<ライブレポート>Perfumeの“新たな形態”を体感した【“PLASMA”】ツアー埼玉公演

2022年11月15日 / 18:00

 Perfumeの約4年ぶりの全国アリーナツアー【Perfume 9th Tour 2022 “PLASMA”】が、11月6日に北海道・北海きたえーるで千秋楽を迎えた。本稿では10月29日に埼玉・さいたまスーパーアリーナで開催された公演の模様をお伝えする。

 「はじまりの日!」。あ~ちゃんがMCで大声で叫んだ言葉に、アルバムやツアー、現在のPerfumeの全てが集約されていたように感じた。

 今年7月に実に4年ぶりとなるニュー・アルバム『PLASMA』をリリースしたPerfume。プラズマとは、固体、液体、期待に次ぐ物質の第4形態という意味だが、2019年に配信リリースした「再生」で過去のミュージック・ビデオを見直し、2021年のライブ【Reframe】で自身のヒストリーを再構築&再定義を果たした彼女たちは、これまでよりも人肌の温かみがあり、3人の等身大の息吹を感じさせる通算8枚目のアルバムをもって、“新たな形態”へと突入した。

 ライブは、アルバム『PLASMA』の世界観を体現したステージとなっていた。開演時間となり、ミラーボールが照らす灯りだけになると、「すー」「はー」という3人の生々しい呼吸音に合わせて、全身真っ白の衣装に身を包んだあ~ちゃん、かしゆか、のっちがゴンドラに乗って天辺から降りてきた。360度客席に囲まれたセンターステージには白い布がかけられており、どこから風が吹いているのか、常に波打っていた。<プラズマ>というウィスパーボイスに合わせて、ステージに降り立った彼女たちが歌うポップなフューチャーベース「Flow」によって、それがリリックにある<流れ雲>であることが分かった。ロングスカートから一瞬でミニスカートやショートパンツに早着替えをしたあと、カラフルなブギーファンク「ポリゴンウェイヴ」からユニークなフリが印象的なテクノポップ「再生」へ。プロローグの要素を含む「Plasma」以降の3曲が全て、今も覚めていないあの日の“夢”をテーマにしていたとは偶然ではないだろう。新たな旅立ちを前に、まずは原点へと立ち返って見せたのだ。

 MCでは、のっちが「会えてうれしいです。拍手の音に魂がこもっていて、みんなの気持ちが直接、体に、心に届くような気がしています」と語ったのをはじめ、それぞれが思い思いの言葉でファンへの感謝や絆の深さ、一緒にライブを作り上げていくことの楽しさを語った。さらに、開催中止となった2020年2月26日の東京ドーム公演や集客率が50%以下だったことから急遽、観客の大きな声出し可能(マスクあり)として実施した宮城公演についても触れ、「自分たちが踏んだスタートライン」であり、「乗り越えるべき試練だった」と吐露。メンバー間で「もっと身近でパーソナルを感じてもらいたい」という話になったことを明かし、観客に向けて、個人のインスタグラム開設を相談すると賛成を表す大きな温かい拍手が上がり、この日の夜に開設することを約束した。これも“新たなはじまり”の1つだ。

 続いて、アリーナの右側をかしゆか率いる「はじ」チーム、左側をのっち率いる「まりー」チーム、中央をあ~ちゃん率いる「のひ」チームに分けて拍手で盛り上げ、最後に全員まとめて「はじまりの日」と声を上げた瞬間に会場が1つとなった。そこには、言葉にしがいほどの感動と興奮があった。

 約1時間弱に及んだMCを経て、シティポップ「Drive’n The Rain」では、椅子に座ってハンドルを回し、夜の海岸沿いをドライブ。SEによって車が走り去り、鳥のさえずりとともに朝が訪れたことが知らされ、フューチャーディスコ「ハテナビト」では風に乗る鳥のように舞った。「ハテナビト」は「ポリリズム」と同じく5文字5拍子で構成されており、このブロックでもPerfumeらしさのアップデートや再構築というトライアルがなされていたように感じた。

 続く、10thシングル「ナチュラルに恋して」は、等身大というテーマに相応しい楽曲で、イントロで歓声が沸く中、ハンドマイクを使い、観客に手を振りながらチャーミングに歌唱。80年代風のテクノポップ「Time Warp」では「これぞPerfume!」と膝を打つようなステップとダンスを存分に魅せてくれた。

 ここで、センターステージは巨大な円柱のような紗幕がかかり、小さな声で「はじまる」と繰り返す「∞ループ」は、最新のテクノロジーを使った映像で表現。やがて、紗幕に投影された3人の映像が収縮していき、実物大となり、生身の姿で再登場した。ロゴが旋回する「Spinning World」、早着替えを経て、4枚の大きな布にレーザー光線によってボディが描かれていく「アンドロイド&」、さらに、3つの光るボールが浮かぶ中で、ハンドマイクで<僕らはそう廻る鏡/みんなの輝きを>というメッセージを観客に伝えた「マワルカガミ」と、“回転”をテーマにした3曲を立て続けてパフォーマンス。

 <P.T.A.コーナー>では、声ではなく、ジェスチャーを使ったコール&レスポンスで盛り上げ、5枚目のアルバム『LEVEL3』の収録曲「Party Maker」では、会場が揺れるほどの盛大なクラップが沸き上がった。さらに、オーディンスは腕を回し、眩い光に手をかざし、3人のダンスに呼応するかのようにジャンプ。フロアが熱狂に包まれる中で、代表曲「ポリリズム」から、同じく2枚目のアルバム『GAME』に収録されていた「Puppy Love」へ。ハンドマイクを使って一人ずつ歌いつなぎ、観客に向けて、指ハートやウィンクを投げかけていたが、メンバー同士がこっそり背面で手を繋ぎ合うフリが見られたのは360度ステージならでは。蛇足ではあるが、『GAME』がリリースされた2008年は、日本武道館での初ワンマンや『紅白歌合戦』への初出場に加え、ファンクラブ「P.T.A.」が発足された、はじまりの年でもあった。

 会場に星空のカーテンが降りてくる中、今年1月期のドラマ『ファイトソング』の劇中歌「スタートライン」の原曲となった22ndシングル「STAR TRAIN」もスタンドマイクで歌唱した。ここがスタートラインであるということを歌声で明確に示した彼女たちは、アルバム『PLASMA』のラストナンバーである「さよならプラスティックワールド」で再びゴンドラへと乗り込み、プラスティックではなく、有機体とテック(テクノロジー)が融合した<素敵な未来>へと帰っていった。紗幕がかかり、この日のライブの模様が投影されるが、やがて映像は、生身からドット絵のようになった。そして、紗幕が下され、ステージにスポットライトが照らされた。そこにはもう、誰もいなかったが、「みんなと一緒なら幸せな未来を作れる気がする」という、かしゆかの最後の言葉は確かに胸に残っている。

Text by 永堀アツオ
Photos by 上山陽介


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