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7月4日、Valentine D.C.の日本コロムビア時代の音源がサブスク解禁されたということで、今週は彼らの音源を【独断による偏愛名作】として取り上げたい。大阪の名門ライヴハウス、心斎橋バハマの出身で、さまざまなバンドが群雄割拠していた1990年代の半ば、Ken-ichi(Vo)、Naoya(Gu)、Jun(Ba)、Takeshi(Dr)でメジャー進出。思うような結果が出なかったこともあって1999年に解散するも、その間、制作したオリジナルアルバム6枚、ミニアルバムを2枚はどれもオリジナリティーにあふれ、今聴いても決して古びたところを感じない、クオリティーの高いロックサウンドである。とりわけ『GENERATION』は、ある意味で1990年代後半の日本のロックシーンを象徴しているかのような描写もあり、再評価されてしかるべきアルバムであると個人的には確信している。2007年に活動再開し、年に数回、オリジナルメンバーでのライヴも行なっているので、過去のバンドにするのは早計だが、改めてこのタイミングで、彼らが優れたロックバンドであったことをプッシュしておきたい。
地に足の着いたバンドサウンド
堂々と自分たちのロックを鳴らしたアルバムだと思う。強いて言えば、もうちょっとウィットに富んだ面というか、砕けた面、ふざけた面があっても良かったかなと思わなくもないけれど、逆に言えば、そう思わせるくらいに、彼らが真摯に制作に打ち込んだことが中身に染み込んだアルバムという言い方もできるだろうか。
『GENERATION』はValentine D.C.のメジャー4thアルバムで、1997年の“TRIAD”移籍後の第1弾作品である。名門ロックレーベルに移籍したことが影響したかどうか知らないが、全ての楽曲において音像がちゃんとロックしている。M2「つぎはぎアンティック・ドール」、M4「Happy Birthday」、M5「奥歯を噛みしめろ」、M9「MY GENERATION」などの勢いのあるナンバーだけなく、しっかりと地に足の着いたバンドサウンドも聴くことができるところがいい。
オープニングナンバーのM1「空想世界」から、いい意味での落ち着きが感じられる。ノイジーなギターで始まるイントロは、“ロックはやっぱり歪んだエレキ”と言わんばかりで、いわゆるギターリフは複雑ではないが、むしろそこがいい。それを支えるドラムは16分でハイハットを刻み、ダンサブルに迫る。少しばかりブリットポップ風味を感じるところではある。ベースラインは、冒頭はギターとユニゾンで進みながらも、Bメロから個性を発揮。リズム隊の枠だけに留まらない、うねりのあるプレイを聴かせてくれる。楽器隊3人のアンサンブルだけでも十分にロックを感じさせるのである。サビ後のパートや間奏ではさらにサウンドが複雑になっていて、ドラムは少し変則気味で、ギターはフリーキー。その分、ベースがメロディーを奏でるといった具合に、それぞれが多彩に変化する様子も聴いていて楽しいところだ。歌は全体を通してメロディアス。音符が細かくないのが最も落ち着きを感じさせるところかもしれない。ボーカルの声質的には、このバンドにはこういうタイプのメロディーが一番合っているような気もする。
M2は前述の通り、勢いにあふれたナンバー。アルバム2曲目としてはベターだろう。サビ後半での《JUST YOUR LIES》のコーラス(というか、シャウト?)もワイルド。リズム隊も結構暴れていて、ベースラインは歌を凌駕する…と言うと大袈裟かもしれないが、サビでの動きは相当に派手だし、ドラムのフィルインは破壊力を感じるところではある。それに比べるとギターは比較的抑えめにも感じるが、間奏ではなかなかスリリングなソロを聴かせているところも聴き逃せない。
そんなM2に続いて、ミディアムナンバーのM3「カーテンコール」を持って来たところにこの時期のValentine D.C.の自信を感じるところではある。サビ頭でもある上、サビにつながるBメロもなかなかなもので、流れるような旋律がM3の特徴であるのは間違いないが、その主旋律を尊重したサウンド構築も聴きどころだ。全体的に歌を邪魔せずい、ブリッジではさり気なく個性的なプレイを聴かせている。間奏以降にオルガン(メロトロン?)が配されていて、サイケデリックロックのテイストを注入しているのも面白い。ギターソロも1960年代ハードロック調で、この辺を聴くと、実は器用なバンドで、キャパシティが広かったことが分かるような気もする。個人的には、そうだからと言って、衒学的な姿勢を見せなかったことを好ましく思っている。
M4、M5はポップなロックンロール。ともにパンクと言ってもいいだろう。いずれもメロディーはキャッチーで、このバンドの根底には親しみやすさがあることがよく分かる楽曲と言えるかもしれない。この辺を聴くと、勢いだけで突っ走ることもできたと思うが、そうではなく、M1から始まって、M3を入れた辺りにも、Valentine D.C.のスタンスを改めて感じるところではある。
サイケ、プログレも柔軟に吸収
『GENERATION』中盤以降は、Valentine D.C.の器用さ、キャパシティーの広さがさらに露わになっていく印象がある。まずM6「扉」。アコギのアンサンブルを聴かせるミドルチューンであることに加え、それこ呼応したかのように、Aメロで若干ウィスパー気味の声を聴かせるボーカルがいい。発表された当時は“こういう表情も見せるんだ!?”という新鮮さを覚えたようにも記憶している。ドラマチックに展開するサビもいいと思う。
M7「ill」はタイトル通り、不穏なサウンドが支配するナンバーで、マイナーというよりも、はっきり暗めな曲と言っていいように思う。ストリングスがあしらわれ、プログレの匂いを漂わせている。楽曲の出だしがテープを再生したようなエフェクトがかかっているし、実験的な取り組みを意識したところもあったのだろう。
M8「二人の唄」は、歌はフォーキーで可愛らしい感じもありつつ、ワウペダルを使ったようなエレキギターがかなり耳に残る。ベーシックはシンプルなバンドサウンドで、間奏を聴く限りではさわやかさ一直線に仕上げることもできたように思うが、そうしなかった辺りに、これまた当時のValentine D.C.の意気込みのようなものを感じるところではあろうか。M6~M8はいずれも、歌はもちろんのこと、ギターの主旋律もメロディーアスであり、楽曲の骨子はしっかりとしているところをさらにブラッシュアップしようと腐心したことを想像できるようにも思う。
M9「MY GENERATION」は、さすがにタイトルチューン。本作中、最も勢いのあるナンバーと言ってよかろう。ベースラインは結構動くし、後半でギターがヴォーカルとのユニゾンを聴かせるところなども注目ポイントではあろうが、やはりグイグイと迫るバンドサウンドが素晴らしい。疾走感あふれるドラミング、M2同様、コーラスというよりもシャウトと言っていいサビでの《ジェネレーション MY GENERATION》が全てを物語っているようにも思える。しばらくの間、ライヴでのハイライトとして欠かせない楽曲になっていたようにも記憶している。
そんな勢いで迫るM9からM10「One」へ続くのも興味深い。全体的にはハードな音のままだが、フルート風な音色をフィーチャーし、歌に重なるバンドサウンドはボサノヴァタッチ。M6~M8、あるいはM3で見せていた新たなるアプローチはそれらだけじゃなく、まだまだ続いていくことを示しているようでもある。バンドのポテンシャルをダメ押ししていたようにも思う。
アルバムの締め括りは、M11「Cradle」。この歌のメロディーラインには“このリズムしかないでしょう!”というようなロッカバラード。ヘヴィに迫るギターのストローク。シンバル多めのドラミング。どっしりと低音で支えるベース。そこにエレピも加わったアンサンブルは重厚で、本作のフィナーレに相応しい。迫力たっぷりに歌い上げているボーカルも実にいい。そもそも声質が色っぽいので本領発揮するのは長い音符であることはM1、M3でも示したが、M11のサビのやや大仰にも感じるメロディーの抑揚は、まさに水を得た魚の如し。歌もまたアルバムの大団円にぴったりである。
ザっと全曲を振り返ってみた。そのバンドサウンドもさることながら、改めて強調しておきたいのは、どれもメロディーのポピュラリティーが高い点である。キャッチーな歌やギターリフというのは優れたロックの必要条件であるように思うが、本作はそれをクリアーしているのは間違いない。シンガロングにも十分に耐え得るものばかりであるので、ライヴはさぞかし盛り上がったことだろう。実際そんなライヴを観た記憶もある。冒頭でも言ったように、ここまでメロディーが立ったものばかりだと、例えばハードコアっぽいものであったり、ラップみたいなものであったり、小ネタを1、2曲入れるのもありだった気もするが、仮にそうだったら、アルバム全体のバランスも大きく変わっていただろうから、これが正解なのだろう。
1990年代らしい等身大の歌詞
『GENERATION』収録曲の歌詞からは、はっきりとValentine D.C.のプライドを感じさせる。とりわけロックミュージシャンであることを鼓舞するかのかのような内容が多い。
《震えた共鳴を始める/周波数が飛び交うこの場所さ/騒ぐ衝動に腕を引かれて/古い確執をステージに放て》《このノイズに紛れて 死ぬまで夢見ていたいから/背中合わせの 傷だらけの僕と共に/辿り着くのさ 空想世界の旅の果て/止められない/Ah…》(M1「空想世界」)。
《○×だけの答え方じゃ 正解を出せないことがある》《ヒーローは最後に笑えりゃいいのさ/からい涙こらえ 無理を承知でいい 耐えてみろ/くせが強けりゃかっこいいのかい/冷や汗をかいても 怒り爆発寸前に/ぐっと奥歯を噛みしめろ》(M5「奥歯を嚙みしめろ」)。
《ためらうな この手に帰れよ/いつの間にか追い出していた 自分を取り戻そう/気が付けば一人で泣いてた/もうやめよう この部屋に降る雨の中でうずくまるのは》《眠れない夜を抜け/扉を開け ドアを出る》(M6「扉」)。
《1000の言葉並べることより/本当の夢だけが胸を打つ/足下から飛び立つ鳥の群れが/君を連れていきたがっている》《見定めて息をすって踏み出そう/全部は持ってはいけないけど/さあ今のうちに約束をしよう/その宝石を捨てぬことを》(M10「One」)。
ロックミュージシャンであることを鼓舞…というのは筆者の推測であって、作者の意図とは違うかもしれないけれど、“生き方”を宣言しているかのような力強さがあることは間違いない。これを、メジャーデビューから3年目、初めてのレーベル移籍後の意気込みとして捉えるのは、決して穿った見方でもなかろう。
アルバムのタイトルチューン、M9「MY GENERATION」と言えば、1965年にThe Whoのアルバムとそのタイトルナンバーを思い出すロックファンもいることだろう。そのThe Whoの「MY GENERATION」は、[攻撃的なサウンドと「年とる前に死にたい」というティーンエイジャーのフラストレーションを的確に表現した歌詞が、当時の彼らがメインターゲットとしていたモッズから熱烈な歓迎を受け]たそうだが、1998年のValentine D.C.のほうはそこから進化した感じがある([]はWikipediaからの引用)。最後にその歌詞を引用して本稿を締め括ろう。
《Hey,おじさん 感謝してるよいつも/あくせくとアクセス追い付かないでしょ/どっしり構えてくれよ》《Hey,おじょうさん 「流行り」の気分はどうだい?/世紀末を生き抜くやつらは/案外君たちかもね》《Hey,みんな 自分が正しいって思うだろ?/Hey,みんな あいつあんなこと言ってるよ/どんなやつも今が華だから/無理しなくていいよ/年下バカで年上頑固で/いつの時代も同じ》(M9「MY GENERATION」)。
上の世代だけではなく、下の世代へも目配せしている。しかも、どちらにも最低限のリスペクトを見せており、単なるレベルミュージックに終わらせていないところが清々しい。その辺は、ロックが日本の音楽シーンのメインストリームに定着してきた1990年代後半に作られた楽曲ならでは、なのかもしれない。今となれば普遍的な歌詞と言えるかもしれないし、とても彼ららしい内容だと思ってしまう。個人的にValentine D.C.の代表作として筆者が『GENERATION』を推すのはタイトルチューンにその視点があるからでもあるし、M9は彼らが1990年代の日本のロックシーンを彩ったバンドであった確かな証拠とも言える。
TEXT:帆苅智之
アルバム『GENERATION』
1998年発表作品
<収録曲>
1.空想世界
2.つぎはぎアンティック・ドール
3.カーテンコール
4.Happy Birthday
5.奥歯を噛みしめろ
6.扉
7.ill
8.二人の唄
9.MY GENERATION
10.One
11.Cradle
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