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梅田サイファーが、6月11日に【UMEDA CYPHER “RAPNAVIO” RELEASE ONE MAN TOUR】を東京・Zepp Shinjuku (TOKYO)にて開催した。
メジャー1stアルバム『RAPNAVIO』を引っさげての、メジャーデビュー後初のツアーである今回。6月2日の愛知・THE BOTTOM LINE公演を皮切りに、9日間で全国4都市をまわるというハードスケジュールながら、それを感じさせないパワフルなパフォーマンスと熱いバイブスで会場を思いきり沸かせてみせた。本稿でレポートする東京公演は、同ツアーのファイナル公演となる。
開演10分前、サウンドチェックのためにSPI-Kがステージに姿を見せると、フロアからは期待に満ちた拍手があがる。開演を待ちきれない観客の熱を感じていると、開演時間きっかりにフロアが暗転。まずはSPI-K、Cosaqu、HATCHの3人がDJブースに集まり調整をはじめ、少ししてMC陣が続々と登場すると、アルバム『RAPNAVIO』と同じく「BIG BANG」からスタートした。彼らのライブは、どの曲でもステージ上のメンバー全員が全力で盛り上げてくれるのが我を忘れて楽しめる理由のひとつなのだが、KennyDoesが声を裏返らせるアレンジを決めてゴンフィンガーが飛び交ったり、R-指定のバースではどこからともなく手拍子が始まったり、KZの〈俺は俺のために生き 俺は俺のために死ぬ〉とのパンチラインでは大きな歓声が上がったりと、観客も1曲目からステージに負けない熱量で応えてみせる。そのまま、KBDが〈DJ SHUHOと同じ誕生日〉と東京仕様(?)のアドリブをかました「KING (RAPNAVIO VER.)」、関東イントネーション混じりの〈かまへん〉コールが巻き起こった「かまへん」と、キラーチューンをたたみ掛けた。
曲が鳴りやんでも止まらない歓声のなか、まずはKZが「まずは(チケット)ソールドアウト本当にありがとうございます!」とお辞儀。続くR-指定の「足元悪いなか、大変ななかお集まりいただいて。びしょびしょになった人も、湿気吸った人もいたと思うけど……」との労わりの言葉には笑いとツッコミが起きつつ、「もっと湿度高い空間にしますんで、みなさんよろしくお願いします!」としっかりオチをつける。
そしてKZが「我々はキャパがどこまででかくなっても、みんなと遊ぶこういう場所を“PARTY”って呼びたくて。我々はラップが好きで集まっただけのただの“PARTY”で、今日は東京のみんなと、がっつり“PARTY”になって遊びたいんですけど付き合ってくれますか!?」と叫び、「PARTY」がスタート。先のMCの通り、“PARTY”という言葉が持つダブルミーニングを見事に回収するリリックと、どこか怪しげな雰囲気のビートが楽しい。続く、『HUNTER×HUNTER』への愛が炸裂する「GOD’S SON」では、全員での煽り立てるような声でのフックがより雰囲気を盛り上げていく。
一息つくと、観客に水分補給を促しつつ「曲が始まったら動きを強要していくタイプのアーティストなんで(笑)、この時間はゆっくりしてください」とKZが自虐を挟み、和やかな雰囲気に。ここから、R-指定、KOPERU、KennyDoesがかつて組んでいたユニット=コッペパンの歌舞伎町でのライブの思い出話でひと笑いが巻き起こったのち、「俺たちはみなさんをブチ上げることが仕事でございます。今日はカメラも撮られへんし、お客さんもブチ上がるという仕事しかないわけですよ。このままお客さんと俺ら、どっちが上げ合う波動をぶつけられるか、どこまで上がれるか、どこまで“マジでハイ”になれるか! 全員両手上げろー!」とR-指定が曲名に繋げて煽ると、pekoのボイスパーカッションに乗せて「マジでハイ」のフックが歌い出された。KZバースの〈素面でぶっ飛びます〉の部分ではステージ端でKOPERUが気絶してみせたり、teppeiが「ジャピでハイ」のバースで参加したりと見どころが盛りだくさんで、目が追いつかない。そのまま「俺ら、ツアーの全日程雨降らしてんねん!」と笑わせつつ、「空から降る雨だけちゃう、“金“の雨を毎日降らしてんねん!」とR-指定ががなると、KOPERU、KennyDoes、R-指定の三人三様の器用なフロウが心地いい「レインメイカー」と続く。
イントロから大歓声が起きた「トラボルタカスタム」では、テークエムのバースが始まると同時に会場の熱気が一段上がり、まさに“真打登場”という雰囲気をまとっていたのが印象的。「ビッグジャンボジェット」では、フックを歌いながら誰よりも高く飛び跳ねるILL SWAG GAGAと一緒に観客もジャンプし、会場を揺らした。
MCでは、「生まれて初めて、1週間で全国ツアーをしました!(笑)」と今回のツアーの話題に。これを受け、KennyDoesがステージ上を見渡し「4か所全部行ったよって人いますか?」と質問、静かにメンバー全員が手を挙げると、R-指定が「こんだけの人数がおって、全員がちゃんと来てるっていうのはヒップホップ・グループとしてほんまにすごい。プロフィールに書こ!『全員でちゃんと来ます』って」と真面目な顔で語り、会場は爆笑。そして、R-指定が今日も遅刻したこと(本人曰く「近くて遠い」)、そんなR-指定の意見に賛同するILL SWAG GAGAの独特のフォローが繰り広げられ、笑いを誘った。
ILL SWAG GAGAの咆哮からスタートしたのは、〈どいつがBoss?決められやしない〉〈全員がHeadだろ〉と、梅田サイファー全員のスキルの高さをユーモアとともに見せつける「アマタノオロチ」。すでに開演から約1時間、いよいよライブも中盤だというのに、衰えないどころかむしろパワーアップしていくステージングが圧巻だ。そして、タオルを振り回して全身で乗った「トメラレランナイ」、KennyDoesが叫んだ「『RAPNAVIO』作った時のクソあちい気持ち、さめないうちに持ってきたから聴いてくんねえー!?」とのMCでブチ上がった「さめないうちに」は、どちらもラップや梅田サイファーそのものへの情熱が滲むリリックが胸を打つ楽曲。曲終わりには、その熱い気持ちを讃えるように、大きな拍手が起こった。
パワフルなパフォーマンスを見せる梅田サイファーの面々だが、最年少のコーラは今年で30歳、最年長のKBDは41歳を迎える。「ヒップホップはユースカルチャーと言われているなか、平均年齢は34、5歳をゆうに超えている我々ですが、フレッシュさをお見せしたいと思います。……梅田サイファーのみなさん、楽しんでますか!?」とKZがメンバーに呼びかけると、「ワーッ!」と飛び跳ねたりステップを踏んだり、奇声を上げたりとフレッシュ(?)な姿を見せ、観客は大盛り上がり。そして、改めてメジャーデビューしたことについてファンへの感謝を告げる。なかでも、40歳にしてメジャーデビューを果たしたKBDと、Creepy Nutsに続き2回目のメジャーデビューとなるR-指定を、メンバーたちが「すごい」と讃えるあたたかい一幕も。
そして、KZが「音楽ってすげえいいなと思うんですよね。こんなにたくさんの人と何かを分かち合うことは、俺の人生ではこの瞬間しかなくて。平日に戻ったら、また歌詞書いて、ライム考えて、ビート打って、暗い部屋で『うまくいかんなあ』って思ったりして……でも、こういうところが待ってるんやって思うと、みんなの顔見るためにもうちょっと頑張ってみるかって気持ちになるんです」と熱く語り出す。今日集まった観客の生活についても思いを馳せつつ、「今日はたまたま俺らが戦うところを観に来てもらっただけ。もし俺らを観てなんか感じたら、持って帰って、みんなの生活、よりよくしてほしいっすね。楽しいって気持ちはマジで無敵やと思うんで。俺ら、景色はどんどん変わっていくけど、ずっと同じ気持ちを持って、ずっとずっとみんなと音楽を通してコミュニケーション取ろうと思うんで、引き続き梅田サイファー、よろしくお願いします!」と結ぶと、会場全体を大きな拍手が包み込んだ。
「俺ら地元が一緒じゃないから、みんな乗り継ぐ駅が違うんですよね。でも目指す場所はひとつ。またぐるっと回って戻ってきます!」と続いて始まった「環状線」からは、ライブもいよいよ終盤のしっとりした雰囲気に。「Show Must Go On」のフックでは、観客もすっと1本指を高く掲げ、その熱いリリックに応える。曲終わりにpekoが語った「2007年から16年間、いいことも悪いことも含めて、めっちゃ色んなこともあったし、いろんなやつと出会っていろんなやつと離れたけど、一回決めたことはやり続けるんで」との宣言には大歓声が起こる。そのまま指を掲げさせ、「俺たちが、君たち一人ひとりが、“No.1 PLAYER”」との言葉とともに流れ出したのは「No.1 PLAYER」。ここにたどり着くまでの苦い過去も楽しさに昇華させるパワーがあふれるこの曲に、呼吸も忘れて観入ってしまった。
余韻に浸る間もなく軽快なビートが流れ出すと、「本日千秋楽です。そんなんで終われますか!?」とpekoがまだまだフロアを盛り上げ、「KILLING TIME」へ。コール&レスポンスの声量もどんどん上がっていき、まだまだテンションが上がらずにはいられない。フックでは、メンバーも観客も、全員が飛び上がってジャンプ。全身で音を楽しみつくし、本編を終えた。
アンコールは、KBD……によく似た“ジャンガリアンハム次郎”がおもむろに登場し、音源でもおなじみの口上から繋がった「真・リズム天下一武道会」で幕を開ける。“ニューチャレンジャー”として今日はCosaqu、pekoが参加し、そのサプライズに会場の熱気もどんどん上がっていく。最後に叫ばれた「全員あっぱれ!」とのセリフには、まさに!と同意の歓声が沸き上がった。
“梅田サイファーのアンミカ”ことHATCHとKOPERUによる「売れ行きの怪しいものだけ持ってきた」グッズ紹介と、メジャー初アナログ盤&自身初映像作品の告知でまだまだ笑わせたあとは、KZが「メディアに取り上げてもらえる機会もあんまりなかったから、きっとみんな、自分で(梅田サイファーを)見つけてくれたと思うんです」「自分でディグってくれたみんなのおかげで、今こういう場所に立ててます。もう一度、ありがとうございます!」と、改めて観客へ感謝を伝える。そしてテークエムが観客にスマートフォンでのライトアップを促し、「この光のなかで、雰囲気のある曲をやらせてもらおうと思います」と告げると、彼のソロアルバム『THE TAKES』からの1曲「Poltergeist」がスタート。しっとりさせるのかと見せかけて、怪しいサウンドと太い掛け声のこの曲で裏切ってくるところに、彼らのユーモアを感じる。また、この曲では特にKOPERUのバースを中心にステージ全体を使ったパフォーマンスが活きていて、フォーメーションダンスを観ているかのようなワクワク感があった。
ふたたびMCで盛り上がると、なんと急遽セットリスト追加を行うことに。(ILL SWAG GAGAと、彼を見守るpekoを除く)メンバー全員が集まっての協議の結果、選ばれたのは「服部半蔵 -外伝-」。ユニークすぎるタイトルは〈やるときゃやる〉の象徴として付けられたそうだが、曲終わりにはメンバーも「なんで『服部半蔵』なん?」「曲聴いてもなんでなんかわからん」「『トラボルタカスタム』も大概やで」と口々にこぼし、観客も爆笑。そして、最後を締めくくった「梅田ナイトフィーバー’19」では、リリックをなぞるように天井についたミラーボールがきらきらと回りはじめる。観客もこの日いちばんの声量で応え、テークエムの「ここを梅田に変えてくれますか!?」との言葉の通り、まるで会場全員でサイファーをしているような感覚になるほどだった。曲が終わると“割れんばかり”との表現がぴったりの歓声に包まれ、2時間のステージが幕を下ろした。
梅田サイファーのライブはとにかく楽しい。そして、観るときっと「目が足りない」という感覚におちいるはずだ。集まった観客をひとり残らず楽しませようとするバイブスが、全員からほとばしっているのがきっとその理由だけれど、その前提にあるのは、“全員が頭”との宣言に違わない、全員の(さまざまなベクトルでの)パフォーマンス力の高さだろう。誰かひとり“だけ”に目がいかない、あちこちに目と耳を奪われてしまう――カオスなはずなのに、集団としてまとまっている。この楽しさは、梅田サイファーのライブだからこそ感じられるものだと思う。メジャーに活動の場を移し、ますます精力的な活動を続ける彼らのこの先に、期待しかない。
Text by Maiko Murata
Photo by Hiroya Brian Nakano
◎公演情報
【UMEDA CYPHER “RAPNAVIO” RELEASE ONE MAN TOUR】
2023年6月11日(日) 東京・Zepp Shinjuku (TOKYO)
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