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『ラ・ラ・ランド』で名を轟かせたデイミアン・チャゼル監督の最新作『バビロン』で、【第80回ゴールデングローブ賞】の<作曲賞>を受賞したジャスティン・ハーウィッツが、監督と進めた音楽制作の裏側を語った。
――チャゼル監督は『バビロン』の構想を15年前から持っていたそうですね。
ジャスティン・ハーウィッツ:そのことは2日ほど前に初めて知ったんだよ。彼が僕に今作について初めて話してきたのは2018年後半だ。彼は脚本を書き始めたところだった。だから、このプロジェクトはその時に始まったのだと思っていた。2日ほど前に会見があり、彼が15年前からあった構想だと言うのを聞いて、初めて知ったよ。
――映画の舞台は1920年代ですが、その頃の音楽を聴くことはしましたか?
ジャスティン・ハーウィッツ:いや、意識してその時代の音楽は避けた。デイミアンが1920年代のジャズは嫌だと言ったから。僕らがほかの映画で聴いたことがある音楽だからね。それに、あの頃に演奏された音楽のごく一部しか記録されていない。それらの記録に出てこない、アンダーグラウンドの音楽があったんだよ。僕らはそれにもっと興味があった。
だけどそれらがどんな音楽だったのか、正確に知ることは不可能だ。バンドの名前などはちょっとわかっても、記録はない。だから、イマジネーションを働かせないといけなかった。みんながドラッグをやっている派手なパーティーで、どんな音楽が演奏されていたのだろうかと。
――最初のパーティーのシーンで出てくるのは、強烈に叫ぶような音楽ですね。
ジャスティン・ハーウィッツ:20年代に正確かどうかはわからないが、僕らはロックンロールにインスピレーションを受けた音楽にしたかったんだ。それで、僕は20年代の音楽ではなく、ローリング・ストーンズやAC/DCの音楽を聴いた。リフがたくさん出てくる曲だ。今作の音楽にはリフがたくさん出てくる。そこに(エレキ)ギターを入れたら、ロックンロールになりそうな感じだ。つまり、曲の構築としてはほぼロックンロールなんだが、楽器が20年代なんだよ。
舞台に立っているミュージシャンはあの時代に忠実だが、彼らが演奏している音楽はロックンロールに近い。モダンなダンス音楽みたいなものも入ってくる。こういうのがあっても良かったんじゃないか、というものが入っている。僕らは、正確であるかどうかより、フィーリングを大切にしたんだ。みんながドラッグをやっているパーティーのエネルギーを表現したかった。そこではみんなが楽しんでいる。それを表したかった。
――今作のために作られた多くの曲で中心になるひとつは冒頭のパーティーでかかる「コーク・ルーム」ですが、もっと静かな「マニーとネリーのテーマ」もありますね。この曲について語っていただけますか?
ジャスティン・ハーウィッツ:あの曲には3つのピアノを使っている。美しいピアノ1台と、ちょっと音がずれたピアノ2台。それを混ぜることで、やや壊れたような雰囲気が出る。ふたりの関係が、脆くて壊れているから。
――女性シンガーが歌う「マイ・ガールズ・プッシー」はどうやって生まれたのですか?
ジャスティン・ハーウィッツ:あれはすでに存在した歌なんだ。1920年代の有名な歌。だけど、音楽は新しい。使ったのは歌詞だけだ。それに合わせて僕が新たな曲を書いたんだ。
――『ファーストマン』は違いますが、『セッション』『ラ・ラ・ランド』そして今作は音楽映画です。作曲家としてはこれらの映画を手がけるのはエキサイティングでしたか?
ジャスティン・ハーウィッツ:長い時間がかかるけれど、好きだ。全体に関われるのは嬉しいこと。撮影前に多くの曲をレコーディングしておかないといけないし、音楽が出てくるシーンを撮影する日は現場にも行く。現場で撮影を見られるのは楽しいよ。音楽映画でない場合、僕が現場に行くことはない。現場に行くのは自由だが、僕がやる仕事はないんだ。
そしてポスト・プロダクションの間は、普通の映画同様、映像を見ながら曲を入れていく。すでにたくさんの素材があったから、楽しかった。(その段階で)一から曲を書いていったわけじゃないんだ。すでにあるものをちょっと捻って、もっとドラマチックにしたりしたんだよ。
――監督とは学生時代のルームメートとのこと。彼と一緒にハリウッドで成功を収めてきたわけですが、それはどんな体験になりましたか?
ジャスティン・ハーウィッツ:とても素敵だよ。僕とデイミアンは人生の半分以上を一緒に過ごしてきた。僕らは18歳で出会った。僕らは親友だ。彼ほど音楽にこだわる映画監督は珍しい。彼はすごく早い段階から音楽について考える。脚本の段階から。それは僕にとって嬉しいことだ。
それに僕らは実際にお互いのすぐ近くで仕事をする。それは珍しいことなんだよ。自分のスタジオから音楽を(デイミアンに)送って感想を待つことはしない。僕らのオフィスは隣同士で、ポスト・プロダクションの作業を一緒にやる。今作の場合、ポスト・プロダクションは1年あった。その間、僕は編集室にいる彼を訪ねたし、彼は僕が作業をしている部屋にやってきた。僕らはお互いをとてもよく知っているし、僕らの仕事は効率的だと思う。
――今作のためにやった仕事の中で、何を一番誇りに思っていますか?
ジャスティン・ハーウィッツ:今作のために書いた曲は、僕がこれまでに書いたものとはとても違う。曲を聞いた人が、「あの作曲家らしいな」と思ってくれるのは、一般的に良いことだ。だけど、今作で、僕は普段からすごく遠いところに行った。そうやって、普段と違うものを届けることができたことを誇りに思う。
僕らの一番のゴールは、『バビロン』らしい音楽を作ることだった。人が聞いた時、「これはバビロンの音楽だ」と思うようなものを。それを達成できたことを僕は願う。このサウンドトラックを1年後か5年後に聞いた時、「ああ、バビロンの音楽だ」と思ってくれたら嬉しいね。
◎公開情報
『バビロン』
2023年2月10日(金)より、全国公開
監督・脚本:デイミアン・チャゼル
キャスト:ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、ディエゴ・カルバほか
配給:東和ピクチャーズ
(C) 2023 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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