛)が東京ドームでのライブ願望を宣言したりする場面も。これもそう遠くない未来の話なのかもしれない。

トゲナシトゲアリ、超攻撃的高速ロック “先輩の肩を借りない”パフォーマンスに

 当初こそ、両者のキャリアを比較して先に出てくると思っていたが、後攻を任されたトゲトゲ。先輩の肩を借りてーーという言葉を頭に思い浮かべながら、そのステージを心待ちにしていたのだが、そんな常套句は一瞬で無意味となった。たしかに、彼女たちはもともとが声優ではなく、楽器達者がそのままバンドを組んだ経緯はあるのだが……サウンドの切れ味が、あまりに鋭すぎる。

 1曲目は、TVアニメのオープニング主題歌「雑踏、僕らの街」。ピアノが存在感を発揮し、楽曲全体を牽引する役割を持っているのだが、よい意味での“ドンシャリ感”というか、こう、クラッシュとでも呼べばよいのだろうか。サウンドのほか、理名(Vo./井芹仁菜役)による、“人生、賭けてますよ”と言わんばかりの気持ちがこもった高速なボーカルが、バンド名をそのまま音にしたかのように。まさしくトゲのように鼓膜まで届いてくる。

 夕莉(Gt./河原木桃香役)と朱李(Ba./ルパ役)による運動量の多い演奏も、まさにプロ。残念ながら、凪都(Key./海老塚智役)と美怜(Dr./安和すばる役)の両名が休養中で、今回はサポートメンバーが入っての演奏ではあるが、すべての楽器が意味を持ってそこで鳴らされていた。

 仁菜と桃香の出会いの曲となった「空の箱」を経て、内省的なムードを帯びた「誰にもなれない私だから」ではテンポがやや緩やかに。すると今度は、キャッチーなサウンドと、ほとんどラップに近い“言葉詰め詰め”な「視界の隅 朽ちる音」で理名のスタミナに驚かされると、踊りロック「爆ぜて咲く」のラスサビでは、彼女が順に夕莉、朱李の立ち位置に向かい、ふたりで同じマイクに向けて歌唱。なんとも微笑ましい。

 全11曲を披露した中で特筆すべきは、8曲目「サヨナラサヨナラサヨナラ」。バンドの姉御である夕莉のギターソロの裏で輝くのが、朱李。フレットを上下3回、ダイナミックに行き来すると、すぐさま地面にあるペダルを蹴り、やや仰け反り気味な体制の反動を勢いよく使って、今度はマイクに近づいてコーラスに参加。普段はややおっとり気味に見える彼女は、ステージで最も躍動するプレイヤーだった。

 ラストは、理名がアニメ同様にギターを抱え、ツインギターでの「運命の華」に。これからの未来に向けて、光の射す方へ。最後は3人、ステージ中で顔を見合わせながら、それぞれの楽器をかき鳴らして50分間を走り抜けた。

各ボーカルの持ち味感じたアンコールーー「雑踏、僕らの街」「壱雫空」をコラボ歌唱

 ファンが期待したのは、これだけではないだろう。アンコールでは、トゲトゲが羊宮を迎えて「雑踏、僕らの街」、MyGO!!!!!も理名と共に「壱雫空」を披露するという、極めて特別な時間に。両バンドの持ち時間を見終えたからこそ、その機微にも気付けたものだが、「雑踏、僕らの街」での羊宮による、ポエトリーとはまた違うハイテンポでの歌唱。理名が歌声の存在感を知らしめた「壱雫空」。これは勇気の必要な評価だと思っているが、どちらもプレシャスな体験だったというのは前提ながら、やはり両バンドとも、自分たちのボーカルに最もマッチするよう、楽曲が作られているのだとも感じられた。

 言い換えれば、普段と異なる楽曲に染まることで、ボーカル自身、あるいは自バンドにおけるストロングポイントを再認識できた気がする。冒頭に記した通り、どこか似たメッセージ性を備える両バンド。それでいて忘れてはならないのは、やはり絶対的にどこか違うこと。運命を共にし、それが今回の対バンライブのように重なりながらも、それぞれが独立した、代替不可の圧倒的なバンドだということだ。そんな彼女たちが今後の健闘を盛大に讃えあう、最高の一夜だったことは間違いない。

 ……と、綺麗にまとまった後に蛇足かもしれないが、トゲトゲパートのMCにて、理名のMyGO!!!!!の推しメンが楽奈で、夕莉が愛音。朱李に至っては、活動初期にルパの雰囲気を掴むため、そよのイメージを参考にしたという裏話まで明かされ、MyGO!!!!!の面々にとっては、ライブとは関係ないほかアニメ作品の名前を次々に引用する、いわゆる“2の世界”でしかないトゲトゲのMCが相当のカルチャーショックだったとのこと。

 また、朱李曰く、憧れだった『バンドリ!』声優陣との共演はまさに「夢を撃ち抜いた瞬間」だったという。この洒落た引用にはフロアからも大歓声が。夢を撃ち抜き……もとい夢を叶えたオタク状態の朱李がステージでやや挙動不審がちだったことも、この記事の締めくくりに付け加えておきたい。

Text by 一条皓太
Photo by 冨田味我

◎公演情報
【MyGO!!!!!×トゲナシトゲアリ「Avoid Note」】
2024年1月12日(日)
東京・TOKYO DOME CITY HALL
<セットリスト>
MyGO!!!!!
M1 迷星叫
M2 歌いましょう鳴らしましょう
M3 砂寸奏
M4 処救生
M5 影色舞
M6 無路矢
M7 潜在表明
M8 孤壊牢
M9 音一会

トゲナシトゲアリ
M10 雑踏、僕らの街
M11 空白とカタルシス
M12 空の箱
M13 声なき魚
M14 誰にもなれない私だから
M15 視界の隅 朽ちる音
M16 傷つき傷つけ痛くて辛い
M17 サヨナラサヨナラサヨナラ
M18 名もなき何もかも
M19 爆ぜて咲く
M20 運命の華

トゲナシトゲアリ×燈 from MyGO!!!!!
EN1 雑踏、僕らの街

MyGO!!!!!×井芹仁菜 from トゲナシトゲアリ
EN2 壱雫空


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