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Eveの初アジアツアーの追加公演として有明アリーナで2日間にわたり開催された【Eve Asia Tour 2024 追加公演「文化」】は、彼の変わらない面が導き出す安心感と、新しい試みから生まれる刺激が爽やかに溶け合った一夜だった。追加公演という名目ながらもセットリストや演出などはツアーから装いを新たにし、さらには彼の過去のライブを彷彿とさせるシーンも散見した。Eveのスタンスとポリシーが美しく花開いた2日間。その最終日、8月21日公演を振り返る。
オープニングムービーから1曲目「廻廻奇譚」へ颯爽と繋ぎ、歌や演奏はもちろん、目まぐるしいレーザーと映像演出で会場の空気を掌握すると、「帰ってきたぜ東京!」と晴れやかに呼びかけて「ファイトソング」へ。イントロで銀テープが舞い上がり、Eveもハンドマイクで花道を歩き、音に身体を委ねながら歌唱する。観客もクラップで彼の思いに応え、ステージからも客席からもこの日を存分に楽しもうとするポジティブな空気が湧き上がった。
冒頭から3曲立て続けに披露したEveは「今日は新しい曲から懐かしい曲までやっていくので、自由に楽しんでいってください」と挨拶し、「会心劇」や「sister」など初期曲を届ける。伸びやかで無垢なギターロックは心地よく会場を包み込み、率直かつ複雑な心象風景を綴った当時の歌詞は今の彼が歌うことで新たな輝きと深みを宿していた。
バンドメンバーによるインタールードに入るとそのまま「逃避行」へ。グルーヴィーな演奏に乗せて軽やかに歌い、一転PEOPLE 1のDeuとのコラボ曲「フラットウッズのモンスターみたいに」は2人分の歌唱パートをひとりで歌唱する。アンニュイでエッジー、ダークでユーモラスな空気感で会場を焚きつけたかと思えば、キタニタツヤとのコラボレーション楽曲「ラブソング」を届け、近年開拓した新たな境地を次々と見せる。新旧の楽曲をそれぞれで固めることで、Eveの表現者としての進化と奥行きを明確にした。
MCで「逃避行」の歌い出しが遅れた理由を、バンドメンバーによるライブアレンジに聴き入っていてタイミングを見失ったからと明かしたEveは「(こういう予期せぬアクシデントも)ライブって感じだね。一気に緊張が抜けました」と笑う。その後は観客に着席を促すと、「今まであんまりこういうことはしたことがないんだけど、座って1、2曲くらい歌おうかな。アットホームな感じで聴いてください」と自身もスツールに腰掛け「トーキョーゲットー」と「闇夜」をアコースティックセットで届けた。特に前者はテンポダウンにメロディのアレンジも加わり、まったく異なる幻想的な装いに様変わりする。柔らかな歌と音色に会場が酔いしれていると、浮遊感を帯びたインタールードを挟み、8名のストリングスチームを加えた編成で「心海」を披露する。同曲を同体制で披露するのは2022年の日本武道館公演以来だろうか。穏やかで壮大な音像が、あたたかい空間を作り出した。
「このライブが決まったときから、この曲をずっと歌いたいと思っていました」と告げ披露した「スイートメモリー」は力強く優雅なサウンドに乗せて落ち着きと高揚感を併せ持った歌声を響かせ、「群青讃歌」ではさらに観客の手を引くように勇敢かつ華麗なムードで魅了する。歌詞に綴られた熱い思いをたくましく歌い上げ、会場の空気を牽引していく様子は爽快だ。その後の「花嵐」は、Eveと彼の音楽を愛する人の居場所を丁寧に育むような、ぬくもりに満ちた歌だった。
インスト曲「fanfare」に入るとライブはクライマックスへ。Eveが「ラスト4曲、踊ろうぜ!」と高らかに呼び掛け、「ナンセンス文学」「ドラマツルギー」などシンガー・ソングライターとして活動し始めた頃からのキラーチューンを立て続けに披露する。Eveも躍動感ある歌声を響かせ、観客もクラップやシンガロングなどで積極的に音の中に飛び込む。客席もステージもエネルギーが滞りなくほとばしっていたのは、長きにわたりこの曲たちと人生を共にしてきたからこそだろう。音楽を介してこれまでの日々を語り合うような、胸がすく時間だった。
アンコールで「巻物語」「ぼくらの」を歌唱すると、Eveは活動開始からの15年間で、年月とともに変わっていくものと、どうしても変わらないものがあることをこの日再確認したと語る。そして「ライブはみんなと同じ空間を共有する場でもあり、同時に(楽曲制作をした頃などの)当時の記憶を思い出したり、懐かしさにも新しさにも触れられる場だと感じました」「ライブの数は他と比べると少ないかもしれないけど、ライブは僕にとっての居場所にしたいし、みんなにとっても帰って来られる場所にしたい。自分のペースでそういう場を作って、みんなを待っていたいです」と続けた。
「君に世界」では観客がスマホライトでEveを照らし、Eveがサビでマイクから離れると観客がすかさず歌う。昨年の東阪ツアー【虎狼来】から定着したこの一体感も、彼のライブに帰ってきたと感じられる理由のひとつになっている気がした。大団円を迎えたと思いきや、Eveからの「これで終わる予定だったけど、『逃避行』のお詫びをしていいですか? もう1曲だけ付き合ってくれる?」という提案に「お気に召すまま」のイントロが重なった。思い返すと【Eve Live Tour 2022 廻人】の東京ガーデンシアター公演も、彼が「ライブを終えたくない」と言い急遽アンコールの最後に同曲を披露した。あの日のライブもこの日と同じく1曲目は「廻廻奇譚」。過去の記憶と今この瞬間目の前に広がる光景が結びつき、彼の音楽家人生が連綿と紡がれていることを実感した。Eveはこれまで歩んできた道のりを宝物のように大切にしながら、前へと進んでいく人なのかもしれない。積み重ねてきた歴史が増えれば増えるほど、その旨味は増していくばかりだ。
今年11月27日にメジャー4thアルバム『Under Blue』のリリースが、来年8月には彼史上最大規模となるKアリーナ横浜2デイズ公演【Eve Live 2025「Under Blue」】が予定されている。この先も彼は変わっていくものと変わらないものを抱きしめながら、さらに音楽家として、そしてひとりの人間として成熟していくだろう。
Text:沖さやこ
Photo:Takeshi Yao
◎公演情報
【Eve Asia Tour 2024 追加公演 [文化]】
2024年8月20日(火)、21日(水)東京・有明アリーナ
※公演終了
【Eve Live 2025 「Under Blue」】
2025年8月23日(土)、24日(日)
神奈川・Kアリーナ横浜
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