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<ライブレポート>日本が世界へ送り出す新たな才能、気鋭のアーティストが共演する【FLAT6 ROOM3】をプレイバック 出演:春ねむり/日食なつこ/Young Kee

 ライブの楽しみ方がアップデートされてきた昨今。新進気鋭のVJたちと共に気鋭のアーティストをフックアップし、世界へ届けるライブ配信プログラム『FLAT6』が面白い。一つの空間=FLATに集う新しい才能たちと、そこから生まれる化学反応が世界に発信されていくクリエイティヴィティに富んだ、無観客でのショーケース・ライブだ。

 今回目撃したのは、4月23日20時に公開された【FLAT6 ROOM3】。

 MCは、初回の【FLAT6 ROOM1】に出演したASOBOiSM。アーティストとの距離感の近い会話センスが特徴だ。

 出演するのは、初めての北米ツアーで世界からの注目を集める“春ねむり”、その圧倒的なオリジナリティを持つ歌詞の世界観とピアノ技術でアーティストからも支持を集める“日食なつこ”、そして新星のごとく現れたニューカマー“Young Kee”という、アンテナを張っているミュージック・ラヴァー要注目の3組。さらに、VJとしてs a d a k a t aとHumungas (Ai Onoda)が、ステージにサイケデリックな彩りを添えていく。

 映像は、オープニングから90’sちっくなVHS風、RGBグリッチなエフェクトがかかった映像からスタート。2022年の風景なのだが懐かしくも新しい、新鮮な印象を与えてくれる。ドキュメンタリー映像のように没入感高いイントロダクション。ふと耳を傾けると「タイトルである“フラット”とは、仲間とシェアする家みたいだ」と定義する会話が聴こえてくる。

 各アーティストのリハでのサウンド・チェック映像が垣間見れ、“Let’s Get Started”の文字から3,2,1とカウントダウン!!!

 ここは、渋谷の隣に位置する日本を代表するベニュー=恵比寿リキッドルームだ。

 アーティスト紹介映像が流れ、春ねむりが紹介される。ふとラジオ体操をする春ねむりがカットアップ。ラジオ体操とは、日本を代表する準備運動である。

 2022年に入り、春ねむりの躍進には目を見張るものがあった。辛辣な評論で知られるアメリカの音楽メディア『Pitchfork』にて、最新アルバム『春火燎原』が8.0点と高評価を獲得。日本人アーティストではレアな『9 Albums Out This Week You Should Listen to Now(今週聴くべき9枚のアルバム)』に選出されたことはニュースとなった。音楽レビュー・サイト『RATE YOUR MUSIC』では4月28日現在で世界11位にランクイン。これも、北米ツアー9公演を行い、大型フェス【SXSW2022】で大きな評価を得たことのあらわれだ。

 そんな彼女の日本凱旋ライブでもある。

 オープニングは「Déconstruction」。パンク、ハードコアをルーツに持つポエトリーなラップで繰り広げられる独特なるステージング。緊張感が伝わるステージを、一気に熱量の高い春ねむりワールドへとチェンジしていく。続く、ヘヴィ・ロックなギター・リフで展開する、オーディエンス全てを撃ち抜くエッジーなリリックが胸に突き刺さる「Bang」もヤバい。

 途中、ASOBOiSMとの会話シーンが挟み込まれ。ルーツにあるレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンからの影響が語られる。ショーケース・ライブの見せ方にふさわしい、アーティストの魅力を知れる、編集された無観客ライブならではの映像配信だ。

 激しいデスヴォイスなシャウトがインパクトある「Kick in the World」、アンビエントちっくな深遠な世界を浮き彫りにする「祈りだけがある」では、より春ねむりの濃い要素を浮き彫りとする。MCでは「音楽がギリギリ私を生き延びさせてくれる」と言い切り、そして自身の御守りとなるライブ・アンセム「生きる」をプレイ。歌われるのは生きることの美しさ、生きることで見えてきた美しさ。傷つきながら、傷だらけになりながら歩んできた、春ねむりがたどり着いた新しい境地だ。

 続いて2002年生まれ、ミステリアスな雰囲気を漂わせる19歳のシンガー・ソングライター、Young Keeが登場。「何考えながらライブしてました?」という、MCのASOBOiSMからの問いに気負いなく「汗がすごいな(苦笑)」と答える。バンドを背負った、体全体で表現する自身がたとえる“ほぼ体育”と言いながらも、スタイリッシュなステージングが圧巻だ。

 オープニングは「ボーイ」からスタート。疾走感あるビートに甘いヴォーカルが、渋谷系以降のジャンルや時代感がミックスされたポップ・フィーリングを表現。続いて、今年リリースされたデジタル・シングル「ムスク」では、アンニュイな雰囲気漂わす刹那ポップなグルーヴをダンサブルに聴かせてくれた。

 無観客なフロアを活用した、通常のライブでは観ることができないであろう特異なカメラ・ワークが、アーティストの世界観をより具体的に伝えてくれるのが『FLAT6』らしさだ。

 日本国内でもまだ知る人ぞ知るアーティスト、それがYoung Keeなのだが、堂々たるステージングに、プリンスを彷彿とさせるおそるべき才能の片鱗を感じた。ファンキーなカッティング・ギターが軽快な「Die The Night」では、思いを込めたヴォーカリゼーションが胸に突き刺さる。

 ルーツに、日本のロック・バンドである女王蜂からの影響、そして高校時代に結成したというオリジナル曲志向だったバンドの思い出を語るワンシーン。続いて、キャッチーなギター・ポップ・チューン「シュガー」で、その只者ではないポップ・スター性を証明していく。

 この日のトリは、最近、日本国内でのメジャーなTVショーでも話題となったピアノ弾き語りによるシンガー・ソングライター、日食なつこだ。

 インタビュー・カットで「春は、感情が動きすぎて受け止められない」という独自の感性をASOBOiSMへと語る。ふとした会話でのやり取りからアーティスト性、作家性の視点のユニークさが垣間見れる。

 1曲目は、最新アルバム『ミメーシス』に収録された、ライブでは本邦初公開だという「うつろぶね」を、軽快なピアノ・リフにのせて演奏。物語色強い歌詞世界から解き放たれる映像の浮かぶポップ・センス。一気に、日食なつこワールドへとモニター前のオーディエンスは惹き込まれていく。さらに、初披露となる「hunch_A」では、跳ねるピアノによるビートが心をあたたかく解きほぐしてくれた。ラップ・テイストを感じられる個性的な歌詞展開に耳が喜びを隠せない。

 途中、ASOBOiSMとのトークでは、ルーツとなったアーティストとして、意外にもEXILEの名前を告げた日食なつこ。「半分持ちネタになっているんですけど」と恐縮しながらも「ピアノで弾くとジャズコードがあって」と語るのが“らしさ”だ。譜面でコピーをする際にコードの面白さを知ったという。

 パワーを感じる低音めいたピアノ・リフ、ネガティヴなパワーに満ちた「シリアル」では、ロックを感じられる逆説的に突き抜けたエネルギーを感じた。バンド畑からの影響で育ちながらも、バンドを組めなかったが故にピアノを相棒にした過去をバックヤードで語るシーンが挟み込まれる。

 ラストは<まるで踊るかのように歩いていたんだ>と歌い出す「√-1」を奏でていく。日食なつこの魅力、それはハートを揺さぶる魔法めいたストーリー・テリングによってリスナーの内面へと入り込み、突き刺す、音楽と言葉によるナイフの先鋭さだ。ステージを最前列で体験しているかのような没入感高い映像美に心が奪われていく。

 こうして、3回目の【FLAT6 ROOM3】は終了した。矢継ぎ早に次回【FLAT6 ROOM4】のアクト、Newspeak、THEティバ、CVLTEの出演が予告され、ノイズとともに映像は終了。

 まるで白昼夢かのように新しい才能との出会いとなったプレミアムなステージは、ネクストへとバトンが継承されていった。

Text by ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)

◎公演情報
【FLAT6 ROOM3】
2022年4月23日(土)
出演:春ねむり/日食なつこ/Young Kee
MC:ASOBOiSM
VJ:s a d a k a t a/Humungas (Ai Onoda)

https://youtu.be/dNrVV9inwio

◎公演情報
【FLAT6 ROOM4】
2022年5月7日(土)20:00~
出演:Newspeak/THEティバ/CVLTE
MC:ASOBOiSM
VJ:s a d a k a t a

https://youtu.be/mnKL1aNmRfk

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