<レポート>日本の音楽が北米・ラテン地域のリスナーにリーチするには? 最新トレンドを解説するセミナー開催

2024年11月15日 / 18:00

 11月5日~7日に開催された【第21回東京国際ミュージック・マーケット】にて、北米、ラテン地域における最新トレンドのセミナーが開催された。

 本セミナーには、GoogleのYouTube グローバルアーティスト責任者のヴィヴィアン ルイットと、ラテン・ミュージックのアーティストや、ラテン地域に参入したい国外アーティストを支援するマーケティング会社Dmusicの創設者 / CEOのアデル ハッテム、そしてモデレーターとしてビルボードジャパンの高嶋直子が登壇した。多様化するグローバルの音楽マーケットのなかで、今どんな音楽がトレンドなのか、また非英語圏のアーティストがさらに飛躍するためにはどういった施策が有効なのか、トークが展開された。

 2024年現在のストリーミングの国別シェアは、アメリカが約4割と多くを占めているものの減少傾向を見せている。その一方で、南米やヨーロッパ諸国はシェアを伸ばし続けている。昨今のグローバルマーケットの変化について、ヴィヴィアンは「Z世代など若いリスナーはさまざまな国・ジャンルの音楽を自然に聴いていて、グローバルな音楽的趣向に移っている」、アデルは「コロナ禍をきっかけにローカルのカルチャーがグローバルに広がった」と、世界中のアーティストのキャリアの可能性が広がってきていることを語った。

 ロザリア、バッド・バニーなど、ラテン圏のアーティストが世界的な人気を得られた理由について聞かれると、アデルは「ストリートで活動していた人たちがYouTubeでチャンスを掴み、その才能がソーシャルメディアを通じて世界に拡散された。いろんな国のアーティストとコラボレーションしたことによって、グローバルのリスナーがラテンのサウンドに慣れたことは大きい」と、世界中のリスナーやアーティストとつながることの重要性を説いた。加えてヴィヴィアンも「ショート動画はラテン・ミュージックが拡散される一助になっている。ユーザーは自分もムーブメントに関わりたい、他の人にもアーティストの楽曲を聞いてほしいと思って投稿をしている」と、UGCが世界的なラテン・ミュージックブームのきっかけのひとつになったことを解説した。

 セミナーの後半では、独自の音楽性を持つ日本の音楽の可能性について意見が交わされた。ヴィヴィアンは「多様なジャンル」「フィジカル文化」「ボーカロイド」など日本の音楽の特徴に触れながら、「同じ言語を話せなくても、同じ音楽を愛することができる」と、日本の音楽のさらなる広がりに期待を寄せた。またアデルは「熱狂的且つアーティストに忠実というラテン圏のファンの特徴は、日本や韓国のファンとも共通している。そういった点も親和性の高さにつながっているのではないか」と分析した。その上で、ラテン圏で公演を開催する際には「SNSのコンテンツや地元ブランドとのコラボなどを通じて、現地のファンにどう語りかけていくのかが大切」と、現地ファンとその地域のやり方でコミュニケーションを取ることの大切さを語った。

 コミュニケーションの重要性についても、アデルから「日本のアーティストはタイムスケジュールがすごく厳しい。もっとローカルのエンゲージメントができるように、プロモーションを作り上げる時間が欲しい」と指摘。またヴィヴィアンは、「ストーリーテリングが大事。小さなスタートでもそれが倍増していければいずれ大きなムーブメントになる。日本のアーティストはすでに素晴らしいが、楽曲だけでなくアーティストとファンの間にどんなつながりがあるかを発見することが重要」と訴えかけた。

 続いて、日本の音楽以外の北米・ラテン地域のトレンドの話題に。ヴィヴィアンは、カントリーなど伝統的なジャンルのリバイバルと並行して、ニッチなジャンルの掘り起こしも行われており、ジャンルの多様化が進んでいると説明。またアデルは、バイナルレコードのカムバック、マーチャンダイズの活性化など、フィジカル商品のバリエーションがますます広がっていると明かした。北米・ラテンの両方で際立ってきているのが、インディーズのアーティストの活躍で、アデルは各地域でそのアーティストとファンに合ったコミュニティを作ることの大切さを語った。「ラテンに住んでいる人全員がチャートのトップを聴いているわけではない。トップと競争しなくても、ロイヤルなファンベースを作ることが大事です」

 最後に、日本の音楽業界で働く人々へ、「もちろん素晴らしい音楽であることが大前提ですが、好きになってくれるファンを見つけることが大事」(ヴィヴィアン)、「ストーリーテリングがすべて。プロセスを一歩ずつ成し遂げること」(アデル)とアドバイス。重ねてヴィヴィアンは、チャーリーXCXもグローバルヒットまでに10年かかったと語り、「丁寧に時間をかけることとファンとの結びつきへの取り組み、そして努力を続けることが必要」と締めくくった。

◎イベント情報
【第21回東京国際ミュージック・マーケット ビジネスセミナー
北米、ラテン地域における最新トレンド】
2024年11月7日(木)


音楽ニュースMUSIC NEWS

chilldspot、「傍白」ミュージックビデオを公開

J-POP2024年11月15日

 chilldspotが、11月15日21時に「傍白」のミュージックビデオを公開した。  「傍白」は、9月に配信リリースされたEP『echowaves』に収録されている。グランジやシューゲイザーの要素も感じられる、バンドサウンドが際立った楽 … 続きを読む

Ayumu Imazu、2025年3月から4大都市をまわるホールツアーの開催が決定

J-POP2024年11月15日

 Ayumu Imazuが、2025年3月から4大都市をまわるホールツアーを開催することを発表した。  Ayumu Imazuは、11月15日と16日に自身初となる自主企画ライブ【AYUMU IMAZU presents “SOLOS”】を … 続きを読む

adieu(上白石萌歌)、ニューAL『adieu 4』より川谷絵音の提供曲「泡吹」MV公開

J-POP2024年11月15日

 adieu(上白石萌歌)が、11月27日発売のニューアルバム『adieu 4』より新曲「泡吹」のミュージックビデオを公開した。  先行配信中の本楽曲は、今回が初タッグとなる川谷絵音(indigo la End、ゲスの極み乙女、ジェニーハイ … 続きを読む

THE BACK HORN、ニューアルバム『親愛なるあなたへ』1月リリース

J-POP2024年11月15日

 THE BACK HORNが、2025年1月29日にニューアルバム『親愛なるあなたへ』をリリースする。  今作は、2年9か月ぶり、通算14作品目となるオリジナルアルバムで、4曲の配信シングルをはじめ、昨年10月にリリースされた「最後に残る … 続きを読む

緑黄色社会、予測不能な「馬鹿の一つ覚え」MV公開

J-POP2024年11月15日

 緑黄色社会が、新曲「馬鹿の一つ覚え」のミュージックビデオを公開した。  新曲「馬鹿の一つ覚え」は、2024年11月22日に公開となる映画『六人の嘘つきな大学生』の主題歌。作詞・作曲を長屋晴子(vo,g)が担当し、映画のテーマでもある“嘘” … 続きを読む

Willfriends

page top