<ライブレポート>ジャーニー、グレイテスト・ヒッツで彩られた7年ぶりの来日公演

2024年10月30日 / 18:00

 ジャーニーが、結成50周年記念の来日公演【JOURNEY FREEDOM TOUR JAPAN 2024】の東京初日公演を10月23日に日本武道館にて開催した。10月19日に大阪公演、10月21日に横浜公演を終えたばかりのジャーニー。7年ぶりの来日となる今回の公演は、名曲揃いのベストヒットライブとなり、観衆を大いに沸かせた。

 定刻通り19時に客電が落ちると、結成当初からのバンドメンバーであるギターのニール・ショーンが登場。ロング・トーンの太いギターサウンドが会場に響き渡ると、ドラムとピアノ、そしてシンセサイザーの音色が重なり、観衆の胸を膨らませる。上から下まで白で揃えた衣装のアーネル・ピエダ(Vo.)が登場し、爽快なアルペジオが特徴的なナンバー「Only The Young」からスタート。アーネル・ピエダの透き通った声が聞こえると、待ちわびていた観衆たちの盛大な喝采が起こった。会場の盛り上がりが続いた状態のまま、「Be Good to Yourself」に移り変わる。メロディアスなシンセサイザーが前面に出たイントロが聞こえた瞬間、会場のボルテージは早くも最高潮に。アップテンポで疾走感のある名曲が2曲続いたことで、最高なスタートを切ったと言えるだろう。ステージ上でアクティブに動き回り、ハイトーンかつ伸びやかな声を披露するアーネル・ピエダに圧倒された。

 2007年にリード・ボーカルとしてジャーニーに加入したフィリピン人シンガーのアーネル・ピエダ。彼が在籍していたザ・ズーによるジャーニーのカヴァーがYouTubeにアップされており、それをニール・ショーンが偶然視聴したことがきっかけとなり加入に至った。ジャーニー黄金期のボーカルを務めたスティーヴ・ペリーが認める彼の声は、57歳という年齢を全く感じさせないだけでなく、更に磨きがかかったように聴こえた。

 次の曲への高揚感が増していくようなギター・セクションを経て、1981年発表のモンスター・アルバム『Escape』収録の「Stone in Love」へと続いていく。キャッチーで歪んだギターと高音ボーカルが織りなす名曲であり、会場中に笑顔が溢れた。そして、メイン・ボーカルがドラムのディーン・カストロノヴォに変わり、「Keep On Runnin’」へ。アーネルに引けを取らないパワフルなボーカルに触れ、改めてこのバンドの技量の高さを実感させられた。

 そして、ジャケットを脱ぎTシャツ1枚となったアーネル・ピエダが再びステージ中央へ登場。80年代のジャーニーを代表する名曲「Ask the Lonely」、「Escape」が怒涛の流れで投下される。何度も拳を天へ突き上げ、アクティブなパフォーマンスを演じるアーネルとともに、観衆のテンションも益々上がっていく。

 聴き覚えのあるギター・イントロが始まる。故郷への恋しさを歌う楽曲「Lights」だ。同曲では曲名に合わせて、スマートフォンのライトが日本武道館に星空のように輝いた。心温まる同曲に続き、女性がテーマの名バラード「When You Love a Woman」へ。真っ赤なピアノを従えたジョナサン・ケインによる美しい旋律と泣けるギターソロが際立ち、会場は一気に穏やかなムードに包まれた。かと思えば、間髪入れずに、リズミカルなベースラインと乾いた音のギター・カッティングが気持ちの良い「Chain Reaction」へと切り替わる。観衆が揺れ始め、再び熱気を取り戻す。ロックナンバーとバラードによる容赦ない緩急に筆者自身も痺れた。

 ライブはいよいよ後半戦へ。ピアノによる切ないメロディーと、印象的なベースが鳴り始め、場内にどよめきが起こる。アルバム『Escape』からのヒット曲「Who’s Crying Now」の演奏が始まった。哀愁漂う心地の良いメロディーにより、観衆が幸福感に包まれ、伸びやかなギターがメインのアウトロが終わると、本日一番の喝采が沸いた。そこから更にギアを上げたかのように「Lovin’, Touchin’, Squeezin’」へ傾れ込む。客席の1人1人に投げかけるかのようなコール&レスポンスで一体感を増していく。同曲が終わると、ストリングシンセの音色が響き、ジョナサンによるピアノソロへ。テクニカルで美しく、壮大なメロディーが奏でられ、次はどの曲へ誘ってくれるのか、期待が膨らむ。そのまま滑らかな流れで演奏が始まったのは、誰もが耳にしたことがあるだろう名曲「Open Arms」だ。日本では、映画『海猿』の主題歌として起用された同曲。サビに向かっていくにつれて楽器の演奏が積み重なり、アーネルの透き通った声が目頭を熱くさせた。そして、ジョナサンの「This is for you.」という一声ともに、立て続けに名バラード「Faithfully」が演奏される。思わず惚れ惚れとしてしまう最高の展開だ。

 その後、軽快なロックナンバーである「Line of Fire」や「Dead or Alive」が演奏され、ベテランバンドによる演奏力、パフォーマンスに圧倒される。そして予想外にも、爽やかなAOR調の楽曲「Suzanne」が続いた。キーボードのジェイソン・ダーラトカがボーカルを務めたが、彼の声もまた伸びやかで、心地の良い中高音域には心を打たれた。現時点で既に90分以上の演奏を続けているにもかかわらず、メンバー全員がいかにも楽しそうな表情のまま、ハイクオリティなパフォーマンスを保ち続けている。世界的バンドとしての演奏力の高さだけでなく、メンバー1人1人のバンド、そして音楽への愛を感じた。会場のボルテージは止まる所を知らない。

 ニール・ショーンのディレイがかかった浮遊感のあるギターソロからの「Wheel In the Sky」。ライブもついにクライマックスへと差し掛かる。アーネルがステージを降りて、アリーナを駆け巡り、サビ部分の「Wheel in the sky keeps on turnin’」では観衆のシンガロングが巻き起こる。同曲は後半にかけてテンポアップしていき、最高の盛り上がりで終わると、畳みかけるようにスリリングなシンセサイザーが鳴り始める。シンセサウンドに重なるように歯切れの良いギターが奏でられる名曲「Separate Ways」だ。日本では、野球の世界大会『ワールド・ベースボール・クラシック』などの侍ジャパン関連試合の中継テーマ曲として使用されてきた同曲は、誰もが耳にしたことがあるだろう。続いて、ミュージック史に残るアンセム「Don’t Stop Believin’」が始まると、オーディエンスのテンションはピークへ。「Born and raised in “Tokyo City”」と歌詞の一部をアレンジし、歓声が響く。楽曲タイトルの通り、背中を押してくれるような躍動感のあるプレイが続く。まさにボーカルのアーネルは全方位のファンに視線を送りながら、「信じることを諦めてはいけない」と強く訴えかけてくれているようだった。トンネルを抜けた後に明るい世界が待っていたかのようにサビを迎えると、より一体感を増したオーディエンスの大合唱が起こり、思わず鳥肌が立った。「アリガトウゴザイマス! トーキョー!」というアーネルの声が響くと、ラストは「Any Way You Want It」だ。120分ノンストップのラストを飾ったのは疾走感のある大名曲だった。怒涛のように続いたヒットナンバーが終わり、閉幕へ向かうと、そこには感動に包まれた観衆と最後まで駆け抜けたメンバーの輝いた笑顔が見えた。

 アンコールなしの22曲、120分超のライブとなった本公演は、50周年を迎えた彼らのパワーアップしたパフォーマンスを感じることができた。天まで届くかのようなアーネルの透き通った声に、マイクスタンドを操り、アグレッシブに動き回るなどのパフォーマンス。太く伸びやかなギター、地を鳴らすかのようなパワフルなリズム隊、華やかで美しいメロディーを奏でるシンセサイザーとピアノ。歴史に名を刻む世界的ロックバンドは確かに健在だった。未だに余韻冷めやらぬままだが、早くも次回の来日公演の実現を期待したい。

◎公演情報
【JOURNEY FREEDOM TOUR JAPAN 2024】
2024年10月19日(土)大阪・大阪市中央体育館
2024年10月21日(月)神奈川・パシフィコ横浜
2024年10月23日(水)東京・日本武道館
2024年10月24日(木)東京・日本武道館 ※追加公演

<セットリスト>
1. Only the Young
2. Be Good to Yourself
3. Stone in Love
4. Keep on Runnin’
5. Ask the Lonely
6. Escape
7. Let It Rain
8. Lights
9. When You Love a Woman
10. Chain Reaction
11. Send Her My Love
12. Who’s Crying Now
13. Lovin’, Touchin’, Squeezin’
14. Open Arms
15. Faithfully
16. Line of Fire
17. Dead or Alive
18. Suzanne
19. Wheel In the Sky
20. Separate Ways
21. Don’t Stop Believin’
22. Any Way You Want It

Text by Yutaro Takahashi
Photos by Masanori Doi


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