<ライブレポート>由薫 温かな音色に乗せて、まいた音楽の種が花開いたワンマンライブ【“After Sun”】

2024年11月8日 / 12:00

 11月1日、由薫のワンマンライブ【由薫 Live “After Sun”】が東京・代官山UNITにて開催された。

 9月6日にEP『Sunshade』をリリースした由薫。本公演は、そのEPを引っ提げて行われた一夜限りの公演である。満員御礼となった本公演は、由薫とサポートバンドが織りなす温かい音色と彼女の朗らかな人柄で、穏やかな空気が満ち溢れるステージとなった。

 公演は、本人のカウントから「No Stars」でスタートした。由薫のハスキーボイスとぬくもりのあるバンドサウンドが混ざりあい、温かい雰囲気が会場を包む。軽快なリズムの「Blueberry Pie」に続くと、手振りも付けながら、由薫自身が歌詞に没入するように伸び伸びと歌う姿が見られた。一夜限りの公演、緊張感もあると語っていた由薫だが、自身の歌声とともに奏でられるバンドサウンドを誰よりも楽しんでいるようにも見えた。

 カントリー風の曲調が日本国内だけでなく海外でも幼少期を過ごしてきた彼女の原風景を思わせるEP収録曲「Clouds」を歌ったのち、自身と向き合う歌詞を浮遊感とともに届けた「Blue Moment」へ。一転し遊び心あるバンドサウンドがポップな「sugar」ではバンド紹介も組みこまれ、それぞれのソロパートも炸裂。最後に「そして、来てくれたみんな~!」とフロアに呼びかけることも忘れない。ハスキーな声色で、どこか神秘的な雰囲気とともにパーソナルな内容を歌う由薫だったが、一方でMCなどオーディエンスに語りかける場面になると、天真爛漫な表情を見せていたのが印象的だった。この日の会場に感じた温かさは、楽曲の持つ力や程よいウェイト感とともに演奏されたバンドの音色によるものでもあるのだろうが、なによりフロントに立つ由薫の人柄によるものでもあるのだろう。

 「目を合わせながら歌いたいと思います。ちょっとお洒落な感じにしちゃった」との前置きからキーボードの伴奏に乗せて歌われた「E Y E S」は、原曲よりもバラード感の強いアレンジになっており、ミックスボイスの高音を美しく響かせる。演奏後、フロアに背を向け指揮者の如く手を振りバンドを操ったかと思うと、演奏を静止させ「my friend」へ。突如指揮を振り始める演出は彼女のユーモラスかつ音を身体で楽しむ一面を表しているようであったが、直後にこれまでにないダウナーな歌い出しの楽曲が続くというギャップが鮮烈である。さらに曲中盤になると、再びこちらに背を向け指揮を振り、ぱっと拳を握り演奏を止め、振り返って「私、デビューして2年経ったんです。2年経つとこういうことができるんです。みんな私の言うことしか聞きません」と得意げな笑顔とともに話す一幕も。楽しそうにバンドメンバーの演奏を操る由薫は、音楽をとても楽しんでいるように見えた。

 キーボードの音色とともに自身最大のヒット曲「星月夜」をしっとりと聴かせたあとには、ここでもギャップを演出するかのようにロックチューン「Sunshade」を披露。パワフルな歌声が、ライブ終盤に向けてフロアの熱量を高めていく。

 今回のライブタイトルになっている“After Sun”の由来について、EPリリース時にひまわりをもらったことがあったと口にした由薫は「11月にライブをする頃には枯れちゃってるなと思ったんです。でも花ってそれで終わりじゃなくて、種を残してくれるじゃないですか。それって音楽と似ているなと思ったんです。種がいろんなところに届けられて芽を出し、花を咲かせる。EPを聴いてくれた皆さんの中には、5曲の種が蒔かれていると思います。それがなにかあったときに咲いてくれたらいいなって思います」そう語ると、「勿忘草」を柔らかく演奏する。そしてアコースティック・ギターを持つと、「種が自分の中で咲くこともあると思うんです。10代に書いた曲が自分に語りかけてくれることもあると思っていて。これはデビュー前に書いた曲です」と「風」をしっとりと、改めて歌詞を噛み締めるように歌った。

 一体感を演出した「ヘッドホン」からロックチューン「ツライクライ」でパワフルに本編を終えた由薫は、「由薫! 由薫!」というアンコールの声に導かれ再び登場。「もう本編が終わってしまいました」と名残惜しそうな表情を見せると、ライブでは前に進んでいるところを見せたいと話し、新曲「Feel Like This」を披露した。最後には、EPに収録されたシンガロング曲「もう一度」で大団円。彼女の明るい人柄と楽曲の温かな音色が会場の空気を穏やかに彩った公演であった。

Text by 村上麗奈

◎セットリスト
【由薫 Live “After Sun”】
1. No Stars
2. Blueberry Pie
3. Clouds
4. Blue Moment
5. sugar
6. Swimmy
7. E Y E S
8. my friend
9. 星月夜
10. Sunshade
11. 勿忘草
12. 風
13. ヘッドホン
14. ツライクライ
<Encore>
E1. Feel Like This(新曲)
E2. もう一度


音楽ニュースMUSIC NEWS

私立恵比寿中学、初となるメンバー別ソロカレンダー全10種を12/25に同時発売

J-POP2024年11月8日

 私立恵比寿中学が、2024年12月25日に『私立恵比寿中学ソロ オフィシャルカレンダー2025』として、メンバー10人それぞれのソロカレンダー、全10種を同時発売することが決定した。ソロでのカレンダー発売は私立恵比寿中学として初となる。 … 続きを読む

スヌーピーのオーケストラコンサート、上演曲を公開 PEANUTSの世界観をマジカルな空間で

J-POP2024年11月8日

 シリーズ5年目を迎え、12月に兵庫・札幌・東京で開催する【billboard classics×SNOOPY 『Magical Christmas Night 2024』】の上演曲が公開された。  昨年より、城田優が演出を手掛けてリニュー … 続きを読む

故リアム・ペイン、遺体が家族に引き渡され英国への送還準備が始まる

洋楽2024年11月8日

 ホテルの3階のバルコニーから転落して衝撃的な死を遂げてから約1か月が経ち、故リアム・ペインの遺体が家族に引き渡され、故郷である英国での埋葬に向けた移送が開始された。  アルゼンチン・ブエノスアイレスの墓地の匿名の幹部がロイター通信に語った … 続きを読む

映画『はたらく細胞』、“最強の敵”演じるFukaseなど“細菌”たちの新場面写真が解禁

J-POP2024年11月8日

 2024年12月13日公開となる映画『はたらく細胞』より、片岡愛之助、新納慎也、小沢真珠、Fukase(SEKAI NO OWARI)らの新場面写真が解禁された。  細胞を擬人化したマンガ『はたらく細胞』(著者:清水茜、講談社『月刊少年シ … 続きを読む

みきまりあ、初のコラボ楽曲『アイロニ。feat.水槽』配信リリース&リリックビデオ公開

J-POP2024年11月8日

 NOMELON NOLEMONのメインボーカルとしても活動する、H&B(※)シンガーソングライター・みきまりあが約半年ぶりとなるソロ名義での新曲「アイロニ。feat.水槽」を配信リリースし、楽曲のリリックビデオも公開となった。  本楽曲は … 続きを読む

Willfriends

page top