<イベントレポート>Billboard JAPANとLUMINATEが主催する【NOW PLAYING JAPAN】 第2弾は国内外の音楽消費動向やマーケティングがテーマに

2024年9月27日 / 17:00

 Billboard JAPANとLUMINATEによる、国内外の音楽消費動向やマーケティングをテーマにしたカンファレンス&ネットワーキング【NOW PLAYING JAPAN】の第2弾が2024年9月18日に東京・ビルボードライブ東京にて開催された。

 今回のイベントではBillboard JAPANとLUMINATEの責任者が国内外の最新音楽消費動向のプレゼンテーションを行った他、経産省の堀達也氏がゲストとして登壇し、先日発表された「音楽産業の新たな時代に即したビジネスモデルの在り方に関する報告書」をもとに、日本のアーティストの海外進出に向けた現状と課題について説明した。以下、同イベントの模様をお届けする。

プレゼンテーション1:スコット・ライアン(LUMINATE)

 最初に登壇した、LUMINATEのエグゼクティブ・ヴァイス・プレジデント スコット・ライアン氏は最新の音楽ストリーミングにおけるトレンドを紹介。2024年の上半期において、全世界のオンデマンド・オーディオ・ストリーミング数は前年比で15.1%上昇しており、これは新規ストリーミング約3千億件に相当する。アジア圏の国々では、日本が安定して10%以上ストリーミング数が増えている他、東南アジアにおいて複数か国が20~30%の規模で成長を見せていると述べた。また、国によって異なるリスナーの視聴傾向にも触れ、好みのジャンル(日本では他のアジア諸国と比べて「ジャズ」「ロック」「サウンドトラック」の再生数が平均より上)、や新たな音楽と出会う最大のきっかけ(インドネシアはストリーミング、フィリピンはSNS、日本はテレビ)、 “国外のコンテンツ”に触れる割合(フィリピン:95%、シンガポール74%、日本:57%)における違いが説明された。また、日本のZ世代音楽リスナーの特徴も。44%がストリーミング経由で音楽と出会っており、日本人の音楽リスナー全体と比較して、SNSで友人が投稿した音楽を聴く人は約1.4倍多く、海外の楽曲を聴く割合は27%少ないことが明かされた。
 
 最後にライアン氏は「世界中でストリーミング数は増加しているが、国によって新しいコンテンツの楽しみ方が異なるため、それに合わせたマーケティング計画やアプローチの考案が必要」「新たな音楽との出会い方は地域や世代によって異なることから、有効なターゲティングのためにもスマートな情報を持つことが重要」「ストリーミングは依然として増加傾向にあり、地域を跨いだ世界規模での成長機会がある」の3点をキーポイントとして挙げた。

プレゼンテーション2:ヘレナ・コシンスキー(LUMINATE)

 LUMINATEのグローバル担当ヴァイス・プレジデントであるヘレナ・コシンスキー氏は、ISNI、ISRC、ISWCなどの主要な音楽データ識別子やメタデータ付与における課題と業界のための新しいソリューションについて、日本での事例も交えながら紹介した。現状、音楽データ識別子の付与は業界で普及しつつあるものの、ISNIの付与はまだ浸透しきっているとは言えない。また、アーティスト名や楽曲名の重複などによって誤った情報が紐づいていたり、複数の識別子が同楽曲に登録されているケースが見られるという。さらには複数の団体が登録を行っているが故に、把握しきれていない識別子の存在も課題となっている。これらの影響で正しい権利者(作詞者・作曲者など)に紐付けられていない音源が多数存在しており、ロイヤリティが正確に分配できていない状態となっている。実際、2022年に米MLCが支払う予定であったロイヤリティのうち、16.25%(約1億2千万ドル)が2024年に入っても分配できていないようだ。

 この課題へのソリューションとして、LUMINATEは複数の識別子を集め、一か所に集約するサービス、Quansicを2月に買収し、メタデータの質を向上させるサービスを展開している。コシンスキー氏はこのサービスの説明を交えながら、正しいメタデータを発信する重要性と利点を語った。レーベルにとってはISNIの付与を通して「DSP上でのコンテンツの視認性と分かりやすさの向上」「公式プレイリストへの追加などのプロモーション機会の増加(登録情報がより充実している楽曲が好まれるため)」「より正しいロイヤリティ額をより素早く得られる」ことが利点として挙げられ、LUMINATEが実施したテストケースではストリーミング再生数も6~18%上昇したと説明された。

 またDSPにとってQuansicを通して得られる利点は、プラットフォーム上の検索精度の向上、アーティスト名の他言語表記への対応、そして2倍以上の新たな識別子の追加による重複アーティストの区別が挙げられた。そして、音楽出版社は、管理しているすべての楽曲や音源からのロイヤリティを確保、自社カタログ内の新リリースの自動認識、そして将来的な収益の予想がしやすくなるというメリットが説明された。そして、出版社のテストケースでは、3~18%のストリーミング数増が見られた。コシンスキー氏は最後にキーポイントとして「メタデータは理解が難しい」「収益を失う前に問題を解決すべき」を訴え、LUMINATEへの無料相談を促した。

プレゼンテーション3:堀 達也氏(経済産業省)

 経済産業省 経済産業研究所でコンサルティングフェローを務める堀 達也氏は、2024年7月に経済産業省が発表し、業界内外で広く注目を集めた『音楽産業の新たな時代に即したビジネスモデルの在り方に関する報告書』をもとに、「日本の音楽市場の可能性について」をプレゼン。音楽含む“コンテンツ産業”は世界規模で成長が著しく、日本においては海外売上が鉄鋼や半導体産業の輸出に匹敵する規模であることや、経済波及効果の高さなどから、同産業が日本の基幹産業として経済成長を牽引するものになりうると認識されていることを前提に、先日公開された『音楽産業の新たな時代に即したビジネスモデルの在り方に関する報告書』のダイジェストを資料とともに紹介。同調査で用いられたデータを基に、日本の音楽産業の特性は“楽曲の多様性と蓄積”であることを示した。

 また、ストリーミングが世界の音楽産業の中心となっていることから、海外展開とデジタル化は表裏一体であり、音楽ビジネスのデジタル化への早急な対応が必須となること、また近年増加傾向にある、制作や流通を個人主体でおこなうクリエイターにとっても活動しやすい環境づくりが重要であることなどが語られた。

プレゼンテーション4:礒﨑誠二(ビルボードジャパン)

 最後のプレゼンテーションを担当したビルボードジャパンの礒﨑誠二は、ちょうど完成した2024年上半期のグローバルチャートデータをもとに、現在の日本の音楽の世界での動きについて発表。特に、2023年上半期と比較するとアメリカ&韓国の2か国において日本の楽曲のシェアが伸びていることや、アニメ&ゲーム作品の注目にしたがってチャート上位の新譜占有率が上昇していることを挙げ、アジア圏&グローバルでのヒットを生むために攻略するべき国および、対象国の市場構造を理解する=“解像度を上げる”ことの大切さを説明した。

 また、アメリカと韓国において、それぞれ前年と比較し「1日当たりのストリーミング数を伸ばし、シェアを伸ばしたアーティスト」「1日当たりのストリーミング数を伸ばし、該当国でのシェアを伸ばしたアーティスト」を発表。ゲーム『ペルソナ』シリーズの歌唱で知られる高橋あず美や、PSYCHIC FEVER from EXILE TRIBE、eillらの名前が挙がった。

Text:Haruki Saito、Maiko Murata


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