<ライブレポート>打首獄門同好会、結成20周年ツアー【20!+39!=59! TOUR】完遂「何歳から始めても遅くない」

2024年12月22日 / 18:00

 打首獄門同好会が結成20周年を記念して1月11日のZepp Haneda公演からスタートした47都道府県ツーマンツアー【20!+39!=59! TOUR】が、12月7日にLaLa arena TOKYO-BAYで開催されたワンマンライブでファイナルを迎えた。

 20年間の活動を凝縮したセットリストが用意され、スペシャルゲストがたくさん登場したこのライブの模様をレポートする。

 開演直前に突然切り替わったスクリーンの映像。11月26日の都内某スタジオの模様が映し出された。呼び出されていたのはアシュラシンドローム、Tsukisamu Mutton Network(TMN)のボーカリスト、打首獄門同好会のYouTube動画「10獄放送局」でいつも無茶な企画に巻き込まれている青木亞一人。彼に会長こと大澤敦史(Gt./Vo.)から与えられた指令は、LaLa arena TOKYO-BAY公演で初披露され、ミュージック・ビデオ撮影も行う新曲のテーマの予想だった。歌の代わりにシンセがメロディを奏でる音源に耳を傾けた彼を無駄に躍動感のあるカメラワークが捉えていたので観客は大爆笑。「♪メリ~ クリクリクリスマス~」と歌いながらテーマは“クリスマス”だと予想していたが、的中するのだろうか? 

 河本あす香(Dr./Vo.)とjunko(Ba./Vo.)の影アナを経て迎えた開演。SE「20!+39!=59!」が鳴り響く中、junko&風乃海(VJ.)、会長&あす香がポップアップでステージに登場して、「フワフワプカプカ」がスタートした。観客がヘッドバンギングを始める風景が壮観。フワフワプカプカ浮き続けた20年間で育まれた唯一無二の熱量が炸裂していた。続いて、大量のタオルが客席内で激しく回転した「BUNBUN SUIBUN」。スペシャルゲストのエル・デスペラード(新日本プロレス所属)が1万人の観客にスクワットの手本を示した「筋肉マイフレンド」。身体を揺らす人々の汗がジューシーに迸った「ニクタベイコウ!」……序盤の4曲の時点でものすごい盛り上がりとなっていた。

 「平日のお仕事、大変でしょ?」と会長が観客に呼びかけてからスタートした「はたらきたくない」。労働の悲哀を歌いつつも全編に貫かれたユーモアが現実に立ち向かう力をゆるやかに授けてくれる。続いて、怠惰な内容と対照的なオシャレサウンドだった「クッチャネ」。スペシャルゲストのしまじろうがキュートに踊った「カンガルーはどこに行ったのか」。そして、ミュージック・ビデオ撮影の際に小芝居をしてもらう旨が亞一人に告げられたムービーを挟んで、新曲「ダンシャリズム」がスタートした。軽快なビートと共に躍動した歌のテーマは断捨離。ゴミ袋を片手にステージに現われた亞一人は、ポーズを決めたりもしながら楽曲の世界を一生懸命表現していた。

 全国各地の名店が休業だった時の絶望を歌っている「どうして」。閉ざされたシャッターの前でうなだれる会長の写真で構成されたムービーが、47都道府県ツアーの充実した日々を伝えてくれた。続いて、米粉麺讃歌「KOMEKOMEN」も披露された後、再び迎えた小休止。「さっきの撮影、上手く行きましたか? 悔いが残ってる人、いるんじゃないですか?」と会長が言い、2回目の「ダンシャリズム」がスタート。亞一人がゴミ袋と共に再登場して、断捨離に翻弄される素朴な民を演じていた。曲が終了した直後に沸き起こった「亞一人! 亞一人!」という声の熱量は、何事だったのだろうか? ブロードウェイミュージカルの主演俳優を称賛するかのような亞一人コールであった。

 「思った人がいると思うんです。“新曲2回やってる場合か?”って。今から15分のメドレーをします」と会長が言ってから始まったメドレーはドラマチックだった。孫の魔力を描く「まごパワー」を皮切りに、岩下の新生姜公式キャラクター・イワシカちゃんが登場した「New Gingeration」、「糖質制限ダイエットやってみた」「私を二郎に連れてって」「YES MAX」の糖質系三連発、猫愛で満ち溢れていた「猫の惑星」、四国お遍路の壮大なロマンを示した「88」、ローカル線の知名度を劇的に高めた「今日も貴方と南武線」、アニメ製作に携わる人々に捧げられた「サクガサク」、主夫/主婦が偉大な勇者だと実感した「シュフノミチ」、他人の楽しみを奪うことの罪深さについて考えさせられた「TAVEMONO NO URAMI」、人気キャラクター・ナガノのくまが陽気に踊った「Shake it up ‘n’ go ~シャキッと!コーンのうた~」、『水曜どうでしょう』を放送している北海道テレビ(HTB)のマスコットキャラクター・onちゃんの人気がよくわかった「How do you like the pie?」……構成力、演奏力の高さに唸らされた。

 アリーナの10ブロックによる対抗戦【マグロコンテスト2024】の開催をスクリーンで流れたムービー内で宣言した「漁港」の森田釣竿。各ブロックに投入されたマグロ(※バルーン)を曲の演奏中に優雅で華麗に泳がせた優勝ブロックには「マグロチャンピオンステッカー」が授与される旨が告げられた。そして審査委員のエル・デスペラードと亞一人が現われ、「島国DNA」がスタート。マグロがピチピチと舞うアリーナを眺めていると、海の幸に恵まれた国に生まれた喜びで震えずにはいられなかった。そして、審査員の2人が協議の末に発表した優勝ブロックはC1。ステッカーを手にした観客は、日本の食文化を守り続けることを強く心に誓ったに違いない。

 きのこを抱えたエル・デスペラードとたけのこを抱えた亞一人がステージ上で激突しながらチョコでチョコを洗う凄惨な戦いを表現した「きのこたけのこ戦争」。歯科医のDr.COYASSによるラップが加わった「歯痛くて feat.Dr.COYASS」。コウペンちゃんが登場すると歓喜の声が上がった「布団の中から出たくない」……強力な曲たちがさらに連発された直後、「俺たちは1万人の会場になっても、うまい棒を配りたい!」と切なる願いを訴えた会長。「うまい棒を回せ!」という歌声が厳かに繰り返される中で大量のうまい棒が入った袋がアリーナ内を巡り、人々が分かち合う風景は、まさしくラブ&ピースだった。「このバンドを結成したのは25歳の時。25歳で初めて人前で歌いました。巻き込まれた河本あす香さんは、同じく25歳くらいで初めてドラムボーカルにチャレンジ。そして途中加入のjunkoさんにいたっては、47歳で加入。“何歳から始めても遅くない”というのをこんなに体現しているバンドは、あんまりいないんじゃないでしょうか。みなさんも今から何かを始めたら、思いもよらない20年後が待っているかもしれません」――会長の言葉を噛み締めながら聴いた「デリシャスティック」は感動的だった。うまい棒を掲げて歓声を上げるなんて、傍から見れば意味不明だろうが、夢中になれるものを信じ抜くことの尊さを全力で表現しているのが打首獄門同好会の“生活密着型ラウドロック”だ。幼少期に幸福をくれた駄菓子が、大人になった今も素敵な時間に繋がることが心底嬉しく感じられた。

 観客の“もうぷっちょ”コールが、「こんなもんですか?」とタムを連打しながら煽るあす香の声に応えて熱狂の度合いを増した「部長ぷっちょどう?」。サビの度に天使に扮した桃乃木かながポップアップで現れて可憐に踊り、死亡フラグを立てる自身のパートを亞一人が熱唱した「死亡フラグを立てないで」。観客が「食!(ショク!)」「米!(マイ!)」と叫んで歌に加わる一体感がものすごかった「日本の米は世界一」。そして「カモン栄一」が本編を締めくくった。渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎の名前を交わすコール&レスポンスは、大量の彼らの懐への訪問を切実に願う民衆の叫び。紙幣を模した大量の紙吹雪が客席に降り注いだ風景が美しかった。

 アンコールを求める声に応えてステージに戻ってきた3人。「今、湿度計を見ました。53%です。どうりで後半、どんどん喉の調子が良くなってきた」と会長が言っていたが、湿度をさらに高めてくれた「フローネル」。湯船に浸かって身体を温め、布団に潜る至福をリアルにイメージすることができた。そしてラストは「地味な生活 -SAMBA MAX EDITION-」。サビの度に3人組のサンバダンサー・Lindona(佐藤麻理子、中島洋二、若松裕美)、熱狂打楽器集団・LA SEÑASが現われてカーニバルを繰り広げ、サビが終了すると淡々と立ち去る落差の繰り返しが面白くて仕方ない。多彩な音楽の要素を自然に取り入れてきたのも打首獄門同好会の20年間だと実感した。

 全曲の演奏が終了すると、スペシャルゲストが集合して記念撮影。幅広い職種、種族、世界線の面々を送り出した後、客席の各エリアに手を振った会長、あす香、junkoの表情が明るかった。全力を尽くせた喜びを噛み締めていたのだと思う。客席にいた我々も完全燃焼しながら楽しめたライブだった。

Text by 田中大
Photo by 朝岡英輔 / HayachiN

◎公演情報
【20!+39!=59! TOUR FINAL「20周年をがんばったベテラン」】
2024年12月7日(土)
東京・LaLa arena TOKYO-BAY


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