<ライブレポート>しゅーず、ファンとの“つながり”を確かめ合ったツアーファイナル

2023年6月14日 / 18:00

 しゅーずにとって史上最大規模であり約4年ぶりの全国ツアー【Shoose Live Tour 2023 -CONNECT-】。6月3日に行われた最終日のZepp Haneda公演も、最新アルバム『CONNECT』のテーマである“つながり”を重んじた、非常にナチュラルであたたかい空気が流れるライブとなった。

 開演前の影アナを担当したしゅーずは、観客へ「ご機嫌いかがですか?」と問いかけると、観客も即座に声を上げる。声出しが可能になったからこそ実現できるコミュニケーションだ。その後は「崩壊ホークアイ」の音源を流しながらコール&レスポンスをレクチャーすると、しゅーずが「全然だめ!(笑) もうみなさん今日は帰りますか?」や「いいですねえ~」など、観客の行い一つひとつにリアクションをしながら会場のテンションを高めた。

 開演時刻となりバンドメンバーが配置についた後、ステージ中央に設置された扉からしゅーずが登場すると、ダンサー2名が彼を挟んだ配置につき、最新アルバム収録曲「Accident」でライブがスタート。ステージ上部に設置されたモニターの映像とフロアを飛び交うレーザーのカラフルな演出で、ダンスを交えてパフォーマンスをする。EVO+の「 [A]ddiction」、梅とらの「狂喜乱舞」とカバーを畳みかけると、本人作詞の1stシングル曲「Night Wander」へ。ミステリアスな楽曲群を、時に妖艶に時に熱く歌い上げ、ファイナルの狼煙を上げた。

 立て続けに4曲歌唱した彼は、ファイナルはこれまでのツアーとは違う楽曲を1曲目に置き、今までのツアーとは異なる雰囲気でスタートしてみた旨など、ライブや楽曲に懸ける思いを丁寧に言葉にしていく。言葉のチョイスや語り口も物腰柔らかく、さらには「暑くないですか?」など観客を慮る呼び掛けも多いため、彼が話し出すとたちまちほんわかと優しいムードが広がっていくのも微笑ましい。「みなさまの記憶に刻み込めるステージを……」と小粋に意気込みを語ろうとするも、なんだか思ったような流れにいかないところも、彼の愛嬌のひとつだ。

 ここからしばらくは主に『CONNECT』収録曲を披露する。メロウなシティポップ「寡欲」は憂いのあるメロディが彼の声をより艶やかに映し出し、「ジェットセット・ラブ」ではポップなサウンドに乗せて無邪気な歌声を響かせた。ギターロックアレンジの「Hello, Worker」では、陰と清涼感を持ち合わせたボーカルで、迷いを抱えた青い葛藤を彩度高く表現。3曲3様のボーカルで魅了した。

 「しゅーずのライブ名物、感情のジェットコースター急降下のお時間がやってまいりました」と笑わせるとバラードパートへ。しゅーずが切実な心情を歌に込めた「U」では、幻想的なスモークや上段ステージにダンサーのしなやかな身のこなしが、美しくロマンチックな楽曲の世界に色を加える。「哀」は歌詞の主人公の気持ちがダイレクトに伝わってくるボーカルで観客たちの心を掴んだ。しゅーずは悲哀の感情を歌に乗せる手腕に長けている。バラードはミドルテンポで胸に染み入る楽曲が多いぶん、悲しみや切なさ、募る思いを封じ込めたものが主流で、ボーカリストによる歌詞の感情の解像度が楽曲の出来を左右すると言っても過言ではない。しゅーずのやわらかく優雅な声質はバラードと親和性が高いはもちろん、彼自身も丁寧な言葉遣いや、観客の言葉に耳を傾けてそれに返すという気配りを持ち合わせている。だからこそ彼の歌はバラードでも美しく花開くのだろう。「またねがあれば(Arrange Ver.)」も、歌詞の主人公の抱える痛みが自分自身の感情だと感じられるほどに、生々しく響く歌声だった。

 バンドインストを挟むと、衣装チェンジをしたしゅーずが上段ステージに登場。モニターに映し出された歌詞に囲まれながら歌唱する「暴露」はスリリングかつ甘美で、リズム隊のソロ回しからなだれ込んだ「セカンド・キス」でもアダルティな空気を作り出す。バラードの純粋性からトレンディドラマのような艶やかさへのスイッチングも鮮やかな、しゅーずの描くラブストーリーをじっくりと味わえるセクションだった。

 歌った楽曲について一つひとつ触れた後は、「ここからはすべてみなさまのテンションを上げていく曲しか残っておりません」と告げる。ここからさらに観客を煽り次の曲へ入るのかと思いきや、煽るのが苦手だという彼は、バンドメンバーたちにその役目を託した。バンドメンバーにスポットが当たることで会場の空気はさらにほぐれ、一体感を増していく。タイトルの“CONNECT”がさらに大きく広がった瞬間だった。

 メンバーが思い思いの煽りで会場を沸かすと、しゅーずが「それでは皆さんいきましょうか!」と叫び、「脈拍」「キャットアイメイク(Arrange Ver.)」「PiNK CAT」と颯爽と熱量を高めていく。本編ラストは開演前にレクチャーした「崩壊ホークアイ」。しゅーずも積極的に観客から声を求め、フロアからはコールとシンガロングが起こる。観客やバンドメンバーと手を取ってゴールテープを切るような、爽快感に満ちた締めくくりだった。

 アンコールではツアーTシャツ姿で登場し、まず椎名林檎「公然の秘密」のカバーを披露する。するとその後に、ツアーファイナル直近で体調を崩してしまった旨を明かした。「本当は万全な体調でみなさまをお迎えしたかったのですが、それが叶わずとても心苦しくて申し訳なくて。でもみなさまの楽しそうな笑顔を見られて、胸がぎゅっと熱くなるものがありました」と感謝の念を告げると、客席からも次々と感謝の言葉が飛んだ。

 名残惜しい気持ちを露わにしながら「みなさまの声が聞けて、楽しそうなお顔が見えて、僕は幸せです」と告げ、披露したのは「マンティス▽クライシス」。間奏ではバンドメンバーとダンサーのソロ回しを盛り込み、観客からのコールもさらに声量を増すなど、全員でエモーショナルかつ華やかにツアーを締めくくった。

 バンドメンバーとダンサーと手をつないで「今日の素敵な思い出を心に留めながら、またお会いできる日を楽しみにしております」と晴れ晴れしい表情で語ったしゅーずは、全員とともに深々と頭を下げる。単身ステージに残り、会場の隅から隅までを見渡しながら頭を下げると、手を振りながらステージ中央の扉の向こうへと去る。客席はしばらく、扉の向こうの彼に宛てた「ありがとう」の声で溢れていた。思いやりに満ちた、屈託のない声援に包まれたラスト。彼がファンと丁寧に意思疎通を取りながら、ともに歩んできたことを再確認する、非常にアットホームなツアーファイナルだった。

Text:沖さやこ
Photo:堀卓朗 [ELENORE]

◎公演情報
【Shoose Live Tour 2023 -CONNECT-】
2023年6月3日(土)
東京・Zepp Haneda(TOKYO)

[Band Member]
Guitar:江畑コーヘー
Manipulator: K.F.J
Bass:伊東達哉
Drums:道田修平
Keyboards:翔馬

[Guest Dancer]
明香里(ATY)、moena
夕香里(ATY) ※M8「U」のみ出演

<セットリスト>
01. Accident
02. [A]ddiction
03. 狂喜乱舞
04. Night Wander
05. 寡欲
06. ジェットセット・ラブ
07. Hello, Worker
08. U
09. 哀
10. またねがあれば(Arrange Ver.)
11. 暴露
12. セカンド・キス
13. 脈拍
14. キャットアイメイク(Arrange Ver.)
15. PiNK CAT
16. 崩壊ホークアイ
EN01. 公然の秘密
EN02. マンティス▽クライシス


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