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20世紀末の世をその鮮烈な音と存在感でおおいに賑わせたばかりか、21世紀に入ってからはもちろんのこと、近年のコロナ禍においても常に尖ったロックバンドとしてのスタンスを音楽で表現し続けてきたPENICILLIN。彼らは先だって2月1日に30周年を記念するベスト盤『30 -thirty- Universe』を発表しているが、厳密には1992年2月14日に始動しているため2023年で31周年を迎えることになる。
そんな彼らが、2月11日と12日の2日間にわたり新宿ReNYにて開催したのは、そのタイトルどおりにPENICILLIN自体の生誕を祝うライヴであると同時にバレンタインの要素も盛り込むという贅沢な企画ライヴ『PENICILLIN HAPPY BIRTHDAY & VALENTINES DAY LIVE SPECIAL 2023』だ。
「ようこそ、新宿ReNYへ!ということで、いよいよPENICILLINの31周年が始まります。最初に宣言しておきますと、今日と明日のライヴでは来週から始まるツアーの曲はほとんどやりませんので。この2日間よろしくお願いします!」(千聖)
ちなみに、千聖がここで口にした「来週から始まるツアー」とはベスト盤『30 -thirty- Universe』の発表を受けて2月18日から始まる全15本の全国ツアー『30th anniversary TOUR「30 -thirty- Universe」』のこと。当然これはベスト盤の内容を軸にしたものとなっていくはずだが、あくまでも今回の2デイズライヴは毎年恒例となっているバンドの生誕を祝う場としてのライヴであり、ベスト盤には入っていなかったさまざま楽曲たちを堪能することが出来た場だった。
今宵、ステージの幕が開いていくのと共に奏でられ始めた「WILL」は2011年3月にリリースされたアルバムの表題曲であり1曲目でもあったものであるし、それに続いた「JULIET」は2001年『NUCLRAER BANANA』に収録されていた曲だったが、そのあとに聴けた「heart beat」は2022年発表されたアルバム『パライゾ』に入っていたもので、新旧の楽曲たちがあれもこれもと繰り出されていく様からはPENICILLINというバンドの懐の深さを感じることになったと言っていい。
特に、この第1夜の公演に関して言えば1996年発表のアルバム『VIBE∞』に収録されていた「Violet」が、エバーグリーンな普遍性を持った良曲として2023年の現代に響き渡った場面はとても感慨深く、ロックバンドとしての先鋭性のみならず聴き手の心に沁みいるような楽曲もこうして体現出来る、というその表現の豊かさにPENICILLINが31年もの時をサバイブして来た理由のひとつをみた気がしてならなかった。
懐メロとして単に回顧される音楽とは全く違う、時代の流れの中で成長と変化を続けてきた現在進行形の生々しい音楽をPENICILLINはずっと放ち続けてきているわけで、この事実はつくづく尊い。2000年のアルバム『UNION JAP』に収録されていた「野生の証明」にしても、今だからこその熟したグルーヴを持ったバンドサウンドがそこには溢れていたのである。
「去年は新譜を出してツアーも出来て、30周年のベストを出した直後にはこうしてバンドの誕生日も祝うことが出来て、もうすぐベスト盤のツアーも出来るなんて、今年もかなり充実したアニバーサリーイヤーになっていると思います。こうして31年経ってもみなさんがこうして集まってくださるというのは、本当にありがたいことです。だって、うちのメンバーはもう全員50歳を超えてるんですよ?ハッと我に返って、みなさん「次から来るのヤだ」とか思わないでね(笑)。要するに、ここに来てくださっているみなさんは年齢とかにとらわれず「PENICILLINっていいな」という気持ちをちゃんと大事にしてくれている、凄くセンスの良い人たちなんじゃないでしょうか。(中略)これからもPENICILLINは頑張っていきますので、応援よろしくお願いします!」(HAKUEI)
御大・美輪明宏氏の名言に「年齢なんてただの数字」というものがあるが、要はあの御言葉を地で行くのがPENICILLINだと言えるのかもしれない。50歳を過ぎようとも、キレのあるドラミングとチャーミングなキャラクターでPENICILLINを支えているドラマー・O-JIRO。50歳を過ぎようとも、アグレッシヴかつ隙のないプレイと冴え渡るトークスキルで熱くフロアを沸かせるギタリスト・千聖。50歳を過ぎようとも、唯一無二のヴォーカリゼイションとグラマラスなライヴパフォーマンスで観客たちを魅了するフロントマン・HAKUEI。渋く枯れながら老成していくタイプのバンドもそれはそれで悪くはないが、PENICILLINのある意味で時間軸を超越したこの不思議な存在感は特筆すべきものであるに違いない。
なお、この第1夜ではアルバム『パライゾ』のリリースから程なく発表された3曲入りパンフレットCD『カタストロフィ』からの新曲「anti catastrophe」がライヴでの初披露となったほか、そのすぐ後には1995年発表の『Missing Link』から「マゾヒスト」が演奏されたうえ、アンコールでも『カタストロフィ』からバラード「君の空へ」が演奏され、PENICILLINの誕生日を祝うハッピーバースデーのセレモニーをはさんだ後には、なんと1992年11月に発売されたファーストデモテープに初収録されていた楽曲であり、のちに1994年のファーストアルバム『Penicillin Shock』にも入れられることになった「Moon Light」も演奏されることに。ダブルアンコールでの「男のロマンZ」も含めて、時を自在に操るかのごとく各時代の曲たちを“今の自分たちのもの”としていきいきとしたみずみずしい音で届けてくれたPENICILLINの姿は、この夜もひたすらに輝いて見えたのであった。
いよいよ、2月18日からは4月16日の新宿BLAZE公演まで続く全15本の全国ツアー『30th anniversary TOUR「30 -thirty- Universe」』が始まろうとしている中での『PENICILLIN HAPPY BIRTHDAY & VALENTINES DAY LIVE SPECIAL 2023』はバンド側にとっても、彼らのことを愛するファンにとっても、善きスタートアップの場になったことだろう。20世紀末の世をその鮮烈な音と存在感でおおいに賑わせたばかりか、21世紀に入ってからはもちろんのこと、近年のコロナ禍においても常に尖ったロックバンドとしてのスタンスを音楽で表現し続けてきたPENICILLINが、ここからの新世界をさらにどう生き抜いていくことになるのか…。それがとても楽しみで仕方ない。
Photo by 折田琢矢
Text by 杉江由紀
【セットリスト】
01.WILL
02.JULIET
03.herat beat
04.VOID
05.墓標
06.Violet
07.野生の証明
08.anti catastrophe(新曲)
09.マゾヒスト
10.透明人間パルサー
11.DEAD or ALIVE
12.Why ?(新曲)
13.憂鬱と理想
15.Dead Coaster
16.スペードキング
<Encore1>
1.君の空へ(新曲)
2.Moon Light
3.ウルトライダー
<Encore2>
男のロマンZ
『PENICILLIN 30th Anniversary Tour 「30 -thirty- Universe 」』
2月18日(土) 西川口Hearts
2月19日(日) 柏PALOOZA
2月23日(木祝) 京都MUSE
2月25日(土) 福岡DRUM Be-1
2月26日(日) 福岡DRUM Be-1
3月05日(日) 仙台MACANA
3月11日(土) 浜松窓枠
3月12日(日) 名古屋BOTTOM LINE
3月18日(土) 札幌cube garden
3月19日(日) 札幌cube garden
3月25日(土) 大阪umeda TRAD
3月26日(日) 神戸VARIT.
4月08日(土) 岡山YEBISU YA PRO
4月09日(日) 広島Live space Reed
4月16日(日) 新宿BLAZE
※チケット情報はオフィシャルHPにて
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