<ライブレポート>10-FEET、自身初となるアリーナワンマンライブで見せたバンドの爆発力

2024年6月12日 / 19:00

 10-FEETが、5月19日に横浜アリーナで【10-FEET ONE-MAN LIVE 2024 ~急なワンマンごめんな祭~】を開催した。

 TAKUMA(Vo./Gt.)がライブ中に何度も叫ぶ「幸せになれよ!」という言葉には、友人同士が交わす約束のような熱量があり、それはこの音楽が持つ熱気や親しみやすさと無関係であるはずもなく、こうした人生に対する期待や祈りこそがこの音楽の気骨なのだろう。「根が暗いから明るくなりたくてこんな曲をやっている」、「いじめられているやつ、その孤独が財産になるから」(TAKUMA)とMCで話していたが、いくつもの曲の歌詞がそうであるように、この音楽の奥底には傷があり、しかしそれでも時折勇気を持って未来を見ているのだ。10-FEETの曲を聴いた人が笑顔になるのは、エネルギッシュなサウンドの向こうに広がるその深み故だろう。

 映画『THE FIRST SLAM DUNK』のエンディング主題歌としてリリースされた「第ゼロ感」が好評を博し、2023年には『NHK紅白歌合戦』に初出場するなど、結成27年目にしてその存在感がさらに強まっている10-FEETである。この度京都みやこめっせと横浜アリーナにて行われた【10-FEET ONE-MAN LIVE 2024 ~急なワンマンごめんな祭~】は、彼らにとって初のアリーナワンマンライブであり、屋内開催でのワンマンライブとしては自身最大規模となるもの。まさに今の勢いを象徴するライブと言えるだろう。

 始まる前からアリーナには朗らかな空気が生まれていた。彼らの音楽に対する期待と信頼が、中空を漂いこの日のムードを作っているみたいだ。「goes on」で始まったライブは「hammer ska」「火とリズム」と続いていき、突き抜けるような歌と身体を揺さぶる鉄壁のアンサンブルでのっけからハジけるような歓声が上がっていく。「Mr.bullshit」は性急なビートと爽やかなメロ、そして情けない歌のミスマッチが面白く、「JUNGLES」では地を這うようにうねり内臓を揺さぶってくるNAOKI(Ba./Vo.)のベースに持っていかれる。TAKUMAが「2階まで見えている、ホンマありがとう」、「幸せになって帰ってください」と言う頃にはとっくに会場中が幸せそうで、あちこちで声を張り上げ跳ね周り、歌ったりサークルが生まれたりしている。

 スカのリズムで踊らせる「SHOES」を終えると、TAKUMAの唐突な「俺の真似できる?」というフリから、「JUST A FALSE! JUST A HOLE! 」の歌い出しをNAOKIが歌いスタート。かと思えば、続く「BE NOTHING」では「次はKOUICHI(Dr./Cho.)、俺の真似できる?」という無茶振りから(「BE NOTHING」はボーカルではなく、ギターから始まる)、KOUICHIがギターのイントロを口で歌うという柔軟さで笑いを起こす。それにしても、この曲の重たくゴツゴツとした低音には抗い難い魅力があり、気づくと脳みそがビリビリと痺れながら身体は更なる強い音を求めてしまうような飢餓感を抱いた。で、それを叶えるようにレーザーが飛び交うメタリックな質感の「ハローフィクサー」「SLAM」をたたみかけることで、まだ前半だというのにスカッとするようなカタルシスが生まれていたように思う。

 <信じたいから疑いました 傷つく前に傷つけました>と歌う「アオ」、爽快なビートと共に喪失とその先にある夢を歌う「求め合う日々」の辺りから、TAKUMAの歌が一層突き抜けていったように思う。ソリッドでドライブ感のある「Re方程式」は、洗練された音色のアンサンブルが気持ちよく、「シエラのように」のギターは眩しいくらい魅力的で、開放的なメロディもアリーナのような広いステージにぴったりハマっている。「悲しい思いや後悔が、それで終わらずに次の出逢いに繋がったり、あんたの幸せや何かを乗り越える勇気の上乗せになったら」と言って歌われた「BUZZING」は、特に印象深く心に残ったこの日のハイライトである。

 そしてもう一つ、とりわけ感動的だったのが「深海魚」だ。沖縄の民謡を思わせる音階に乗せて歌う名バラードであり、ピタッと歌に寄り添うようなドラムやベースが素晴らしい。TAKUMAの歌は耳から入って全身を駆け巡り、そっと心に触れて溶けていくような柔らかさがあった。ステージを照らす青いライティングも曲の魅力を引き立てており、まるで海の中にいるみたいに神秘的である。「頑張っているお母さんと、うちのお母かんに送ります。いつもありがとう」というMCは、きっと子供を持つ親だけでなく、親のことを想うリスナーにも響いたはずだ。

 「RIVER」で会場中のテンションが爆発したように思ったが、さらに大きな歓声が上がったのが「第ゼロ感」である。硬質なサウンドはスタイリッシュで、あちこちで起こるサーフが気持ちいい。太いベースとドラムが火花を散らしてスピードを上げていくような「1sec.」でも大きなサークルが生まれ、「悲しいことがあった奴、悔しいことがあったやつ、ぶちかませ。俺たちが受け止めてやる!」という叫びに2階席まで飛び跳ねていた「VIBES BY VIBES」も壮観だ。最後は名曲「その向こうへ」を演奏した後、会場中から歌が聴こえてきた「ヒトリセカイ」で本編終了。どこまでも音楽が続いていくような感覚、演奏が終わっても鼓膜の奥から歌が聴こえてくるような余韻を感じたのは、きっと私だけではないだろう。

 再びステージに立った3人は新曲の2024 ABCプロ野球テーマソング「gg燦然」を演奏し、会場中にタオルが舞った「CHERRY BLOSSOM」、「back to the sunset」を披露し大団円。一点の曇りもないような晴れやかなライブである。終演後にはシングル『helm’N bass』を7月にリリースすることを発表。この日演奏された「Re方程式」「gg燦然」に加え、“アサヒスーパードライ×3×3.EXE PREMIER 応援ソング”「helm’N bass」が収められる。どこまでも飛んでいきそうな勢いだ。

Text by 黒田隆太朗
Photo by toya/HayachiN/石井麻木

◎公演情報
【10-FEET ONE-MAN LIVE 2024 ~急なワンマンごめんな祭~】
2024年5月19日(日)
神奈川・横浜アリーナ


音楽ニュースMUSIC NEWS

日向坂46、「光が差す方へ」をテーマにした16thSG『クリフハンガー』ジャケット・アートワーク公開

J-POP2025年12月24日

 日向坂46が、16thシングル『クリフハンガー』のジャケット・アートワークを公開した。  今作のジャケット・アートワークのテーマは「光が差す方へ」。暗闇の中で、季節感あふれるコートやニットをまとったメンバーが、空から舞い落ちる雪とともに発 … 続きを読む

テイラー・スウィフト、トラヴィス・ケルシーよりツアー終幕前に送られた手紙に感激「運命の人に出会う始まり」

洋楽2025年12月24日

 トラヴィス・ケルシーは詩人だが、“苦悩する詩人”ではないようだ。ドキュメンタリー・シリーズ『テイラー・スウィフト:ジ・エンド・オブ・アン・エラ』最終話の中で、テイラーは、2024年12月にツアーが幕を閉じる直前、現在の婚約者であるNFLの … 続きを読む

名誉伝説「いい日にします。」、2026年4月に初ワンマン開催を発表&新アーティスト写真公開

J-POP2025年12月24日

 二人組バンド・名誉伝説が、自身初となるワンマンライブ【ディア・ライフ】を、2026年4月1日のエイプリルフールに東京・東京キネマ倶楽部にて開催する。  本公演では、名誉伝説なりの“グッドミュージック”を鳴らし、新しい音楽の世界へと連れ出す … 続きを読む

ザ・キッド・ラロイ、全米No.1曲「Stay」の歌詞に関する誤解に言及「ジャスティンのヴァース以外は全部自分が書いた」

洋楽2025年12月24日

 ザ・キッド・ラロイが、ジャスティン・ビーバーとの2021年の大ヒット曲「Stay」をめぐる誤解に言及した。  今週火曜日に行った自身のTwitch配信『The Road to Before I Forget』で、ラロイは 「この曲の歌詞は … 続きを読む

ENHYPEN、7thミニアルバム『THE SIN : VANISH』第1章『No Way Back』映像公開

J-POP2025年12月24日

 ENHYPENが、HYBE LABELSのYouTubeチャンネルにて7thミニアルバム『THE SIN : VANISH』の『Chapter 1. <No Way Back>』を公開した。  本作は、新譜に込められた壮大な叙事詩の幕開け … 続きを読む

Willfriends

page top