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神はサイコロを振らないが自身初となるビルボードライブ公演を、東京で11月16日、大阪で11月26日に行った。両日とも1日2公演が開催され、1stステージはファンクラブ『KAMISAI Children』会員限定公演として実施。本稿ではビルボードライブ東京での2nd Stageの模様をお届けする。
会場は通常のビルボードライブ公演同様、食事を楽しみながらゆったりとした時間を過ごす観客で埋め尽くされている。そんなリラックスした空気の中、定刻を過ぎると会場が暗転。これと同時に、客席後方の通路からメンバーが登場し、軽く歓声が湧く。黒を基調としたシックな装いのメンバーは、ステージに到着するとそのまま楽器のセッティングを始める。そして、ピアノの美しい音色に乗せて柳田周作(Vo. / Gt.)がセクシーな歌声を響かせるなど、ゆったりとした大人びた表情を窺わせる。彼の「ビルボードライブ東京、よろしく」を合図に、ライブは「スピリタス・レイク」から本格的にスタート。緩やかなビートに乗せて、無駄な装飾を削ぎ落としたビルボードライブ仕様のアレンジが施されたこの曲を、柳田は伸びやかで気持ち良さげな歌声で表現していく。そんな中、楽曲がクライマックスに近づいていくと、バンドの演奏はダイナミックさを増し、早くもこの日最初のクライマックスを迎えた。
通常のライブハウス公演で見せるエネルギッシュな演奏スタイルとは異なるタイプの熱が伝わるパフォーマンスに、客席からは惜しみない拍手が送られる。すると、アコギを抱えた柳田の合図に合わせて、「Baby Baby」にてバンドの勢いはさらに加速。それまでうっとりと聴き入っていたオーディエンスは、バンドの奏でるアップテンポのビートに合わせて、クラップで一体化を作り上げていく。
2曲終えたところで、柳田は「普段はいろんなジャンルの曲をやっているんですが、今日はこのライブのためだけにフルアレンジしてきましたので、どうぞ音楽を楽しんでいってください」と挨拶。そこから、切なげな歌声とピアノの音色で会場の空気を再び一変させると、抑えめの照明演出とともに「胡蝶蘭」を奏で始める。そのムーディな音世界は、柳田の紡ぐ言葉と歌を際立たせるに十分な役割を果たし、曲中盤の吉田喜一(Gt.)によるギターソロでは、少ない音数ながらもエモーショナルさを感じさせるトーンで観る者を圧倒させるなど、その場にいる観客を濃厚な音世界へと引き込んでいった。
柳田の印象的なギターフレーズに導かれるように、バンドはそのまま「REM」へとつなげる。ミニマルなアレンジが施されたこの曲も、バンドが放つセンチメンタリズムがより効果的に伝わる形に進化しており、各プレイヤーの表現力/技量の高さが一段と光るアンサンブルを楽しむことができた。さらに、柳田がギターをつまびきながら歌い始めると、原曲以上に空間の広がりが伝わるアレンジの「シルバーソルト」へ突入。幻想的な照明演出も相まって、楽曲の持つ独創的な世界観が会場中に充満していく。
その後のMCでは、今回のライブをアレンジ含め一緒に制作してきたサポートメンバーのDEVIN KINOSHITA(Key.)を紹介。柳田は4日ですべてをアレンジし直したと告げつつ、「僕らもアイコンタクトをとりながら、ヒヤヒヤしながらやってます(笑)」と本音をこぼす一幕もあった。
ライブは11月11日にリリースされたばかりの新曲「火花」で折り返し。黒川亮介(Dr.)が繰り出すタイトなリズムに、エフェクトのかかった桐木岳貢(Ba.)のベース、ファンキーさをにじませた吉田のギターが重なることで独特のグルーヴが生まれ、柳田が力強さと艶やかさを併せ持つボーカルでこの曲を彩っていく。ここで会場が一気に温まると、バンドは「愛のけだもの」でさらに熱量を高めていく。原曲のグルーヴ感をベースに、ラグジュアリーさがより増したアレンジは会場の雰囲気にもぴったり。柳田はマイクを片手にステージ左右を移動しながら観客をアピールし続け、ギターソロでは吉田がワウを効かせた音色でファンキーなフレーズを奏で、オーディエンスを夢中にさせる。
「皆さんそのままご起立願いますでしょうか。そのまま両手を大きく……Clap your hands!」を合図に、バンドはそのまま「Popcorn ‘n’ Magic!」へつなげ、観客はリズムに合わせたクラップでアットホームな空気を作り上げていく。サビでは柳田がマイクを客席に向け、一体感の強いシンガロングが響き渡る。さらに、「スペシャルゲストをお呼びしています……この方です!」とゲストアーティストのasmiをステージに呼び入れると、黒いドレスに身を包んだasmiとともに心地よいハーモニーを響かせた。
和やかなトークを経て、吉田と桐木がそれぞれガットギター&アコースティックベースに持ち替えると、そのままasmiをフィーチャーした「朝靄に溶ける」を披露。感傷的なサウンドをバックに、柳田とasmiは美しい歌声を届けていく。まるで短編映画を観ているかのような錯覚に陥るほど、映像的な歌世界にその場にいる者すべてが酔いしれたのではないだろうか。
asmiを送り出すと、柳田は「目蓋」をピアノのみを背に切々と歌い始める。途中からブラシを使った繊細なドラムと、柔らかな音色のガットギター&アコースティックベースが温かみのある音像を構築。ひたすら心地よい音と歌声で、オーディエンスの心をほっこりさせていく。エンディングではメンバーのコーラスが加わることで、その温かみはさらに会場中に広まっていくことに。そして、柳田が「僕ら、音楽でしか恩返しできないので、皆さんへのラブレターを読んで今日は終わりにしたいと思います」とメッセージを送ると、本編ラストナンバー「告白」を極上のエモーショナルさで表現。最初こそ繊細さが際立つアレンジだったが、吉田のスライドギターなどが加わることで楽曲は徐々にドラマチックさを増していき、この日一番の音量/音像でライブはクライマックスを迎え終了した。
アンコールを求める観客のクラップに導かれるように、柳田やメンバーたちは前方の観客とハイタッチしながら再登場。かつて同会場で観たライブを振り返りつつ、「神サイもビルボードライブに溶け込めているでしょうか? 馴染んでいるでしょうか?」と客席に問いかける場面も。そんなやりとりを経て、バンドは「夜間飛行」でライブを再開する。アップテンポな曲調に合わせて、天井のミラーボールが回転し始めると、オーディエンスのテンションも急上昇。この盛り上がりに導かれるように、柳田は1階や2階の通路を練り歩きながら観客に感謝を直接伝えていく。楽曲のクライマックスに合わせて、ステージ後方のカーテンが開き、冬らしいイルミネーションで光る六本木の街並みが目に飛び込んでくる演出も、この曲にぴったりだったのではないだろうか。
その盛り上がりを引き継ぐように、アコギを抱えた柳田は「LOVE」でありったけの愛情を観客に届けていく。そんな彼らの思いに応えるように、観客は両手でハートを作るなどしてリアクションしてみせた。曲のエンディングでは再びasmiをステージに招き入れ、最上級の愛に満ち溢れた空気の中、極上のステージは幕を下ろした。
神はサイコロを振らないにとって、非常にチャレンジングなステージとなった今回のビルボードライブ公演。ここで得た経験を抱えて、バンドは来年2月11日に決定した初の日本武道館公演へと向かっていく。
Text:西廣智一
Photo:高田梓
セットリスト
1. スピリタス・レイク
2. Baby Baby
3. 胡蝶蘭
4. REM
5. シルバーソルト
6. 火花
7. 愛のけだもの
8. Popcorn ‘n’ Magic!
9. 朝靄に溶ける
10. 目蓋
11. 告白
アンコール
12. 夜間飛行
13. LOVE
◎公演情報
【Special Live for Double Anniversary Year 2025 “神倭凡庸命 -カムヤマトボンヨウノミコト-” at 日本武道館】
2025年2月11日(火・祝)東京・日本武道館
OPEN 15:00 / START 16:00 / END 18:00 ※終演時間は前後する可能性あり
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