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8月30日から9月22日まで、しぐれういの個展【雨を手繰る】が、六本木ヒルズ カフェ/スペースにて、開催されている。
もともと、漫画家、イラストレーターなど絵の世界で活躍していたクリエイター・しぐれうい。2019年からはVTuber・ホロライブの大空スバルのキャラクターデザインを手がけたことをきっかけに、しぐれうい自身も後にVTuber化した、そんな経緯がある。自己最高記録を達成した代表曲「【オリジナル楽曲】粛聖!! ロリ神レクイエム☆ / しぐれうい(9さい)【IOSYS(まろん&D.watt)】(2023年9月10日投稿)」は、その強烈なキャラクター性とテンポの良さから、TikTokなどのSNSプラットフォームで驚異的なバズを起こし、YouTubeの公式動画は、VTuber初の1億回再生を突破。イラストレーター兼VTuberという並外れた経歴で、VTuber界隈を震撼させたのが、しぐれういだ。
そんな、しぐれういの個展に筆者が足を運んだ初日の模様をレポートする。この日は、偶然なことに現実も、しぐれういが好きな雨が降っていた。展示会の道順の入口には、しぐれういによる今回の個展の説明書き『個展「雨を手繰る」ではひとつひとつのイラストではなく、全ての作品をひっくるめて、会場ひとつで「しぐれうい」を表現しています。』が記述されていた。まず、衝撃を受けたのは、エントランスの展示で、ライブ【SHIGURE UI 5th Anniversary Live “masterpiece”】のキービジュアルをもとにした高さ1メートルを超えるしぐれういのハイパーオーバースケールフィギュアが出迎えてくれたこと。こちらは個展終了後、しぐれういのサインを記載し、限定1点で販売されるとのことだった。額縁に収められた教室内を描いたイラストから、巨大なしぐれういのフィギュアが片腕を伸ばし今にも現実の世界に飛び出してきそう。アトラクションさながらのインパクトに鼓動が高鳴り、しぐれういが同じ空間に存在するのではないか。そんな錯覚にとらわれて、そこから足を進めた。
特筆すべきは、イラストレーターのしぐれういとVTuberのしぐれういの作品が混合されることなく、空間の中央を区切って左右にそれぞれ展示されていた点だろう。「雨を手繰る」「雨を綴る」「大人」といった黒髪の少女の作品が展示されたエリアにはイラストレーターとしてのしぐれういの作品が展示されていた。今回のレイアウトを含めた展示品は、これまでも共に作品づくりをしてきたアートディレクターとしぐれういとのやりとりのなかで生まれたという。作品に目を凝らすと、「雨を綴る」では雨粒が特殊加工で輝いて見えたり、「大人」ではオーロラ色をした背景がミラー加工になっている。さらには、真っ赤な口紅も今塗ったばかりのような潤いが保たれており、細部まで細かく調整されたところから、個展ならではの新たな発見と、しぐれういの絵に対するこだわりが感じられた。
ハイライトとなったのは、空間の中心に設置された大きなオーロラの傘の下で行われた展示。傘の下では雨音のBGMが流れ、しぐれういの象徴である雨を味わえる空間が広がることで、ここがしぐれういの歩んできた世界の中心であることが明確になった。イラストレーターサイド側には、教室や通学路を舞台にしたLive2Dのしぐれういが登場する映像作品、VTuberサイドには、3Dモデルのしぐれういが映る映像作品が設置されており、彼女の登場を待ちわびて、カメラを構える鑑賞者の姿も見受けられた。とりわけ、大きな存在感を放っていたのは、傘の中心部となるハンドル部分に展示された「秘密」「i」だ。この2作品は、見る角度によってイラストが変わるレンチキュラー印刷が施されたもの。「秘密」の少女は、黒いマスクと白いマスクを交互に着けたり外したりしているかのように見え、「i」ではイラストレーターのしぐれういとVTuberのしぐれういが交互に現れる。その変化を追うために、鑑賞者は左右へと自由に動き回ることになる。そもそも今回の個展でも、一方的な道順が決められていなかったことを考えると、どちらのしぐれういも愛してほしいという思いが、自由に散らばる人々の動線に込められているように思えた。大きな傘から一歩外へ出ると、柔らかな音色のBGMへと変化。音へのこだわりも考え抜かれていた。
イラストレーターとしてのしぐれういの作品が展示されていた壁と対となる出口側に飾られた「masterpiece」「大空スバル」活動三周年記念書き下ろしイラスト、「千燈ゆうひ」をはじめ、しぐれういがキャラクターデザインを担当したVTuberを描いたイラストなどが展示されている壁一面は、VTuberとしての人生を歩むしぐれういを彷彿とさせた。最後に、関わりのあるVTuberたちへの感謝が強く伝わるこの場所は、イラストレーターからVTuberへと活動の幅が急速に広がっていった過程を思い起こさせる。そして、ここでようやく、点と点がつながり、「しぐれうい」というクリエイターが完成した。
ほかにも、歌人の木下龍也の短歌としぐれういのイラストのコラボレーションが生み出したレイヤーアクリルアート「モラトリアム」「わたぐも」や、スチレンボードを使ったSHIGURE GIRLSの5人が一人ひとり絶妙な位置で吊り下げられ、空間を上手く使う展示にもエンタメ性が煌めいていた。今回の個展では大きく分けると、イラストレーター、VTuber、そして共通する核(雨)の部分という3つの軌跡を辿る小さな旅を体験することができたと思う。彼女のすべての側面が明確にされることで、しぐれういという一人のクリエイターの人生を追体験したかのような気持ちになった。
Text by 小町碧音
◎イベント情報
【しぐれうい個展「雨を手繰る」】
2024年8月30日(金)~9月22日(日)10:00~20:00
東京・六本木ヒルズ カフェ/スペース
定休日:なし
入場:無料
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