<ライブレポート>キタニタツヤが歌った、傷を抱えながら未来へ歩んでいく決意

2022年11月2日 / 19:00

 楽曲、歌、ギター、ベース、ステージでの佇まい、MC……彼が表現をするうえで何一つ無駄なものはない、欠けてはならない。キタニタツヤの【One Man Tour “UNKNOT / REKNOT”】初日、Zepp DiverCity(Tokyo)で行なわれた公演はそんなことを感じさせるライブであった。

 バンド・メンバーに続いてオレンジのジャケット姿のキタニが登場すると、一際大きく拍手が鳴り響く。屈伸をひとつして始まったのは「Rapport」。重いサウンドと情熱的な歌声で観客も一斉に手を上げながら身体を揺らす。マイクをスタンドから外すと「悪魔の踊り方」がスタート。ギラギラと照明が光るなか、ステージ上を踊るように移動しながら全身で歌詞を紡いでいく様に目を奪われる。フロアに訴えかけるように歌い終えると、「キタニタツヤです、どうぞよろしく」とひと言。続けて「PINK」へ。フロアからは自然とクラップが湧き上がり、観客の期待値の高さが伝わってくるようだ。しかし、キタニはどこ吹く風といった様子で、曲中に水分補給をしてみたり、「センキュー」と軽く挨拶をしたり。そのどこか退廃的な佇まいが余計に人々を惹きつける。ドラムの佐藤丞にスポットがあたり、ドラム・ソロから始まったのは「夢遊病者は此岸にて」。キタニは時折、バンド・メンバーたちと顔を合わせ、身体を音に委ね、自身が一番ライブを楽しんでいるようだ。

 ここでギターを手に取り、「楽しいっすわ、どうもありがとう」と笑顔を見せると「人間みたいね」「愛のけだもの」を続けて披露。カラフルな照明と揺れる観客を見ると、ここはダンス・フロアなのかと錯覚を起こしそうだ。雨を彷彿させる照明に切り替わって「冷たい渦」へ。オープニングから上がり続けた熱気を少しだけクール・ダウンさせると、キタニもジャケットを脱ぐ。このまま落ち着いていくかと思いきや、再びエンジン全開。キタニがベースを背負い、ドラムが始まると自然とクラップが起こる。「あはは! いいね~」とごきげんな笑顔を見せ、熱いベース・プレイとともに「芥の部屋は錆色に沈む」が飛び出した。

 ここで「こんばんは、みなさん。キタニタツヤです。ツアー【UNKNOT / REKNOT】初日、どうぞよろしくお願いします」と改めて挨拶。そして「“UNKNOT”っていうのは解く、“REKNOT”っていうのは結び直すっていう意味合いなんですけど。何かをずっと続けてると目的地を見失ったり、見落としてることがあったり、忘れてしまうものが増えてきて。そういうときに一回立ち止まってみる、歩いてきた道を振り返って眺めてみる。靴紐をしっかり結び直して、これからの人生を歩むための準備をする。今の自分にそういうものが必要だなって」とツアー・タイトルに込められた思いを語る。熱く語る一方で、「Zeppデカすぎてさ、この人数がたくさん聴いてるとハズいな」とはにかむような笑顔も見せていた。

 「久しくライブでやってなかった曲もやっていきます。次やる曲も、作った当時は『俺は1人で生きていかなきゃいけねぇ』『自分は強い存在でなければいけない』っていうプレッシャーを考えすぎていた時期。今はまったく違う気持ちで歌えるんじゃないかなと思う」と話し、フーッと息を吐いて「デマゴーグ」をスタートさせた。シンプルなサウンドに歌詞が乗り、様々な思いが乗った歌声が響き渡っていく。大きな拍手が鳴り響くと、波のSEが。「波に名前をつけること、僕らの呼吸に終わりがあること。」「君が夜の海に還るまで」「ちはる」と胸の奥がギュッとなるような曲が続いていく。さらに、ピアノの音色が美しい「プラネテス」では、観客が手を左右に振る様子を見つめるキタニ。自分の思いが伝わっている様を噛み締めていたのだろうか。

 キタニのライブは基本撮影がOK。だが、ここで「次やる曲は撮影NGでお願いしたいんで、カメラをしまってほしい」というアナウンスが。「過去に傷を負うようなことって無数にあって。未来が怖くてしょうがねぇわけよ、俺は。でも、そういう傷とか恐怖と向き合って、一緒に歩いていってみるかっていう決意をできたから、そういう歌を作りました」と語って始まったのは、『BLEACH 千年血戦篇』のオープニング・テーマにもなっている新曲「スカー」。疾走感溢れるロック・ナンバーで会場が熱を帯びると、そのまま「軽忽な救済を待つ醜さには一片の夾竹桃を」へ。会場にいる一人残らず同曲に酔いしれているのではないかと思うほど手が上がり、リズムを刻んでいる景色は圧巻だ。

 「誰が知ってんだって曲やっちゃったわ」と笑うキタニ。しかし、会場からは「知ってる」と言わんばかりの大きな拍手が返ってくる。そして「昔の曲を見ると、自分って誰かに呪ってほしいんだなっていうか。すごく内省的だし、自罰的だし。呪いの言葉が欲しくて歌を書いていた感じ」と振り返りつつも、「それはそれで尊いし、愛おしい過去の記憶。でも、希死念慮とかそういうものは煮詰めて自分の中に溜め込んでも、あんまり意味がない。それよりももっと集中すべきことがあるじゃねぇかって気がしてる」と“今”を語り始める。「喜びの欠片みたいなものを平らげていく、残り40~50年にしたい」と人生観を語ると、「タナトフォビア」が始まった。大きなクラップに乗りながら、ステージ上を右へ左へ移動しながら歌い上げていった。

 「ライブが楽しいっていうバンドマンっていっぱいいるけど、楽しいのは当たり前なんだよ。だって、自分のこと好きな人がめっちゃたくさんいるんだから。だから楽しいです!」と充実した表情を見せる。さらに「ライブで色々話すと、自分の思考がまとまっていくんだよ。今日みたいなコンセプトのライブをすると、この先どう生きていけばいいのかとか、キタニタツヤという音楽家としてどうあったらいいのかって考え直す機会になるから。そういう意味で助かっているよ。どうもありがとう」と観客へ感謝も伝えていた。「この曲をここの位置に持ってきたいって強く思った曲があって。けっこう昔の曲なんだけど、生まれてはじめて作った自分の生をちゃんと肯定するような曲。落ち込むことや憂鬱に苛まれることは早めに切り上げて、前を向く切り替えになるものが必要。俺の音楽がその手助けになれればいいと思う」と語り、始まったのは「それでも僕らの呼吸は止まない」。秋好とのギターの掛け合いから始まり、一曲入魂での演奏が始まる。最後は「最後の曲です、ありがとうございました。また会おうね」と「聖者の行進」へ。今日一番のクラップで会場が熱狂していき、最後の最後までボルテージがマックスのままでライブの幕が閉じた。

Text:高橋梓
Photo:笹原清明(L MANAGEMENT)

◎公演情報
【One Man Tour “UNKNOT / REKNOT”】
10/15(土)東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
10/23(日)大阪・Zepp Osaka Bayside
10/27(木)愛知・Zepp Nagoya


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