<ライブレポート>ちゃんみな、25年の人生をアートとエンタテインメントに昇華した【AREA OF DIAMOND 2】

2024年5月2日 / 19:00

 ちゃんみなの単独公演シリーズ【AREA OF DIAMOND】。その第2段となる今回は、海外公演を含む全13公演のツアーとして開催された。「わたしがありのままの姿を見せることでみんなにも自信を持ってほしい」という思いのもと作られた初回に対して、今回のコンセプトは「(わたしを傷つけた)お前を絶対許さない」だったという。表面的には憎悪を感じさせるテーマだ。だが人間にそれが生まれる際には必ず理由が存在し、それをきっかけに苦悩し新しい気づきを得ることもしばしばである。【AREA OF DIAMOND 2】の追加公演である神奈川・ぴあアリーナMM 2days最終日は、ちゃんみなの歩んできた人生と感じてきた気持ちがアートとエンタテインメントへと昇華された、愛に溢れた空間だった。

 白いワンピースと白い髪飾りの少女がグランドピアノでサン=サーンスの「白鳥」を弾いた後、ステージ上部に設置された貝殻が脈打つように光る。それが開くと、中から真っ赤な衣装にサングラスをかけたちゃんみなが現れた。

 挑発的にたくましく「Baby」や「RED」を届け、センターステージでパフォーマンスした「I’m a Pop」ではバンドとのグルーヴでさらに生々しく胸に渦巻いた感情をあらわにする。「Picky」と「Doctor」のメドレーでは黒を基調とした衣装のダンサーが12名登場し、ストレッチャーでメインステージに戻る演出なども交え、ミュージカルさながらの迫力あるステージが繰り広げられた。屈強さやダークさで一気に会場の空気を掴むと、この後さらにディープな空間へと引きずり込んでゆく。

 自身の幼少期の感覚をドープなサウンドへ落とし込んだ「ルーシー」ではバレリーナ4人が登場し、彼女の精神世界と記憶の奥へといざなう。バレリーナたちの緊迫感あふれるコンテンポラリーダンスを挟むと、中世ヨーロッパ貴族の盛り髪ウィッグとギャルファッションに身を包んだちゃんみなとダンサーが「B級」をパフォーマンス。ステージは一気に色彩豊かに変貌した。

 その後も紙幣が舞うなど痛快な演出がシニカルさを際立たせた「ピリオド」、ウィッグを外しソファでパフォーマンスした「Wake Up Call」、ダンスで魅了した最新曲「FORGIVE ME」と、キュートでピュアな要素を持った楽曲をたたみかける。ちゃんみな流の無邪気さで観客の心を射止めると、「BEST BOY FRIEND」と「Like This」のメドレーから一転、男性ダンサーとの濃厚かつ洗練されたダンスで恋に溺れてゆく様子をダイレクトに提示した。少女から年頃の女性へと変化していく様子を描き、「FUCK LOVE」からシームレスにつないだバンドのインストセクションは都会で孤独を抱えながら生きる若者の姿を体現。ちゃんみなの過去を追体験するような感覚に息を呑む。

 街の雑踏の音が流れ、ステージには通行人が行き交う。ギターを持ち登場したちゃんみなは中央であぐらをかいてギターをつま弾き、「Biscuit」を歌い出した。路上ライブ風のパフォーマンスは、情熱的であり寂寥感もある。「サンフラワー」の穏やかなメランコリーに観客は熱い視線を送った。

 いまこうしてのびのびとパフォーマンスができるのはファンのおかげであると語る彼女は、二十歳の頃の失恋で友人に言われた言葉をきっかけに「大人になるということはもしかしたら、何かを手に入れるというよりは、捨てなければいけなくなってくることかもしれない」と思ったという。そして「別れはつらくて仕方がないけど、あのときその決断をしたから、こんなにもたくさんの人たちに出会うことができました」と告げ「Never Grow Up」を歌唱した。歌詞を噛み締めながら柔らかい笑みを浮かべる様子は、過去があってこそ今の自分があることを誇らしく感じていることがひしと伝わってくる。その後の「ボイスメモ No.5」と「ハレンチ」も、痛みを抱えながらも一つひとつの感情と向き合い成長してきた彼女の心の動きが健やかに表れていた。

 パワフルなボーカルで「美人」を歌い上げ観客を鼓舞すると、モニターにはグランドピアノで「白鳥」を弾く少女が映し出される。幼少期のちゃんみなだ。映像の中の幼い彼女は、オープニングに登場した少女と同じ服を纏っている。すると黒いドレス姿のちゃんみなが現れ「ダリア」へ。過去と現在の彼女が交差し、より気魄とエネルギーをもって1曲1曲が響いてくる。幼少期からステージに立ち続け、様々な人の目を浴びてきた彼女だからこそ見せられる、迫真の歌声と佇まい。命を懸けて自身の音楽と居場所を追い求めてきた彼女を象徴するシーンだった。

 「このショーの構想を考えたときのわたしの精神状態はとても悪くて、どうしてわたしばっかり報われないんだろうとばかり考えていた」と話す彼女は、幼い頃の自分を取り戻したいという思いからこのライブが生まれたと明かす。「自信がなくてうじうじしている自分がいたら、どうかその子を追い出さないで、抱きしめてあげてください。いつかそんな弱い自分が、あなたを助けてくれる日が来ると思う」と呼びかけると、「Good」ではセンターステージのちゃんみなと、メインステージ上段のピアノ奏者の少女が、同時にグランドピアノをプレイした。本編ラストの「太陽」では、ちゃんみなとピアノの周りに雨が降り注ぐ。自ら雨を求める彼女の姿は、自身の音楽を愛する人々の存在は恵みの雨でもあり希望の光でもあるのだと言葉以上に我々へと伝えた。

 「花火」でアンコールをスタートさせ、「Angel」で観客と熱い歌声を交わすと、ツアーを振り返り「行ったことがない国にもわたしの曲を知っている人がいて、日本には変わらずみんながいて。たくさんの思い出ができました」と笑顔を浮かべる。そして「TOKYO 4AM」で晴れやかな空気感のなかツアーを締めくくった。

 最後に丁寧にサポートメンバーやスタッフ、観客に感謝を告げた彼女は「またすぐ会おうね」と手を振り、貝殻のなかへと戻っていった。音楽とステージで自身の人生を繊細かつ大胆に表現したちゃんみな。一つひとつのクリエイティブが、卑屈な自分も傷ついて涙で頬を濡らした自分も、今の自分を作るうえでかけがえのない要素であるというメッセージとして響いてきた。彼女を支えるたくさんの人々の存在があるからこそ、彼女は今、すがすがしい表情でステージに立ち続けている。【AREA OF DIAMOND 2】は彼女の25年の人生が凛と輝く、とても高潔な空間だった。

Text:沖さやこ
Photo:田中聖太郎/アミタマリ

◎公演情報
【AREA OF DIAMOND 2】※追加公演
2024年4月27日(土)28日(日)
神奈川・ぴあアリーナ
<セットリスト>
00. 白鳥~SE
01. Baby
02. RED
03. I’m a Pop
04. Picky ~ Doctor(メドレー)
05. ルーシー
06. B級
07. ピリオド
08. Wake Up Call
09. FORGIVE ME
10. BEST BOY FRIEND ~ Like This(メドレー)
11. FUCK LOVE
12. Biscuit
13. サンフラワー
14. Never Grow Up
15. ボイスメモNo.5
16. ハレンチ
17. 美人
18. ダリア
19. Good
20. 太陽
≪アンコール≫
En1. 花火
En2. Angel
En3. TOKYO 4AM


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