<ライブレポート>Anly、ゲストにReiを迎えたバンドセットで酔わせた『26ml』ツアーファイナル

2024年2月2日 / 17:00

 シンガーソングライター・Anlyが、【“26ml”Tour】ファイナルとなる東京公演を2024年1月28日に東京・EX THEATER ROPPONGIにて開催。ゲストにシンガーソングライターのReiを迎えて、ツアーを締めくくる大熱演の歌と演奏で集まった観客を酔わせた。

 2023年、5作目のアルバム『26ml』を携えて、10月15日沖縄 ・桜坂 セントラル 沖縄からツアーを開始したAnly。8公演をループペダルセットで行った後、【Loop Around the World Tour】と題した海外ツアーを経て、2024年に入り1月27日大阪とこの日の東京公演はバンドセットで行われた。ループペダルとアコースティック・ギターによるソロ弾き語り、バンド編成でのライブを使い分けるAnlyがこの日はどんなライブを見せてくれるのか大いに興味を惹かれた。

 SEが流れ、バンドメンバー(小川翔(Gt)、山本連(Ba)、半田彬倫(pf)、大津資盛(Dr))に続いて、Anlyが拍手に迎えられてゆっくりとステージに上がると、着席スタイルの客席は総立ちに。ドラムの激しいリズムから、「TAKE OFF」でライブがスタートした。Anlyはアコースティックギターをかき鳴らしながら、バンド4人の演奏に同期を加えた音とバトルするように早口でまくしたてる。ギターを置いて「EYE」へと続き、ヘヴィなサウンドに乗せてファルセットを織り交ぜたヴォーカルで〈どうしたいの? どうしたいの?〉と、挑発的に呼び掛ける。アルバム『26ml』と同じ並びの、攻めのオープニング2曲を終えると、「こんばんは! 一緒に揺れていきましょう!」と「Message in the bottle」へ。ハンドマイクで歌いながら、〈Hello Hello〉と歌詞に合わせてにこやかに客席に手を振るAnly。緩やかなリズム、旋律から畳みかけるラップパートを経てメロディアスなサビへと進む展開がユニークだ。〈Message in the bottle〉と繰り返しながらエンディングへと向かうあたりは、アルバムに収録されたトラックがバンドの演奏でよりエモーショナルにアップデートされていた。小気味良いギターリフから、「Alive」へ。ストリングスと、途中で三線の音も聴こえる壮大なサウンドに乗せて、故郷への想いが込められた英語と日本語が混在した歌詞を歌う。ブレイクして〈諦めないよ〉と歌うAnlyにスポットライトがあたった。終盤、ものすごいロングブレスで〈生命を鳴らせ〉とシャウトすると、両手を広げて大きくクラップを求めて、コーラスも加わり会場が一体に。早くもエンディングを迎えたような、素晴らしく感動的な1曲だった。

 「『26ml』ツアーへようこそ! 今回のアルバムはカクテルがコンセプトになっているんですけど、私が一番好きなカクテルはこれです!」との紹介から始まったのは、「ジントニック」。レコーディングバージョンより“度数高め”な強いビートに乗ってステージを動き回りながら歌うAnlyの姿は、アルコールが入ったように上機嫌。「Round & Round」で聴かせたハイトーンの歌声は余韻まで美しく、アコギをつま弾きながら歌いバンドのアンサンブルも聴きごたえのある「Moonlight」、キラキラした音が客席を包んだ「58 to 246」と、表現力豊かな歌と演奏で楽しませた。

 「『26ml』は、私が生きてきた年数と、景色、感情とかを混ぜて1曲1曲収録しました」と改めてアルバムのコンセプトについて伝えると、収録曲について話し出す。「沖縄ってめちゃくちゃ台風が来るんですよ。でも、台風の前日ってとても空が桃色とか金色みたいになったりして綺麗なんです。それで小さい頃から「綺麗だけど、明日台風来るのか」っていう気持ちになっていて。大人になってから似たような感情になって、嬉しいことや幸せなことがあると「じゃあ明日は悪いこと、台風みたいなことが起こるのかな」って思っている自分がいたんです。でも、「今感じられる幸せは今しかここにいてくれないんだ」って、やっと去年気付きました。そういう覚悟みたいなものを教えてくれたのが、この曲です」。半田のピアノによる伴奏で歌われたのは、「Dear」。抑揚がピタリと合ったヴォーカルとピアノは、滑らかできめ細かく、しんと静まり返った会場に沁み込んでいく。流麗なアルペジオと共にギター弾き語りした「STAY WITH ME」へと続き、歌い終わると客席からは盛大な拍手が起こった。

 マニピュレーターの久保田滉基を含むバンドメンバー紹介から、「今日のスペシャルゲスト! Rei!」と呼びこまれて、黒い衣装にシルバーのブーツ姿でReiがステージに上がると大歓声。コラボ披露が予告されていた楽曲「Sunday Afternoon Blues – Anly & Rei」について、沖縄の「高良レコード」創立70周年で行われたツーマンライブをきっかけに誕生した曲であることをAnlyが紹介。Reiが「好きな音楽や志が近いし、戦友だと思っている」と明かすと、Anlyも「私もそう思ってる!」と同意。「今日はちょうど日曜日! くだらないことばっかり起こる世の中、みんな鬱憤溜まってるじゃないの!?」と、歌詞を引用しつつ煽ると、AnlyのアコギによるイントロからReiが赤いストラトキャスターでリフを弾いて曲に突入。1番のAメロはRei、2番のAメロはAnlyが歌い、サビのコーラスで声が重なると、オーディエンスはハンドクラップで盛り立てる。カラフルなミラーボールがまわり、気分を盛り上げる中、Reiが疾走感溢れるド迫力のギターソロを弾き、向かい合って対峙するAnly。パッション爆発の凄まじい演奏を終えると、そのままステージに残ったReiがフィードバックからスポットライトを浴びてブルージーなソロを披露。ハイトーンのチョーキングからキーボードのイントロへと繋いで、「KAKKOII」へ。Anlyがハンドマイクで歌うと、Reiは曲中でストラトからアコギに持ち替えて、情熱的なソロを聴かせる。途中、山本の超絶テクなベースソロも飛び出して、会場は興奮の坩堝に。最後は再びストラトに持ち替えたReiがステージ中央でAnlyと背中合わせになりソロを聴かせて、「またやろう!」と再会を約束してステージを降りた。

 スぺ―シーなサウンドの「CRAZY WORLD」でファンキーなヴォーカルを聴かせるAnly。大津のドラムソロにも大歓声が起こるなど、湧きっぱなしでライブは後半へ。アコギを弾いて歌い出した「カラノココロ」でステージと客席が明るく照らされて、オーディエンスは右手を振りながら一体となって盛り上がった。

 「アルバムの一番最後に出来た、私の中で学びのあった曲」として、「点滅~Green Light~」を紹介。当初ネガティブな気持ちから生まれたというこの曲について、「この曲を書いたときに、自分の中で良い言葉を見つけました。“死ぬ覚悟より変わる覚悟を決めた方が良い”って思ったんです。変な覚悟を決めるより、会いたい人に会いに行くとか、食べたいものを食べに行こうとか、違うベクトルの覚悟を決めるっていうのも、人生にとって良いんじゃないかなって。そういう気持ちを込めて書いた曲です、聴いてください」と歌い出す。すると、暗転した客席一面が、グリーンライトで埋め尽くされた。ツアーファイナルで待っていた思わぬサプライズに、歌い出しで一瞬声を詰まらせたようにも見えたが、笑顔で客席を見つめながら、歌い続けるAnly。歌声でゆるぎないメッセージを届ける、シンガーとしてのスピリットを感じさせた。サビではステージから眩い光が客席に向かって輝いて、その姿を照らしていた。「最後の曲も、自分が迷ってるとき焦ってるときに書いた曲です。自分がやりたいことに踏み出したとき、まわりの人と比べて“自分はちゃんと動けてるのかな”っていう気持ちになるときは私もあります。でもこうやってみんなに会えて、歌を出せる環境があって、私のことを受け入れてくれて“好きにしなよ”って言ってくれる人がたくさんいます。みんなが好きにできるように祈ってます!」との言葉を受けて始まったピアノのイントロに、手拍子が自然発生して「好きにしなよ」を歌い出す。客席を見渡しながら、ひと際力強く歌い掛けるAnlyと一緒に口ずさむオーディエンス。コーラスが重なった分厚いサウンドでライブ本編が終了となった。

 「Anly!」コールに応えてステージに上がったAnlyは、「グリーンライトありがとう!ちゃんと気付いてるからね(笑)」と感謝のひと言。サプライズに驚いて歌詞を間違えないように気持ちを強くして歌っていたようだ。4月から弾き語りツアー【IMENSHOLY Tour 2024】が開催されることが発表すると、アンコールへ。客席に手を振りながら、オレンジ色の照明に染まったステージで伸びやかに「オレンジカラー」を歌うと、愛と平和を歌う「Welcome to my island」のリラックスした歌と演奏で締めくくった。エンディングでは、バンドメンバーにReiも加わり客席をバックに記念撮影。「好きにしなよ- Remix ver-」がカクテルをコンセプトにしたアルバム、ライブの“チェイサー”としてBGMで流れる中、心地よい余韻を残してツアーファイナルは大団円となった。

Text:岡本貴之

◎公演情報
【Anly“26ml”Tour】
2024年1月28日 東京・EX THEATER ROPPONGI

◎セットリスト
1. TAKE OFF
2. EYE
3. Message in the bottle
4. Alive
5. ジントニック
6. Round & Round
7. Moonlight
8. 58 to 246
9. Dear
10. STAY WITH ME
11. Sunday Afternoon Blues
12. KAKKOII
13. CRAZY WORLD
14. カラノココロ
15. 点滅~Green Light~
16. 好きにしなよ
EN1. オレンジカラー
EN2. Welcome to my island


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