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<ライブレポート>佐藤竹善、22回目の【Cross your fingers】で多彩なアーティストと共演「楽しくてしょうがない」

 53日、4日の2日間、FM COCOLOが主催する【佐藤竹善 Presents Cross your fingers 22Club Vibes~】が大阪・ビルボードライブ大阪にて開催された。 

 本イベントは佐藤竹善がオーガナイズする、世代もジャンルも超えたコラボレーションライブイベントで、1997年の開始から今年で22回目の開催を迎える。出演は佐藤竹善、塩谷哲、大儀見元を中心に、3日には上妻宏光、Skoop On SomebodyTrès Joyeuxが。4日には岸谷香、Skoop On Somebodyが登場 (予定していた川崎鷹也の出演は、体調不良の為、大事を取り、急遽取りやめ)。今年は3年ぶりの開催で、初となるビルボードライブ大阪でのステージということもあり、チケットは早々に完売。当日はライブ配信も行われ、観客はドラマチックで贅沢な音の空間を思い思いのスタイルで楽しんでいた。今回は両日の1stステージの模様についてレポートしたい。

 初日はまず、佐藤竹善と塩谷哲によるユニット・SALTSUGARのステージから。1曲目は7拍子にアレンジした「Superstition/スティーヴィー・ワンダー」で軽やかにピアノを弾ませつつ、力強いグルーヴを作り出していく。佐藤も口ずさむように歌いだしたかと思いきや、ソウルフルな歌声で会場の空気を一変させるなど、早々に技巧派プレイで観客を圧倒していく。続いては上妻宏光と塩谷によるユニット“AGA-SHIO”で、熊本に古くからある民謡「田原坂」を披露。民謡節とピアノ、津軽三味線と相反するように見える楽器も、2人のテクニカルなアレンジと、上妻のヴォーカルが、自然と耳に馴染んでいく。「仕事唄、民謡の魅力をもっと知って欲しい」と語る上妻の言葉通り、観客はあっという間に音に引き込まれていく。大儀見元と作り上げたオリジナル曲「One To One」はこの日がライブ初披露。日本古来の伝統楽器とパーカッション、互いに呼吸を合わせつつも、まるでバトルをするような、生命力に満ち溢れたプレイでぶつかっていく2人。高揚感のある音のぶつかり合いに魅せられ、観客も食い入るようにステージに魅入っている。 

 今回のイベントは2日間で計4回のステージが行われる。初日のステージについて佐藤は、「色んなカラーの楽器との共演、これまでにないイベントになるはず」と語りつつ、3年ぶりに開催できたことに感謝の気持ちを伝える。同イベントはアーティスト同士のコラボレーションが楽しみのひとつであり、ベテラン揃いのこの日のイベントは、誰と誰がコラボをするのか、気になっていた観客も多いはず。その期待に応えるように、SALTSUGAR、大儀見、上妻の4人で、様々な演奏形態を以って世界中でパーフォーマンスされているチック・コリアのスタンダードである、「Spain I can Recall/アル・ジャロウ」を披露。佐藤、塩谷、上妻、大儀見、それぞれがコラボやユニットを組んでの活動の集大成とも言える、4人でのライブは初めて。ヴォーカルまでもが楽器のようにリズムを打ち出し、スキャットにボイスパーカッションへと目まぐるしく次々に展開していくジャズの名曲だ。伸びやかな佐藤の歌声にハマるのはもちろん、大儀見のエネルギッシュなパーカッション、このセッションのためだけにあるかのような津軽三味線、塩谷の高揚感を煽るプレイ。互いの個性がバチバチにぶつかり合いながらも、4人が顔を見合わせた瞬間には一気にグルーヴが最高潮に。ベテランミュージシャンが心底楽しそうな表情を見せる姿にさえも気分が高まってくる。

 続くゲストは佐藤が念願だったという、ヴァイオリニスト・金原千恵子とチェリスト・笠原あやのによるデュオTrès Joyeux(トレ ジョワイユ)。ジャンルを問わず、数え切れないほど様々なミュージシャンとコラボしてきた彼女たち。もちろん、佐藤とは古くから同じステージで共演する音楽仲間であり、友人でもある。この日も「彼女たちのダイレクトな演奏を楽しんで。アンサンブルの世界観を再現していきたい」と、塩谷も参加して「Stardust/ナット・キング・コール」の美しいサウンドで観客を魅了。ストリングスならではの流麗な気高さを持ちつつ、佐藤の柔らかな歌声が合わさり、絵本を読みきかせを聞いているような穏やかな気持ちになっていく。佐藤自身も「心が洗われました…。ヴァイオリンとチェロ、2人ならではの表現が流石!」と絶賛。さらに、大儀見も参加しての「Child In Time/SING LIKE TALKING」では、心が解けていくような深く柔らかなサウンドを響かせる。ピアノ、ストリングス、パーカッション、そのどれもが主役級に音を主張してくるけれど、佐藤の歌声はその音を受けてさらにぐっと迫力を増していく。ビルボードライブ大阪の会場は、これまで行って来た大きなホールと比べて、観客とステージの距離感が近いこともあり、音に包み込まれる没入感がたまらなく心地よい。Très joyeuxのソロステージでは「Smooth Criminal / マイケル・ジャクソン」を披露。原曲の世界観をヴァイオリンとチェロだけでの細やかな表現で、生演奏でしか味わうことができない力強いグルーヴを打ち出していく2人の圧巻のステージに観客は称賛の拍手を送る。

 1997年にスタートした【Cross your fingers】。これまでに数々のアーティストが出場してきたなか、最多出演を誇るのがSkoop On Somebodyだ。彼らは今年でデビュー25周年、そして昨年末にKO-HEYDrCho)がメンバーに復帰。オリジナルメンバー3人での活動が再開した彼らと、2日間両日での共演を依頼したという佐藤。その想いに応えるべく、Skoop On Somebodyはイベント初出演時に披露した「ama-oto」から情感たっぷりのパフォーマンスで魅せていく。TAKEVo)の太くしなやかな歌声、KO-ICHIRO KeyCho)のキーボードが観客の気持ちを温かく包み込んでいく。新曲「Hooray Hooray」も自然と笑顔ではにかんでしまう心弾む楽曲で、客席からは自然と大きな手拍子が沸き起こる。佐藤は何年先もずっと一緒にやっていけたら嬉しい、励みになると話し、「この4人でやるならこの曲しかない」と、出会いのキッカケとなった楽曲「Amanogawa」をコラボ。「共に歌うのが楽しくて、お客さんのこと忘れてました」と佐藤が語るほど、ステージでパフォーマンスをする4人の表情は明るく、観ているこちらも自然と笑顔になってしまう。

 ライブ終盤、これまでにも何度となく演奏されてきたSALTSUGARのデビュー曲「Diary」を大儀見とともに。豊かな表現力を持つ歌声、緻密に作りこまれた演奏で深みのある上質な音を響かせると、アンコールでは「これからもイベントのエンディング曲にしていけたら」と、塩谷が作曲した「星の夜」を全出演者で披露。佐藤が信頼をおいている音楽家が揃い踏みとなった初日の公演が幕を閉じた。

 2日目、まずはSALTSUGARで「Tombo/SpickSpan」を。難易度の高い複雑な楽曲も2人にかかれば、肩慣らしな1曲のよう。軽やかにピアノを弾ませる塩谷、幅広い音域もさらりと歌い上げる佐藤、2人の卓越したパフォーマンスに観客は初っ端から圧倒されてしまう。佐藤は初日のステージを振り返りつつ、「初日はプレイヤー中心の達人デイ。今日はボーカリストに焦点を当てた1日になりそう」と、この日のステージに懸ける意気込みを語る。そして、この日出演予定だった川崎鷹也が体調不良により出演キャンセルになったことを憂いつつ、いつかまた一緒にリベンジできたらと思いを語る。そして彼の代わりに百戦錬磨のメンバーたちが盛り上げてくれるはずと、まずはSkoop On Somebodyを呼び込む。

 2日連続での出演となる彼らは「ama-oto」から艶のある歌声を響かせていく。MCでは久しぶりの地元でのライブとあって、関西人ならではのノリの良いトークに観客もほっこり。「音を愛する人たちで築き上げられている」と、イベントへの愛を語ると「Sha la la」「Hooray Hooray」と、柔らかくもダイナミックなパフォーマンスで楽曲を次々に披露。佐藤とのコラボでは、前日と同じく「Amanogawa」を披露。出会った当時の思い出話に華を咲かせつつも、佐藤は「先輩だけど支えられていた。気付けば同志になっていた」と、互いに3人で活動するユニットとして切磋琢磨してきたこと、音楽に懸ける想いを吐露。「宝物」と紹介した同曲、愛しそうに想いを込めて歌い上げる4人の姿に、客席からは温かな拍手が届けられた。 

 続いてのゲストステージは岸谷香。彼女もまた、念願の出演だったと語る佐藤は「2人といない、個性的な歌声や音色を持っている」と彼女を絶賛。ロックのイメージが強い彼女だが、実はジャズ好きでピアノやクラシックにも長けている。そんな2人でのコラボはジャズの名曲「Mack The Knife/エラ・フィッツジェラルド」をチョイス。「僕のルイ・アームストロングが出ちゃうかも?」の佐藤の言葉の通り、渋みを効かせた迫力あるしわがれ声に観客からは驚嘆の声が漏れ聞こえる。岸谷の可愛くてハスキーな歌声、塩谷と大儀見のセッションならではのプレイが、会場の熱気を一気に高めていく。続いてはSkoop On Somebodyと岸谷がコラボする「Where Is The Love/ロバータ・フラック、ダニー・ハサウェイ」。互いの個性をぶつけ合いつつもソウルフルな歌声で観客を魅了する2組だが、実はステージでコラボするのは初めてとか。レアなステージが体感できるのも【Cross your fingers】ならではだ。

 岸谷のソロステージはサプライズで観客からリクエストを募ってのライブに。すると、まさかの佐藤が率先して「世界でいちばん熱い夏」をリクエスト。しかも岸谷がピアノ演奏をしながらのデュエットと、これまたレアすぎるシーンに観客は拍手喝采。佐藤も「こんな至福の時間があるでしょうか」と感無量だ。さらに名曲「M」も弾き語りで歌い、ここで彼女のステージは終了……と思いきや、ホストである佐藤がステージに戻ってこないハプニングも演出であるかのように、「ジュリアン/プリンセス プリンセス」を披露し、“百戦錬磨”な岸谷は、観客を楽しませた。

 ライブはいよいよ終わりへ近づき、再びSALTSUGARのステージへ。昨今のウクライナ情勢を憂いつつ、「子供たちへ、そして子供のそばにいる大人へ」と想いを込め、「Child In Time」 を歌い上げる。イントロを即興で弾きつつ、鼓動を打つように大きく弾む塩谷のピアノからは「音」が生きている様子が伝わってくるようだ。本編ラスト「Love’s In Need Of Love Today /スティーヴィー・ワンダー」では、音楽が、歌が持つ力の大きさを伝えるべくありったけの歌声、演奏で思いを届け、全11曲のステージが終了。アンコールは前日と同じく、出演者総出で「星の夜」を届けると佐藤は「(イベントを通じて)優れたミュージシャンを紹介できることがうれしい。普段歌えない歌が歌えたり、楽しくてしょうがない」と、3年ぶりに開催できた喜びを改めて噛み締めつつ、ステージは終幕へ。きっと来年もまたたくさんの観客とともに、たくさんの音楽が交差していくこのイベントで出会えることを期待したい。

Text by 黒田奈保子
Photo by 井上 嘉和

◎公演情報
【佐藤竹善 Presents Cross your fingers 22Club Vibes~】
 開催日:202253日(火・祝)4日(水・祝)
会場:ビルボードライブ大阪
出演:佐藤竹善 / 塩谷哲 / 大儀見元
ゲスト出演:
3日 上妻宏光 / Skoop On Somebody / Très Joyeux
4日 岸谷香 /Skoop On Somebody

◎オンエア情報
FM COCOLOM’s Groove』(DJ meme)では、511日(水)、12日(木)の2日間『佐藤竹善 Presents Cross your fingers 22 Club Vibes~』のライブ音源がオンエアされた。
53日公演のライブ音源は18日まで、4日公演音源は19日までradikoで聴く事が可能。
53日公演ライブ音源>518日(水)まで
https://radiko.jp/share/?sid=CCL&t=20220511121652
54日公演ライブ音源>519日(木)まで
https://radiko.jp/share/?sid=CCL&t=20220512121639

 

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