<ライブレポート>「ロックバンドを諦めなくて良かった」――UNISON SQUARE GARDENが結成20周年記念日に武道館で祝祭

2024年8月9日 / 19:00

 UNISON SQUARE GARDEN結成20周年当日の7月24日に、日本武道館にて行なわれた【UNISON SQUARE GARDEN 20th Anniversary LIVE ROCK BAND is fun】。この日もUNISON SQUARE GARDENの3人はいつもどおりの演奏をしていたわけだが、それでも20年分の歴史やこの日にかける思い、こだわりがひしひしと伝わってきた公演だった。

 会場が一気に暗転すると、歓声や拍手だけでなく指笛までも聞こえてくる。もはや狂騒の領域だ。おなじみのイズミカワソラの「絵の具(r-r ver.)」が流れ、鈴木貴雄(Dr.)、田淵智也(Ba.)、斎藤宏介(Vo. / Gt.)が登場するまでそれは続き、今日はお祝いなのだと実感する。「絵の具」が流れ終わると、「Catch up, latency」でライブがスタート。〈拝啓 、わかってるよ 純粋さは隠すだけ損だ〉、〈敬具、結んでくれ 僕たちが正しくなくても〉、そんな歌詞で終わる同曲こそ、このライブの幕開けにふさわしい。「UNISON SQUARE GARDENです。ようこそ!」と斎藤が声を出すと、「サンポサキマイライフ」へ。この日、液晶モニターはなし。いたってシンプルなステージ設計のため、自ずと3人のみに注目が集まる。このセットは、“一瞬たりとも目を離すな”というメッセージだったのかもしれない。いつも以上に3人が向き合いながら演奏している姿が印象的だった。続けて「Dizzy Trickster」、「fake town baby」と一気に駆け抜けていくステージからは、確実に気合いのようなものが伝わってくる。

 周年ライブの時に飛び出す斎藤の「今日は長いよー」が聞けたところで、「恋する惑星」がスタート。さらにエンジンをかけるかのように、田淵はステージを360度駆け回る。するとポップで明るい同曲から一変、「Hatch I need」、「マーメイドスキャンダラス」と重めのサウンドをかき鳴らして魅了していく3人。照明の色はこれまで使われていたものと同じなのに、ここまで雰囲気を変えられる3人と照明チームの技量に惚れ惚れしていると、「Invisible Sensation」へ。続けて短めのセッションを挟んで始まったのは「オリオンをなぞる」だ。照明で天井に夜空が作り出される中、熱狂する観客に囲まれて演奏する彼らが眩しく見える。途中鈴木がドラムを叩きながら立ち上がり、自分の後ろの観客をスティックで差したり、笑顔を見せたり、斎藤がバチバチのギターソロを披露したり。盛り上がりは最高潮に達していた。

 「おめでとう」、「ありがとう」という歓声の中、「もう君に会えない」が始まる。歌詞と演奏をじっくり味わう時間だ。開幕時から高ぶり続けた気持ちを整えると、斎藤のアカペラで「スカースデイル」へ。そして続いたのは「オトノバ中間試験」。久々の披露に心が弾んでいく。続く「世界はファンシー」では、今日も今日とて斎藤の“ファンタスティックギター”がキレキレだ。ここで勢いをそのままに、「フルカラープログラム」へ。正直、同曲はもっと終盤にくると思っていたがまさかの中盤での披露。もちろんそれも“あえて”なのだろう。いい意味での裏切りに沸き立った人も少なくないはずだ。それにしても、テンションが上がらざるを得ない流れである。観客のテンションを、まるでミキサーのゲインを触るかのように丁寧に、着実に、上げていくセットリストに脱帽しかない。

 息を整えつつ、歓声を浴びる3人。ここでMCタイムに突入だ。近年ほぼMCゼロのため、MCがあるだけでスペシャル感がすごい。「黒夢を崇拝して触るもの皆傷つけ、自分自身も傷つけたいつかの鈴木少年」、「崇拝していたザ・ブルーハーツを聴きながら飛び跳ね、斎藤少年をドン引きさせたいつかの田淵少年」、「パチスロを崇拝してパチンコ屋に入り浸り、大学の単位を落としまくったいつかの斎藤少年」の話を経て、「いつかの少年」が始まる。起承転結が美しい同曲に続いたのは「101回目のプロローグ」。〈本当の気持ちを話すのは 4年ぐらいは後にするよ〉を〈本当の気持ちを話すのは 今日ぐらいしかありえないだろう〉に変えて歌ったことに、グッときた人は多いはずだ。そして、〈世界は七色になる!〉で照明が七色になったところで涙腺崩壊である。

 ここで鈴木が「熱と循環」というテーマでMC。マイクを受け取ると、斎藤を模して「今日のMCは長いよー」。その言葉通り、熱が尽きそうな時でもファンが火をつけてくれ、熱が循環していくとじっくり語った。さらに、15周年の時に「ドラムは器」という話をしたことを振り返り、今は「このバンドがかっこいいのは俺のおかげ」と思えるようになったと話し、会場を沸かせた。そしてMCのバトンは田淵へ。「パチスロってどうやって当てるんですか?」(田淵)、「ニオイです」(斎藤)というやり取りを挟みつつも、メンバー2人を褒めていく田淵。その総括として、「俺たち才能があったってことですね」。続けて「今日は大いに祝ってください」と言うと、セッションを挟んで「kaleido proud fiesta」へ。タイトル通り20周年の美しく気高い祝祭が如く、多幸感たっぷりのステージが繰り広げられていく。「スロウカーヴは打てない(that made me crazy)」、「Phantom Joke」と駆け抜けると、お楽しみのドラムソロコーナーへ。「このバンドがかっこいいのは俺のおかげ」という発言に嘘偽りなし。スーパーテクニックを惜しげもなく披露したところで、「天国と地獄」へと続いていく。割れんばかりの歓声と盛り上がりを経て、「君の瞳に恋してない」でハッピーな空間を作り上げたかと思いきや再び「カオスが極まる」で空気を変えていく。そして「シュガーソングとビターステップ」へ。 まるで七変化。この緩急がたまらない。

 ここで田淵がMCのマイクを取る。

 「今日はよく来た。よくぞ来てくれた。僕たちには才能があった。けど才能で、信念で、渾身の一曲で、世界は別に変わらなかった。20年間、信じる音楽をやり続けられたのは才能があったからだけど、それでもやっぱり世界が変わらないのはつまらなかった。楽しい事ばっかじゃないからさ。ロックバンド続けるのってやっぱり大変なのよ。だから時にそれはロックバンドを諦めてもいい理由になった。時に前が向けなかった。誰にも気づかれないように後ろを向いた。そしたら、君がいた。君がずっと後ろから見てくれていた。ついてきてくれと思ってなかったけど、ずっと見ていてくれることがこんなに嬉しいなんて思ってなかった。君の好きなロックバンドは君がずっと好きで居続けてくれたから、ここまで来れた。ロックバンドを諦めなくて良かった。君のおかげだ。ありがとう!」

 こんなにも素晴らしいMCの後に何の曲が来るのだろうと思っていると、斎藤の弾き語りから「春が来てぼくら」が始まる。完璧すぎる。いつまでも鳴り止まない拍手がやっと収まると、2015年の武道館ライブと同じセッションを挟んで「シャンデリア・ワルツ」へ。そして、斎藤の「ラスト!」で「センチメンタルピリオド」が始まる。これも、15周年ライブのラストに披露した際と同じセッションからのスタートだ。アウトロはそれぞれ好きなように楽器を鳴らしていたが、結成当初もスタジオの中でこんなふうに楽しげな表情で音楽を楽しんでいたのだろうか。清々しい表情でそれぞれ客席を見渡し、田淵、鈴木が退場していくと、斎藤がマイクの前に立つ。「こう見えてめちゃくちゃ励まされながら、支えられながら進んできたバンドなんで、今日は3人の記念日でもあるんだけど、僕はね、UNISON SQUARE GARDENを好きで好きでたまらないやつに今日を喜んでほしいんです。最後にひと言だけ。本日はUNISON SQUARE GARDEN20周年記念日、おめでとうございます!」。そんな熱い言葉を贈り、ライブに幕を下ろした。

 なんとも素晴らしい約2時間半だった。そして、心なしかいつもよりも客電が明るかった気がする。いつもであれば、ステージと客席が完全に分けられている感じがするのだが、この日は客電がいつもより明るかったからだろうか。その壁がほとんどないように感じた。これはもしかすると、「20周年をみんなで祝おう」という意味があったのかもしれない。そんなことを考えながら帰路についた最高の夜であった。

 今後UNISON SQUARE GARDEN は、10月2日にシングル「傍若のカリスマ」をリリースし、12月25日には20周年のフィナーレとして、大阪にて【fun time tribute】を開催。さらには7月24日、25日の武道館ライブの模様が映像作品化されることも決定している。ロックバンドとして突き進む、UNISON SQUARE GARDENのこれからの展開から目が離せない。

Text:高橋梓
Photo:Viola Kam (V’z Twinkle)

◎ツアー情報
【UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2024「20th BEST MACHINE」】
2024年9月7日(土)、8日(日)大阪・大阪城ホール
2024年9月11日(水)静岡・アクトシティ浜松大ホール
2024年9月14日(土)北海道・カナモトホール
2024年9月16日(月・祝)石川・本多の森北電ホール
2024年9月17日(火)愛知・センチュリーホール
2024年9月21日(土)福岡・サンパレスホテル&ホール
2024年9月22日(日)広島・ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ
2024年9月28日(土)香川・サンポートホール高松
2024年10月1日(火)栃木・宇都宮市文化会館
2024年10月2日(水)宮城・サンプラザホール
2024年10月5日(土)、6日(日)神奈川・ぴあアリーナMM
https://unison-s-g.com/20th/tour-bm/


音楽ニュースMUSIC NEWS

故マック・ミラー、遺作AL『バルーンリズム』が『サークルズ』5周年記念日にリリース決定

洋楽2024年11月22日

 故マック・ミラーの遺族が、2020年にリリースされた最初の遺作アルバム『サークルズ』の5周年を記念して、2枚目の遺作アルバムをリリースする予定だ。『サークルズ』は、2018年に急逝したミラーが生前に制作していたアルバムだった。  米ピッツ … 続きを読む

Eve、TVアニメ『アオのハコ』EDテーマ「ティーンエイジブルー」MV公開

J-POP2024年11月22日

 Eveが、TVアニメ『アオのハコ』エンディングテーマとして書き下ろした「ティーンエイジブルー」のミュージックビデオを公開した。  現在配信中の本楽曲は、11月27日発売のニューアルバム『Under Blue』にも収録される。 ◎映像情報 … 続きを読む

TM NETWORKのツアーに密着、デビュー40周年ドキュメンタリー映画の公開決定

J-POP2024年11月22日

 TM NETWORKのドキュメンタリー映画『TM NETWORK Carry on the Memories -3つの個性と一つの想い-』が、2025年春に劇場公開される。  1984年4月21日に、シングル『金曜日のライオン』でデビュー … 続きを読む

モーニング娘。’24が初登場、「恋愛レボリューション21」を披露<THE FIRST TAKE>

J-POP2024年11月22日

 モーニング娘。’24の一発撮りパフォーマンス映像『モーニング娘。’24 – 恋愛レボリューション21 / THE FIRST TAKE』が、2024年11月22日22時にYouTubeプレミア公開される。  一発撮りのパフォー … 続きを読む

tuki.、「15歳になるまでに作った曲」を集めた1stアルバム『15』リリース決定

J-POP2024年11月22日

 tuki.が、2025年1月8日に1stアルバム『15』を発売する。  同作は、tuki.が15歳を迎えるまでに作ったという楽曲が収録されたアルバム。「晩餐歌」をはじめ、「一輪花」「サクラキミワタシ」「ひゅるりらぱっぱ」といった既発曲のほ … 続きを読む

Willfriends

page top