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ムーンライダーズ、半年遅れとなったレコ発記念ライブのレポートが到着

『"It’s the moooonriders"レコード発売記念ライブ』2022年9月24日 at 昭和女子大学人見記念講堂 (okmusic UP's)

 ムーンライダーズがアルバム「It’s the moooonriders」レコード発売記念ライブを9月24日(土)に東京・昭和女子大学人見記念講堂で開催した。

 レコ発ライブは当初、3月13日の東京・日比谷野外音楽堂で予定されていたが、ニューアルバムのリリースが3月から4月20日に延期となり半年遅れでこの日、実現した。ムーンライダーズがレコ発ライブを開催するのは、2011年のアルバム『Ciao!』リリース時以来、11年振りとなった。

 開演前、場内にはメンバーとスタッフの間で交わされると思しき会話が流れてくる。バックステージでのやりとりが漏れてる?と思われたが、よく聞くと会話はループされている。なんと、これは開演前SEだった!と観客が気づく頃、客電が落ち、ステージ左右のキーボードにスポットライトが当たり、2台の鍵盤が静かに音を奏でだす。暗い照明の中、メンバーがステージに表れ各々がポジションに着くと、ゆっくりと演奏が始まった。アルバム「It’s the moooonriders」1曲目に収められた「monorail」だ。同曲のヴォイス・コラージュをアジテーションするように、メンバーが生声で再現する。オーディエンスには『今日はレコ発ライブだがら、アルバムの曲順通りに演奏するのね』と思わせておいて2曲目は、普段なら終盤に演奏されるキラー・チューンの「ボクハナク」をもってきた。しかも作者でベーシストの鈴木博文はピアノを弾きながら歌っている。よく見るとベースは、澤部渡が軽やかに弾いているのだ!斬新なアレンジでの人気曲演奏にファンは大喜び。

 続いては「岸辺のダンス」。ここからようやくアルバム曲を収録順に演奏していく。4曲目の「S.A.D」から3人編成のブラス隊、クレセント・ホーンズが入る。エンディングで弾かれる白井良明のギターは段々と曲調を変えながら、そのまま次の「駄々こね桜、覚醒」に繋げていく。実にカッコいいシーケンスだ。

 この日はキーボードの岡田徹の体調が芳しく無く無念の欠席。岡田のパートは佐藤優介(カメラ=万年筆)が孤軍奮闘で勤め上げた。鈴木慶一は『今日は岡田くんがいないんですが、岡田くんの曲やります。歌詞は澤部くんです』と紹介し演奏されたのは「三叉路のふたり」。ここでは澤部渡(Skirt)がリード・ヴォーカルを披露する。「親より偉い子供はいない」では、曲中に落語家の春風亭昇太が演じる白井良明の父が『オ〜イオイヨシアキちょっと聞いてくれ!』と息子を叱るパートを澤部渡が担当。澤部、リード・ヴォーカルに白井良明の父役と大活躍。

 「再開発がやってくる、いやいや」では白井良明が、この日のゲストのDAOKOをステージに迎え入れる。アルバムでは同曲のレコーディングに参加した彼女だが、引き続き次の曲でもコーラスで参加。『こういうおじさんバンドとの共演はどうですか?』と振られたDAOKO。まだ25歳でライダーズ世代ではないが、父親がライダーズ・ファンで、父からレコードを受け継いでよく聴いていたことを明かす。共演には『光栄です。感無量です。贅沢に楽しませてもらいます』と答えると、客席から温かい拍手が送られた。

 ステージを降りるDAOKOを『素敵でしたなぁ』と目を細めて見送る鈴木慶一は、『ずーっと新しい曲やってきたんで、もの凄く古い曲やろうと思います。かしぶち君の曲をやりたいと思います』と紹介したのは「Beep Beep Be オーライ」。1977年に発表したアルバム「イスタンブールマンボ」に収められた曲で、2013年に亡くなったかしぶち哲郎の作品だ。

 慶一の言うように、この日のいちばん古い曲ではあるが、ここまで演奏した2022年の楽曲群との隔世感は全くない。1977年と2022年が地続きで繋がっているようで、改めてムーンライダーズ曲の普遍性を思い知らされた。続く「D/P (ダム/パール)」ではかしぶち哲郎が書いた詞を澤部渡が歌う。2曲続けてのかしぶち作品の選曲に、古参のファンも懐かしい思いを馳せながらじっと聴き入る。

 『6ヶ月遅れのレコード発売記念ライブは妙な感じです』と話しはじめた鈴木慶一は『白井良明さんが娑婆を離れてたからです(笑)』と良明を名指しで糾弾(?!)。白井良明は1月に入院。その間、レコーディングが中断し発売が3月から4月に延期となって、レコ発ライブも半年ずれこんだ。ここで慶一は、ひとしきり健康談義を重ね『長生きの秘訣は笑って暮らすこと!最後にお送りするのは”Smile”です!』と鈴木博文のピアノで「Smile」を演奏し、本編は終了。

 アンコールでは『岡田くんもリハビリに励んで、早く戻って来てね!』とこの日欠席の岡田徹にエールを送り、懐かしのナンバー「スイマー」に。1978年発表の「ヌーベルバーク」に収められた郷愁感あふれるニュー・ウェイヴ・ナンバーだ。2020年10月の活動再開ライブで1曲目に演奏された曲でもある。

 慶一が『9月といえば?』と客席に問うと『待ってました!』とばかりにマスクの下から歓声があがる。このところ、ほとんど演奏される機会がなかった屈指の人気曲「9月の海はクラゲの海」だ。この日のコンサートにはクレセント・ホーンズが加わった。「スイマー」のニュー・ウェイヴ・サウンドや、「9月の海はクラゲの海」のビートルズライクなストリングスが、ホーンセクションに代わることで、オリジナル曲とは違った肉感的なサウンドに生まれ変わった。この進化は新しい発見だ。

 最後の曲はアルバムでもラストを飾る「私は愚民」。後半には場内の客電が明るくなり、フリージャズのようなインプロビゼーションの応酬となる。「monorail」のインプロビゼーションで始まったこの日のコンサートのイントロは、最後も同様のアウトロで締める。最後は慶一がコンダクターのように舞台の中央に立ち、混沌状態となった演奏にタクトを降ろし幕が閉じられた。

 この日は12月3日の「レコードの日」に発売される2枚のアナログLPと、12月25日(日)に恵比寿 The Garden Hallで開催される「マニア・マニエラ+青空百景」再現ライブの開催情報も発表された。初めてアナログLPでリリースされるアルバム「マニア・マニエラ(1982)」は難解過ぎる!という理由で当時のレコード会社から発売中止を告げられた問題作(今聴けば充分なポップ作なのだが)。結局、当時ほとんど普及していなかったCD形態で数百枚プレスされた。今回のアナログ盤は、メンバーすら所有していない初版CDのジャケットをLPサイズで復刻。

 12月25日(日) のライブは、その怪盤とも呼ばれる「マニア・マニエラ」と、同作の反省(?!)を生かして制作された裏マニア・マニエラと呼ばれるアルバム「青空百景(1982)」の収録曲を完全再現する。ファン垂涎の貴重なライブのチケットは10月4日まで先行抽選受付中。

<セットリスト>

『”It’s the moooonriders”レコード発売記念ライブ』

9月24日(土)東京・昭和女子大学人見記念講堂

(※)=It’s the moooonriders収録曲/(収録アルバム/発表年度)

01.monorail(※)

02.ボクハナク(DON’T TRUST OVER THIRTY/1986)

03.海辺のダンス(※)

04.S.A.D(※)

05.駄々こね桜、覚醒(※)

06.雲と群衆(※) /

07.三叉路のふたり(※)

08.親より偉い子供はいない(※)

09.夢ギドラ’85

10.再開発がやってくる、いやいや(※)

11.ニットキャップマン(Bizarre Music For You/1996)

12.世間にやな音がしないか(※)

13.Beep Beep Beオーライ(イスタンブールマンボ/1977)

14.D/P(AMATEUR ACADEMY/1984)

15.Smile(※)

・ENCORE

16.スイマー(ヌーベルバーク/1978)

17.9月の海はクラゲの海(DON’T TRUST OVER THIRTY/1986)

18.私は愚民(※)

出演:moonriders(鈴木慶一/武川雅寛/鈴木博文/白井良明/夏秋文尚)

サポート:澤部渡(Skirt)/佐藤優介(カメラ=万年筆)/クレセント・ホーンズ(湯浅佳代子、織田祐亮、東涼太)

ゲスト:DAOKO
【ライブ情報】

『moonriders アンコールLIVE マニア・マニエラ+青空百景』

12月25日(日) 東京・恵比寿 The Garden Hall

開演18:00

<チケット>

料金(税込):プレミアムーンシート(お土産付)¥14,800 /指定¥8,800

先行受付期間(抽選):9月24日(土)〜10月4日(火)11:59

https://ticket.tickebo.jp/moonriders20221225_hp/
アナログ『Radio Moon and Roses 1979Hz』/ムーンライダーズ+佐藤奈々子
2022年12月3日(土)発売

COJA-9475/¥4,620(税込)

<収録曲>

■A面

1.スイマー

2.スタジオ・ミュージシャン

3.コインランドリー

4.ブラックペッパー・ジェラシー

■B面

5.女友達(悲しきセクレタリー)

6. マイ・ネーム・イズ・ジャック

7.火の玉ボーイ

8.ジャブ・アップ・ファミリー
アナログ『MANIA MANIERA』
2022年12月3日(土)発売

COJA-9476/¥4,950(税込)

<収録曲>

■A面

1.Kのトランク

2.花咲く乙女よ穴を掘れ

3.檸檬の季節

4.気球と通信

5.バースディ

■B面

1.工場と微笑

2.ばらと廃物

3.滑車と振子

4.温和な労働者と便利な発電所

5.スカーレットの誓い

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