ビルボードジャパン×ビルボードライブ企画 観覧者から募集したリチャード・カーペンターのライブレポートを公開

2023年5月12日 / 18:00

 2022年10月より、ビルボードジャパンとビルボードライブによるライブレポート特別企画がスタートした。

 ビルボードライブで行われる公演を対象に、観覧者からライブレポートを募集してビルボードジャパンに掲載する企画となっている。

 本企画の第5回目となるリチャード・カーペンターは、3月27日にビルボードライブ大阪、2023年3月29日、3月30日、4月1日にビルボードライブ東京、4月3日にビルボードライブ横浜で公演を開催。今回、Club BBL会員を対象にライブレポートを募集した。

 なお、本企画は今回で終了となる。

<ライブレポート1>

 アメリカの兄妹デュオ、カーペンターズの兄リチャード・カーペンター。ビルボードライブの15周年を記念して、大阪・東京・横浜の3か所で計10公演が開催された。

 場内が暗転すると、モニターが下り映像が流れ始めた。幼少期のリチャードやカレンの写真、音楽制作やライブ活動をしている姿が映し出される。そして英語でのアナウンスに迎えられ、リチャードが登場。観客たちに手を振りながらピアノの前に着席する。鍵盤の感触、ペダルの具合を確認しながらオリジナルの旋律を奏で、カーペンターズの代名詞の1つ「遥かなる影」が始まった。優しいピアノの音が広がる。リチャードは弾きながら、時折ふっと唇が緩み、笑みがこぼれていた。弾き終えると「Welcowe to~」と挨拶。「今回はカーペンターズの曲を時系列と共に振り返っていきたい」と述べた。

 次に紹介した曲は「Candy」(後の「One Love」)。カーペンターズとしてデビューする前、リチャードがカリフォルニアのディズニーランドでピアノ演奏のアルバイトをしていた時、キャンディというウェイトレスの女性に憧れていた気持ちを歌った曲とのこと。後に、カレンが歌うため女性目線の歌詞に書き換えられ、タイトルも「One Love」に変更したというエピソードを述べた。ゆったりしたメロディーに、ピアノの細やかな旋律が印象的な曲だ。そして、1971年代に発表された「スーパースター」と「雨の日と月曜日は」をメドレーで奏でる。音源では聴くことがない、メドレーならではのピアノアレンジを随所で聴くことができた。

 「青春の輝き」はカレンが非常に気に入っていた曲だが、アメリカでは当時、思っていたよりはヒットしなかったそう。カレンの死後10年以上経った頃、日本からレコード会社に問い合わせがあり、ドラマに「青春の輝き」と「トップ・オブ・ザ・ワールド」を使わせてほしいとの内容に驚いたとのこと。カーペンターズの曲が再注目されるきっかけとなり、22曲のヒットアルバムも発売された。「カレンが生きていたら、とても喜んでいたのではないか」と語る。そして繊細なイントロが始まり、サビで優しく透き通るように広がるメロディーをリチャードはとても大事そうに奏でていた。

 続いて「シング」と「愛にさよならを」などをメドレー形式で披露し、「ふたりの誓い」へ。もともと映画の挿入歌で、マネージャーから勧められて観た映画だったそう。当時1971年に「スーパースター」と「雨の日と月曜日は」でヒットを出した後、今度はどの曲をアレンジするか悩んでいたリチャードは、映画を観て「次はこの曲だ」とカレンに言ったという。【アカデミー賞】を受賞したこともある楽曲を、美しいピアノの旋律で交互に味わうことができた。

 ここで、リチャードへの質問タイムが設けられた。日頃からファンとの交流が好きなリチャードは3名ほど指名し、ファンからの質問に答えた。インディーズ時代のアルバムのこと、当時の活動のこと、今度の活動予定のこと、音楽とは違った話題にも答えてくれた。

 後半に入り、リチャードの娘・トレイシーとミンディーが登場。2人をボーカルに迎え、「I’ll be yours」が披露された。リチャードがコーラスとなり、3人のハーモニーが響く。リチャードが180度向きを変え、ウーリッツァー(通称ウーリー)と呼ばれる電子ピアノ前に着席する。そして、ウーリーのサウンドがアイコンの曲である「トップ・オブ・ザ・ワールド」へ。音源さながらに奏でられ、これもリチャード、トレイシー、ミンディーの3人で歌唱。ここでもう1人、リチャードの末娘テイラーが迎えられる。歌われたのは「ジャンバラヤ」だ。リチャードのウーリー伴奏、トレイシー、ミンディー、テイラーのボーカル、そしてカレンのコーラスが重なる。事前に配られた歌詞カードを見て、口ずさむ観客もいた。

 3人の娘が退場した後、残ったリチャードは再びピアノの前に着席し「オンリー・イエスタデイ」が奏でられた。演奏が終わると、拍手の中で礼をして去っていく。すると少し慌てた様子で戻ってきた。「忘れてはいけない曲があった」と、再びピアノの前に座る。トレイシー・ミンディーも再登場し、最後に披露されたのは「イエスタデイ・ワンス・モア」だ。イントロの1小節だけで引き込まれ、みんなが愛する曲が会場全体をうっとりさせた。最後のサビを観客と共に歌い、大きな拍手の中でリチャードは退場した。

 実に4年ぶりとなった来日公演は、リチャードのピアノの一音一音がとても光り輝いていた。夢のような時間に、ファンは「昨日よ、もう一度」という想いを抱いているだろう。

2023年3月29日、3月30日 ビルボードライブ東京/4月3日 ビルボードライブ横浜

Text by Natsuko

<ライブレポート2>

 今は亡き妹カレンと兄リチャードの兄妹デュオであるカーペンターズは、1969年のデビュー後、70年代を中心に全世界にその美しいハーモニーを響かせ、多くの人々の心を魅了した。その兄リチャードが今回待望の来日を果たし、ビルボードライブ3都市をめぐるプレミアムライブを開催したことは、往年のファンにとってはまさにビッグサプライズであった。

 現在76歳になるリチャードがステージに登場すると、会場は大きな拍手と笑顔に包まれた。シンプルなセーターにスラックスといういでたちのリチャード。黒く輝くスタインウェイの前に座り奏でられたのは、初期の大ヒット曲「Close To You」だ。その後も「One Love」や「Super Star」など、時系列に曲の生まれたエピソードを紹介しながら演奏していく。鍵盤の上を滑らかに移動するリチャードの指から奏でられる音色は、当時より円熟味を増し、心に深く沁みこんでいく感じがした。

 当時ヒットしていた映画の主題歌で、たまたま二人で観に行って気に入ったという「For All We Know」。元々はトロンボーンで奏でられていたという、美しいメロディーラインが印象的だった。

 なごやかなトークを交えながら、新しい曲の紹介をするリチャード。1995年に放送された日本のテレビドラマ『未成年』に「I Need To Be In Love」が使われ、大ヒットした経緯なども語り、日本のファンにとって嬉しい時間となった。そして、ファンからの質問に答えるというコーナーも展開。コアなファンらしい質問や、思わずクスっと笑ってしまう質問などで会場が和む。リチャードはそのひとつひとつに丁寧に答えていた。

 後半は娘たちが登場。最初に歌ったのはカーペンターズが正式にデビューする前に録音されたという「I’ll Be Yours」だ。ピュアな歌詞と美しいメロディーラインを、トレイシーとミンディーが伸びやかに歌う。この時リチャードはステージ上にもう一台置かれていた電子ピアノ、ウーリッツアーで演奏。どこか懐かしさを感じさせる音色はこの曲にとてもよく合う。その後「Jambalaya」では、末っ子のテイラーが加わり、3人の娘たちに優しい笑顔を向ける幸せそうなリチャード。会場中が温かな空気に包まれた瞬間だった。

 ライブ最後を締めくくったのはカーペンターズの代表曲「Yesterday Once More」で、娘たちが再び登場した。そして“Every Shalalala・・・”のフレーズを観客全員でコーラス。その時ステージ後方のカーテンが静かに開き、バックには美しい六本木の夜景が広がる。近代的な風景に、時代を超えた美しい名曲が重なり、観客たちはそれぞれの人生に寄り添ってきたカーペンターズの曲の数々を思い浮かべていただろう。

2023年3月29日 ビルボードライブ東京

Text by Horizon

<ライブレポート3>

 ビルボードライブ15周年記念、リチャード・カーペンターによる珠玉の来日公演。日本のカーペンターズ・ファンに待望されたリチャード・カーペンターの来日公演が、ついに実現した。2023年4月3日、横浜のビルボードライブで行われた彼のライブは、熱狂的な盛り上がりを見せた。

 カーペンターズは、兄のリチャードと妹のカレンによって結成された音楽グループだ。彼らは1969年にビートルズのカバーー曲である「涙の乗車券」で全米デビューし、翌年には「遥かなる影」がビルボードチャートで4週連続全米1位を記録し、グラミー賞を受賞。名は一気に全世界に知れ渡った。その後、「愛のプレリュード」や「スーパースター」などの数多くのヒット曲を生み出し、リチャードの緻密なアレンジとカレンの優れたボーカルによって作り出された音楽は、全世界で高い評価を得ていた。その中、1983年2月4日にカレンの突然の死によりカーペンターズは自然解散。それでも、彼らの音楽は今も世代を超えて多くの人々に愛され続けている。

 今回の来日公演ではカーペンターズが生み出した数々の名曲が、リチャードのピアノと彼の娘であるミンディーとトレイシーのボーカルによって披露された。

 会場でまず目に付いたのがステージで、演奏で使われる楽器と共に、ステージの右手にはソファとテーブル、そしてノスタルジーを感じさせる電話と在りし日のカレンの写真が飾られており、あたかも彼女がそこにいるかのような演出となっていた。会場には、カーペンターズをリアルタイムで知る世代から若い世代まで、多くの人が詰めかけた。

 開演時間となり暗転すると、スライドが流され、改めてカーペンターズを振り返る場面で幕を開けた。リチャード・カーペンターが観客の間を縫ってステージへ登壇し、ファンが持参したLPにタッチするなど、会場には和やかな雰囲気が漂っていた。

 リチャードがステージに登壇すると、カーペンターズの名曲「遥かなる影」が演奏され、会場は一気に盛り上がった。その後、デビュー前にディズニーランドでアルバイトしていた時に作った曲であり、「キャンディー」というタイトルから変更した「ワン・ラヴ」を演奏。会場内には曲に合わせて口ずさむ人も現れた。そして70年代初期のカーペンターズで欠かせない「スーパースター」、「雨の日と月曜日は」と、彼らの名曲が時系列に演奏された。

 そんな中、日本でカーペンターズを語る上で欠かすことのできない名曲の一つである「青春の輝き」が演奏され、会場に詰めかけた若い世代から喝采が湧き上がった。その後再び1971年に発表された「二人の誓い」が演奏され、リチャードによるピアノ・ソロは大盛況となった。演奏が一段落すると質問タイムが設けられ、リチャードはファンからの質問に耳を傾け、丁寧に答えていた。

 その後、リチャードの娘であるミンディーとトレイシーが登場し、カーペンターズ結成前に作られた曲である「アイル・ビー・ユアーズ」をリチャードの伴奏と彼女たちのボーカルで披露。そして、70年代を象徴するサウンドを奏でるウーリッツァーが紹介され、名曲「トップ・オブ・ザ・ワールド」が手拍子に包まれながら演奏された。娘たちの登壇で会場が盛り上がる中、「ジャンバラヤ」を参加者全員で歌うコーナーが設けられ、ライブは最高潮に達した。そして最後の曲として「明日は今日よりもきっと輝いているだろう。」というメッセージが込められた「オンリー・イエスタデイ」が、リチャードによるピアノで演奏された。

 会場が盛り上がる中、リチャードはステージを一旦去ったが、「あの名曲を演奏してませんでした」と再度ステージに戻る。そして、カーペンターズの黄金期を象徴する名曲「イエスタデイ・ワンス・モア」が演奏された。2番のサビに入った時、リチャードが「みんなで歌うのを忘れていましたので、ちょっとだけ巻き戻します」と呼びかけ、会場が一体となって最後のサビを歌い上げ、ライブは幕を閉じた。

 このリチャードの何気ない言葉はまさにこの曲を象徴している。「イエスタデイ・ワンス・モア」は元々1973年に発表されたアルバム『ナウ&ゼン』のB面に収録されている。B面に収録されているオールディーズ・メドレー「あの頃」とを繋ぐ、いわば「今とあの頃」を橋渡しする役割をしていた。今回の公演での「ちょっとだけ巻き戻し」には、「この曲でいつでも輝いていた頃に戻れる」というメッセージが込められていたのではないかと感じさせる場面であった。

 リチャードがステージを去る間、会場にいる人全員がスタンディングオベーションで彼を見送り、カーペンターズが如何に世代を超えて多くの人に愛されているかが垣間見える瞬間となった。

 「カーペンターズの音楽は一時の流行ではなかったのかもしれない。しかし、僕らが信念を持って作った音楽はタイムレス(時代を超えていくもの)だ」というリチャードの言葉が示すように、カーペンターズの音楽は今も尚、世代を超えて多くの人に愛され続けている。音楽は時代と共に移り変わり、彼らの音楽もまた、時代を経るごとに当時のものからリミックスが加えられ、語り継がれてきた。

 カーペンターズの音楽は時代と共に変化してきた部分があるが、その中にあっても変わらないものがある。それはカーペンターズを象徴するカレンの声そのものだ。「もし、カレンがまだこの世にいて、世界中に歌声を届けていたとしても、当時と全く変わることはないし、このとこは断言できる」とリチャードが語ったように、彼らの音楽は、その独自性と美しさによって、永遠に輝き続けるのである。

2023年4月3日 ビルボードライブ横浜

Text by Hiroyuki Murata

Photo by MasanoriNaruse

◎公演情報
2023年3月27日(月)大阪・ビルボードライブ大阪
2023年3月29日(水)、3月30日(木)、4月1日(土)東京・ビルボードライブ東京
2023年4月3日(月)神奈川・ビルボードライブ横浜


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