【Editor's Talk Session】今月のテーマ:日本コロムビアが新人発掘プロジェクト『Filter Project』を始動

2022年12月20日 / 10:00

Editor's Talk Session (okmusic UP's)

2022年6月に始動した日本コロムビアの新人発掘プロジェクト『Filter Project』。第一弾施策としてジャンル・年齢不問で楽曲募集を行ない、現在は10曲以上が配信リリースされている。今回の編集部座談会には、そんなヒットソングとなる原石を見つけていく実験的なプロジェクトにかかわる3人に参加してもらった。
【座談会参加者】

■juny

ITエンジニアとして20年の経歴を持つが、好きを追いかけていたらカメラマン・音楽データ分析・新人発掘・宣伝担当と、会う人により職業が異なる人間に。

■まっすー

音楽業界3年目。制作アシスタント。フィジカル営業を経て『Filter Project』で新人発掘業務に携わる。激動の時代に翻弄されながらも、今の時代にあった新たなヒット曲を創るため、奔走している。

■Kona

宣伝アシスタント・入社1年目。大学で音楽ビジネスを専攻しており海外の大学を卒業後、日本コロムビアに入社。影響を受けたアーティストは、月島きらり、Hannah Montana、EXOチャニョル。

■石田博嗣

大阪での音楽雑誌等の編集者を経て、music UP’s&OKMusicにかかわるように。編集長だったり、ライターだったり、営業だったり、猫好きだったり…いろいろ。

■千々和香苗

学生の頃からライヴハウスで自主企画を行ない、実費でフリーマガジンを制作するなど手探りに活動し、現在はmusic UP’s&OKMusicにて奮闘中。
若手や未経験の人の声も 取り入れていく

千々和
「新人発掘プロジェクト『Filter Project』から、junyさん、まっすーさん、Konaさんにご参加いただきますが、まずみなさんはそれぞれどんな役割で動いていらっしゃるのでしょうか?」
juny
「僕はもともとITエンジニアをメインキャリアとしてきた人間で、音楽業界にがっつり携わってきたわけではないんですけど、『Filter Project』では宣伝業務の他、主にデータの動きを見ています。データをもとに施策を考えて、またその施策に対しての反応をデータから分析して、次の展開を考える役割です。」
Kona
「私は2022年2月に入社したばかりで、宣伝周りを担当しています。」
まっすー
「僕は入社してから2年間は営業担当だったのですが、2022年から『Filter Project』で新人発掘をしています。表で見えているのは応募施策なのでオーディションというイメージがあるかもしれないんですけど、我々もアーティストを探してお声がけをしているので、今リリースしている音源も応募とスカウトの二本柱で集めたものなんです。まだ僕は経験が浅いので直属のリーダーに仕事のやり方を一から教わりながらやっていますが。」
千々和
「未経験の方も一緒に運営されているんですね。」
juny
「音楽業界の型にはまらないことと、若い人の力を使っていくというのも『Filter Project』のテーマになっているので、音楽業界での経験が浅いからこそ思いつくやり方を実践できる場でもあると思っています。チームは全部で6人いますが、未経験のメンバーだけでなく、しっかり経験のあるメンバーが統括しているからこそできることでもありますね。」
石田
「この『Filter Project』に対して自分が思う魅力って何ですか?」
まっすー
「僕は音源制作がやりたいと思って就活して日本コロムビアに入りました。ずっと“ヒットソングを作りたい”という想いがあるんですけど、入社して間もないのにそれを目指せるプロジェクトにかかわらせていただけるのがとてもありがたいです。『Filter Project』はあるジャンルのアーティストというより、弾き語り、ラッパー、ボカロなど、いろんなジャンルのアーティストに短いスパンでコミュニケーションをとっているので、経験値を積めるというか、毎日修行みたいですね。」
Kona
「今までにないやり方で自由に宣伝したり、私やまっすーさんみたいな若手の声も汲み取って、取り入れてくれたりもするプロジェクトだと思います。魅力のあるアーティストを発見して、音源を作って、宣伝をするというレコード会社の一連のサイクルが目に見えて体感できるので毎日吸収することが多いです。」
千々和
「第一弾の募集施策では、ジャンル・年齢不問でアーティストの制作費をサポートする企画として募集をかけたところ、500曲を超える応募があったそうですが、集まった楽曲を聴いて、率直にどう思いましたか?」
まっすー
「自分が想像していたよりも幅広い年齢層の方から応募があったのでびっくりしました。小学生がいれば、60代の方で“定年退職してから作曲を始めました”と曲を送ってきてくれた方もいて、作り手っていっぱいいるんだなと実感しましたね。」
Kona
「私は宣伝担当なのでリリース楽曲が決まってからの仕事がメインではあるんですけど、応募楽曲も聴かせてもらっています。高校生が書いている曲や、まっすーさんが言ったような“セカンドライフを頑張りたい”と書いている人もいて、いろんな音楽のかたちがあるなと。」
千々和
「履歴書じゃないですけど、ひとりひとりの人生を見ているような感覚になるんですね。これまで『Filter Project』からリリースされた楽曲はプレイリストでも聴くことができますが、シンガーソングライターやトラックメイカーなど、ひとりで活動されている人が多いですね。日本コロムビアといったら、バンドが所属しているイメージもありますが。」
まっすー
「もちろんバンドの応募もありますけど、感触としてはソロが多かったと思います。」
石田
「今はWebから出てきた人たちがスポットを浴びているから、自分もそうなりたいと思った人たちが音楽を作って応募してきているんでしょうね。」
juny
「日本コロムビアの他の楽曲とはちょっと毛色が違う楽曲が生まれている感じはします。」
面白い曲が集まるのが 『Filter Project』の強み

千々和
「リリースされた楽曲で印象に残っているエピソードはありますか?」
Kona
「やっぱり印象的なのはAni miZumさんですね。顔を公表していないアーティストなんですけど、リリース楽曲のタイトルが“顔かbarber”で、“barber”というのは床屋のことなんですよ。だから、床屋の前によくあるサインポールを段ボールで自作して、それを自分が頭から被っている姿がジャケット写真になっているんです。それだけでなく、LINE MUSICのSNS告知用に作ってもらった動画も面白くて。そのサインポールを被った状態で宣伝文言を話していて、LINE MUSICのロゴを一面に貼った記者会見風の背景まで自作していたのが衝撃的でした。彼自身はシャイな人柄で、自分からここまで作り込んでくれる人だと思わなかったので、アーティストって面白いなと思いました。」
juny
「サインポールを被っていて自分で拍手ができないから、箱の横をバタバタと叩いているのも面白かったです(笑)。」
まっすー
「僕は弾き語りで活動しているcocoaさんのレコーディングに参加するために愛知県まで行ったのですが、レコーディングは入社前から憧れていた仕事だったので、自分はアシスタントですが、その現場体験に感動しました。」
千々和
「cocoaさんはTikTokで「ミックスナッツ」の歌ってみた動画が120万回再生されていて、本格的にレーベルを通してリリースをする前から世間の人の耳に触れているというのも今ならではですね。」
juny
「それで言うとyuraさんというラッパーは、TikTokのフォロワーがかなりいるのですが、お話を聞くと自分で研究をして、仮説を立てながら音源を作って投稿されているそうなんです。打ち合わせでそういった情報や、若い人のリアルなSNSの利用事情も聞けたりして、そのへんはこちらも勉強になるなと。」
千々和
「少し前だったら思わぬところで楽曲が使われて話題になったり、突然YouTubeの再生回数が上がって、その理由を調べたらTikTokだったとか、そういう話をよく聞いていたんですけど、最近はあらかじめアーティストがかなりリサーチをしていて、話題になるように考えてから楽曲をアップするパターンも多いので、洞察力が鋭い方も多いでしょうね。」
石田
「傾向と対策を練っているんですね!? 今時の子らしい(笑)。」
juny
「「おとせサンダー」がTikTokの急上昇チャートで1位になった、ぼっちぼろまるさんのインタビューを読みましたけど、あの方もすごいですよね。楽曲の切り取り方を工夫して研究した結果バズったそうで、リサーチ力の高い人が増えているのかもしれないです。」
千々和
「あと、個人的には綾原 陽さんの歌声が心地良くて印象に残っているのですが、落ち着きがあって色っぽい感じなのにプロフィールに“若干17歳”とあって驚きました。若い方からの応募も多いのは分かっていながらも、曲を聴いただけでは年齢が結びつかないアーティストも多いですね。」
Kona
「私はデモの段階から聴いていますけど、いざリリースされてから改めて好きになったのは天野りんねさんの「中央線のオレンジ」です。普段、日本の曲はチャート聴きをするようにしているんですよ。流行っている曲を中心に聴くようにしていて、天野りんねさんの曲はここに入っていてもおかしくないと思いましたし、MVのクオリティーも高くて、改めて自分の立場で何ができるのか考えさせられました。」
まっすー
「ジャンル・年齢不問で募集しながら、“デジタルヒットを出そう!”という軸だけでやっているので、面白い曲が集まってくるのが『Filter Project』の強みなのかなと思います。」
“こうだろう”と思ったことが すごいスピードで変わっていく

千々和
「第二弾の募集施策では“恋愛ソング”というテーマで募集をかけていますが、なぜこのテーマなのでしょうか?」
まっすー
「上半期のビルボードのチャートを参考に、実際にストリーミングではどんな曲が聴かれているのか調査してみたら、個人的な感覚ですけど、やっぱり恋愛ソングが多そうだと思ったので、あえて狭めて募集を始めました。」
石田
「お題を設定していると応募の数も増えると思うのですが、実際にはどうでしたか?」
まっすー
「それが応募数としては少し減っているんですけど、“このアーティストにはどんな魅力があるのか?”というのは前回に比べて掴みやすくなったところはある気がします。」
千々和
「先ほど一般公募とは別に、『Filter Project』からアーティストにスカウトすることもあるとおっしゃっていましたが、そのアーティストさんはどんなところから見つけてくるんですか?」
まっすー
「ありきたりな答えになりますけど、やっぱりSNSとか、ライヴハウスの方からの口コミを参考にすることもあります。」
juny
「最近は社内の人にヒアリングすることもありますよね。」
まっすー
「そうですね。福岡でプロモーション業務をしている方が、よくアーティストをリサーチしていると聞いたので、その方に教えていただいたりしています。」
juny
「社内で聞き込みをしたら営業担当の方からも連絡があったりして。こういう職業なのでみんな音楽が好きだし、普段から好みのアーティストを探しているんだと思います。Konaさんは新卒の子たちで集まって試聴会もやっていたりしますよね?」
Kona
「チームのメンバーも結構アーティスト並みに個性が強いというか(笑)。さまざまなバックグラウンドがあるので、いい具合に調和ができているんじゃないかと思います。」
石田
「仕事だからというより、中の人がこのプロジェクトを楽しんで動かしているというのがすごく伝わってきますね。会社のトップダウンで仕事をしている感じもないし、何よりも上司の指示ではなく、若い人たちが自分の意思で動いているところがいいと思います。」
juny
「もちろん勝手にやっているのではなく、上司の助言も得てですが。」
千々和
「そして、今は第二弾の募集施策で集まった応募曲からのリリースを準備中という感じですか?」
まっすー
「そうですね。でも、リリースのタイミングはアーティストと話し合って、希望を優先しているんです。こちらから日程を提案することもありますけど、基本的にはアーティスト主体でやっています。所属というかたちで、何年間のうちに何枚アルバムを出して…ということを求めているアーティストよりも、自分のやり方があって、それをうまく次のステップに進めるために『Filter Project』を利用してもらい、我々はサポートをするという立ち位置ですね。なので、アーティストの意向は大事にしています。」
千々和
「たくさんの応募曲を聴いたり、流行をリサーチしているお三方から見た今の音楽シーンってどんな印象がありますか?」
まっすー
「一昨日くらいの自分だったらつらつらと語っていたかもしれないんですけど、今は分からないです。少しずつ分かってきた気がしたものが急に崩れて、また振り出しに戻ったりするので、“こうだろうな”と思ったことがすごいスピードで変わっていくんですよ。」
千々和
「リアルな答えですね。」
Kona
「特に今はSNSバズからのヒットも多いけど、必ずしもバズればヒットチャートに入るってわけでもないですし、“何がバズるのか?”も正直言って掴めないんですよね。本当に難しいと思います。新しいことにチャレンジすればヒットするわけでもないけど、挑戦を重ねて模索していきたいと思います。」
juny
「言葉にするのが難しいんですけど、やっぱり変革期だなと思います。個人的にはボカロが出てきた時期と似ていて、新しい音楽がいっぱい生まれている時期だなと。結果はヒットというかたちで出していきたいと思いつつ、新しいことにチャレンジしていける、若者が活躍できる場はこの変革期に重要なんじゃないかと思うので、このチャレンジ精神を変えずにいきたいと思います。」


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