<ライブレポート>ROCKIN’ QUARTET、NAOTO率いる弦楽四重奏×androp・内澤崇仁によるビルボードライブ・ツアー開幕

2023年7月24日 / 18:00

 ヴァイオリニストのNAOTO率いる弦楽四重奏が、ロックバンドのヴォーカリストを招いて行うライブシリーズ『ROCKIN’ QUARTET』の”第6章”となるツアーが、7月19日、ビルボードライブ東京からスタートした。初回のACIDMAN・大木伸夫以降、日本のロックシーンを牽引する個性豊かなバンドのフロントマンが立ってきたステージに、今回はandropから内澤崇仁が登場する。これまでの出演陣よりも少し後輩世代であり、彼らへのリスペクトの気持ちと、「機会があれば『ROCKIN’ QUARTET』に出てみたい」と公言していたという熱意を携え、果たしてどのようなライブを見せてくれるのだろうか。

 1stステージの開演は17:30。まだ陽も高く夏空が広がっている時間帯だが、カーテンを閉め切った場内は完全に外界と切り離された別世界だ。開演を告げるSEが鳴り、登場したカルテットの面々が音を放てば、清涼感さえ感じさせる。2曲目のゆったりとしたテンポにアレンジされたイントロを契機に、2Fから登場した内澤を場内が拍手で出迎える。カルテットが扇状に構える要の位置に腰掛けた彼がフラットなトーンで歌い出すと、各楽器の断片的なフレーズが重なり合って次第に音像が組み上がっていく。ネタバレになるので曲目は伏せるが、変拍子でポストロックやマスロックの印象が強い曲を、リズム楽器なしの構成で成立させていく様子はスリリングかつエキサイティング。「そうきたか」という意外性と、それを弦楽四重奏で再現するアイディアと技量への感嘆で、思わず息を呑む。

 andropは時期や作品ごとに振り幅のかなり広いバンドである。そのキャリアの中からかなり初期の楽曲から近作まで満遍なく選ばれたセットリストとなっていたため、必然的に様々なタイプの楽曲が披露された。「これをやるのか」「これを弦楽で演奏するとこうなるのか」という驚きや発見あり、逆に「ストリングスが合わないわけがない」という納得感あり、そのどちらも中心にあるのは内澤の歌である。緊張感を口にはしていたものの、リラックスした佇まいで微笑みながら歌い、ラップ調のヴォーカルで演奏にアクセントをつけたり、繊細なファルセットを響かせたりと自在なアプローチをみせる。わかりやすくロック!というような、激しくシャウトしたり熱量の高いアクションをするタイプではないが、柔らかな手触りの中に感じさせる芯の強さと、メロディの良さを際立たせる丁寧で正確な歌い回しが素晴らしい。

 NAOTO曰く「初日の初手」である上、内澤が元々たくさん喋るタイプでもないので、MCパートでは探り探りな感もあったが、むしろそれによって場内の空気がほぐれた感もあり、後半にかけては客席からのクラップもどんどん大きくなっていったし、コール&レスポンスを織り込んだ楽曲(NAOTOが歌声を披露する場面も)でも盛り上がった。また、ここ最近の楽曲で取り入れているようなハネ感や横ノリ、レイドバックしたビートのニュアンスが、弦楽ととても好相性だったことも記しておきたい。

 恒例となっているカバー曲のコーナーでは、内澤が上京当時に憧れのあまり同じライブハウスに出ていた、というエピソードと共に先輩バンドの名曲をカバー。そしてandropの真骨頂の一つである、ドラマティックなバラードソングでライブはクライマックスへ。充足感たっぷりの面持ちでカルテットへ起立を促し、お辞儀をしてステージを去る内澤に熱い拍手が注がれた。アンコールでは一転、人懐っこくピースフルな空間を醸成して『ROCKIN’ QUARTET 第6章』の初ライブが終了。

 ナイーヴでセンシティヴな面と、力強さやブレの無さ。飄然とした装いに滲む人間味。練り込まれた複雑な構成と、初見でも惹き込むグッドメロディ──。相反してもおかしくない要素を併せ持ったandropのサウンドと内澤のヴォーカルの魅力を、普段とはまったく違うストリングス・カルテットによる再現が、より露わにしたツアー初日。演奏面でも“人と人”の面でも、これからよりグルーヴを増していくはずの第6章、逃さず目撃してほしい。

Text:風間大洋
Photo:高田梓

◎公演情報
【ROCKIN’ QUARTET 第6章
内澤崇仁(androp)& NAOTO QUARTET】
2023年7月19日(水)
東京・ビルボードライブ東京 ※終了
2023年7月28日(金)
大阪・ビルボードライブ大阪
2023年7月30日(日)
神奈川・ビルボードライブ横浜


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